ゴタイ荘の「ほっとすぱーず」   作:公私混同侍

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闇の女占い師 ~ストーカーの正体~

女「最近誰かにつきまとわれてる気がして……」

 

占い師「あなたが以前付き合っていた彼、女癖の悪い人のようね」

 

女「はい。すぐ浮気するので私の方から別れを切り出したのですが……」

 

占い師「その彼がストーカーになったのかもしれないということね」

 

女「私の勘違いだといいんですが……」

 

占い師「あなた、霊感もあるようね」

 

女「ありますが……どうしてですか?」

 

占い師「このお札をお使いなさいな。あなたに降りかかる災難から守ってくれるわ」

 

女「はい!ありがとうございます!」

 

サリー「――いたっ!?」

 

女「ご、ごめんなさい!お怪我はありませんか?」

 

ルナ「大丈夫」

 

サリー「勝手に返事するな!――私なら平気だ。気にするな」

 

女「本当にごめんなさい!それではこれで――」

 

ルナ「あれ?何か落とした」

 

サリー「お札みたいだな」

 

占い師「なんてことなの……」

 

ルナ「あの人が占い師?」

 

サリー「みたいだな――ん?私たちを呼んでるみたいだぞ」

 

占い師「あなたたち、そこに座ってちょうだいな」

 

ルナ「お化けが出そうだね」

 

サリー「このお札はあなたがさっきの客に渡したものか?」

 

占い師「ええ、そうよ。マズイことになったわ」

 

ルナ「私、メイドになりたい」

 

サリー「おい、隙あらば占ってもらおうとするな」

 

占い師「別にかまわないわ。それじゃ始めるわよ」

 

ルナ「恭夜はサリーと結婚できる?」

 

サリー「わ、私を巻き添えにするな!」

 

占い師「あなたがメイドになるにはもう少し先のようね。あなたにとって大きな障害があるわ。その障害を取り除くことがメイドへの近道ね」

 

ルナ「いや!私には隆太を殺めることなんてできない!」

 

サリー「なんで隆太を冥土送りにしようとしてるんだ!?障害はゲルマの方だろ!」

 

占い師「もう一つの件は以前にも同じようなことを言うお客さんがいたわ」

 

ルナ「ふふふ、不思議だね」

 

サリー(あかりか?それとも隆太か?)

 

占い師「あなたは何を聞きたいの?」

 

サリー「そ、そうだな……」

 

ルナ「恭夜の好きな女性は生きてる?」

 

占い師「あなたさっきから人のことしか聞いてないわよ」

 

サリー「そんなこと聞いてどうするんだ。死んでたら反応に困るだろ。私は自分の未来は自分で切り拓くつもりだ」

 

占い師「そう。でもあなたの顔には悩みが書かれてるわよ」

 

サリー「フッ、全てはお見通しか」

 

ルナ「サリー?」

 

占い師「家族の幸せを願ってるようね。特に双子の兄妹の未来が気になってるのでしょ?」

 

サリー「ああ」

 

ルナ「隆太とあかり?」

 

占い師「その子達の将来を案じれば案ずるほど、絆が強くなればなるほど別れが辛くなるわよ。要はタイミングね。新たな出会いがその兄妹の道標になるわ」

 

サリー「新たな出会いか……」

 

ルナ「その出会いは日本?」

 

占い師「そうね。ハッキリと言えるのは日本ではないわ」

 

サリー「そうか。恭夜とゲルマには黙っておこう」

 

ルナ「うん」

 

女「はぁ……はぁ……」

 

占い師「ごめんなさい。先客が来たから、また後にしてちょうだい」

 

ルナ「先客?」

 

サリー「さっきぶつかった女だな」

 

女「占い師さん、私どうしちゃんたんでしょうかぁ!?」

 

サリー「な、なんだか様子が――」

 

ルナ「あの人、泣いてる」

 

占い師「錯乱しているようね。まず深く息を吸って気持ちを整えるの」

 

女「もう……わけが分からなくて……ぐすっ……」

 

占い師「落ち着いて聞いてちょうだい。前の彼には会ったの?」

 

女「はい……私の家にいて……でも……」

 

占い師「触れられなかったんでしょ?」

 

サリー「なに!?」

 

ルナ「触れられない?」

 

女「私……死んでるんですよね?」

 

占い師「ええ、残念だけど」

 

サリー「死んでる?ということは私たちの前にいるのは――」

 

ルナ「幽霊?」

 

占い師「あなたは以前付き合っていた彼を交通事故から守ったの。トラックがぶつかってくることを恐れず、身を挺して愛しあっていた人を守り抜いたのよ」

 

女「ぐすっ……私……どうしたら……」

 

占い師「あなたにお札を渡したのはあなた自身が死んでることに気づいてパニックになった時の保険よ」

 

サリー「つまり悪霊になった場合、男に危害が出るのを防ぐためというわけか」

 

ルナ「でも悪霊にならなかった」

 

占い師「そして彼はあなたが死んだことを受け入れられず、家の周りを徘徊しているのよ。あなたの家に入って感傷にでも浸っているのね」

 

サリー(失われた時間はもう戻ってこないのだ)

 

ルナ(みんなとの時間を大切にしたいね)

 

占い師「でもあなたは強い意志で辛い現実に打ち勝った。だからあなたは自らの足で私に会いに来たんでしょ?」

 

女「はい……」

 

占い師「これからあなたは何をすべきか自分で考えなさい。成仏するなり、この世をさ迷うなり、選択肢は少なくないわ。でも悪霊にでもなったらただじゃおかないわよ」

 

女「私、占い師さんのそばにいてもいいですか?たくさんの悩みや苦しみを持った人の心に寄り添っていきたいんです」

 

占い師「その発想はなかったわ。私の仕事の邪魔にならなければかまわないわよ。好きにしなさい」

 

サリー「ならお札はもう必要ないな。あなたに返そう」

 

ルナ「お金払って帰ろう」

 

占い師「――待って!」

 

サリー「なんだろうか?」

 

占い師「……いえ、なんでもないわ。呼び止めて悪かったわね」

 

ルナ「さようなら、占い師さん」

 

占い師(サリーという女性から未来を読み取れなかった。現世の人物じゃないと思ったけど、お札が黒ずんだ形跡はない。まあいいわ。また出会うことがあれば、素顔を暴かせてもらうわ)


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