あかり「このアパートって大家さんの名前からつけられてるんでしょ?」
隆太「ゴタイさんっていうおじいちゃんだよ」
ルナ「住みにく荘」
大家さん「――それがお嬢さんの本音なら悲しいね」
あかり「あっ!大家さん、おはようー!」
隆太「おはようございます。ゴタイさん」
大家さん「おはようさん。隆太君にあかりちゃん、今日も元気だねぇ」
ルナ「このアパートおかしい」
大家さん「どうしてそう思うんだい?」
ルナ「エレベーターがないから」
あかり「嫌なら出ていっていいよ」
隆太「ダメです!家主である僕が認めません!」
大家さん「階段の方が足腰を鍛えられる。お嬢さんは若いのだから、苦にならないんじゃないかな?」
ルナ「じゃあ階段いらない」
隆太「いや、僕たち二階に住んでるんですけど」
あかり「ルナお姉ちゃんは壁を這って行くんでしょ?蜘蛛みたいに」
大家さん「ホッホッホ。お隣さんが見たらトラウマもんだね」
ルナ「自転車乗ってもいい?」
あかり「人のなんだからダメに決まってるじゃん」
隆太「一台だけ使われてない自転車ありますよね?」
大家さん「あれかい?あれは以前住んでいた人が置いていっちゃったんだよ。隆太君たちが好きに使うといいよ」
ルナ「サドルがない」
あかり「ホントだ!」
隆太「乗り心地悪そうだね……」
大家さん「以前住んでいた人が持っていっちゃったんじゃないかな?サドルで痔を悪化させてたみたいだけど、外しちゃったのかねぇ」
隆太「余計悪化するような……」
あかり「ウチに代わりのサドルなんてないよね?」
隆太「ゲルマさんに聞けば探してくれるかもね」
ルナ「このベビーカー、ぬいぐるみが乗ってる」
あかり「熊さんだ!」
隆太「子どもが乗せたんじゃない?」
大家さん「そのベビーカーは二階の住人の持ち物でね。ぬいぐるみ好きで有名だったんだけど、子どもが産まれてからベビーカーに乗せ始めたんだよ」
隆太「ぬいぐるみをベビーカーに乗せたってことですか?」
大家さん「そうだよ」
あかり「赤ちゃんは?」
大家さん「背負ってるに決まってるじゃないか。ホッホッホ」
ルナ「赤ちゃんよりぬいぐるみの方が大事だったんだね」
大家さん「でもイライラするといつもぬいぐるみを殴ってたんだよ」
あかり「えぇ!?どうして!?」
大家さん「子どもに当たるわけにはいかないからね。代わりにぬいぐるみでストレスを発散しているとご夫婦が仰っていたよ」
隆太「納得していいのかな?しかも旦那さんも殴るって何があったんだろう……」
ルナ「ベビーカーを殴ればいいのにね」
あかり「買った意味ないじゃん」
大家さん「何か困ったことがあれば、いつでも尋ねにおいで」
ルナ「このアパート傾いてる」
大家さん「本当かい?」
隆太「ルナさんの気のせいじゃないですか?」
あかり「ルナお姉ちゃん、おっぱい大きいから猫背でそう見えるんじゃない?」
ルナ「私猫背じゃない。このアパートが猫背。ビー玉転がしたら部屋を一周した」
あかり「それって傾いてるんじゃなくて揺れてたんじゃない?」
隆太「地震ってこと?」
大家さん「地盤が強い町じゃないから、その可能性もあるね」
ルナ「サリーの髪も驚くほど揺れてた」
隆太「そんなに揺れるもんじゃないみたいな言い方されても……」
あかり「それならルナお姉ちゃんのおっぱいも揺れるじゃん」
大家さん「おっぱいがユサユサ揺れるなら、訳あり物件と言われても悪い気はしないねぇ」
隆太「父の心も揺れる――耐震偽装」
あかり「女を餌にする――地盤沈下」
ルナ「愛の巣を騙るワケあり物件。その名も――」
大家さん「ゴタイ荘。皆様のご入居を心よりお待ちしております」