~アンドロイド品質管理場~
ゲルマ「外が騒がしいな」
ルナ「誰か来る」
ゲルマ「――訪問者とは違うようだ」
ルナ「だれ?」
カイン「――ふぅ、危ない危ない。やっと辿り着いた。会いたかったよ、ゲルマ、ルナ」
ゲルマ「どうやって入って来た?」
ルナ「入り口のおじさんを殺しちゃったの?」
カイン「警備の人間か?殺したりしたらボクは呑気に顔を見せたり出来ないさ。目を盗んで入り込むことなんて、ボクにとっては準備運動にもならないけどね」
ゲルマ「マスターとサリーなら事務所にいるが、話は通したのか?」
カイン「いいや、二人にはまだ何も。一応サリーに用があって足を運んだんだけどね」
ルナ「サリーのストーカー?」
ゲルマ「カインのことではない。いつぞやの男がまた接触を図りに来たのではと聞いているようだ」
カイン「ルナはサリーと違って勘がいいね。説明する手間が省けたよ。それなら後で二人が合流してからの方がいいかな?」
ルナ「どういうこと?」
ゲルマ「まだ何も説明していないのに自己完結するとは。また面倒な依頼を受けたようだな」
カイン「なに、キミたちに会う口実を探してたら盗聴男から仕事を斡旋されたんだ。ボクが報酬に目が眩んだとも言えるけどね」
ルナ「――エクレア持ってる」
ゲルマ「手土産か?」
カイン「ルナの嗅覚はどうなっているんだ?あかりと隆太の番犬にふさわしいとは思うが……」
ルナ「ちょうだい」
ゲルマ「オレの分はルナが食べればいい」
カイン「条件がある。一日だけボクの恋人になってデートしてほしい」
ルナ「一日って睡眠時間を引いて、恭夜たちと過ごして、その後ゲルマと一緒に遊ぶから残りは……五分だね」
カイン「睡眠時間を取りすぎだ!どういう生活習慣を送っているんだ!?」
ゲルマ「ククッ……露骨だな。一日がカップラーメンを食うだけで終わってしまうとは儚いものだ」
ルナ「一緒にカップラーメン食べに行く?」
カイン「断る。五分ではボクの魅力を伝えきれない。恭夜の悪口に時間を割くことが出来ないのもツラいからね」
ゲルマ「カインの憎まれ口なら盗聴してみたいが……気づけばもう五分経ったか。再会の余韻に浸ることを忘れるとは虚しいという他ないな」
ルナ「ゲルマ?」
カイン「それはゲルマの心にライナが住み着いているからでは?」
ゲルマ「オレが罪悪感を感じるとは……クックック……どこかで生きているんだろうな、きっと」
ルナ「ライナは生きてる。だって
カイン「ライナが言いそうな言葉だ。それに案外間違えではなさそうだけどね」
ゲルマ「冗談に耳を傾けるほど今のオレの心は強くない」
カイン「ボクは世界を回ってその国の歴史を調べているんだが、信じられないことに矛盾が多く散見されるんだよ。恐らく絵画の一件で歴史が書き換えられているようなんだ」
ゲルマ「まるでライナが意図しているような言い方だが?」
ルナ「違う!」
カイン「これはボクの仮説だが、サリーの存在そのものが過去に少なからず影響を与えているんじゃないか?」
ゲルマ「サリーが歴史の改竄に加担していると断定出来た時は、我々が手を下せばいいだけの話だ。納得出来ないと言うのなら、今すぐサリーを殺しに行けばいい。たとえ友人の心情を知っていたとしても、オレとルナが全力で止めるがな」
ルナ「うん!」
カイン「そんなに殺気立たないでくれ。ボクにキミたちの暮らしを脅かす権利はない。それにこの世界が正しい世界かどうかなんて誰にも分からない――おっと!まずい!」
ゲルマ「裏口は向こうだ」
カイン「感謝する、友よ」
ルナ「バイバイ」
カイン「また会おう、ボクのワルキューレ!これは餞別のキスだ!」
ゲルマ「投げキッスをして女心を気遣うとは、いやはや恐るべき男だ」
ルナ「エクレアぐちゃぐちゃになってる」