ゴタイ荘の「ほっとすぱーず」   作:公私混同侍

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泉陵学園高校文化祭 ~ご大層な舞台(前編)~

~体育館・壇上裏~

 

ゲルマ「もうすぐ出番だ。皆の者、準備は良いか?」

 

サリー「恭夜たちは本当に学生として参加するのか?いつ許可をもらったんだ?」

 

恭夜「内緒だよね?」

 

ハルカ「は、はい(ごめんなさい、サリーさん)」

 

あかり「いいじゃん。声だけだけど、サリーお姉ちゃんたちだって参加出来るんだし」

 

ルナ「みんな、頑張って」

 

隆太「僕なんかよりルナさんが出た方が良かったんじゃないですか?」

 

ゲルマ「まさかあっしまで舞台に立てるとは思わなかった」

 

背景(A)『な、なんか緊張してきた……』

 

背景(B)『私たちはタイミングよくやるだけでしょ!あんたたちより、この人たちの方が緊張してるに決まってるじゃない!』

 

背景(C)『あー、めんどくせー。なんだよ傍聴人ってよぉ。オレなんかいなくてもいいよな?』

 

サリー「まさに背景だな」

 

ルナ「烏合の衆だね」

 

恭夜「この演劇ってゲルマが考えたんだろ?」

 

ゲルマ「あっしだけではない。サリー、ルナ、あかり、そしてハルカ殿の力添えあってこその作品なのだ」

 

隆太「僕はセリフを覚えるだけで精一杯でした」

 

あかり「ごめんね、隆太お兄ちゃん。忙しいのに無茶なこと言って」

 

隆太「僕にはこれぐらいしかみんなの役に立てないから。いつも外から見てるだけなんて耐えられなし、一日だけでも兄さんみたいに学生扱いされるのも案外悪くないよ」

 

ルナ「隆太、カッコいい」

 

ゲルマ「ならば一丸となってこの演劇を成功させようではないか!」

 

アナウンス『――それでは次の演目です』

 

全員『いざ、出陣!!』

 

~『舞台 ご大層な裁判』~

 

ゲルマ「どうもー!ご大層な?」

 

隆太「泉陵生(せんりょうせい)でーす!」

 

恭夜「よろしくお願いします……」

 

ゲルマ「おやおや?マスターの元気がないようだ」

 

隆太「まるで痴漢したと勘違いされた男が線路を走って逃げたような表情だね」

 

恭夜「例え酷くね?」

 

ゲルマ「痴漢と言えば裁判だな」

 

隆太「それじゃあ、僕検察官やります」

 

恭夜「俺は――」

 

ゲルマ「マスターは犯罪者ね」

 

恭夜「被告人だろうが!ていうか勝手に決めんな!……ん?ということはゲルマは?」

 

隆太「被害者かな?」

 

恭夜「何でだよ!俺は男に痴漢してんのかよ!」

 

ゲルマ「弁護士はあっしだな。それでは――」

 

サリー『開廷!』

 

隆太「えー、ごほん!被告人、唯城恭夜は始発の電車内で当時二十代の女性に空席が目立つのにも関わらず、(みだ)りに全身を撫で回すように密着及び接触し不快にさせ、周りの乗客にその行為を目撃された後被告人は停車駅で足早に降車、そして線路内に飛び降り逃走を図ったが、待ち伏せていた警察官に現行犯逮捕されました。以上が本件の経緯です」

 

ゲルマ「ちなみに検察側に一つお聞きしたい」

 

隆太「えっ?えっ?」

 

恭夜「すげぇ動揺してる」

 

ゲルマ「どのような法律に反するのだろうか?」

 

隆太「ちょ、ちょっと待って下さい……確か刑法だったような……」

 

恭夜「六法ってあんな分厚いのか?」

 

ゲルマ「痴漢は刑法176条、強制わいせつ罪に抵触する」

 

隆太「う、うー……」

 

恭夜「さすが我が弁護士。格が違う」

 

ゲルマ「そしてこの被告人はもう一つ罪を犯している。それは――」

 

恭夜「マジ?」

 

隆太「それならわかります!線路内の立ち入りは鉄道営業法37条違反に当たります!ふー!」

 

ゲルマ「なら結論は簡単だ。被告人は――」

 

隆太「もちろん有罪です!個人的には死刑してやりたいですよ」

 

恭夜「おい、私情を挟むな」

 

ゲルマ「そんな焦るな。まだ証人尋問がある」

 

隆太「あっ!忘れてました」

 

恭夜「裁判らしくなってきたな」

 

ゲルマ「まずは最初の証人だ。証言台に来てくれ」

 

ハルカ「……」

 

隆太「こんな人が嘘をつくはずがない!絶対にそうだ!」

 

恭夜「まだ何も言ってないだろ!」

 

ゲルマ「まさに痴漢して下さいと言わんばかりの美貌と人間性を兼ね備えた女性だ!」

 

恭夜「問題発言だろ!」

 

ハルカ「オーホッホッホ!」

 

ゲルマ「それでは証言をお願いしよう。深地ハルカ殿」

 

ハルカ「構いませんわ。ワタクシは通学の為いつものように始発の電車に乗りましたわ。そして空いている席に座りましたのよ。目の前には女性が座りながら眠っていましたわ」

 

隆太「通学の為に始発の電車を利用しなければいけないとは。なんて健気な女性なんだ」

 

ゲルマ「意義あり!!黙って話を聞けえい!!」

 

恭夜「いきなりでけぇ声出すな!情緒不安定か!」

 

ハルカ「途中の駅からそこの男の人が乗ってきて、奇声を発しながらサッカーボールを蹴り出しましたのよ。いつもの光景ですわ」

 

恭夜「本当にヤベー奴じゃねぇか。なんだよいつもの光景って。誰か注意しろよ」

 

隆太「被告人はサッカーボールしか友達がいないと自白しています」

 

恭夜「なに自白してんだよ俺……」

 

ゲルマ「動機はあるようだ。被告人はサッカーの練習をふりをして、女性に近づき行為に及んでいた」

 

ハルカ「好意があったから?」

 

隆太「なるほど、これは決定的な証拠ですね」

 

恭夜「くだらねぇ。ただのダジャレじゃん」

 

隆太「ちなみに奇声を発していたと言っていますが何を?」

 

ハルカ「なんだったかしら?、ああ~栄冠は君に輝く~?」

 

恭夜「聞いたことねぇよ」

 

隆太「他人を鼓舞するような歌ですね 」

 

ゲルマ「おかしい、その歌はサッカーとは関係ない」

 

ハルカ「言いがかりですわ!」

 

隆太「では何だと言うんですか?ゲルマ弁護士」

 

ゲルマ「それは野球に関係する歌だ」

 

恭夜「へー、そうなんだ」

 

隆太「ちょっと、ちょっと待って下さい!それではこの証人は――」

 

ゲルマ「嘘をついている!」

 

ハルカ「私ははっきり見ましたわ!そこいる薄気味悪く、陰湿そうな男が白い玉を蹴っていましたのよ!存在感だけなら聞こえないベースですわ!」

 

恭夜「失礼だろ!全国のベーシストに謝れ!」

 

隆太「嘘だと言うのなら説明してください」

 

ゲルマ「この証人は今、自らをペテン師と認めたのだ!」

 

恭夜「なんか弁護士っぽい事言ってる」

 

ゲルマ「先ほど証人は野球の歌詞を証言した。だが、この歌の一節には『純白の玉』と書かれた歌詞が存在する」

 

ハルカ「まっ!」

 

隆太「はぁ、それが一体――」

 

恭夜「つまりハルカちゃん、じゃない証人が聞いた歌は野球の歌で、俺は歌いながら野球の玉を蹴っていたってことだろ?」

 

ゲルマ「自分で説明して恥ずかしいと思わないのか?」

 

恭夜「恥ずかしいわ!なんだよ野球ボールを蹴ってるって!」

 

ハルカ「もういいかしら?次の証人を呼ばせてもらいますわ!」

 

恭夜「おかしいだろ!証人が証人を呼ぶってどういうことぉ?」

 

―続く―

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