ゴタイ荘の「ほっとすぱーず」   作:公私混同侍

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泉陵学園高校文化祭 ~ご大層な舞台(後編)~

~体育館・壇上~

 

ゲルマ「くっ、まだ証人がいるだと?隆太検察官、お願いしよう」

 

隆太「次の証人は僕の妹です。ど~ぞ~」

 

恭夜「身内呼ぶのかよ。なんて卑劣な検察官なんだ」

 

あかり「はーい!なんなりとお申し付け下さいましぃ!」

 

恭夜「なんだその喋り方」

 

ゲルマ「元気があってよろしい。それでは証言をお願いしよう」

 

あかり「えっ?証言?」

 

隆太「この証人は被告人が電車の中で犯行に及んでいたのを目撃していたのです」

 

恭夜「詰んだじゃん、俺の人生」

 

あかり「ああ!思い出した!あたしはドア付近に立って守護してたんだけど、そしたらその男の人が後から乗ってきて周りをキョロキョロし始めたの」

 

恭夜「守護してたってなんだよ」

 

ゲルマ「その時の男の服装は?」

 

あかり「赤い帽子を被って、白い長袖に青いオーバーオールを穿いてたよ」

 

隆太「犯人は地味な格好していたと」

 

恭夜「目立ち過ぎだろ」

 

ゲルマ「オランダ……」

 

あかり「え?」

 

ゲルマ「気にしないでくれ。それでは次の質問だ。被害者はどこにいたのだろうか?」

 

あかり「女の人はドア近くで左手で傘をつり革に引っ掛けて、携帯電話を耳と肩に挟んで何かを話してて、右手で化粧しながら自撮り棒で本を読んでたよ」

 

恭夜「化け物かよ。自撮り棒で本を読むって、被害者は老眼なのか?どうやって本を捲ってるんだ?」

 

ゲルマ「本を読む以前の問題だと思うが、全くツッコミ所の多い被害者だな」

 

隆太「なるほど、被害者は無防備な所を狙われたわけですね。そして被告人はその被害者の隙に付け入るように犯行に及んだ」

 

恭夜「ぐっ、こんなアホみたいな推理に反論できない」

 

ゲルマ「証人、見たことは正直に話して頂きたい」

 

あかり「あ、あたしは見たものをちゃんと話したよ!」

 

隆太「言いがかりはよして下さい!指摘があるなら根拠を示して下さい!」

 

ゲルマ「ならば、まず被害者の持ち物を全て正確に答えてもらいたい」

 

あかり「持ち物?え~と携帯電話でしょ、それに化粧道具、傘、本、自撮り棒で全部だよ」

 

ゲルマ「証人、足元はちゃんと見ていたか?」

 

あかり「足元は見てないよ。だって女の人の変な自撮り棒の使い方が気になってしょうがなかっただもん」

 

恭夜「可愛い」

 

隆太「被告人は黙って下さい!」

 

ゲルマ「この証人は足元を見ていなかったと証言した。だが、それは不自然なのだよ」

 

あかり「どうして?」

 

ゲルマ「理由は二つある。まず一つは被告人は被害者の全身を(みだ)りに触れているのだ。勿論被害者の所持品にも触れているはずだ。もし証人が犯行の一部始終を目撃したとすれば、足元に置かれているバックを見落とすはずがない!」

 

隆太「ああっ!」

 

恭夜「確かに」

 

あかり「ざんねーん!バックは足の間に挟まれてたからあたしの場所からは見えないよ~!」

 

隆太「ほっ」

 

恭夜「こっちも理にかなってる」

 

ゲルマ「まだだ。もう一つの理由、それは証人が何故上半身しか目撃していないのか。それは証人が手鏡を使って犯行を見ていたからだ」

 

隆太「手鏡?」

 

恭夜「なるほど」

 

あかり「鏡を使って見たから何だっていうの?」

 

ゲルマ「鏡は映った物を反転させる。すなわち左右が逆になる。もちろん証人は理解していたのだろう?」

 

あかり「あ、あれぇ?どっちだったかなぁ?」

 

恭夜「ちゃんと証言しなきゃ駄目だよ~」

 

隆太「意義あり!」

 

恭夜「誰に向かって言ったんだ?」

 

隆太「この証人は鏡の性質を理解していなかっただけで、証言自体になんら矛盾を孕んでいません。危うく騙されるとこでした」

 

あかり「そうだそうだ!」

 

恭夜「ていうか電車内にまともな人間いねぇのかよ」

 

ゲルマ「ククク……」

 

隆太「これ以上の審理は無意味ではないでしょうか?」

 

ゲルマ「それはどうかな?」

 

あかり「え~、もう帰りたーい」

 

隆太「まだ何かあるのですか?」

 

ゲルマ「不思議に思っていたのだが、被害者は何故空席があったのにも関わらず立ち続けていたのか?」

 

あかり「う~ん、なんで~?」

 

隆太「それは何らかの事情があって立っている必要があったからじゃないですか?」

 

恭夜「全然わかんねぇ」

 

ゲルマ「難しい話ではない。もう一人別の人間がその場所に存在したのだ」

 

あかり「えぇ!」

 

隆太「そ、そんな!」

 

ゲルマ「そう!その人物こそ今回の事件における真犯人だ!」

 

あかり「あれれ~、それって変じゃない?女の人は座っていれば痴漢されずに済んだかもしれないってことだよね?」

 

恭夜「どこかの名探偵みたいな喋り方だな」

 

隆太「すなわち被害者と加害者は立っていた?」

 

ゲルマ「結論は出たようだな。今回の事件は痴漢など起きてはいない。なぜなら被害者と加害者は恋人関係にあったからだ!」

 

恭夜「な、なんだってぇ!」

 

隆太「被告人、わざとらしいリアクションをしないで下さい」

 

あかり「へぇー、じゃあその二人が恋人だっていう証拠はあるの?ないよね」

 

ゲルマ「チッチッチ」

 

隆太「もったいぶらないで答えて下さい」

 

ゲルマ「思い出してもらいたい。事件当時の加害者の服装を」

 

あかり「服装?えー、思い出せないよぉ」

 

恭夜「赤い帽子に白い長袖。それと青いオーバーオールだっけ?」

 

隆太「良く覚えてましたね」

 

ゲルマ「問題は服そのものではない。色に注目してもらいたい」

 

あかり「色?信号……じゃないし」

 

隆太「配管工のおじさんでもなさそうですね」

 

恭夜「配管工?」

 

ゲルマ「ある国旗の配色になっているのだ」

 

あかり「国旗?」

 

隆太「見たことあるような……」

 

恭夜「わかった……」

 

ゲルマ「それでは被告人にお聞きしよう。この女は?」

 

恭夜「……オランダ(オラのだ)」

 

ゲルマ「もうお分かりだろう。加害者は服装で恋人関係をアピールしていたのだ」

 

隆太「くっ、なんというハチャメチャな推理!けど反論できない!」

 

ゲルマ「議論し尽くしたようだ。それでは裁判長、判決をお願いする」

 

あかり「裁判長いたんだ」

 

サリー『グーグー……はっ!あー、ゴホン!』

 

恭夜「今、寝てただろ」

 

サリー『最後に被告人、何か言いたい事はあるか?』

 

恭夜「やっぱり俺はやってない」

 

背景(B)「それでは謎かけで締めたいと思います。『証言に茶々を入れる』とかけまして」

 

あかり「『客が物を購入する』と解きまーす」

 

背景(A)「そ、その心は?」

 

ハルカ「どちらも」

 

背景(C)「商人から買いまぁす!」

 

恭夜「証人をからかうな!いい加減にしろ!」

 

ルナ『どうもありがとうございました!』


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