~地底都市コスモスクウェア・大通り~
サリー「道案内だけだと言ったが南部先生とやらはいつまでついてくる気だ?」
南部「所用を思い出しましてね。この先で教え子と落ち合う約束をしていたのですよ」
あかり「すっごい人だかりだね!喫茶店とかショッピングセンターもあるよ!」
ヤエ「生活必需品を揃えるのに必要な環境は整えられているのね」
サリー「この国の治安は良いのだろうか?」
南部「地上とさほど変わりませんが国家権力の方が強大でして――至るところにカメラがありますよね?」
あかり「町中監視カメラだらけだね」
ヤエ「監視社会ってわけね。互いに監視し合うことで犯罪の抑制に繋がると。でも、国家権力が強大ってことは政治腐敗もあるってことよね?」
南部「世の常ですと言いたいところですが、このコスモフィア王国の君主は三権分立の一部に組み込まれているのです。すなわち王権は司法権に絶大な影響力を及ぼしているのです」
あかり「サンケンブンリツって起立、礼、着席だっけ?」
ヤエ「三権分立は立法権、司法権、行政権のことよ」
サリー「互いに独立することで牽制しあい国権の暴走を抑止することが狙いだったはず」
南部「この国の政治体制をどう思われます?地上の人間から見れば疑念を抱いたとしても不思議ではないでしょう」
ヤエ「王権が司法権を握っているなら、立法権を担う代議士や行政権を行使する役人が気後れしてしまうのでは?」
あかり「サリーお姉ちゃん、どういう意味?」
サリー「王様が裁判官をやってしまえば、批評したり異議を述べる国民や学者がいなくなるのではないか?ということだ」
南部「司法権を王権が兼ねるのではあれば、立法権も行政権とそれ相応の人材を登用しなければなりません。そこで考えられた方策が国家最高職である宰相を行政権に据え置き、国民から選ばれた代議士の代表を立法権の長として任用するということなのです」
あかり「占い師さんはわかる?」
ヤエ「地上と大して変わらないのね。つまり宰相や代議士をそれぞれ行政権、立法権の長に据え置くことで王権と同等の権力を行使することができるというわけね」
サリー「でなければ国王の独断で法律を運用することになってしまうからな」
南部「この国は長い歴史を持っています。ですが、君主の存在が支持されたのはつい最近なのですよ。最近と言ってもお三方が生まれるより前なのですが……王権は人権を制約するほどの拘束力を持つに至らず、司法権を司ることでしか威厳を保つことが難しいという他ないのです」
ヤエ「国民主権を体現してるのなら問題ないような気もするわ」
サリー「外部から来た人間がとやかく言うのはおかしな話。ルールや決まりが守れぬと言うのなら出ていけばいいだけのことだ。国民からしたら目障り極まりない」
あかり「あ、あたしもそう思うよ!」
南部「――この先は王立図書館なのですが、規制線が張られていてこれ以上は進めないようですね」
あかり「事件でもあったのかな?」
サリー「ヤジウマどもが道を塞いでいるのか。暇な奴らだ」
ヤエ「カメラがあるんだったら犯人が捕まるのも時間の問題ね」
南部「少し寄り道をしたいのですが、お三方はどうするおつもりで?」
あかり「いろんなとこ見て回りたーい」
サリー「私たちは観光に来たわけでない。それにこの近くで事件が起きたとしたら犯人がまだ潜伏してるかもしれない」
ヤエ「それにプライベートの空間が皆無な町に留まりたくなんかないわ」
南部「これから事前の連絡をせずに知人と面会しようと思っています。実はドレスコードがあるのですが……まあ、そのままでもよろしいでしょう」
あかり「身だしなみならちゃんとしてるし大丈夫だよね」
サリー「見かけで判断する程度の人物なら、こっちから願い下げだ」
ヤエ(子供っぽい服装――武士のような髪型と刀――黒いローブをまとったネクロマンサー、私たちって何の一団かしら?)