~王の居城・謁見の間~
ハルカ「――これが恭夜さんと私に起きた出来事です」
王妃「辛かったでしょう……」
ヤエ「独房に入れられたのは冤罪ってことね」
あかり「文化祭でやった演劇が現実になっちゃうなんて……」
サリー「義賊なんかと絡むからそういう目にあうんだ」
王「アリーネの友人ならばどうにかしてやりたいのだが……」
南部「経緯が経緯だけにかなり厄介な事案ですね」
ハルカ「恭夜さんは私を助けてくれただけなんです!」
王妃「どうにかならないのでしょう?」
ヤエ「王女の誘拐監禁ってどのくらい重い罪に問われるのかしら?」
王「通常の誘拐であれば、被害者を誘拐した期間から勘案するのだが――」
南部「ここはこの南部が、ご説明致しましょう。王族が被害者の場合は一般の刑法は適用されないのです。つまり『特別法廷』で裁かれることになり、大抵の裁判では極刑を科されることになるでしょう」
あかり「サリーお姉ちゃん、キョクケイって何?」
サリー「コスモフィアに死刑制度があれば死刑になるということだ」
ハルカ「そ、そんなっ……!?」
あかり「この国に死刑ってあるの?」
王妃「死罪ならあります。でもあんまりよ……」
ヤエ「あまり聞きたくないけど死罪の執行方法はなんなのかしら?」
南部「死刑人の痛みと不安を和らげる配慮をしつつ、速やかにギロチンで断首されます。人づてに聞いた話では執行前に必ず鎮痛剤を打つみたいですよ」
王「未来ある青年を断頭台送りにするのは胸が痛む」
サリー「一つだけ恭夜を救う方法があるな」
王妃「教えて頂けます?」
ハルカ(サリーさんにとっても恭夜さんは特別な存在なはずなのに、どうしてこんなにも冷静でいられるのでしょうか?)
南部「コスモフィア王国の司法権は陛下の意思を介在させなければ、その意味を持ち得ないのです。この話は数時間前にしたので覚えてらっしゃいますね?」
あかり「え~と……王様が裁判官をやるってことだよね?」
王「言いたいことは分かるのだが、あまりにも不確定事項が多い。更に死罪を恣意的に回避した場合、司法権の存在を根本的に揺るがす事態になりかねん」
サリー「それならそれまでだ。陛下はいつも通り裁いてくれればいい。ダメなら私なりに恭夜を救い出す方法を考える」
ハルカ「わ、私もサリーさんを応援します!恭夜さんを見捨てることなんて出来ません!それに恭夜さんには何度も助けられた恩もありますから」
王妃「それならお母さんも応援しちゃうわよ!」
ヤエ「この親子には法律も積み上げた歴史も関係ないようね」
南部「傍観に徹するのは教え子に示しがつきませんね。南部真命の名に恥じぬよう一つ、策を講じたいのですがよろしいでしょうか?陛下」
王「南部先生の言葉なら耳を傾けないわけにはいかぬ。是非考えをお聞きしたい」
南部「差し支えなければその青年の裁判、この南部に弁護をさせてもらえないかと」
王「南部先生自身が法廷に立つと仰るなら、理由をお聞かせ願いたい」
南部「特別法廷では被告人の弁明の機会が著しく制限されております。
王「う~む……法務大臣に掛け合ってみよう。アリーネの為でもある。客人にも娘が世話になった恩もある。厚意に報いることが出来るよう、余も配下に命じて証拠と証人の調査をさせる」
ヤエ「――待って!」
あかり「急に大きな声出してどうしたの?」
サリー「恭夜が脱走でもしたのか?」
ヤエ「違うわ!独房の中にもう一人いるのよ!」
王妃「その方が義賊と呼ばれる方なのでしょうか?」
ヤエ「見た目は中性的だけど、たぶん男のようね」
南部「中性的に見え男性である?何か引っ掛かりますね。その男性は特徴的な身なりをしているのでしょうか?」
ヤエ「……特にないわ。どうしてそんなことを聞くのかしら?」
南部「いいえ、気になさらないで下さい……」
南部(とはいえやはり釈然としませんね。リッツ、テリア、アウスの動向も気になります。ここは一度調べてみる価値がありそうです)
南部「申し訳ありません。急な用事が出来ました。陛下、王妃、お先に失礼させて頂きます」
王「裁判の日程はおって連絡しよう」
サリー「私たちもここを出よう」
あかり「でも、今さらどこに泊まるの?」
王妃「それならこの城にある宿泊施設をご利用になってはいかが?」
ハルカ「まだゲルマさんたちと合流出来ていませんが……」
サリー「ならゲルマたちと合流した後、王妃の言葉に甘えるとしよう」