~コスモスクウェア中央刑務所・独房~
恭夜「うぅ……ハルカちゃん……」
テリア(命に別状はないみたいだけど熱が下がらない。それに悪夢にうなされてるようだ。でも、どうしてボクは恭夜と会ったばかりなのに罪を被るようなことをしたんだろう?それにどうしてボクと関わった人は傷ついてしまうんだ?)
恭夜「ここは?病院?」
テリア「目が覚めた?ここは独房だよ……ていっても二人で入ってるんだ」
恭夜「俺がハルカちゃんを傷つけたからか?」
テリア「恭夜はハルカを守ったんだ。けど、憲兵に暴徒と勘違いされて捕まったんだよ」
恭夜「ならテルはどうして……」
テリア「義賊としてのツケを払わされちゃったみたい。仕方ないよ。いつかはこうなると思ってたから」
恭夜「この部屋、すっごい狭い」
テリア「ごめん。ボクが余計なことしたから……」
恭夜「ち、違うよ!テルが悪いわけじゃ……でも、テルがそばにいてくれて少し安心した」
テリア「その理由、聞いてもいい?」
恭夜「地底国家とかいう聞いたことも見たこともない土地で心細かったから、テルやリッツ、アウスがいてくれて良かったって思ってたんだよ。それにこの町の人たちって優しくて憎めない人たちばかりで、上手く表現出来ないけど嬉しかったんだ」
テリア「ボクも地上に出たことなかったから、恭夜とハルカに冷たくしてしまったんだ。でも二人ともボクたちみたいに悪い人じゃなかったから安心したよ」
恭夜「テルたちは地上に出ないの?」
テリア「恭夜が連れてってくれるならね(ボクは何を言ってるんだ?)」
恭夜「そうだなぁ。俺の家族も紹介したいし」
テリア「恭夜の家族はどうしてるの?」
恭夜「家族っていっても、みんな血が繋がってないし一緒に暮らしてるってだけだから」
テリア「恭夜は好きな人とかいないの?(そんなこと聞いてどうする?)」
恭夜「……」
テリア「?」
刑務官「――こんなブタ箱でよくイチャイチャできるな。お前ら男同士のクセに」
テリア「ならもっと広い牢獄にぶちこめばいいだけだ」
恭夜「俺はこのままでもいいよ」
テリア「えっ!?」
刑務官「男好きだったのか誘拐犯め!」
恭夜「誘拐?何の話だ?」
テリア「恭夜はハルカを誘拐したわけじゃない!何かの間違いだ!直接本人にも聞いてくれ!」
恭夜「へ?俺がハルカちゃんを誘拐した?」
刑務官「しらばっくれても、コスモフィアの法務大臣が全て知っているんだからな」
テリア「もういい!これ以上ボクたちに構わないでくれ!恭夜の傷口が開いてしまう!」
刑務官「そうはいかない。お前たちに面会したがっている男がいるのだ――さっさと出ろ」
恭夜(最初からそう言えよ。テルがいつも以上に感情的になってるし、早く誤解を解いて外に出たいなぁ)
~面会室~
恭夜「初めまして……(誰だ?ていうか髪ながっ!)」
南部「どうも――おや?どうしてテリアがこのような場所に?(裁判を経ていないのにも関わらず刑務所に収用されている。テリアが肩身離さす持ち歩いていたペンダントを持っていない。不可解な点が散見されますが、いずれにせよ裏があることに間違いないようです)」
テリア「先生!?こ、これは……その……」
恭夜「テルが言ってた『先生』ってこの人か」
南部「まあ、いいでしょう。とりあえずお座りなさい」
テリア「ごめんなさい!先生に迷惑をかけるつもりなんて、これっぽっちもなかったんです!」
南部「このような不衛生な檻の中であなたの言い訳など聞きたくもありません。この南部の目的はただ一つ――あなたです。お名前をお聞きしても?」
恭夜「唯城恭夜です」
南部「唯城……?(過去に見た文献に似たような科学者の名前があったような気がしますが失念したようです)」
テリア(どういうこと?何故先生が初対面の恭夜に会いに来たんだ?)
恭夜「もしかして弁護士の人?俺ってどうなるんですか?」
南部「弁護士ではありませんが、あなたの弁護をさせて頂きたくためご挨拶に参りました」
恭夜「はぁ……」
テリア「恭夜は無実なんです!お願いします先生、ボクの代わりに恭夜を救って下さい!」
南部「百も承知です。あなたの弁護する以上最善は尽くします。ただし、その上であなたの置かれた状況を説明しなくてはなりません」
恭夜「前科はつくけど誘拐なら大したことないですよね?」
南部「残念ですが、ことはそう簡単にいかないのです」
テリア「ハルカがこの国の王女だからですか?」
南部「ご名答です。さすがは南部の教え子良くできましたね」
恭夜「ハルカちゃんが王女?そんなこと一言も言ってなかったけど」
南部「本人もご両親に会うまでは知る由もなかったのですよ。事情を知った陛下や王妃はあなたを救い出そうと尽力なさっていますが、複雑な事情が絡みあっているので中々ことが進まないのです」
テリア「どういうことですか?恭夜に厳しい刑が下るっていうんですか?」
南部「そもそもコスモフィアの王族が被害を受けた場合、条文には二つしか刑罰が明記されてないのですよ。そしてその刑罰とは『無罪』と――」
恭夜「『死刑』……とか?」
南部「はい」
テリア「で、でも先生は無罪を勝ち取れると思ったから……」
南部「当然まだ問題があります。それはあなたの釈明する権利が著しく制限されていることにあります」
恭夜「裁判になっても発言出来ないかもしれないってこと?」
南部「あなたの裁判は通常とは違い、検察側の強い意向が反映される特別法廷で行われます。故にあなたは不利な状況の中で自らの無実を証明しなければなりません」
テリア「無茶です!発言出来なかったら無実を証明するなんて不可能です!それに検察は証拠だって捏造するかもしれません!」
南部「こちらだってあなたが死に怯える姿を黙って見ているつもりはありません(いつになくテリアが感情的ですね。これはこれで新鮮で心地いいのですが)」
恭夜「頼れる人が先生しかいないんだったら俺の命、南部先生に預けるよ」
テリア(そんな簡単に決めちゃうの?ボクはこんな近くにいるのに何も出来ないなんて、このままじゃ昔みたいに大切な人がボクの前からいなくなってしまう……)
南部「劣勢を覆す逆転の一手なら提示しましょうか?」
恭夜「強がりじゃないの?」
テリア「何ですか!?ボクに出来ることなら何でもします!」
南部「司法取引ですよ。検察側から提案されましてね。あなた方のどちらか一方が姫君誘拐の罪を認めれば、他方を無条件で釈放するとの申し出です。要するにテリア、あなたの存在が法務大臣を妥協させたわけです」
テリア「罪を認めたら……どうなるんですか?」
恭夜「死刑じゃない?」
南部「フッフッフ……無論、無意味な裁判が開かれ無条件で死刑判決が下されますよ」