ハピネスチャージプリキュア 激獣拳使いの幼馴染み   作:ナツ・ドラグニル

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あけましておめでとうございます‼


今年も宜しくお願い致します!


まず始めに、1年間も投稿をお休みしてしまい申し訳ございません。


心身共に疲弊していた為に、お休みさせて頂いておりました。


これからは、『激獣拳使いの幼馴染』『ベストマッチな加速能力者』『LOVE TAIL』を随時投稿していきます。


それでは、作品をどうぞ


修行その5 この不安、どうすればいいの⁉

「お前と戦うのは俺だ!!俺と戦え!!」

 

 

暗い森の中で、対峙するゲキレッドと理央。

 

 

理央の後ろには、五毒拳の姿もある。

 

 

「はぁ――――!!!」

 

 

ゲキレッドは雄叫びを上げ、理央との距離を詰める。

 

 

「臨獣ライオン拳リンギ、剛勇吼波!!」

 

 

しかし、ゲキレッドの拳が届く前に、理央の攻撃が炸裂する。

 

 

「うわぁぁぁぁぁぁぁ!!?」

 

 

リンライオンに吹っ飛ばされたゲキレッドは、地面を転がって変身が解除される。

 

 

倒れる誠司の髪の毛をブラコが掴んで、無理やり立ち上がらせる。

 

 

次の瞬間、誠司の腹部にブラコの鋭い突きが炸裂する。

 

 

またしても吹っ飛ばされた先に、モリヤが先回りする。

 

 

地面を転がるも直ぐに起き上がり、態勢を立て直した誠司。

 

 

しかし、顔をモリヤに後ろ回し蹴りされ、マガにはラリアットを、そしてソリサの蹴りを立て続けに食らってしまう。

 

 

何度も地面を転がりやられっぱなしだった誠司だが、ここで反撃に出る。

 

 

「はぁっ!!」

 

 

直ぐに立ち上がり、カデムに向かって拳を振るう。

 

 

「あ...」

 

 

しかし、誠司の突きは簡単に受け止められてしまう。

 

 

「うっ...」

 

「トロ過ぎてあくびが出るっぜ」

 

 

カデムは受け止めた誠司の腕を捻って、誠司は痛みで動けなくなった。

 

 

「うりゃりゃりゃりゃりゃ!!!」

 

 

カデムの高速な突きを受け、誠司は後方へと吹っ飛んだ。

 

 

「お前など虫以下」

 

 

そう告げるカデムの後ろから、理央が前に出てくる。

 

 

「俺と戦おうなどと、2度と口にするな。お前など獣拳を真に極めた俺の...相手ではない」

 

 

近づいてくる理央に恐怖し、後ずさる誠司。

 

 

「ふぅぅぅぅっ!!」

 

「わぁっ!!?」

 

 

理央は臨気を高め、誠司に攻撃しようとする。

 

 

「だぁっ!!!」

 

 

理央から臨気で出来たライオンが飛び出し、誠司に襲い掛かる。

 

 

「うわぁぁぁぁぁぁ!!?」

 

 

 

 

 

 

そこで誠司は目を覚まし、ガバッと被っていた布団を剥いだ。

 

 

「はぁはぁはぁ...」

 

 

全身汗でびっちょりになり、呼吸も荒くなっている。

 

 

「はぁ......はぁ......夢か...」

 

 

荒くなっている呼吸を落ち着かせ、誠司はようやく夢であった事に気づいた。

 

 

「はぁ......」

 

 

急に不安が押し寄せ、深い息を吐く。

 

 

☆★☆★☆★

 

 

強風が吹き荒れ、落ち葉が舞い上がる。

 

 

「こうも風が強いと、儂のすっばらしい毛並みが乱れて困るぞい」

 

 

毛並みを整えながら、マスター・シャーフーが入室する。

 

 

入ってきてマスター・シャーフーがまず目に入ったのは、ロボタフ相手に修行するリンと、椅子に座り何処か深刻そうな顔をする誠司の姿だった。

 

 

「ん?誠司はどうしたんじゃ。浮かない顔をしているようじゃが」

 

「理央との戦い以来、悪夢に魘されているみたいで」

 

 

美希の話を聞いて、シャーフーが考え込む。

 

 

「ふむ、あの時はアドレナリンが多く分泌され恐怖を感じていなかったが、その後に身体に理央への反応が出たのじゃろう」

 

「反応鈍すぎ」

 

 

シャーフーの話を聞いていたリンが、呆れたように呟く。

 

 

シャーフーは誠司に近づき、語り掛ける。

 

 

「誠司、その不安を取り除くにはランから学ぶとよいぞ」

 

「ラン?」

 

 

そこでようやく、誠司はランの姿が無い事に気づいた。

 

 

「そういえば...ランは何をやっているんですか?」

 

「決まっておろうが、暮らしの中に修行ありじゃよ」

 

 

そう言って、シャーフーは誠司に箒を渡した。

 

 

☆★☆★☆★

 

 

シャーフーに教えられた神社の境内にある長い階段を、誠司は箒を担いで上がる。

 

 

階段を上がり切った所に、誠司はランの姿を見つけた。

 

 

「ラーン!!!」

 

 

大声で名前を呼んで駆け寄ろうとする誠司だったが、突如強風が吹いて落ち葉が舞い上がる。

 

 

眼を閉じて集中しているランの前にも、落ち葉が舞い上がる。

 

 

「根性~!!!」

 

 

カッと目を見開いたランは、舞い上がった落ち葉に目に見えない速度で無数の突きを放った。

 

 

「おぉ~!!」

 

 

目を疑う光景に、誠司は歓喜の声を上げる。

 

 

「ふう...」

 

 

突きを止めたランの手の中には、大量の落ち葉が握られていた。

 

 

「すげぇ!!すげぇ!!早いなラン!!シュバシュバって!!これも修行なのか」

 

 

余程興奮しているのか、誠司にしては珍しくテンションが上がっていた。

 

 

「うん」

 

 

そこに丁度良く、上から落ち葉が落ちてくる。

 

 

「おっ!!俺もやるぜ!!」

 

 

誠司が落ち葉を掴もうとするが、上手く掴めずに地面に落ちてしまう。

 

 

「あぁ~!?くそぉ!!」

 

 

悔しがる誠司を、ランは面白そうに見ていた。

 

 

「でも...こんな事してて不安な気持ちは無くなるのかな......」

 

「不安かぁ...」

 

 

その時、誠司の背中に冷たいものが走るような、ゾクッとする感覚を感じた。

 

 

「臨獣拳だ!!!」

 

 

☆★☆★☆★

 

 

ドガァァァアアアン!!!!

 

 

工場地帯で、大爆発が起こる。

 

 

『うわぁぁぁぁぁっ!!!』

 

『きゃあああああっ!!!』

 

 

逃げる作業員達を追いかけるように、歩くカデム。

 

 

「ケッ!!ノロマがもたもたしやがって!!」

 

 

歩くカデムの前を、大型のタンクローリーが走る。

 

 

「イライラしてくるっぜ!!!」

 

 

タンクローリーの側面から、無数の突きをカデムは放った。

 

 

突きを受けたタンクローリーは、爆発に包まれた。

 

 

「超高速で一秒間に百の突きを繰り出す、地獄の手数王。流石臨獣センチピード拳、カデムの拳は臨獣拳最速ね」

 

 

一部始終を見ていたメレが、カデムを評価する。

 

 

「もちろん、愛しの理央様を除いてだけど」

 

 

理央の事を思い、突如として乙女の顔に変わるメレ。

 

 

『うわぁぁぁぁぁ』

 

「へっへっへ、人間共の悲鳴、苦悶、絶望、もっと弾けて俺の力になりやがれ!」

 

 

人々が逃げ惑う姿を、眺めるメレだったが、気配を感じてそちらに目を向ける。

 

 

「臨獣殿!!」

 

「そこまでよ!!」

 

 

メレが目を向けると、そこに駆け付ける誠司達の姿があった。

 

 

「ゲキレンジャーか」

 

 

そこでようやく、カデムもゲキレンジャーの存在に気づいた。

 

 

「あいつ...」

 

 

カデムの姿を見て、昨夜見た悪夢がフラッシュバックする。

 

 

「誠司!!ぼうっとしないで!!!」

 

「行くわよ!!」

 

「お…おう」

 

 

リンとランに声を掛けられ、ようやく正気を取り戻す。

 

 

『たぎれ!!ケモノの力!!ビースト・オン!!』

 

 

ゲキスーツが瞬間的に装着され、誠司達はゲキレンジャーへと変身する。

 

 

「身体に漲る無限の力!!アンブレイカブル・ボディ!!ゲキレッド!!」

 

「日々是精進、心を磨く!!オネスト・ハート!!ゲキイエロー!!」

 

「技が彩る大輪の花!!ファンタスティック・テクニック!!ゲキブルー!!」

 

「燃え立つ激気は、正義の証!!」

 

『獣拳戦隊!!ゲキレンジャー!!』

 

 

名乗りを上げるゲキレンジャーだが、カデムは臆することなく拳を構える。

 

 

「お前達も俺の力になれ!!ぶちのめされて悲鳴を聞かせろ!!」

 

 

ゲキイエローとゲキブルーが同じように拳を構える中、ゲキレッドだけが呆然と突っ立っていた。

 

 

「夢の時みたいにやられたら...どうしよう...やられないように...どうしたらいいんだ?」

 

 

 

ゲキレッドは昨夜見た悪夢で喰らった、カデムの高速の突きを思い出して体を硬直させる。

 

 

「リンギ!!獣人邪心変!!」

 

 

獣人態へと変身したカデムが、棒立ちするゲキレッドに迫った。

 

 

「うりゃ‼うりゃ‼うりゃ‼うりゃ‼」

 

 

悲鳴を上げる間もなく、夢と同じように怒涛の突きを受けたゲキレッドは、後ろに吹っ飛んだ。

 

 

「あっ...」

 

「あっ!!」

 

 

ゲキイエローとゲキブルーも反応できず、ゲキレッドが吹っ飛ばされた事に短い悲鳴を上げる。

 

 

「うわっ!!」

 

 

ゴロゴロと地面を転がるゲキレッドの首を、ガシッとカデムが掴む。

 

 

「隙だらけなんだっよ‼臨獣センチピード拳‼害毒拳‼」

 

 

真っ先にゲキレッドを痛み付けて、止めを放とうとする。

 

 

「誠司‼」

 

 

ゲキブルーは柱を使って三角飛びの要領で跳び、横からゲキレッドを突き飛ばす。

 

 

「ぐあっ!!」

 

 

ゲキレッドを突き飛ばした事で、ゲキブルーの脚に命中する。

 

 

「ぐあぁぁぁぁぁっ!!?」

 

「リン!!?」

 

 

悲鳴を上げて脚を押さえるゲキブルーを、ゲキレッドが心配する。

 

 

痛さの余り、リンの変身が解けてしまう。

 

 

「リン!!」

 

 

脚を押さえるリンに、心配するゲキレッドとゲキイエローが駆け寄る。

 

 

「あ~らら、毒喰らっちゃった。すっごく腫れるのよねぇ~」

 

 

メレの言う通り、リンの脚が腫れ上がっていた。

 

 

「あぁぁぁぁ!!!」

 

 

余程痛いのか、リンは脚を押さえながら悶える事しか出来なかった。

 

 

「邪魔するからだっぜ!!!」

 

 

襲い掛かって来るカデムに、ゲキイエローが迎え撃つ。

 

 

「うおぉぉっ‼」

 

「はっ!!」

 

 

突きを出し合い、攻防を繰り広げるゲキイエローとカデム。

 

 

「はぁ!」

 

「きゃあ!」

 

 

しかし、カデムの突きがゲキイエローのお腹に命中し、後方へと吹き飛ぶ。

 

 

倉庫の中にまで吹き飛んだゲキイエローは、ゴロゴロと地面を転がる。

 

 

追い打ちを掛けるように蹴りを放つカデムだが、直ぐに体制を整えたゲキイエローはその蹴りを受け止める。

 

 

更に連続で蹴りを放つカデムだが、それを転がる事で回避するゲキイエロー。

 

 

互いが突きを出し合い、受け止める。

 

 

「俺のスピードについて来られるとはな」

 

「当然よ‼」

 

 

またも突きを出し合う2人だったが、ここでゲキイエローの突きが速かったのか、カデムに突きが直撃する。

 

 

もう一度突きを放つが、今度は同士討ちの結果となった。

 

 

「お互いスピード自慢って訳だ、俺の拳とお前の拳、どっちが速いかゲームといかないか?『千拳万打』でな」

 

 

カデムがそう提案すると、2人の間に1枚の石板が地面から出現する。

 

 

「千拳万打は古来より、速さ自慢の獣拳使いが己の誇りを賭けて挑んだ勝負」

 

「誇りを賭けて...」

 

 

メレの説明を聞き、ゲキイエローは自分の握った拳を見つめる。

 

 

「金剛石と同じ硬さを持つこの石板を、10秒間左右から同時に打ち合い、より多くの拳を叩き込んだ方が勝ちよ」

 

 

メレは石板の周りをぐるっと一周周りながら、説明を続ける。

 

 

「数で劣れば、石板は敗者側に倒れるという仕掛けよ」

 

「やるよな女‼早く答えろ‼今すぐにだ‼」

 

 

急かすように、カデムは捲し立てた。

 

 

「やっちまえラン‼スピードでランに勝てる奴はいねぇ‼」

 

 

リンの事を支えながら、ゲキレッドも応援する。

 

 

「良いわ」

 

 

覚悟を決め、ゲキイエローは石板の前に立つ。

 

 

「2人共、位置について」

 

 

メレの言葉で、カデムも石板の前に立つ。

 

 

「構え‼」

 

「はぁぁぁぁぁっ‼」

 

「はぁぁぁぁぁっ‼」

 

 

メレの合図で、2人は拳を構える。

 

 

2人の様子に、ゲキレッドもリンも息を飲む。

 

 

「いざ、千拳万打‼開始‼」

 

 

メレが扇を投げ、それが石板に刺さった瞬間にゲームは始まった。

 

 

「うりゃ‼うりゃ‼うりゃ‼うりゃ‼うりゃ!!!!」

 

 

カデムが高速の突きを放ち、その回数が既に500を超えている。

 

 

「いけいけ‼ラン‼」

 

 

カデムに負けじと、ゲキレッドも声援を送る。

 

 

「はぁぁぁぁぁっ‼」

 

 

お互いが高速の突きを放ち、メレの静止する声が響く。

 

 

「やめ‼」

 

 

その言葉を合図に、2人はピタッと拳を止めた。

 

 

ゲキレッドが、ゲキイエローの放った突きの数を読み上げる。

 

 

「ラン...999発」

 

「カデム、1000発」

 

 

メレがカデムの突き上げるのと同時に、石板がゲキイエローに向かって倒れる。

 

 

ゲキイエローは後ろにたじろぎ、その目の前に石板は倒れた。

 

 

「1発さ...」

 

「ランが...スピードで負けた...」

 

 

ゲキイエローの突きの数が、カデムの突きの数に届かなかった事にゲキレッドとリンは驚愕する。

 

 

「うわっはっはっは‼俺様最速‼俺様勝利‼見たか女‼」

 

 

勝負に勝った事に、興奮するカデム。

 

 

ゲキイエローは悔しそうに、下を俯いている。

 

 

「カデム‼調子に乗るんじゃない‼早く止めを刺すのよ」

 

 

浮かれるカデムに、メレが釘をさす。

 

 

「承知‼」

 

 

カデムが拳を構え、ゲキイエローも先程と同じように拳を構える。

 

 

しかし、そこに風が入り込んでくる。

 

 

その風の影響で、カデムのズタ袋がズレてしまう。

 

 

「うわぁぁぁぁっ!?」

 

「隙あり‼」

 

 

外れかけたズタ袋を押さえるカデムに、ゲキイエローはチャンスと突きを放った。

 

 

「ふっ‼」

 

「うわぁ‼」

 

 

ゲキイエローの突きがズタ袋に命中し、一部が破れて飛んでいく。

 

 

「俺の頭巾をよくも‼」

 

 

破れてしまった部分を、カデムは手で覆って隠す。

 

 

「この続きは‼夜明けの海辺でだ‼」

 

 

そう言い残し、カデムはその場から立ち去った。

 

 

「ちょっとカデム!?待ちなさいよ!!」

 

 

逃げたカデムを、メレが姿を消して追いかける。

 

 

「なんなんだよ...」

 

 

ゲキイエローが負けた事に、ゲキレッドは余計に不安が募り始めた。

 

 

☆★☆★☆★

 

 

「カデムの奴何!?あのズタ袋の中にどんな秘密があるっていうの⁉」

 

 

臨獣殿に戻ってきたメレは、カデムが逃げた事に腹を立てていた。

 

 

「まだ足りぬ」

 

 

玉座の間で、理央が三拳魔の腕輪を見つめながら呟く。

 

 

「理央様...私の愛が足りませんか?メレに出来る事があったら何でも仰ってくださいませ‼」

 

「俺は臨獣拳を極めたい‼その為にもっと拳魔の声が聴きたい‼」

 

 

理央はそう言うと、マントを翻し立ち上がる。

 

 

「それ以上、強くなるおつもりなんですね......素敵すぎ‼」

 

「だが...更なる拳魔の声を聴くには、真毒が必要だ」

 

「真毒?」

 

「言い伝え曰く、『真毒』とは五毒拳の何れか1人が持つ秘伝の臨技、究極の毒」

 

 

五毒拳の誰かがその事を隠している事に気づいたメレは、眼を見開いて怒りを露わにする。

 

 

「そんな物を理央様に差し上げようともせず、隠し持っている奴がいるなんて...どいつですか!?」

 

「分からん、真毒は臨獣殿の長にも伝えぬという秘中の秘。使い手は殺しても吐くまい」

 

「身内の中に、理央様に従わない奴がいるなんて」

 

 

メレは理央に向き直り、片膝をつく。

 

 

「分かりました、このメレが理央様の為に真毒の使い手を探し出して見せます‼」

 

 

☆★☆★☆★

 

 

治療室のベッドの上で、苦しみながら眠るリン。

 

 

その近くに、マスター・シャーフーと誠司が立つ。

 

 

「峠は越した、じゃがムカデの毒はやっかいでな...今夜は絶対安静じゃ」

 

 

マスター・シャーフーが出ていく中、誠司は不安そうにリンの事を見つめていた。

 

 

 

 

 

特別開発室に戻った誠司は、荒れるようにルームランナーの上を走った。

 

 

「どうしたの?」

 

 

大きいセイロを持って入室した美希が、誠司の異変に気付いて問いかける。

 

 

「駄目じゃないですか!!」

 

「駄目って?」

 

「ランですよ‼マスター・シャーフーがランを見ろって言ってたから見てましたけど、得意な筈のスピード勝負で負けちゃって...それを見たら前より更に不安になっちゃって......あー‼もう‼」

 

 

ヤケクソになった誠司は、更に走るスピードを速くする。

 

 

その話を、美希は持ってきたセイロから肉まんを取り出して食べながら聞いていた。

 

 

「う~ん、それは困ったわね。ねぇ誠司?その不安はねいつだって出てくるものなの。はい‼」

 

 

美希は誠司に言い聞かせながら、肉まんを手渡した。

 

 

「だから、それに捕らわれちゃ駄目。大事なのはそれとどう付き合っていくかって事。分かる?」

 

「言いたい事は分かりますけど...」

 

 

肉まんを頬張りながら、誠司は納得がいかない様子で呟いた。

 

 

「マスター・シャーフーは何て言ってたっけ?」

 

「ランから学べって」

 

「ランは今何処?」

 

「また修行してくるって、出て行きました」

 

「はい‼じゃあ君も行く」

 

 

美希はそう言って、扉を指差した。

 

 

☆★☆★☆★

 

 

真っ暗な神社の境内で、ランは先程と同じ修行を行っていた。

 

 

「はぁぁぁぁぁっ!!!」

 

 

高速の突きを放ち落ち葉を掴むランを、先程とは違って誠司はつまらなそうに見ていた。

 

 

一段落した所で、ラン達の所に朝日が差し込む。

 

 

「決戦の時間だわ」

 

 

カデムに指定された夜明けが来た事で、ランと誠司は指定された海辺へと向かった。

 

 

「朝まで葉っぱ掴みやってたけど、同じ事やってて良かったのか?」

 

 

誠司が質問するが、ランは反応しなかった。

 

 

「同じ事やってて、カデムに勝てるのか?」

 

「大丈夫」

 

 

再度誠司が問いかけると、ランは自信満々に答えた。

 

 

「ランは不安じゃないのか?」

 

 

不思議に思った誠司が、自分と同じじゃないのか質問する。

 

 

「不安ならいっぱいあるよ」

 

「そうなのか!?でも、落ち着いてるじゃん!!」

 

「別の大事な事に集中してるから、今の自分を信じて今やるべきことをやってるから」

 

「今やるべきこと?」

 

 

ランは足を止め、拳を構える。

 

 

「突きこそ基本‼一‼二‼こうしてると、不安が吹っ切れてくるの」

 

「けど......不安が吹っ切れても、勝てるかどうか分からないんだろ?勝てなかったらどうするんだ?」

 

 

溢れてくる疑問をぶつける誠司だが、2人の前に何処からか桜の花びらが風に乗って飛んでくる。

 

 

花びらが飛んで来た茂みの中を潜ると、そこには満開の桜が生えていた。

 

 

「うわー‼満開だ‼」

 

「一本だけ早咲き...せっかちね」

 

 

そこでランは、かつてマスター・シャーフーに言われた事を思い出す。

 

 

 

 

☆★☆★☆★

 

 

『せっかちじゃのう』

 

『私には、激獣拳ビーストアーツを習得する自信が...ありません...』

 

 

ランは自身のカンフーシャツを綺麗に畳み、その上にゲキチェンジャーと『辞表』と書かれた封筒と一緒にマスター・シャーフーに渡す。

 

 

『そう決めつけるのがせっかちだと言うんじゃ。大丈夫』

 

『え?』

 

『修行すれば、お主は絶対に早く...強くなる。信じなさい‼』

 

 

マスター・シャーフーはランの肩に手を置いて、説得する。

 

 

『大丈夫じゃよ』

 

『マスター・シャーフー......』

 

 

それからは、マスター・シャーフーの言われた通りにランは修行を続けた。

 

 

『一‼二‼一‼二‼一‼二‼』

 

『突きこそ基本』

 

『魂込めて‼』

 

『それが...お主が強くなる為の最良の方法じゃ』

 

 

その後も、ランは修行方法を変える事無く突きだけを鍛えてきた。

 

 

雨の日も、風の日も。

 

 

 

 

☆★☆★☆★

 

 

 

 

「すげぇ」

 

 

風に乗って、桜の花びらが舞い上がる。

 

 

その舞い上がった花びらに、ランが近づく。

 

 

「根性~‼はぁぁぁぁぁっ‼」

 

 

またも目には捉える事の出来ない速度で、桜の花びらを掴むラン。

 

 

突きを鍛え続けてきたランだからこそ出来る芸当である。

 

 

掴んだ桜の花びらを、上に放り投げる。

 

 

「大丈夫」

 

 

満面の笑みで、ランはそう答えるのであった。

 

 

☆★☆★☆★

 

 

早朝の海辺で、ランの事を待つカデムの姿があった。

 

 

「ん?来たか」

 

 

すると、カデムは落ち着いた様子で向かってくるランの姿を捉えた。

 

 

「待ちかねたぜ‼女‼お前をぶちのめしたいんだよ‼早く‼早く‼早く‼」

 

「残念だけど、その願い......叶えてあげられないわ‼」

 

「気も強ぇんだな、いいぜ最高だ‼獣心邪心変‼」

 

「ビースト・オン‼」

 

 

カデムは獣人態に、ランはゲキイエローへと変身する。

 

 

「潮が満ち、波がつま先を濡らす。それが勝負の時!」

 

「良いわ」

 

「ほわぁぁぁぁっ‼センチピード拳リンギ‼億万掌‼」

 

「チーター拳ゲキワザ‼打打弾‼」

 

 

拳を構え、潮が満ちるのを待つ2人。

 

 

その戦いを、誠司は黙って見ていた。

 

 

波が押し寄せ、つま先が濡れた瞬間に2人は動き出した。

 

 

「はぁぁぁぁぁぁっ‼」

 

「だりゃりゃりゃりゃりゃっ‼」

 

 

互いが相手の突きに自分の突きを、物凄いスピードでぶつける。

 

 

「行け‼ラン‼」

 

「はぁぁぁぁっ‼はぁっ‼」

 

 

誠司の声援のお陰か、ゲキイエローの突きがカデムに命中した。

 

 

「ぐあっ‼」

 

「ラン...」

 

 

ゲキイエローが勝負に勝った事に、誠司は信じられなかった。

 

 

「な、何故だ!?早いのは俺の筈!?」

 

「これを見て見なさい‼」

 

 

その時、毒で苦しんでいた筈のリンが現れる。

 

 

カデムの前に、前回の勝負『千拳万打』で使った石板が投げられる。

 

 

「リン...」

 

「リンー!!」

 

 

リンが現れた事に、ゲキイエローと誠司は驚く。

 

 

「裏返してみな」

 

「何ィ?」

 

 

カデムはリンの言う通り、石板を裏返した。

 

 

「ぬお!?これは⁉」

 

 

ひっくり返った石板には、カデムの全身像の形にそって拳の跡が着いていた。

 

 

「お前は漫然と打ち込んでいただけ、下手な鉄砲も数撃ちゃ当たるって奴よ。それに対して、ランは敵を想定して拳を撃ちこんでいた。それがどういう事か分かる?」

 

 

先程の戦いを、リンが解説する。

 

 

「カデム、お前の拳が外れた瞬間、ランの連打が決まった。ランの拳は早いだけじゃない、正確なのさ‼それがランの激獣拳使いとしての誇り。カデム‼お前は最初から負けていた‼」

 

「そうか、葉っぱ掴みは早いだけじゃなく正確に当てる為の修行だったのか‼」

 

 

リンの説明のお陰で、誠司はランの行っていた修行の意図に気づいた。

 

 

「すげぇなラン‼ランは初めから自分が勝つって分かってたんだな。だから大丈夫って言ってたんだな‼」

 

「信じてたから」

 

「信じてた?」

 

 

ランの言葉の意味が解らず、誠司は思わず言い返してしまう。

 

 

「うん、マスター・シャーフーの言葉を信じて、やるべき事をやってきた自分を信じた」

 

「不安な気持ちが気にならなくなるくらい、それだけやるべき事をやってきたんだな‼」

 

「ランが凄いのは、実はスピードじゃなくて根性なのよ」

 

 

リンはそう言うと笑みを浮かべ、思わず誠司も笑顔を返す。

 

 

「ぬわわわわっ‼」

 

 

雄叫びを上げ、ゴンッと石板を叩くカデム。

 

 

「いい気になるなよ‼」

 

 

負けた事が余程悔しかったのか、ゲキイエローに襲い掛かるカデム。

 

 

「ゲキトンファー・ロングバトン‼」

 

 

ロングバトンを地面に突き刺し、棒高跳びの要領でカデムの上を飛び越えて突きを躱すゲキイエロー。

 

 

追撃するカデムに、ゲキイエローは振り向きざまにロングバトンを振るう。

 

 

「チーター拳ゲキワザ‼ロングバトン‼伸伸打‼」

 

 

ロングバトンを最大限に伸ばして、先から激しい激気を放って遠くに離れたカデムの急所を貫く。

 

 

ゲキイエローがカデムに近づき、ロングバトンも元の長さに戻った。

 

 

「はっ‼」

 

 

突き刺さったロングバトンをそのままに、ゲキイエローは後方へとカデムを放り投げた。

 

 

「うわぁぁぁぁぁっ‼」

 

 

カデムはそのまま地面に落下し、砂浜を転がった。

 

 

「カデムが真毒の使い手なら、出すのは今」

 

 

その様子を、獣人化したメレが見ていた。

 

 

「屈辱‼激怒‼厳罰‼必定‼」

 

 

カデムはそう言うと、顔を覆っていたズタ袋を砂浜に叩きつける。

 

 

「うわぁ...」

 

 

ズタ袋の中には、顔の形に添って長い胴体を持ったムカデが這っていた。

 

 

カデムの顔を見た誠司は、気持ち悪そうに顔を顰めた。

 

 

「邪身豪天変‼」

 

 

巨大化するカデム。

 

 

「俺の顔を見た奴は死なねばならぬ‼」

 

「またでっかくなりやがった」

 

「大丈夫」

 

「ランがそう言うなら」

 

「勝つって事だな」

 

 

ゲキイエローの言葉に、リンと誠司が答える。

 

 

「うん、獣拳合体よ」

 

『ビースト・オン‼』

 

 

そこで、誠司とリンが変身する。

 

 

『ゲキワザ‼獣拳合体‼』

 

 

ゲキビーストを召喚し、ゲキトージャへと合体する。

 

 

巨大化したカデムと、ゲキトージャが対峙する。

 

 

「出ました‼ゲキトージャ‼」

 

『ゲキトージャ‼バーニングアップ‼』

 

「頑張れ‼僕らのゲキトージャ‼ブブブーン‼」

 

 

メレのお腹の中から出て来たのか、バエが解説を始める。

 

 

「うりゃっ‼」

 

「はぁっ‼」

 

「出た~両者高速拳法の応酬‼」

 

 

応酬の末、両者の拳が受け止められる。

 

 

「止まった‼動から静へ、力比べだー‼」

 

「この~」

 

 

両手を掴みあって、攻撃の機を伺うゲキトージャ。

 

 

『うわぁっ‼』

 

 

カデムの両手を掴んでいるにも拘らず、腹部に攻撃を受け怯んでしまうゲキトージャ。

 

 

「何が起きたの⁉」

 

「これぞセンチピード拳秘伝リンギ『長城鞭』」

 

 

ゲキイエローの疑問に答えたのは、ムカデの胴体のように頭部を伸ばしたカデムだった。

 

 

「うげっ!?頭が変な事になってる⁉」

 

 

カデムの秘伝リンギを目にしたゲキレッドは、気持ち悪そうに声を上げる。

 

 

「俺の真の姿を目に焼き付け、心に刻んでくたばれ‼」

 

 

ムカデの胴体のような頭部を、鞭の如くしならせてゲキトージャを攻撃する。

 

 

「何という不思議‼何という不気味‼カデムの頭が鞭のようになってゲキトージャを蹂躙しております‼」

 

「ふっ、面白い攻撃。でも...こんなものが真毒?」

 

 

カデムの攻撃で追い詰められるゲキトージャだったが、ムカデの胴体が身体に絡みついて身動きが取れなくなる。

 

 

「ぐぅぅぅぅ...」

 

『うぅぅぅぅ...』

 

 

締め付けられ、苦しむゲキレッド達。

 

 

「苦しめ‼くたばっちまえ‼」

 

「こんな事ぐらいで‼」

 

「私達トライアングルが‼」

 

「負ける筈がない‼」

 

『根性~!!!!!』

 

ゲキレッドに続いて、ゲキブルーとゲキイエローも気合を入れる。

 

 

「ぬわっ!!?」

 

 

ゲキトージャは、カデムが伸ばすムカデの胴体を掴み、上半身を回転させる。

 

 

「ゲキトージャ回転だ!!カデムを振り回す」

 

『はぁぁぁぁぁっ~~~~!!!はぁっ!!!』

 

 

ハンマー投げの要領で、カデムを投げ飛ばすゲキトージャ。

 

 

『ゲキトージャ‼ゲキワザ‼』

 

 

ここで一気に止めを刺す為に、ゲキワザを繰り出す。

 

 

「大‼」

 

「頑頑‼」

 

「拳‼」

 

 

ゲキトージャのゲキワザ『大頑頑拳』で上半身を回転させ、そのままカデムに突っ込む。

 

 

「出~た~‼大‼頑‼頑‼拳‼」

 

『ゲキ‼ゲキ‼ゲキ‼ゲキ‼ゲキ‼ゲキ‼ゲキ‼ゲキ‼』

 

 

ゲキワザを受けたカデムは、徐々に石化していく。

 

 

『獣拳は正義の拳‼』

 

「正しき者は‼」

 

「必ず‼」

 

「勝つ‼」

 

「うわぁぁぁぁっ‼」

 

 

石化したカデムに罅が入り、臨気が漏れて紫色の光が溢れ、粉々に木端微塵になる。

 

 

「五毒拳の一角、臨獣センチピード拳のカデムを見事倒しました‼」

 

『ゲキトージャ‼WIN‼』

 

「凄いぞ僕らのゲキトージャ‼ぶぶぶ~ん‼」

 

 

そこで、バエは違和感に気づいた。

 

 

「あれ?いつもならここで負け惜しみが出るんですが」

 

 

そう言って、メレの様子をバエは伺う。

 

 

「カデムは真毒使いではなかった......後の4人を探る必要があるわね」

 

 

そう言うと、メレは肩に止まっていたバエの頭を鷲掴みする。

 

 

「だだ...あだぁ...」

 

 

悲鳴を上げるバエを無視し、メレはその場を後にする。

 

 

「不安が消えた‼あんなに不安でいっぱいだったのに‼」

 

「それは、誠司がやるべき事をやったからよ」

 

 

嬉しそうに叫ぶゲキレッドの手を取って、ゲキイエローは大事な事を教える。

 

 

「そうだな‼」

 

 

その様子を、ゲキブルーも嬉しそうに見ていた。

 

 

☆★☆★☆★

 

 

「ふっ‼ふっ‼ふっ‼ふ‼」

 

 

先程見つけた桜の木の下で、修行を続けるラン。

 

 

そこに、マスター・シャーフーが姿を現す。

 

 

「精が出るのぅ、ラン」

 

「はい‼日々是精進ですから」

 

 

マスター・シャーフーの後ろから、誠司とリンも現れる。

 

 

「ラン、修行好きだな」

 

「ランの辞書に、休みっていう単語はないわね」

 

「修行は一日休むと自分で分かり、三日休むと周りに分かり、一週間休むと敵に負けるのじゃぞ」

 

 

マスター・シャーフーの言葉に、誠司は焦りを見せる。

 

 

「それは大変だ‼リン‼俺達も修行だ‼行くぞ‼」

 

「ちょっと!?」

 

 

誠司はリンの手を掴み、ランへと駆け寄る。

 

 

「ラン‼俺もその修行やるぜ‼ほらリンも」

 

「え、えぇ」

 

 

誠司とリンは、ランと同じように拳を構える。

 

 

「じゃあいくわよ‼魂込めて」

 

『1‼2‼1‼2‼』

 

 

3人は一緒に、突きを放つ修行を始めた。

 

 

「はぁ‼」

 

 

ランはいつも以上に気合を入れて、拳を突き出した。

 




はい‼如何だったでしょうか?


今回はランが主役の話になっておりました。


誠司の不安な心をどうするのか、修行する話でした。


その中で、理央に献上する為にメレが真毒の使い手を探していましたね


まぁ、もう少し先の話で誰が真毒の使い手か丸わかりですが...


ゲキレンジャーの話を知っている人には関係ないですが


それでは次回、修行その6もしくはベストマッチな加速能力者第18話でお会いしましょう

ゲキレンジャーの原作の話をハピネスチャージの1話より前に、加えようと思っています

  • ゲキレンジャー側での誠司の活躍が見たい!
  • 今のままで、充分
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