Girls and Panzer ParallelーーAnzio Storiesーー 作:黒野ハジメ
強いアンチョビが見たい。
ただそれだけのために書いています。
楽しんでいただけたらと思いますので、どうかよろしくお願いいたします。
美味しそうな匂いがあたりに漂う。通りがかる人が皆、匂いをたどって一つのテントにたどり着く。そこには、看板に『アンツィオの絶品イタリアン』と書かれ、コック服を着た少女たちが料理を作り、制服らしきものを来た少女たちが料理を運んでいる。そう、これはアンツィオ高校の戦車道チームが出している出店。高校生が食べたい料理ランキングNo.1を誇る、アンツィオ高校の戦車道チーム自慢の一つ。テントの前のテーブル席は満席で、今なおテントには行列。少女たちは忙しそうにしながら、なおも声かけを続けている。
「アンツィオ名物、鉄板ナポリタンはいかがですか~」
「おいしいパスタですよ~」
「あ、そこのお嬢さんどうですか?そこのカップルも・・・」
そんな様子を、テントの中から見ているのがこの戦車道チームの隊長、安斎千代美ことアンチョビである。彼女はテントの外のお客さんたちを見ながら、満足そうな顔をしている。
「ドゥーチェ、そろそろ試合が始まりそうですが・・・」
そこに声をかけてきたのが、アンチョビの副官ひな。
『試合』
そう、アンツィオ高校戦車道チームが出店を出している場所、それは・・・
「ああ、サンダースとヨーグルト学園の様子はどうだ?」
サンダース大学付属高校とヨーグルト学園の練習試合会場だった。
『サンダース大学付属高校』
高校戦車道4強の一角と呼ばれ、保有戦車、戦車数、人員数とトップクラスを誇る学校である。アメリカ戦車を有し、優勢火力を活かした戦術を得意としている。
『ヨーグルト学園』
目立った活躍はないものの、安定した戦車戦を繰り広げる。
「お互い集中しているようですが、サンダースが相手とあってヨーグルト学園側には少し緊張が見られます」
先ほどまで両校の様子を見ていたひなは、ヨーグルト学園側の緊張を見抜いた。相手の様子をよく観察し、隙を突く。アンチョビが教えた戦術論の一つ、『観察』である。
「そうか。となればひな、この試合をどう見る?」
アンチョビからの問いかけに少し考えるそぶりを見せ、すぐに考えをまとめる。
「おそらく、サンダースが優勢火力を活かして正面から激突。緊張のあるヨーグルト学園が対応に遅れ、正面からの戦闘を余儀なくされ、そのまま火力で押されるかと」
「うむ。ではひな、お前ならヨーグルト学園側の隊長として考えたとき、どういう作戦を取る?」
「早めに移動し、マップ北側のB4あたりで待ち伏せします。あそこなら正面でのぶつかり合いでも、有利に立てますから。そこに何両かを東側、C10あたりから奇襲させれば、死角からの攻撃となって相手の連携を乱せるかと」
「Bravo(すばらしい)、良い考えだ。さて、私は試合を見てくるとしよう。
ここは任せても良いか?」
「はいドゥーチェ。お任せください」
「よし、頼んだ」
簡単な問答ではあったが、それだけでひなの優秀さが伝わってくる。相手を観察し、動きを読み、先手を取る。アンチョビの戦術の基本であり、アンツィオのメンバー全員が教えを受けている。・・・が、実際にそれをできるのはひなと、もう一人の副官だけである。もう一人の副官はできるとは言い難いが
「あ、ドゥーチェ。サンダースのケイさんが、試合が終わったら挨拶をしたいと言っていましたが」
「分かった。まあ、試合が終わったらこのテントに来るだろう。ありがとう、ひな」
ーーーー
テントを出て試合が見やすい場所を探すアンチョビ。やっと見つけた場所には一人、先客がいた。
「あら、お店は良いんですの?」
聖グロリアーナ女学院の隊長、ダージリンが椅子に座り、傘を差し優雅にお茶を飲んでいる。傍には、お付きであるオレンジペコが立っている。
『聖グロリアーナ女学院』
サンダースと同じく、4強の一角。イギリス戦車を主とし、対応力の高いチームだ。いかなる時も優雅に』、と常に落ち着いた戦いをする。
「それなら副官に任せた。だから安心して試合が見れる」
「優秀な副官をもって羨ましいですわ」
言葉にはしていないが、「下さいな」って言ってる気配を感じるアンチョビ。「あげるつもりはないからな」と返して隣に座る。
「それで、なんで聖グロの、それも隊長のお前がここに?」
当然の疑問。その疑問に答えるかのように、お茶を飲んでいるカップを口から離す。
「サンダースの試合ともなれば、見に来るのは当然ですわ。それに、あなたたちが出店すると聞きましたので。・・・ところで、こんな格言をご存知かしら。『明日死ぬかのように生きよ。永遠に生きるかのように学べ。』」
「インドの宗教家、ガンジーの言葉ですね」
ダージリンの突然の格言に、オレンジペコの補足が入る。
「なるほど、何があるか分からないから今のうちで集められる情報は集めてしまえと。そんでお前はうちの料理を食べに来ただけと」
「あら、戦車道をやっている高校生ならあなた方の料理を食べないという選択肢はありませんわ」
「そう言ってもらえると光栄だよ」
半ば呆れつつも、自分たちの料理を褒められることはうれしいアンチョビ。と、ここでフィールドに動きがあったようだ。
「試合が始まるか」
「そうですわね。ところで、あなたはどちらが勝つとお思いで?」
「それさっき副官に聞いたからパスで」
「あら、つれないですわね」
軽いやり取りを終え、お互いフィールドに目を向ける。
「こんな格言を「試合始まるから後で聞いてやる」・・・」
ダージリンの格言を流しつつ、アンチョビは少しでも情報を集めようとポケットからメモ帳とペンを取り出し試合の行く末を見るのだった。