Girls and Panzer ParallelーーAnzio Storiesーー 作:黒野ハジメ
ですが、頑張って投稿します。
試合は終始サンダースのペースで進んでいた。ひなの予想通り、ヨーグルト学園の出足が遅れて正面からの激突となった。地形的には五分五分。そうなると火力的に優勢なサンダースが圧倒的に有利。1両、また1両と落とされていく。
「勝負は決まったかな」
「『どうにも乗り越えられない障害にぶつかった時は、頑固さほど役に立たないものはない。』ヨーグルト学園は重戦車を盾に迎え撃っていますが・・・」
「フランスの作家、ボーヴォワールですね。・・・いくら重戦車を盾にしても、盾が貫かれてますね」
アンチョビがぽつりとこぼすと、ダージリンが格言を交えつつ戦況を語り、オレンジペコが補足する。3人の言う通り、もはや試合は決まったも同然だった。ヨーグルト学園の攻撃は多少通ってはいるものの、逆転につなげられるほどの威力はなくやられるがままである。
「しかしサンダースは、去年と比べるとより戦い方に深みを増しているというか、戦術面がしっかりしている」
「去年までは、火力で優勢を取れればそのまま押し続ける戦い方でしたが、今日の試合を見る限りは火力で優勢を取りつつ、相手の逃げ場を無くすかのように動いていますわね」
「そうなんですか?私にはまだイマイチ・・・」
冷静に分析を続けるアンチョビとダージリンだが、オレンジペコは二人についていけていなかった。
「ペコは去年までのサンダースを映像でしか見たことがないんですもの。仕方ありませんわ」
「これは実際に見てみないと分からないだろうな。去年までなら、サンダースは優勢となれば近い車両から少しづつ減らしていた。だが今回の試合を見る限り、近い車両を狙いつつも散発的に別の車両も狙っている。たまたま狙っているように見えるが、散発している弾はすべて隙を見せた車両を狙っている。こうなればヨーグルト学園側は下手に動けないだろう」
「なるほど・・・」
ダージリンがフォローしつつ、アンチョビが説明する。そうして、ヨーグルト学園の最後の1両が撃破され、試合はサンダースの勝利で終わった。
「さて、私はテントに戻って手伝いをしてくる。暇があればうちに食べに来てくれ。少しはサービスしてやるよ」
と言って立ち上がるアンチョビ。
「あら、少し前にも言ったように、あなた方の料理を食べないわけにはいかないわ。もちろん行かせてもらうわ」
少し目が輝いているような気がしなくもないダージリン。隣でオレンジペコが少し呆れ顔だ。
「まあ、来たなら声をかけてくれ。
それじゃ」
軽く手を振ってその場を後にするアンチョビ。その思考はすでに切り替わり、サンダースともし戦った場合の想定を頭の中で描いていた。気づいたころには、アンチョビはテントに戻っていた。
「少し考えすぎたか。さて・・・」
「あ、姐さん見つけたっス!!」
テントの中から、ショートカットの元気な少女が出てくる。彼女はペパロニ。もう一人の副官だ。
「どこいってたんすか?」
「試合を見にな。どうだ、何も問題はなかったか?」
「問題なかったっス」とペパロニは答え、アンチョビの手を掴む。そしてそのままアンチョビを引っ張ってどこかに行こうとする。
「まてまてまて、どこに行くつもりだお前は!?」
「決まってるっス!!サンダースとヨーグルト学園を呼んで宴会っス!!」
元気よく答えるペパロニだが、アンチョビは額に手を当てる。
「あほか、昨日と出発前に言っただろ!?今日は会場が16時までしか使えないから宴会は無理だって!!」
「あれ、そうだっけ?まあ、少しくらい良いじゃないっすか!」
「良くないわ!!まったく・・・。ほら、宴会は無理だけど出店はあと1時間くらいはできるから呼び込みでもして来い」
「了解っス」
そのままどこかへ走っていくペパロニ。
(あいつ、どこに行けばいいかわかってるのか?)
ノリと勢いで行動するペパロニの考えは、アンチョビでも理解できないところがあるのでペパロニの行動に対して特に強く咎めるようなことはしない。というより、その行動に助けられたことも幾分かあるため、度が過ぎなければ問題はないと考えるアンチョビ。
「さて、ケイさんがそろそろ来そう・・・というかもう来てるな」
準備に移ろうとしたが、その視界にケイの姿が映る。後ろに2人ほど連れがいるが、副官だろうか。そのまま目があい、ケイは手を振りながら近づいてきた。
「やっほ~、アンチョビ!繁盛してる?」
「ぼちぼちだな。それより試合見てたけど、さすがだな」
ケイは、後ろにいた2人のうち、一人を呼ぶ。
「今回の作戦はこのアリサが考えたのよ!Very Goodな作戦だったでしょ?」
アリサと呼ばれた小柄な少女は、緊張しているのか少し硬いお辞儀をした。
「へ~、優秀な参謀ってところか。サンダースのスタイルを崩さず、より昇華させたのは誰でもできることじゃない」
アンチョビに褒められたアリサは照れながら「ありがとうございます。」と返す。アリサのお礼を受け取ったアンチョビは、その目線をもう一人に移す。
「それで、散発的に相手を撃破していた狙撃手がそちらかい?」
「さすがアンチョビ。気づいていたのね」
驚いた顔をするのはアリサともう一人。ケイはさすがといった様子でアンチョビに感心していた。
「こっちは副隊長のナオミよ。うちのNo1狙撃手ね」
「ふむ、そういえば私の自己紹介がまだだったな。私はアンツィオ高校の隊長、アンチョビだ」
アンチョビはまずアリサに握手を求める。それにアリサが答え、手を握ると同時にアンチョビは手を引き寄せる。
「え、っちょ!?」
「イタリア式挨拶だ」
お互いのほほを右、左と交互に摺り寄せる。アリサは突然のことに驚き、固まった。
「さて、君も」
アリサとの挨拶の次は、ナオミとも同じように挨拶をする。アリサとのやりとりを見ているので、アリサのような動揺は見えない。
「ねえアンチョビ、私にはしてくれないのかしら?」
ナオミとの挨拶が終わると同時にケイが 私にも と手を広げて待っていた。
「ケイさんとは前にやったと思うんだけど・・・」
「いいじゃない別に、挨拶なんだから!」
さあ、早く と言わんばかりのケイ。仕方なく答えるアンチョビ。
「それでケイさん、うちの料理はもう食べた?」
「ノー、まだよ!」
「それなら今から用意するから待っててくれ!サービスでただにしとくから」
「Oh!!、サンキューアンチョビ」
「できるまでは、空いてる席に・・・ってないか。それじゃ、テントの中の席で待っててもらえるか?」
「オーケー、それじゃナオミ、アリサ、座って待ってましょ」
ケイたちをテントの中の席に案内し、そのまま調理場に向かうアンチョビ。調理場に着いたら、そのまま準備をして料理を始める。と、
「アンチョビさんはいるかしら?」
聞こえてきたのはダージリンの声。どうやら宣言通り食べに来たらしい。アンチョビはメンバーの一人を捕まえ、ダージリンたちをケイのところへ案内するように指示をだす。その娘は元気よく返事をして、ダージリンのところへ行った。そして少し時間が経ち、料理も完成する。完成したのはアンツィオ名物鉄板ナポリタン5つ。
「おまたせ~、アンツィオ名物鉄板ナポリタンだ!」
ダージリンとオレンジペコを加えた席に、一つずつナポリタンを置いていく。美味しそうな匂いに、皆早く食べたそうな顔をしている。訂正、ダージリンはもう食べていた。
「さすがアンチョビさん、とっても美味しいわ」
まずは一口食べてから感想を言うダージリン。そのあと無言で食べ進めている。他のメンバーも、口々に美味しいと言いながら食べていた。アンチョビはその様子を楽しそうに見つめているのだった。