そして彼は   作:Glue

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八幡sideの続き



6話

「……」

三浦から受け取ったボイスレコーダーを俺は聞いてしまった。そして思い出した。あいつらが病室に来た時のことを。 いつのまにか寝てた、なんてことはなかった。

「ごめんヒキオ。まさかあの時の記憶が無かったなんて…。わかってたならもっと別のやり方があったかも知れないのに…。ほんとごめん…」

三浦が泣きながら謝罪をしている。だが、三浦の言葉なんてほとんど耳に入っていなかった。 あいつらが俺をどう思っていたのか、それがはっきり分かった。

「…は、はは」

「ヒキオ?ねぇ!ヒキオ!しっかりしてよ!」

俺は狂った様に見えただろうか?いや、もう狂ってたのかもしれない。乾いた笑いが止まらなくて思わず三浦に問いかけた。

「なぁ、お前らから見て俺はどう見えた?さぞ滑稽だっただろ?俺が、俺なんかがあいつらと一緒に居て良い筈がなかったんだ。

"身の程知らず"

過去に雪ノ下や由比ヶ浜と仲良くしていると噂が流れた時、誰かが言った言葉だ。 まさにその通りだったんだよ。俺なんて所詮あいつらの言う様にただの"備品"だったんだ。もう勘違いはしないつもりだったんだが、つい願ってしまったんだ。あの2人となら、あの空間は、俺の求めた『本物』になるんじゃないかって。それがこのザマだ。」

「ヒキオ…」

ああ、そうだ。今まで何で冗談を言い合ってるなんて思い込んでたんだ、雪ノ下と由比ヶ浜の暴言、アレは冗談でも何でもなく本音だったんだ。……体も重く感じる。もう、本当に

「疲れたな」

ボソッと呟いた声に三浦が反応した。

「ヒキオ、ごめんね。いつもあんたに迷惑かけて。ほんとごめんね。」

そう言いながら三浦は俺を抱きしめた。

「あーし達ずっとあんたら、いや、ヒキオに守ってもらってたんだね。テニスの時は結衣があーし達と仲違いにならないようにしてくれたし、チェーンメールも犯人探さないでグループ守ってくれた。夏のボランティアだって鶴見って子も助けてたし、文化祭だってあんたは悪く言われてるけど、そのおかげで相模の失態は誰も咎めない。あの相模ですら助けてた。」

三浦の言葉に俺は反論しようとしたが

「今回だってそう。あんたは自分を犠牲にしてあーし達のグループを守ってくれた。確かに依頼をこなしただけかもしれない。ヒキオからしてみれば、アレは犠牲じゃなくてただ効率の良い方法をとっただけだって言うかも知れない。でも、あーし達はそれで何度も助けられた。その裏で依頼を達成する度にあんたは傷ついてた。それに気付けなくて本当にごめん。ヒキオのやり方が間違ってるなんてそんなことは言わない。でも、少なくともあーしは頼みごとをした相手がそれを解決するためにボロボロになってるのを見て何も言わないほど薄情な人間じゃない。」

三浦は俺の目を見て話を続ける。 俺は、その目を逸すことが出来なかった。

「ボロボロになんて「ならあんたはなんでここにいるんだし」…は?」

「ボロボロになんてなってないって言うなら、なんで倒れて病院にいんの?ヒキオ、あんたは自分では傷ついてなんかいないって思ってるかもしれない。でもね、心はちゃんと傷ついてるんだよ。先生も言ってたでしょ?心からくる精神的なもので倒れたって。たまにはさ、吐き出しなよ。今回だけならあーしの胸、かしてやるし。」

微笑みながら、俺の頭を撫でながらの三浦の言葉に、俺は…

「うっ、うぐっ、うあぁぁぁぁあぁああ!」

三浦に抱きついて泣き出してしまった。

「うんうん、良いんだよ、大変だったよね、ほんとごめんね。ヒキオ。」

まるで子どもをあやすように背中をポンポンされ、頭を撫でられ、そのまま俺は泣き疲れて眠ってしまった。

 

 

「あんたはあーしが守る。もう、結衣達とは一緒に居させない。あーしが、あーしが守らないと。」

俺の泣き疲れて寝ている姿を見て三浦の母性本能がくすぐられたらしく、この辺りから若干おかしくなり始めたのは誰もまだ知らない




八幡に限らず人の泣き方なんてわからないから変な感じになった

おかしな点などがありましたら修正を入れていこうと思います

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