カルデア聖杯大戦   作:blackclow

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壊れる日常

 そこに男はいた。

 

 そこにそれはあった。

 

 それは万能の願望機だった。それもユグドミレニアの聖杯大戦で使用された大聖杯。

しかしこの表現にはすこし語弊がある。正確に言うならば、ユグドミレニアの聖杯大戦で使用される”はず”だった大聖杯。

そう、この世界ではユグドミレニアの手に渡らず、

 

「ククク…これさえあれば俺の夢は現実のものとなる!!!」

 

 男は不敵に笑い、そして手を伸ばす、人の手では届き得ない軌跡をその手で叶えるために。

 

 

 

                 ---

 

 

 今日もこのカルデアはせわしなく動く。

 

「立花ちゃん!大変だ!新たな特異点が発見された!!場所は…むむ?反応が少しおかしいな。」

 

 カルデア内での指揮官であるロマンの煮え切らない態度に指令室はざわつき始める。

 遅れてやってきたマシュが口を開く。

 

「先輩、ドクター、皆さん、おはようございます。そして遅れてすみません。ダヴィンチちゃんに呼び出されていたもので…なにやら騒がしいようですがどうかされたのですか?」

 

 ダヴィンチという言葉を聞いて思い出したかのようにダヴィンチが口を開いた。

 

「そうだ!!ダヴィンチ!!君のほうでもこの特異点は発見しているのだろう?ただ座標がどうもはっきりしない。これはどういう事態か調べがつくかい?」

 

「はいはーい、工房から通信で失礼するよ。本当なら話をしたり、ロマンをいじったりしたいところだが、早速だけど本題に入らせてもらおう。ロマンの言う通り新たな特異点が発見された。しかし、座標がはっきりとしない。なのですこし別の方法で調べたところ、座これは確かに特異点ではあるがとても小さな揺らぎで大きく人理には影響しないことが確認された。だから放置してもかまわないが…立花ちゃん、どうしたい?」

 

 私が答えようとしたとき、唐突にさらなる通信がつながった。

 映し出されたのは馬マスクを被った(頭の狂ったような)人物である。

 

「やあ、カルデアの諸君、新たな特異点の発見で戸惑っているようだね。しかし、それと同時にこれが魔術王の仕業ではないことにも気付いている。さすがは天才レオナルドダヴィンチだ。私がこうして通信を送っている理由はほかでもない私がこの特異点をつくりあげたからだ。」

 

 中性的だがよく聞いてみると男の声であるが魔術師にとって声を変えるのは造作もない。性別も顔もわからない相手に対して不快感を覚える。

 私は彼が話しているのを遮り、声を荒げる。

 

「目的は何だ!!なんで人理を破壊しようとする!!?」

 

 彼はあくまでも落ち着いた声で話を続けた。

 

「落ち着いてくれたまえ。第一まだ私が話している途中ではないか。私の目的は人理を破壊することではない。君たちのほうでは観測できていないだろうがその証拠に人理を書き換えてはいないのだよ。私が作ったものはいわばハロウィンのエリザベートがやったような人理には全く影響のないとくいてんだ。私が特異点を作り、カルデアに通信を割り込ませてまでやりたかった目的はただ一つ、カルデア聖杯大戦の開催だ。この世界には並行世界、パラレルワールドが存在している。私もこの世界とは別の世界の住人だ。聖杯の力を使い、こうやって並行世界に干渉しているのだよ。私は並行世界のマスター同士の聖杯戦争がみたいのだよ。人類史最後のマスターの争いが。」

 

 ここで工房から移動してきたダヴィンチちゃんが口をはさんだ。

 

「ちょっと質問いいかな。君の言わんとすることは理解したし、目的も共感は全くできないがしたいことも理解できた。聖杯による権能となると抗うこともできないのだろう。ただこちらとしても立花ちゃんは最後のマスターだ。失うわけにはいかない。そこでひとつだけ契約してほしい。セルフギアスクロールを使えとは言わない。ただ、マスターを殺さない。その条件だけは守ってほしい。」

 

 彼は不敵に笑い、そして答える。

 

「私個人としてそれは確約しかねる。あくまでも私が行うのは聖杯戦争、聖杯戦争の暗黙のルールとしてサーヴァントを倒すよりマスターを殺すほうが易いからな。」

 

「それじゃ…」

 

「まあ、絶望するにはまだ早いよ。私それが並行世界で私本来の世界とは関係ないとしてもマスターがやられてしまうのは私の望むところではない。わかっているとは思うが並行世界のマスターにも連絡している。幸運に思うんだな、そちらのダヴィンチも同じことを言っていた。」

 

 男は続ける。

 

「それでは…カルデア聖杯大戦とでも命名しようか。ここにカルデア聖杯大戦を開催する。」

 

男がそう宣言すると同時に私はレイシフトの時と同じような、意識が別空間に飛ばされるような感覚を味わう。

唯一いつもと違うのは、肉体が伴って意識だけでなく体ごと飛ばされる感覚も味わったことだ。

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