犬山さんちのハゴロモギツネ   作:ちゅーに菌

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どうもちゅーに菌or病魔です。

久し振りの性転換小説と書いたもののそれを主体でハーメルンに投稿したものでは小説をハーメルンに来てからは書いた事が無いので、むしろコイツ性転換小説書くのかよ……ぐらいに思われているかもしれないですが、作者的にとても好物です。

ちなみに今回この小説が出来た経緯は

ゲゲゲの鬼太郎を見る→まなちゃんと猫娘かわいい→ハーメルンで小説読もう→さっぱりねぇ!→読み専だから書くしかねぇ!(矛盾)→鬼太郎のキャラはヒロインじゃなくて見て愛でるものだよなぁ…?(強要)→ならヤれないように主人公を去勢してしまおう(性転換主人公)→なんか強くて良さそうなのいないかなぁ…(RPGアツマールの広告が流れてくる)→あれ、こんなんあったんだ→うわ、RPGアツマールの奴の黒先輩と黒屋敷の闇に迷わない、黒先輩に声付いてるやんけ!→~セクハラ堪能中~↓


そうだ、羽衣狐にしよう(集中線)


といった具合に完成しました。まあ、暇潰し程度に読んでください。まだ、ゲゲゲ鬼太郎が3話なのでゆるゆる更新します。ではどうぞ。





羽衣狐(まだ一尾)

 

 魅入られるという言葉を知っているだろうか? あるいは妖怪という言葉でもよい。

 

 

 魅入られるとは霊的な存在が人などに何らかの影響を与えて異常な状態にすること。或いはあるものに対して魅力を感じ、それを熱心に行うこと。相変わらず日本語は難しい事に異なる意味に同じ漢字を当てるのである。

 

 しかし、この意味に関しては非常に似通ったものと言えるだろう。熱心に行うという事は回りから見れば、霊的な存在に取り憑かれているように見えたという事だ。つまりは霊や悪魔等というモノは人間が人間に恐怖するあまりに作り出された偶像に過ぎないとも言えよう。

 

 そして、妖怪とは日本で伝承される民間信仰において、人間の理解を超える奇怪で異常な現象や、あるいはそれらを起こす、不可思議な力を持つ理解の及ばない"闇"そのもののことだ。

 

 この場合の闇とは単に暗黒を差す言葉ではない。人間にとっての闇、すなわち人間の理解の及ばない超自然的怪異の事である。故に古来から人間はそれらを妖怪と名付け畏れることで自らの身の丈を知ったり、子に対しての戒めとしたりしたのだろう。 

 

 例えば座敷わらしはレビー小体型認知症の幻覚であるという事もある。案外怪異と言う存在の答えはそんな簡素で夢の無いものなのだろう。

 

 まあ、このように下らない事を考える程度に俺は偏屈な人間であるため、目で見えるものしか信じない質だ。

 

 だがしかし……だ。

 

 俺は静かに揺れる月夜の水面を覗き込み、それに映るモノをよく見た。

 

 そこには3m程の体躯で水面を覗き込むあり得ないほど巨大な狐が何やら目を細めて考え事をしているように見えた。正にファンタジー、正に妖怪だろう。いや、現代ならばUMAにでも認定されていることだろう。

 

 さて今更な考え事はこの辺りにするとしようか。水面の狐は細めていた目を開くと大きな溜め息を吐いたように見えた。

 

 未だに信じ切れないが、この身体が現代で少し偏屈なだけのただの男だった俺の身体なのである。最初は畜生道にでも落ちたのかと思ったが、そうではなく、今の私は妖怪で妖狐という種族らしい。後、雌の身体だったりするが、狐の化け物という前提の前では最早些細なことだろう。

 

 ちなみに俺の名は"羽衣(はごろも)"と言う。とんだDQNネームである。

 

 この妙ちくりんな名前は別に俺が好きで名乗っているのではなく、俺の一族の名付けが珍妙なのであり、何故か服の種類や布の種類等の毛糸製品に纏わる名前を付けるのである。故に羽衣らしい。まあ、絹とか木綿とかの名前にされなかっただけマシというモノだろう。ちなみに我が母の名は生絲である。狐なのに原料虫じゃねーか等と失礼なことを考えたが口に出したことは終ぞなかったな。後、幼名は"葛の葉"だったがこっちはどうでもいいか。

 

 母曰く妖狐は妖力という力のとても強い部類の妖怪で人喰いの妖怪だそうな。まあ、俺は生まれてこの方、1度も人間を食べた事が無いので後者は知らんがな。

 

 最も母に妖術などという非科学的を飛び越えた何かを教わっていたのも今は昔。つい50年程前の話だがな。妖怪になったことで寿命という概念を気にしなくてよくなったことは喜ばしいことと言えばそうかもしれない。

 

 それと身体の次に決定的に違うことは時代だろう。俺はスマートフォンが普及する若干前ぐらいでガラケー全盛期に学生をしていた世代の男だったのだが、そういう次元の話ではなく、どうやらこの時代は現代から1000年以上前の時代らしい。

 

 近所に住む妖怪に対してや、人間に化けて人間に対して聞き込みをしてみれば京を中心に日本が回っており、京妖怪というものが今の日本でブイブイ言わせているらしいので間違いないだろう。

 

 しかし、生憎だが、俺はその京に行く気もなければ妖怪側に荷担する気も特に無かった。その理由はふたつある。

 

 ひとつは単純に実力不足もとい妖力不足だ。

 

 妖狐といえば聞こえは良いかもしれないが、俺なんてその末席もいいところの木っ端妖怪である。一尾しかない尻尾が何よりその証拠だろう。妖狐は実力の範囲が兎に角広いのである。お山の妖怪の大将ぐらいにはなれるかもしれないが、有名どころの妖怪からすれば塵芥のようなものだ。

 

 そして、ふたつ目。むしろこちらが主なのだが、俺はまだ心は人間でこの先もずっと人間である。だから人間は喰わないし、化かすとかもしない。むしろ人間に寄り付く悪い妖怪を追い払ったりしているのである。

 

 後は……。

 

 水面に映る化け狐の輪郭が突如ボヤけ出すと、瞬く間に化け狐は成人ほどの人間の女性の姿へと変わった。黒髪をした眉毛の薄いこの時代のそこそこ美人の女である。

 

 このように人間に化けれるので人里で普通に働いていたりする。何故か妖狐の雌は人間の女にしか化けれないそうなので少しガッカリしたが、また生きれるだけ求め過ぎというものだな。

 

 そんなこんなが今の俺であり、人助けをしながら日本にさっさと電気ガス水道が通るのを楽しみに1000年ぐらい待っているのが日常なのだ。

 

 

 

 

 

 

 

◆◇◆◇◆◇

 

 

 

 

 

 

 

 月夜に湖へ寄った日から数年後。俺はまた月夜に出歩いていた。別に特別なことではなく、ほぼ日課なのだがな。というのも夜は妖怪の時間であり、俺の住む人里に迷惑を掛ける妖怪もこの時間に活発になるからである。妖怪は夜行性の生き物なのだ。

 

人里からやや離れた山道を歩いていると、見知った背格好の妖怪が少し遠くに見えた。

 

「またお主か…よくもまあ飽きぬものじゃ…」

 

 ソイツはいつも人里で悪さをしている妖怪である。見掛けたついでにちょっとこらしめてやることにしたので、手に青白い狐火を浮かべた。一尾の木っ端妖狐といってもこのように妖術はちゃんと使える。

 

 話は変わるが、女性の姿で人里で接近している時間が長過ぎたため、自然に随分古風な言葉を話すようになってしまったが、この時代では普通のことなので仕方なかろう。

 

 そして、狐火を妖怪目掛けて投げようとした瞬間―――

 

 その妖怪が近くの藪から飛び出して通り過ぎた巨大な妖怪に押し潰される形で死んだことで俺の行動が止まった。

 

「なに……?」

 

 遅れてとんでもなく莫大な妖気を感じる。今までこんなものが近くにいたことに気が付かなかったのは単に俺の実力不足なだけだが、俺の取る行動はひとつである。

 

 俺は一目散に逃げた。その場から脱兎の如くの逃走である。

 

 経験上言おう。寿命が無に等しい妖怪にとって格上の妖怪を相手にするなんて自殺に等しい。故にとりあえず逃げることこそが妖怪として正しい行為なのだ。

 

 

 

 

 

 

 

◆◇◆◇◆◇

 

 

 

 

 

 

 

 大きな妖力の妖怪を見掛けてから1日後。俺は山道を中心に調査をしていた。

 

 山の中にあるあばら屋のマイホームでよく考えたのだが、あの妖怪は俺が対処しなければならないと結論が出たからである。

 

 と言うのも俺は老いない容姿の関係で、ひとつの人里に約10年程滞在して、遠くの人里に引っ越すということを繰り返しているのだが、この人里にはまだ1年程しか居ないためだ。また、引っ越すとなると色々と大変なのである。

 

 それにあんなものが人里に来れば地獄絵図になるのは間違いない。既に1年ここに滞在してしまっている以上、俺だけ逃げるのは人間として寝覚めが悪い。

 

 確かに格上の妖怪であったが、俺だって伊達に妖狐はしていない。やりようならば幾らでもある。タイトルは忘れたが、前世に読んでいた本で"オーラの多寡で勝敗が決まると考えるのは早計だ。むしろそれは勝敗を決定する一要因でしかない"と言っていたしな。

 

 そんなこんなで死地に望むような覚悟でその辺りを調べていたのだが、とんでもない肩透かしを食らうことになった。

 

 なんとあの妖怪が人間に殺られていたのである。妖怪は木に背中を預けている人間の横で全身の至るところから血を流して事切れていた。

 

 だが、人間も無事では済まなかったようで傷だらけで意識を失っているようだった。

 

 俺は人間に駆け寄り、妖術を掛けて応急処置を施すと、あばら屋に戻り、人間を寝かせて妖術や普通の処置で治療した。

 

 今思えば他にやりようが幾らでもあった気がするが、その時は助けるのに必死で後先のことが全く思い浮かばなかった。

 

 丸一日程してその人間が起きた。嬉しくて人間の姿で耳と尻尾を出してぴょこぴょこさせていたが、そのことが問題だと思い出したのは人間が唖然とした顔をしていたのを見た瞬間である。あの時はなんかもう隠せないぐらい妖怪要素丸出しだったな。なんのために10年おきに住む人里変えてたんだか。

 

 まあ、結論から言ってしまうとその人間は陰陽師であり、色々あって俺はソイツの子を孕んだりしたわけだがな。

 

 ソイツは足の骨を骨折していたので怪我が治るまで滞在することになり、その間に互いに興味本意でいたした結果がそれである。流石になんだかんだ百年ぐらい生きていると男女とかどうでもよくなったり、そういうことに興味が出てくるものだ。

 

 ソイツは顔面蒼白になっていた。仕方なく、ここであったことは全て秘密にすると誓って帰ってもらった。まあ、男女がどうでもよくなったとは言ったが、基本的に俺が好きなのはやはり女である。感覚としては誰でもいいから童貞を捨ててみたいからヤったら孕ませてしまったようなものだな。HAHAHA。

 

 最低じゃねーか。しかも孕んだの俺だし。

 

 父親はあるべきところに帰ったが、子供は恙無く出産して育てた。まさか、前世からではシングルマザーになるなんて思いもしなかっただろうな。思ってたら更にヤバイ奴である。ちなみに結局、子のためにすぐに引っ越した。ちくせう。

 

 そして、俺の子が10歳ぐらいの頃。陰陽師になりたいと言い出した。蛙の子は蛙という奴だろうか。とりあえず、母に言えることは陰陽師になっても美人の妖怪の誘いにだけはホイホイ乗るんじゃないぞ。こうなるからな!(集中線)

 

 仕方なく、連絡先だけは聞いていた父親の陰陽師に今住んでいる場所を記して手紙を書いた。子の夢を潰したいとは思わないし、だとすると流石に言っておくぐらいしなければマズいと思ったのである。

 

 とは言え、最悪子供共々討伐されるぐらいの覚悟はしていたのだが、何故か父親は手紙の返事よりも先に実に10年と少し振りに俺の元に突然会いに来ると、いの一番に私を抱き締めた。

 

 意味がわからず混乱していると、どうやら父親は10年間ずっと俺を探していたらしい。そう言えばお腹が隠せなくなった段階であの時住んでいた人里から離れたため、父親に今住んでいる場所を教えていなかったことに気が付いた。

 

 何故か父親の中では私の怠慢は、秘密を守り続けた狐の妖怪という謎の美談になっていたらしく、涙ながらにとても褒められて、もうそんなことしなくていいと宥められたが、とても釈然としなかった。

 

 それから父親は数日滞在した後に子供を連れてまた帰っていった。いや、俺も妻として来て欲しいと誘われたのだが、流石に妻はNGだったのでそれとなく傷付けないように断っておいた。やっぱり俺は女の方が好きである。

 

 そして、子供が居なくなって家はとても静かになったわけだが、そんなこともすぐに無くなった。

 

 何故かって?

 

 たった数日でまた孕んだんだよちくしょう! やったね"晴明"! 家族がふえるよ! 可愛い妹だ! 人間は過ちを繰り返す生き物だということの証明である。

 

 そう言えば父親の姓は"安倍"、長男の名前は"晴明"。合わせると"安倍晴明"になってなんだかとても聞き覚えがある気がするのだが、気のせいだろうか? まあ、知っていたとしてもそれは恐らく前世の100年以上前の話。既に重要でない記憶など記憶の彼方に飛んでいってしまったから探しようもないのだがな。まあ、忘れるようなことなので大したことではないのだろう。

 

 そんなこんなで縁側に座りながら、また大きくなった自分のお腹を撫でながらこれまでの人生を思い出す作業を終えて、少し横になることにしたのだった。

 

 

 

 


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