どうもちゅーに菌or病魔です。
Q:おい、投稿頻度
A:作者が新しく書いた小説! "荒ぶる神な戦艦水鬼さん"もよろしくね!(一切悪びれないダイレクトマーケティング)
ガチな話だと、ぶっちゃけ西洋妖怪をどれからぶち殺していいのかわからないので様子見中です(殺さない選択肢が最初からない狂気)
それともうひとつ。fateキャラはおっきーしか出さないと言ったな。あれは嘘だ。
今年もまたこの日が訪れる。
私の体を流れる血と肉と魂のルーツ。
運命で繋がった場所。
私は窓側の席で外に映る景色を見ながら今年の夏もまた、この日が訪れたことを嬉しく思う。
飛行機の窓から見下ろすのはお父さんの古里、大好きな境港の街。今年もまた遊びに来る日が来たんだと感じた。
「はえー……鉄の鳥とはけったいやわぁ……まなはん、しーとべるとってなんどすか?」
ずいっと私の隣に乗り出して、私と同じように窓の外を見た私の隣に座っている女の人。
それはお姉ちゃんが見繕った紫色のパーカーに、赤に近いピンクのロングスカートを着て、まん丸のメガネを掛けた女の人。
はんなりとした喋り方が特徴的だけど、一番特徴的なのは、先端に掛けて赤みを帯びる額から生えた二本の角。そして、お姉ちゃんと同じぐらい白い肌だった。
◇◆◇◆◇◆
時は少し前に遡る。
人の出入りの全くない山間部。辺りは深い木々に覆われ、日光すら射さないような場所。
その中で少しだけ開けた場所であり、陽が射すところにポツンと石造りの小さな祠が佇んでいた。
祠の石はびっしりと苔生しており、それが建っていた歳月の長さが伺える。
すると突如として、祠の全体が震え始める。そして、苔生した石が徐々にひび割れ、最後には砕け散ってしまった。
その頃には震えは収まり、代わりに祠のあった場所に淡い青紫色の球体が浮いていた。
その直後、球体は爆発的な輝きを放つ。
そして、それが止むと、その場に居たのは"紫を基調に赤い色の入った着物を羽織っただけの藤色の髪をした少女"であった。
しかし、よく見れば"額には二本の角が生え、人間味の薄い白い肌をしている"ということがわかる。
「…………んんっ――はぁ――」
角の生えた少女は艶のある声を上げながら閉じられていた瞳を開ける。その瞳は髪と同じように淡い藤色をしていた。
「んん――?」
角の生えた少女は何かを探るように辺りを見回す。その視線、その仕草のひとつでさえ、見た目にそぐわない程に妖艶に見える。
「"茨木"?」
そして、角の生えた少女はポツリと言葉を呟いた。誰かを呼ぶように吐かれたそれは名前なのだろうか。
当然、返答などあるわけもなく、暫くその場で首を傾げていた少女は身体の具合を確認するように首を回すと、また言葉を吐く。
「ちびっと……"寝過ぎ"てしもたかな?」
そう言う角の生えた少女の表情には何が愉しいのか自然に笑みを浮かべており、その様子を人間が見れば蕩けてしまいそうな程に妖しく美しく見えた。
◇◆◇◆◇◆
「なんやろうなあ……」
角の生えた少女は人間の生活圏まで来ていた。とはいってもまだまだ山奥であり、山道の開けた場所に建つコンビニエンスストアの駐車場に佇んでいるだけであるが。
少女はアスファルトで舗装された地面や奇妙な石造りで硝子張りのコンビニ、道路をたまに往き来するバイクや車等を目を丸くして眺めているようだ。
「けったいやわあ……」
暫く眺めてからそれだけ呟くと角の生えた少女は歩き出し、コンビニの中へと入った。
「いらっしゃ――」
店長と掛かれたプレートを胸に付けた中年の男性が入店した客に声を掛けようとしたが、角の生えた少女の容姿を見て口を開いたまま止まる。
少女はそんなことはお構いなしにコンビニの中を闊歩しながら物珍しそうに眺めた後、ある棚の前で立ち止まった。
そこは"酒"と漢字で大きく書かれたペナントのついた棚であり、大量に酒瓶が並んでいた。
「~♪」
それを見て上機嫌な様子の角の生えた少女は、適当に見繕うと腕一杯に酒瓶を抱えて、鼻歌を歌い始めた。
「ま、待て! 未成年――」
「ん――?」
我に帰った男性は角の生えた少女の元に向かい、止めようと手を伸ばした拍子に目があった。
まるで"酒気を帯びた"かのように蕩けた視線。男性を射ぬいたそれは、妖術にでも掛けられたかのように男性の動きを止めた。
「うあ……ろ……?」
まるで泥酔したように男性はふらふらと身体を揺らす。そして、ぼーっとした様子でその場に立ち尽くし、それっきり反応を示さなくなった。
角の生えた少女はそんな男性の隣を一瞥してから近くにあった買い物カゴに目をやり、それを手に取った。
「こらええもんやわ」
使い方を理解したのか角の生えた少女は買い物カゴに持っていた酒瓶を入れ、酒の棚に戻ると更に酒瓶を入れた。
「なんやろうこら?」
すると途中で6本入りの缶ビールが目に入り、角の生えた少女はひとつを手に取った。
そして、暫く手で弄っていると少女の爪が側面に引っ掛かり、バターでも裂くように斜めに亀裂が入る。結果として中からビールが零れ、少女の手を濡らす。
「ごっつう脆い筒やわあ……」
そう呆れた様子で言いながら濡れた指を舐め、その味に笑みを強める。そして、ビールを何本か取ってカゴに入れた。
買い物カゴが満杯になるまで酒を詰めた角の生えた少女は男性の横を通り過ぎ、その途中で止まって口を開く。
「おおきに」
それだけ言うと再び歩き出し、コンビニを後にした。
「ん……ん……ぷはぁ……」
角の生えた少女は酒を満載した買い物カゴを片手に、もう片方の手で酒を呷りつつ道路沿いを歩いていた。飲み終えた酒瓶や空き缶は道端に放り捨てている。
「~♪」
買い物カゴから缶ビールを一本取り出した角の生えた少女は、プルトップに手を掛けるのではなく、上部の縁を爪でなぞるとその通りに穴が開き、そこからビールを飲んでいた。
「どないしよか?」
そう呟きながら角の生えた少女は服の中をまさぐり、そこから"狐の尻尾の根付け"――というよりも"やたら現代的なフォックスファー尻尾のキーホルダーのようなもの"を取り出した。
「けんけんさんはまだ居たはるね」
そして、それを眺めながら少女は笑みを浮かべ、懐かしむようにその言葉を紡いだ。
「"
◆◇◆◇◆◇
突然だが、夏になると
ひとつは避暑地のコテージ、もうひとつが鳥取県の境港だ。まずは境港である。
例年通りならば家族で境港に行く予定であったが、今年はお父様の仕事の関係でまなと私の二人で行くことになった。
「楽しみだね! 乙女姉!」
「そうね、まな」
そして、余ほどに境港の街が気に入っているのか、一番乗り気なのは我が妹のまなである。今日は仕事でお父様もお母様も家におらず、明日にはまなと共に飛行機で行く予定だ。
まなは本当に楽しみなのか、リビングのソファーに寝転びながら時おりひょこひょこと頭を上げて私に問い掛けてくる。ああ、私の妹可愛い。
すると何故か玄関扉をノックする音が聞こえた。
「人が来たみたいだね?」
「そうね……私が出るわ」
まなにはそう言ってチャイムを使わない奇妙な来客に対応することにした。既に夜も遅いため、変質者や妖怪だったら堪らない。まあ、どちらにしても私ならパパっと対応出来――。
「久しいなあ、羽衣はん」
私は思わず開いた扉を反射的に閉めてしまった。
「え? どうしたの羽衣姉? 何だか着物を着た女の人に見えたけど……」
私の後ろから見守っていたまなはそう呟いて私を見つめる。
「いやいやいやいやいや――」
ま、ま、まさかまさか……そんなことがある訳がない。幾らなんでも可笑し過ぎる……わ、私からしたら玄関を開けたら腹を空かせたティラノサウルスが居た並みの衝撃と有り得なさだ。ここはジュラシック・パークだったの!?
「お、お姉ちゃん?」
ええ、そんなことはない。きっと私のドアの開き方が悪かったせいで、次元とか時間とかなんやかんやに歪みが生じてバック・トゥ・ザ・フューチャーしちゃっただけ。そうに違いない。デロリアーン!
そうとわかれば、私は今度は扉を静かに優しくそーっと開けた。
「そない、幽霊でも見たわけやなしに……いけずなお人やわあ」
私は再び反射的に扉を閉めようとした。それも今度はさっきの倍程の速度である。しかし、扉が閉まる直前に白くほっそりとした手が扉の間に割り込み、扉を閉める動きが完全に止められる。
3t程の力しか入れていなかったが、徐々に扉が開かれていく。ちなみにアメフト選手の全力のタックルが1t程といわれている。
そして、ついに扉がある程度開き、器用にも笑顔にも関わらず全く目が笑っていない少女に見える女性とバッチリ目があった。
「羽衣はん……?」
「アッハイ」
それは紛れもなく、1000年と少し前に源頼光さんらによって討伐された大妖怪――。
"酒呑童子"その人であった。
まな……明日……お姉ちゃん境港行けるかなぁ……?
◆◇◆◇◆◇
「羽衣はん、えげつないわあ」
とりあえず酒呑童子こと酒呑さんを家に上げ、リビングのソファーに座っていて貰った。お茶と茶菓子を用意している間に頭の中を整理しよう。
「お姉ちゃんあの妖怪さん誰?」
「名前ぐらいは聞いたことあるんじゃないかしら? 酒呑童子って言う名前の鬼よ。それでその……私の友達になるのかしら……うん」
隣に来たまなが小声でそう聞いてきたので、耳打ちしながらそう答える。
酒呑童子といえば平安時代、大江山に城を構え、数多くの鬼を束ねた頭領である。京の都に降り、若者や姫君を大江山に連れて帰っては人間を喰った妖怪だ。
何故か私はそんな酒呑に気に入られ、よく酒を飲み交わしたり、私の芸を披露したりと色々していたものである。
しかし、問題はここから。
酒呑童子は最終的には人間によって討伐されたのだが、その過程で晴明が関わっていたりするのである。そう、晴明が関わっていたりするだ。
「ま、まま、まさ、まさか……復讐なんて酒呑に限ってそんな――」
「酒呑さんはなんでお姉ちゃんを訪ねて来たんですか?」
「うふふ、他に頼れる者もおらんからやわ」
「だってお姉ちゃん! よかったね!」
「ま、まなァ!?」
いつの間にかまなは酒呑の向かいに座っており、そんなことを聞いていた。
「お、お茶とお煎餅じゃ……」
とりあえず私が入れたお茶と、同じく焼いたお煎餅を酒呑の前に出す。
「んー……羽衣はんのオブさんとアモさんは、おいしいなあ」
酒呑はそれを受け取ると目を細めながら手をつけていた。私はそれを立ったまま笑顔で眺める。
い、いかん……この状況……1000年前の光景が甦って胃が締め付けられるように痛い。
「酒呑さん。あの、お姉ちゃんの様子が明らかにおかしい理由ってわかります?」
「昔、色々あったさかいそのせいやろう。せやけどうちは羽衣はんのことえらい好きやわぁ」
「そうなんだってお姉ちゃん! よかったね!」
「だからまなァァ!?」
私がこんな感じになっているのには勿論理由がある。
というのも酒呑が居た時代の1000年とちょっと前と言えば、私はまだ一尾の頃である。そう、一尾の頃なのである。
そんな吹けば飛ぶようなクソ雑魚ナメクジの頃に酒呑さんは頻繁に私を拉致――宴会に誘っては大江山でしこたま酒を飲ませてきたり、芸を所望したりしてきたのである。
考えても見て欲しい。私以外は全て鬼であり遥か格上の存在に囲まれるペンギンコラのような様子を。そして、隣には常に酒呑である。あの場での癒しは"ばらきー"だけだった!
というか私がそうなっているのを絶対に酒呑は楽しんでいた! 私が加虐趣味になったのはきっと酒呑のせいだ……。
「ところで羽衣はん、この童はいったい誰やろうか?」
「妾と血の繋がった妹じゃ……」
そう言うと酒呑は目を丸くし、私とまなを交互に見つめる。
「実は――」
私は酒呑さんが居なかった1000年とちょっと、それからまなと私の関係について話すことにした。
「羽衣はんは相変わらずどすなぁ……」
全て聞き終えた酒呑は相変わらず笑顔だが、なんとなくニヤニヤとした笑みをしているように思えた。なんだか、母親にエロ本が見付かった男の子のような心境である。
ちなみにまなは途中で眠たそうにしていたので、私の膝を枕にしてやるとそのまま寝てしまった。このお膝の感触でお姉ちゃんは勇気が湧いてくる。
「酒呑さんはどうしたんじゃ?」
「牛女や小僧に殺されてから甦ったばかりやわぁ。そないしたら街には石の建物がぎょうさん生えてるわ、鉄の馬やら荷車が走ってるわ、もう散々やね」
「なんとまあ、通りで……」
酒呑の妖力を見てみると、私が知っていた頃よりかなり落ちていた。具体的に言えば3割程にまで小さくなっている。
復活したてならばまだ本調子ではないのだろう。それならば仕方ない――のだが、酒呑童子という大妖怪に関して言えば特に問題はないだろう。はっきり言って元がデカ過ぎて30%になったところでという話である。それに妖怪なので黙ってても数十年掛ければ元に戻るし。
「それに比べて羽衣はんは随分強なったなぁ」
「1000年も経ったんじゃ。そうもなろう」
まあ、私のやり方は晴明による完全な裏技なのだが、それはそれ、これはこれである。
今の私は妖力だけならば全盛期の酒呑童子すら越えている。しかし、今の彼女にさえも全く勝てる気がしないのは、過去の苦手意識もあるが、あまりに妖怪らし過ぎる大妖怪故だろうか。
酒呑童子の性格としては、あるがままに生き、思うがまま振る舞う自由な快楽主義者だ。また、人と同じように何かを愛でながら唐突に殺す。恥を知っており、義理堅くもありながら、感慨もなく人を喰らう性悪な妖怪でもある。
故にのびあがりのように動物的かつ無差別に他を襲う妖怪でもなければ、見上げ入道や八百八狸のように品性の欠片もなく他を支配するようなこともしない。
その様は大妖怪とは鬼とはという問いに対して、ある種の答えに等しい存在なのである。
「して、お主はこれからどうする?」
種族としての鬼という妖怪は、現代ではほとんど姿を消してしまった。
理由としては酒呑童子らを含む大江山の鬼たちが毒酒で殺されたことを皮切りに、全国で似たような方法で鬼退治がされるようになったからだろう。
多くの鬼は人間が知恵を絞り、鬼に挑むことそのものを楽しみにしていた。故にあらゆる勝負に応じ、勝敗や貯えた財宝等は二の次であった。
だというのに人間は財宝を目当てに各地で鬼を毒殺していった。そんな光景にいつしか勝負好きな鬼は人間を見限り、粗暴な鬼は人間を恨み、かつての形は見る影もなくなり、今ではほとんど見なくなってしまったのだ。
「まあ、晴明が言うには地獄に就職した鬼も多数おるそうじゃがな」
それを聞いた酒呑は相変わらず人を喰ったような笑みのまま口を開いた。
「ま、仕方ないんちゃう? 鬼も人間をぎょうさん喰ろうたさかい殺されもするわぁ。綺麗に死ねるなんて、それこそまやかしやねぇ」
その答えは殺される間際ですら笑っていたという酒呑童子らしい答えであった。
だから私は"人間を趣向的に喰う妖怪"というだけでは殺さないようにしているのだ。仮にこんな妖怪と殺り合うなんて勝敗以前に寝覚めが悪過ぎる。
妖怪は超自然の怪異だ。その範囲内で人が喰われるというのならば、それは妖怪が妖怪らしく生きる上で自然の摂理の一環とも言える。妖怪から人間を守るという私の意思ではあまりに矛盾を孕んだ考えだが、人間とは矛盾だらけの生き物だ。ならばこれぐらい可愛いものだろう。
「んー……強いて言えば……宿探しやねぇ」
半生以上を放浪で過ごした大妖怪とは思えない発言であった。大江山で過ごした時期はそれなりに酒呑を変えたのだろうか。
そんなことを考えていると酒呑は何か思い付いたのか、口の端をつり上げると口を開いた。
「羽衣はん、うちを雇う気はあらしまへんか? 庭仕事ぐらいはできるで」
「謹んで辞退させて頂きますわ」
我ながら即答であった。まなは喜ぶだろうし、家の家族は全員なんだかんだ受け入れそうなので問題ない気もするが、私が第二のばらきーにされるのが目に見えている。そんなん堪るか。
「あら、ふられてしもたわ」
口ではそう言うが、全く残念そうな様子もない酒呑。雲とでも話しているような気分だ。
「わかった……つまりはこういうことじゃな」
私は溜め息を吐いてから呟いた。
「今の浮き世を満喫したいのと、宿探しを妾に手伝って欲しいということか」
酒呑は笑みを強めるだけであったが、それは肯定と同じだろう。何せ、私ならこんな大妖怪を野放しに出来ないので、現代の日本で普通に酒呑が楽しく暮らせるように意地でも四苦八苦するのは目に見えているからね。チクショウが!
「はぁ……」
叔父様と叔母様に私の友達が増えることについての電話入れて、明日の飛行機の当日予約もしなきゃ……どうせ隣になるのは不可能だからまなの隣に酒呑を置いて、私がその席に座ろう。
せめてどこかしらに定住するまでは酒呑から目を離したら確実にヤバい。
◆◇◆◇◆◇
「着いた~!」
境港駅の目の前で嬉しそうに万歳しているまな。これだけでご飯10杯イケる自信が私にはある。
すると隣にいるパーカーロングスカート丸メガネ酒呑が私をちょんちょんと指でつつき、言葉を吐いた。
「まなはんって愛い人どすなぁ……喰うたら怒るん?」
「ぶち殺すぞ」
我ながらびっくりする程の即答であった。酒呑に対してもこれなのだから私の中でまなという存在がどれだけ大きなものになっているのだろうか。最早私ですらわからない。
「ほーかほーか、そない大切なもんか。それはあきまへんなぁ」
そうは言うがその瞳にも雰囲気にも悪びれた様子は一切ない。酒呑らしいと言えばそれまでだが、まなだけは別だ。何かしたら刺し違えてでも全身全霊で討滅してやる。
「庄司おじさん! リエおばさん!」
そんなことを妖怪の二人で話していると、目的地に住むお二方が来たことに気付きそちらに意識を向ける。
「いらっしゃい、まなちゃんと乙女ちゃんと……えーと」
リエおばさんは私の隣の酒呑を見ながら言葉を詰まらせる。昨日急遽来ることになった私の友人ということに電話で伝えただけなので仕方あるまい。
「酒呑と申す、あんじゅうよろしゅう」
酒呑はそう言って綺麗なお辞儀をした。見た目だけならとても礼儀正しい京の人間だ。
ちなみに酒呑の掛けている丸メガネは酒呑の角を消して人間のように見せる効果と、酒呑の酒気を抑え込む効果と、京言葉を標準語に変換する効果があり、私が昨日の一晩で作った呪具である。
最初は何故鬼が隠れるようなことをしなければならないんだと否定的な酒呑であったが、現代で生きて血の繋がった妹までいる私の顔を立てて欲しいと頼むと、仕方ないと承諾してくれたのである。やはり話が通じる妖怪はよいものだな。
しかし……。
「……?」
丸メガネを掛けた酒呑を見つめると、酒呑は首を傾げてこちらを見て来た。
丸メガネ掛けただけでなんでこんなにエロくなるんだこの鬼……パーカーにロングスカート着てるから寧ろ露出は激減しているんだぞ……。
「イワシのつみれ汁、ええなぁ」
そんなことを考えていると話はまなとの間でかなり進んでおり、早くも二人の家へと向かうことになった。
◇◆◇◆◇◆
その日の夜。私とまなと酒呑は線香花火をしながら港大漁祭りが行われないことについて話していた。
「今年はお祭り、やらないのかな……」
"すごく楽しみにしてたのにな"と続けて呟かれるまなの表情はとても悲しげで、見ているこちらがどうにかなってしまいそうだ。
「相変わらず難儀やねぇ、人間は」
「対立している人間は両方とも祭りを想う故の行動じゃからな。最早、部外者どころか地元民にもどうこう出来る問題ではあるまい」
それよりも線香花火を普通に楽しんでいる様子の酒呑を眺めてふと思う。
そう言えば線香花火が出来たのは江戸時代の寛文年間以降だったことを思い出した。その間、酒呑は復活中だったものな。
明日からはまなと、私と酒呑は別行動になる。妖怪城のコンクリートを境港に設置してから、酒呑の家探しを始めるためである。
まあ、小学生探偵の皮を被った死神でもあるまいし、まさか旅先でまでまなが妖怪に襲われるようなことはないであろう。
そう高を括りながらまな分を補給するために私はまなをぎゅっと抱き締めた。
これを海座頭の回と言い張る勇気。
Q:なんで酒呑ちゃん出したん?
A:西洋妖怪に酒呑ちゃんぶつけたい(過剰防衛) 、後境港から離れたい(必死)
Q:酒呑ちゃん出す意味ある?
A:おう、ならfateの妖怪ねじ込んだゲゲゲの鬼太郎(6期)の小説を誰か書いてクレメンス(この作者は読み専なので書く小説は基本的に読みたいものがない場合です)
Q:なんで酒呑ちゃん弱くしたん?
A:ナーフ
あ、ちなみにアニエスは出来れば犬山家で飼いた――おほん生活させたいと思っております。