犬山さんちのハゴロモギツネ   作:ちゅーに菌

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どうもちゅーに菌or病魔です。

色々大分考えたんですが、蟹坊主にポンコツ狐姉貴が関わるとどうなってもろくな結果にならない上、原作をそのままなぞるのは二次創作として私的にどうかと思うのでこうなりました。ちょっと短めです。ごめんな……ごめんだで……。

はからずも2話にかけて猫娘と関われたので、次は多分学校となります。

後、先に言っておきますが、鬼太郎に出るのはユーチューバーではなく、ウーチューバーなので限り無く近い別物ということにご注意を。




大物ウーチューバーはごろも

 

 

 とある天狗の集落の長老はその光景に目を疑った。

 

 既に幾つかの街を火の海に沈めていた西洋妖怪ベリアル。

 

 妖怪としては名通った長老ですら一瞬の隙を突いて沈黙させるしかないと遠目から判断していた彼が今、一体の女性妖怪の前で涙を流しながら命乞いをしていたのだから。

 

 そんなベリアルを見つめながら不敵な笑みを浮かべているのは、気紛れに妖怪も人間も等しく苦痛と悲鳴を絞り出しながら惨殺するという最凶最悪の大妖怪として名高い"羽衣狐"。

 

 長老は悪魔ベリアルを終始手玉に取りながら心までへし折り、今の状況を作り出す一部始終を見ることになり、どちらが悪魔なのかと問いたくなる程、別次元かつ底の全く見えない力と闇のカリスマとでも言うべき風体に絶句していたのだ。

 

 長老は既に1000年以上の月日を生きている。それ故、他の三大悪妖怪の玉藻の前や酒呑童子、伝説の京妖怪である鵺のことを一目見たことはあった。それらと比べても羽衣狐は遥かに悪意に満ち溢れていたと長老は感じ、羽衣狐から数km離れて術を用いて眺めながらでも頬を冷や汗が伝う程であった。

 

 

 

『ああ、一応言っておこうぞ』

 

 

 

 何故かベリアルを殺さずにいる羽衣狐はそんなことを呟く、そして術を通して羽衣狐を見る長老と羽衣狐の目があった。

 

「――ッ!?」

 

 長老は思わず驚きと心臓を鷲掴みにされたような恐怖から声を漏らす。彼は名のあるような大妖怪に連なる程の実力者ではないが、それでも神通力に関しては一日の長があると考えていた。

 

 しかし、それは間違いだったと言えよう。羽衣狐は紛れもなく天狗の神通力すら知っていたのだ。その上、仮に長老が数km先から隠れて術で覗き見ていただけの存在に気付けるのかと自身に問い、超越的な羽衣狐の能力の高さに打ちのめされる。

 

 また、ベリアルを倒した時に一瞬で、心臓の位置を看破して見せたことを思い出し、天狗の神通力を羽衣狐は修得しているのではないかという疑問に至る。

 

 そんな最中、羽衣狐はにたりと口角を上げて笑みを浮かべるとそのまま長老に言葉を吐いた。

 

 

 

『お主の獲物を獲ってすまなかったのう』

 

 

 

 その言葉により、更に羽衣狐は少なくともかなり前から長老の存在に気づいていたということに気づく。この女の形をした化け物はどこまで上にいるのか? 羽衣狐と同じく妖怪として闇に生きる存在である長老は呆れ果てる。

 

 

 

『ではな』

 

 

 

 それだけ言うと羽衣狐はベリアルを立たせ、彼を引き連れながら二人のいる空間が歪む。それが止むと両者の存在は跡形もなく消えている。

 

 そして、その場には呆然とした長老のみが残された。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

◆◇◆◇◆◇

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 境港での船幽霊騒ぎと祭りの翌日。

 

 町外れにあり、危険との訴えによりベンチとテーブルしか設置されなくなった人通りの少ない公園に犬山まな、犬山乙女、鬼太郎、猫娘、目玉のおやじの5人が集まっていた。

 

 テーブルを挟んだ2つのベンチに二人づつ座り、目玉のおやじはまなの肩に乗っていた。

 

「さて、どこから話しましょうかね……」

 

 少し風に靡く髪を掻き上げながら呟くのは、生きた日本人形のような容姿をした犬山乙女。今の彼女はいつもとは打って変わって笑みを浮かべていないため、吸い込まれそうな程に黒い瞳はどこか恐ろしげに映る。前日に半妖ということを聞かされていたため、尚更だろう。

 

 今日は辛気臭いものは無しで楽しんで欲しく思い、日を改めて明日に説明するとのことで、最低限のメンバーを集めて今に至る。

 

「私とまなは種違いの姉妹……ということは昨日なんとなく話したかしら?」

 

「ええ……」

 

 まなの友人である猫娘がそう呟いた。それを聞いた乙女は薄く笑みを浮かべたが、それは消え入りそうな程儚げでどこか遠い目をしており、昨日誰よりもはしゃいでいた人物と同じには到底見えなかった。

 

 妹のまなもそんな乙女は不安げに見つめている。

 

「私とまなの母は私が生まれる十月十日前の一週間の間、行方不明――神隠しに遭ったの」

 

「それで君は……」

 

 鬼太郎の呟きに言葉を返さず、乙女は言葉を続ける。

 

「相手は祟り神崩れの妖怪だったわ。どこかで封印され、祀られていたけれど、長い歳月で封印が解け、現代に現れたのね」

 

 祟り神といえば危険な荒御霊であり、人間に拝み倒され、守護神になることもある存在のことだ。しかし、元々の特性から実際に拝み倒されて守護神になってくれるような利口で博愛主義的な存在など一握りもいるわけもなく、基本的に神社や祠に置かれた御神体に直接封印し、無理矢理縛り付ける形で利用されることが主流である。乙女の話す存在も後者のものだろう。

 

 どちらにせよ、大妖怪程ではないが、戦闘や術に特化した力のある妖怪であることは変わりない。

 

 ちなみにゲゲゲの森にはそういった妖怪は少ない。何せ、基本的に鬼太郎に倒される側の妖怪だからである。それ故、戦力という意味でゲゲゲの森の妖怪たちはほとんどアテにならないと言ってもいい。

 

「ま、幸いにもお母様はその時の記憶を全て失っていたから良いけれど、理由は明白だけどね」

 

「理由じゃと……?」

 

 目玉のおやじの問いに乙女は答える。

 

「ええ、あの妖怪――いえ、私の本当の父親はお母様と成長した私を食べる気だったの。頭からムシャムシャとね。子供の肉は美味しいらしいわ」

 

「なんと!?」

 

 "父親の風上にもおけん!"と目玉のおやじは怒りを露にした様子であった。

 

「正直、私はそのまま育っていたら父親のようなこわいこわい妖怪になっていたかもしれないわ。皆が思うほどいい子じゃないのよ私。祟り神の半妖だから……他の子よりもずっと賢くて、強くて、悪い子だったわ」

 

 乙女は瞳を閉じてそう呟く。

 

「でもね……」

 

 そう言葉を区切ると片手をまなの頭に置き、ゆっくりと撫でた。その手付きはあまりに優しく、まるで母親のようにさえ見えた。

 

 しかし、それと反比例するように乙女から鬼太郎が一目見ればわかる程、邪悪に満ち溢れたドス黒い妖気が溢れ出し、鬼太郎らは目を見開く。

 

 流石に()()()()()()と比べれば質も量も遥かに大人しく感じる。だが、人や妖怪に仇なす祟り神らしい暗く冷たい妖気の中にどこか温かみを感じる不思議な妖気をしていた。

 

 乙女の妖気は既に大妖怪に片足を踏み入れており、実の父親がかなり強力な祟り神であったことが伺える。

 

「私にはずっとまなが居たわ。後ろを着いて来ていつも笑顔を向けてくれる大切な人間の妹がね……だから……ぜったいに守るって決めたのよ。まなも……まなと私の家族も……」

 

 そう言う乙女の優しさに溢れた表情とは裏腹に、瞳は決意に満ち溢れており、誰が見ようとも心の底からの言葉だということがわかった。

 

 やがて乙女はまなを撫でることを止めると、開かれていた掌を閉じ、逆に強く握り締めて拳を作る。

 

「だから……お母様と私を食べに来たアイツを――力を全て奪い取った上で殺してやったわ」

 

 その言葉にまな以外のものたちは絶句する。乙女が抱えていた闇は想像を遥かに越えていた上、乙女自身にもどうすることも出来ないような内容だったからだ。

 

 ちなみにまなは最初からずっと何とも言えないような、居心地の悪いような顔をしていた。知っていたのならその反応も仕方ないだろう。

 

「うふふ……まあ、親より子が強かった。それだけの話ね。たった7歳の子供に喰い殺されたんですもの」

 

 とは言え、正確には違う。乙女はそれを己の力と意思で乗り越えた先が今なのだ。鬼太郎たちがどうこう言えるようなことではない。

 

「だから、こんな化け物みたいな見た目なのかしらね? 私は」

 

 乙女は肩を竦めてそう言う。笑っていない乙女の容姿は、怖いほどに人間離れした美人のそれである。祟り神の半妖であり、その祟り神の力を喰らった存在だというのならば、まなと似ても似つかないその容姿にも合点がいく。

 

「後、これも見せておくわね」

 

 乙女はベンチの脇に置いてあったやや細長い半球状のアーチェリーバックを取り出す。

 

 最初から乙女が持ち込んでいたモノであり、まなを含めて皆が気になってはいたため、視線が集中した。

 

 そして、乙女がバックから取り出したものは――。

 

「わぁ……綺麗な"弓"……」

 

 まなが思わず溢したように輝く白銀の弓であった。

 

「竪琴ではないのか……?」

 

 目玉のおやじがポツリと溢す。その言葉通り、弓のような形状をしていながら何故か数本の弦が張られており、また矢がどこにも見当たらないことからそう判断したのである。

 

「うふふ、どっちも正解」

 

 乙女は弦を指先で弾くと"ポロロン"と弾むような心地好い音色が出る。それをした後、乙女は席を立ち、足元に落ちていた拳程の石をひとつ拾い上げた。

 

「見てて?」

 

 乙女は石を高く投げ、更に弦を弾いた。

 

 その瞬間、心地好い音色と共に空中の石が真っ二つに両断されたのである。

 

 鬼太郎らはまなも含めて驚きながら空中から落ち、綺麗にテーブルの真ん中に落ちた石の片方を眺める。その断面は刀のような鋭利な刃物で斬られたかのように滑らかであった。

 

 

「スゴいでしょ、この"弓琴(きゅうきん)"? 」

 

 

 つま弾くことで対象を切断する真空の刃を飛ばせると語る乙女は、まるで見せびらかしているように、どこか誇らしげであった。

 

「それをどこで……?」

 

「さあ? 物心ついた頃には使えるようになっていたし、生まれつき持っていた……と思うわ」

 

 そういうと乙女は弦を指先でつつく。すると弦は触れただけで消滅し、全ての弦に触れると弦が無くなる。そして、弦があった場所をなぞるとそれだけで瞬く間に弦が張られて行った。

 

「ふむ……それが乙女ちゃんの妖怪としての力なのかも知れぬな」

 

「そうなの?(ポロロン……)」

 

 乙女は目を大きくしながら弓琴を弾いて音色を奏でていた。ただ、弾くだけでは真空の刃が飛ぶ様子が見られないため、何かコツがあるようだ。

 

「まあ、私が言いたいことはひとまずそんなところね。何か質問があるなら答えるわよ?」

 

「なら……君の妖怪の父親の名前は知っているかい?」

 

 鬼太郎は善意で乙女から父親妖怪の名を聞き出すことにした。乙女に喰い殺されたようだが、いつか何かが起きてもう一度現れないとも限らないため、覚えておくと共に倒し方を調べておこうと考えたのである。

 

 乙女は難しい顔で首を捻った。

 

「さあ? 名前なんて興味無かったから特に――ああ、待って……えーと……確か、"稲荷神"とか言ってたかしら?」

 

「稲荷神か……」

 

 稲荷神と言えば稲荷大明神や、お稲荷様、お稲荷さんなどとも言われている。稲を象徴する穀霊神・農耕神として祀られているもので、要は狐の神や妖怪である。

 

 数が多いため、どちらかと言えば種族的な意味合いが強く、その在り方も人間に幸福を与えることを無上の喜びとするものから、人や妖怪を喰らい殺す邪悪な祟り神まで非常に範囲が広い。話を聞く限り、後者寄りだが、稲荷神となれば狐なこと以外共通点がほぼないため、あまり参考になるようなことではなかった。

 

 寧ろ、そこそこ身近になりつつある"狐"ということで羽衣狐を思い出し、鬼太郎は渋い顔をしていた。

 

「何か悪いことだったかしら?」

 

「いや、こっちの問題だ……」

 

「じゃあ、私からも――」

 

 次に猫娘が動き、スマートフォンを取り出して何かを調べるとそれを乙女に見せた。

 

 それは"乙女座の乙女(VirgoVirgo)"という名のウーチューバーであった。ご丁寧に笑顔の乙女の画像も付いている。

 

 日本人でウーチューバーを知っているのなら誰もが名前ぐらいは聞いたことのある存在。寧ろ日本よりも海外の方が熱狂的なファンが多く非常に有名なウーチューバーである。

 

 ちなみに乙女様、黒先輩、大和撫子Lv99、わかりやすい超人、万能の人、人間のような女神、残念な美人(シスコン)、ハリウッドを蹴った女、生放送中に変質者を撃破した女、生放送中に世界記録を超える女、リア凸するとジュースを奢ってくれる人、犬山乙女、要人にリア凸される女等々様々な愛称で呼ばれている。

 

「これあなた……?」

 

「ええ、もちろんそうよ」

 

 乙女は堂々とし、当然と言わんばかりの態度でそう述べた。

 

「ええ……ええ!?」

 

 猫娘は叫ぶほど本気で驚いていた。その様子に乙女は嬉しそうな様子を見せる。

 

「結構わからないものでしょう? 人間、自分の目で見たものでも疑ってそのまま真実と受け取らないものなのよ。だから意外と外でもバレないものね。ああ、身バレはとっくにしているから開き直って名前も住所も載せてるわよ」

 

 猫娘が呆然としていると更に乙女は口を開いた。

 

「うふふ、でも人気なのは当然よ。だって私はこんなにも――」

 

 乙女は自身の身体を抱き締めながらにっこりと猫娘に笑い掛けた。乙女は動作のひとつをとっても妖艶であり、更にその笑みは同性の猫娘すら赤面してしまう程の美しさに満ち溢れていた。

 

「"美しい"じゃない?(ポロロン……)」

 

 何故か乙女は弓琴を弾き鳴らしながら、全く羞恥も遠慮もすることなくそう言い放った。

 

 あまりにも威風堂々とした佇まいにより、猫娘と鬼太郎と目玉のおやじは唖然としている。

 

「お姉ちゃんキレイだものねー。それにお姉ちゃんの放送……ゲームとか中心になんでも色々してる放送だけどふつーに面白いんだよねぇ」

 

 そんな中、まなだけは当然のことだとばかりに当たり前のように流しており、猫娘はその様子に少しギョッとした。

 

 しかし、嫌味でもなんでもなく、実際に乙女という人間は美しいのだから猫娘も返す言葉がなかった。容姿から所作、如何なる動作を切り取ってもぐうの音も出ない程、乙女は老若男女問わず美しいと感じられるのである。

 

 それを普及した現在のインターネットに乗せてしまえば、本人にその気は一切無くともこうなるのは寧ろ自然に思えた。

 

 きっと昔に産まれていれば"傾国の美女"等と呼ばれていたに違いないと、猫娘はなんとも言えない気分になる。

 

「最初はただSNSで画像とか上げてただけだったのだけれど、実際に声を聞きたいって要望があってね。折角だからそれに答えて最初は電話でも掛けようかと思ったのだけれど、結構多かったからいっそ動画にした方が早いと思ってそうしたのよ」

 

 乙女は一旦言葉を区切り、持って来ていたペットボトルのお茶で喉を潤してから口を開いた。

 

「失礼。そうしたら国内でビックリするぐらい有名になっちゃってね。面白いからそのまま暫く他の投稿者さん達みたいにしていたら海外の人から英語の字幕を入れて欲しいって要望があったから――」

 

 乙女は何でもないような様子で言い放った。

 

「字幕と後付け実況を付けてとりあえず八ヶ国語で動画を上げたわ」

 

「ええ……」

 

 猫娘は乙女の万能ぶりに困惑した。20年も生きていないにも関わらず、既に少なくとも八ヶ国語をマスターしているらしい。

 

「そうしているうちに国内外問わずどんどん登録者が増えちゃってね。今ではこのザマよ」

 

 乙女が猫娘のスマートフォンを借り、少し操作して見せた画面には去年のウーチューバー登録者数世界ランキングで、30位以内に入っているという様子が映っていた。

 

「そんなことよりも……!」

 

 本当に些細なことのようにウーチューバーの話を切り上げ、乙女はまなを抱き上げて自身の膝の上に乗せ、ぎゅっと抱き締める。 

 

「驚いたわ、最近になって突然、"私の"まなが私の耳と尻尾が見え始めたんですもの!」

 

「あはは……」

 

 まなはされるがままな様子で乾いた声を上げている。

 

 そんな光景を横目にそこにいたまな以外の妖怪たちは全員同じような事を考えていた。

 

 "この人、口を開かなければ本当に美人なのになぁ"と。

 

 欠点の存在しない者は居ないということを改めて考えさせられた鬼太郎一行なのであった。

 

 

 

 

 

 ちなみにこの後、境港の街を蟹坊主という妖怪が襲ったのだが、乙女は地元の友人たち(酒呑童子とべリアル)と少し遠出するとのことで暫く境港にいなかったため、それを知ったのは全てのことが終わってからだったという。

 

 

 







~回答者:匿名希望の犬山(姉)さん~

Q:ハゴロモさんはどうやってベリアルの心臓を見つけたの?

A:心音じゃな


Q:ハゴロモさんはどうやって天狗の長老に気づいたの?

A:みこーん、勘じゃよ


Q:ハゴロモさんは天狗の神通力出せるの?

A:出そうと思えば(王者の風格)←ハゴロモジョークなので出せません







~べリアルも同伴で酒呑童子のお住まい探しに向かったポンコツ狐姉貴の動機~


「いやー、海座頭なんぞにまなが襲われるとは予想外じゃったのう」


「でも、まあ境港に滞在中にまたまなが襲われる等ということは流石にないじゃろ」


「仮にあったとしても鬼太郎たちが居るんじゃ。まなの守りは万全じゃな。HAHAHA!」







~羽衣狐の尾の武器~

五尾の弓琴(きゅうきん)
 名を"痛哭の幻奏(フェイルノート)"という弓のような形をした竪琴の弦。その正体はかつて"無駄なしの弓""必中の弓"ともいわれるとある円卓の騎士が用いた"糸そのもの"である。
 つま弾くことで敵を切断する真空の刃を飛ばせる。その特性から片腕、ひいては指さえ動けば発射でき、一歩も動かず、弓を構える動作を必要としないという利点を持つ。また角度調整、弾速、装填速度が尋常ではないため全弾回避はほぼ不可能。レンジ外まで転移するか次元を跳躍するなどでしか対抗できない。また、異なる手段としては糸のため、相手を縛る、斬り裂く、スネアトラップとして使うなどの戦術も取れる。
 故に羽衣狐が使う文字通り"必殺"の武具。未だ実力の足りなかった頃にどういう経緯か入手し、これを用いて闇討ちを行うことであらゆる悪しき者を暗殺していった。
 しかし、尾の増加共に暗殺せずとも正面から対峙出来るようになったため、徐々に使用頻度が減り、今では人間の暗殺以外にほとんど使わなくなった。また、使用しなくなった最大の原因は、"全く殺した手応えを感じないため面白くないから"とのこと。

乙女の武器として
 殺す時だけに用いられていた上、使われた対象は訳もわからず死に、仮に復活しても死因が一切不明なため、羽衣狐の武具の中で使用率自体は決して低くないにも関わらず、羽衣狐と一部の身内以外に存在を知られていない武具でもある。
 そのため、半妖の犬山乙女が持つ武器として使用している。

ちなみに
羽衣狐の尾の武具はその時代に取った武具というよりも、単純に思い入れのあるものや、純粋に強力な武具が選出されることが多く、数字付けにあまり深い意味はないため、時代背景がバラバラであったりする。



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