犬山さんちのハゴロモギツネ   作:ちゅーに菌

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どうもちゅーに菌or病魔です。

カルラ様は出さないと言ったな、アレは嘘だ(オイ)





羽衣狐(牛鬼)

 

 

 

「着いた~!」

 

 目的地に着いた瞬間に手を掲げる習性のあるまなが嬉しそうにしている姿を見るだけで、ご飯が美味しい季節な今日この頃。具体的に言うと剥き出しの脇とうなじが堪らない。脇は性器なのでおっぴろげているのはどうかと思う等とネットで言われていた迷言があった気がするが、今ならばそれを理解できる気がする。

 

 ――おにぎりかぁ……止めよう、そこまで行ってしまったら二度と戻れなくなりそうだ。

 

 それはそれとして、私の美貌故か、知名度故か、教官の方が私に対して緊張していた教習所通いも終わり、無事免許証を取った残りの夏休みにまなと共に旅行に来たのだ。

 

「期待なんてしてなかったけど、意外とよさげじゃない。やるわね、商店街の福引き」

 

「鬼太郎も早く来ればいいのに」

 

 その上、今回はまな曰く猫姉さんも同伴なのでとても嬉しそうだ…………まなのお姉ちゃんの乙女姉はここよ。

 

 ちなみに猫娘が当てたツアーの定員が3人だったので、私は自費で来た。猫娘はおまけで誘ってあげた等と言っているが、明らかに誰を最も誘いたかったのかは見え見えだったからである。恋のキューピッドにも憧れる乙女ちゃんはそういう微笑ましいやり取りは大好きだ。

 

 まあ、それにも関わらず、鬼太郎は遅刻しているらしい。恋のキューピッド羽衣様の痛哭の幻奏(フェイルノート)でもお見舞いしてやろうか……?

 

 すると、猫娘が何かに気がついたようで、突然島を見つめて止まったため、小声で声を掛けた。

 

「何かいるわね。祟り神か大妖怪か別の何かかはわからないけど。まあ、島が賑わっているなら封印中でしょう。触らぬ神に祟り無しよ」

 

「…………乙女が言うと説得力あるわね……」

 

 ちょろっと黒い妖気を漏らしながら言うと、猫娘は呆れた様子でそう返してきた。うむうむ、それでいい。旅行に来た最初からそんなことを考えていては楽しめるものも楽しめなくなるだろう。

 

 まあ、後で封印の様子を見に行って、場合によっては私と晴明で再封印でもしようかと考えていると、地元の子供が子供をイジメているのを目にする。

 

 牛鬼がどうとか以前に、島のブランドが下がるというとんでもないワードに最近の子供たちの闇を感じてカルチャーショックを受けていると、まなが叱りに行った。流石は年下にはお姉ちゃんよりお姉ちゃんしているまなだ。

 

「何もしてません。僕たち友達です」

 

「お姉さんたち観光客さんですよね!」

 

「たくさんお金落としていってね!」

 

 ………………こ、これがゆとりを抜けた新世代の底力だと……? 揉み手とかしてるんですけど……?

 

「あ!? まさか……乙女さん!?」

 

「ほ、本当だ!? 本物だ!?」

 

 そんなことで愕然としていると、イジメっ子たちに囲まれてしまった。人気者は観光地に来ると人寄せパンダに変身するのである。

 

 サインでもせがまれるかと考えていたら徐にスマホと自撮り棒を出し、写真撮影をせがまれた。とりあえず私を含めて4人で2~3枚撮ってやると嬉しそうに去って行った。去り際にチャンネルと同じで優しいって言われたのがちょっと嬉しかったりする。

 

 これが若さ……若さってなんだ。ふりむかないことさ。愛ってなんだ。ためらわないことなのね……。

 

「あんな子たちにまで愛想振り撒くなんて……」

 

「あら、あれぐらいはまだまだ可愛いものね。それに彼らは悪くないわ。あんなことを言ってしまう環境で育て、教育を疎かにした親が悪いのよ。いつか、自分で気付けば更生するだろうし、そうでなければ同じような親になるだけよ。部外者がとやかく言ったところで、こっちの時間が無駄になるわ」

 

「…………乙女ってなんでそんなに達観してるの?」

 

「うふふ、ヒ・ミ・ツ」

 

 そりゃあ、1000年以上人間と生きているからだと口が滑りそうになるが、適当に誤魔化しておく。

 

 まあ、とりあえずまなが助け起こした男の子から牛鬼というもの話を聞く流れになった。

 

 とりあえず少年よ。ジュースを奢ってやろう。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

◇◆◇◆◇◆

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 男の子の話をまとめると、牛鬼とは昔に大勢の人間を喰らった妖怪らしい。それが牛鬼岩とやらに封じられているお陰でこの島は今、平和なんだそうだ。牛鬼岩に近づいてはいけないと言われているところから察するに、物理的に解けるような術で封印されたと見てほぼ間違いないか。

 

 島の人はあんまり信じていないと、男の子は肩を落とした。とすると、最後に暴れたのは忘れられるほど大昔の話なのだろう。

 

「乙女はどう思う?」

 

 まなが男の子をフォローする中、猫娘は私にそう聞いてきた。

 

「島に着いた直後に微かな妖気を感じられたことを考えても、(いにしえ)の大妖怪ってところかしら? まあ、何れにせよ。人間が自らの意思で封印を解こうとでもしない限りは大丈夫でしょう」

 

「そうだといいわね……」

 

 その後、男の子――恭輔くんが島を案内してくれるというので観光を楽しむことになった。

 

 

 

 

 少し観光をしてわかったことだが、どうやらこの観光地は若者の観光客が非常に多いようだ。ただの漁村からどうやってここまで若者の目を引くに至ったのか、逆に気になる。

 

「意外と声かけられたりしないのね」

 

 お昼時になり、お洒落なレストランで食事をとっていると、そんなことを猫娘が投げ掛けて来た。

 

「そうねぇ。あなたは突然目の前から総理大臣やスーパーモデルが歩いて来たとして、声を掛けれるかしら?」

 

「それは……そうね」

 

「人間も妖怪もそんなものよ。まず、見た者を疑うわ。それでそうでないかって気づいても、確証が得られなければ遠巻きで見つめるぐらいで、話し掛けは中々出来ないものね。大人なら尚更ね」

 

「そうなの……ねえ乙女」

 

「んー?」

 

 私はカレースプーンで特盛のカツカレーを頬張りつつ、他に注文した日替わりランチと、特盛の親子丼にも手をつける。うん、美味しいわね。流石は観光地。

 

「どんだけ食べるのよあんた!?」

 

「制限時間15分のわんこそば400杯以上食べたことあるわよ?」

 

「乙女姉、普段はあんまり食べないけど、旅行中とかだったり、完食すれば特典があるデカ盛りメニューが目に入ったりするとたくさん食べるんだよね」

 

「うふふ、私は人喰いの半妖よ。成人男性ひとりが何十kgあると思っているのかしら?」

 

「釈然としないけど、納得するしかないわね……」

 

 そんなこんなで、初日は主に食べ歩きを中心にしつつ観光をすることになった。

 

 

 

「ねえ猫娘さん……」

 

「なによ?」

 

「普段はあんまり入らないのに、旅行先でマックを見つけると無性に入りたくなるのってなんでかしらね?」

 

「…………ちょっとわかるわ」

 

「よし」

 

「行くな」

 

「ああん」

 

 

 

「銀だこ……見つけようとするとあんまりないのに、観光地には本当にどこにでもあるわね。商売上手だわ」

 

「へー、で? 手元のソレは?」

 

「銀だこのさっぱりおろし天つゆねぎだこよ!」

 

「買ってんじゃないわ――ふぐっ!?」

 

「はい、あーん。美味しいわよ」

 

「お姉ちゃん!? 猫娘さん猫舌だから悶絶してるよ!?」

 

 

 

「ふふふーん、やっぱり旅行はコレよね」

 

「何買ったの乙女姉?」

 

「ペナントと木刀」

 

「いつの時代の修学旅行生よ!?」

 

「え!? 今の子は買わないの!? ナウなヤングに馬鹿ウケじゃないの!?」

 

「あんたひょっとして私をおちょくってないわよねぇ!?」

 

 

 

 楽しい時間はあっという間なのであった。後、猫娘はとても面白い。おっきーとは別ベクトルで弄り甲斐があるわ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

◆◇◆◇◆◇

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 その日の日暮れ。私はまなと猫娘と恭輔くんとは別行動をして牛鬼の牛鬼岩に来ていた。場所が分かりにくかったので海岸沿いを移動して来ることになり、思ったより時間を掛けてしまったのでもう太陽は沈んでしまった。

 

 だが、それどころではない。

 

「牛鬼はどこじゃ……?」

 

 牛鬼岩はパックリと開かれており、その中に牛鬼らしき妖怪の魂は見当たらない。いや……まさかこんなに早過ぎるフラグ回収があって――。

 

 次の瞬間、ネオン街のようにきらびやかだった街の灯りが突如として消え、闇に包まれる。妖怪や術的なものではなく、物理的な停電だろう。

 

「………………」

 

 なんかもう煤けたような気分になりつつ耳と尻尾を出し、鬼太郎の妖怪アンテナよりも感度の悪い私の感覚器で妖怪を感じ取ってみると、街の方にかなり巨大な妖気を持った存在がいることに初めて気が付く。

 

 どうやら私はタッチの差で牛鬼と入れ違いになっていたらしい。空へと飛び上がる――のは乙女でやると流石に周りの目がマズいので、100mを10秒台程の速度で走って街に戻った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

◆◇◆◇◆◇

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 街に帰ると、蜘蛛と牛と鬼を合わせたような妖怪――牛鬼と、鬼太郎が戦闘をしていた。ペースは鬼太郎にあるようなので加勢はせず、近くで見つけたまなと猫娘と恭輔くんを見つけ、猫娘が傷ついている様子だったのでそちらに駆け寄り、妖術で治療を施した。

 

「あ、ありがとう」

 

「お礼はいいわ。それより……おかしいわね。妖力の大きさと戦闘力が噛み合ってないわ」

 

「どういうこと……?」

 

 私は牛鬼を眺め、明らかな違和感を覚える。それは牛鬼が持っている妖気に比べ、あまりに力量が比例していないと考えたのだ。その手の妖怪は撤退も辞さない程度には、細心の注意を持って当たらねばならない。

 

「多分、アレは何か他に隠し球を持っているか、能力に特化した大妖怪よ」

 

「えっ!? なら鬼太郎に伝えな――」

 

『指鉄砲!』

 

 しかし、時は既に鬼太郎が牛鬼の眉間に指鉄砲を放ち、風穴を開けて止めを刺していた。まあ、倒せたならば構わないかと思ったが、鬼太郎がこちらを向いた瞬間、牛鬼の死骸から小さく希薄なモヤのような何かが上がるのが見え、私以外に気付かれる事なく鬼太郎へと侵入した。

 

 はぁ、鬼太郎……私、お前には大妖怪と戦う時は、魂が消滅する最後の最期まで決して目を離すなと教えたハズなのだが……本当に能力に弱いな鬼太郎!?

 

 近くにいた恭輔くんから牛鬼を倒した者は牛鬼になるという今更過ぎる情報を聞いた。後2分、早く言って欲しかったものである。

 

 瞬く間に鬼太郎は牛鬼へと変わる。そして、その巨体で周囲の建物を無差別に破壊し始めた。蜘蛛の子を散らすように一目散に人間は逃げ去り、私たちに気を取られる者はいないだろう。

 

 誰も見ていないなら()()()の力を出し惜しむ事もない。私は歩いてまな達がいる場所から外れ、牛鬼の前に立った。

 

「猫娘さん。目玉のおやじさん。まなと恭輔くんを連れて避難して」

 

「乙女はどうするの!?」

 

「そうじゃ!? 例え倒せても乙女ちゃんまで牛鬼に――」

 

 猫娘の言葉に答え、目玉のおやじの言葉を遮るように半妖の犬山乙女としての妖力を解放して辺りを黒に染める。その直後、牛鬼の爪が私に目掛けて振り下ろされた。

 

「ふふ、牛鬼と祟り神の喧嘩に巻き込まれたいなら止めはしないわよ?」

 

 私は片腕で牛鬼の爪を受け止める。私の全身を駆け抜けた牛鬼の力が地面のアスファルトを大きく破壊するが、私自身は無傷でそこにいた。

 

 お返しに掴んだ爪を引っ張ると、牛鬼の巨体が少し引き摺られ、体勢を崩して前のめりになった。すかさずがら空きの頭に近づき、牙の覗く顎を蹴り上げてやると、口の中で粉砕した牙の欠片が少し口から溢れ落ちる。更に一本の尻尾を生やし、牛鬼の頭から胴に掛けて振り下ろしてやると、牛鬼はアスファルトを激しく砕きながらコンクリートの地面に沈む。

 

 明らかに質量を無視したその光景に猫娘も目玉のおやじも言葉を失った様子だ。私は耳を生やし、首を二度ほど鳴らしてから顔だけ猫娘たちに向けて口を開く。

 

「島の裏で思い付く限りのことをやるだけやってみるわ。父殺しの稲荷神は伊達じゃないのよ? だから誰も私と牛鬼に近づけないで」

 

「まさか、ここまでとは……」

 

「大丈夫だよ、猫娘さん!」

 

 まなは何も心配していないといった様子で笑顔を浮かべている。

 

「私のお姉ちゃんはとっても強いんだから!」

 

「鬼太郎を……助けて!」

 

 私は猫娘の血を吐くようなその言葉に言葉は返さず、ただ目を細めて笑うと牛鬼を誘導するため、火山の方へと向かった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

◇◆◇◆◇◆

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ここなら誰も来ないわね」

 

 私は牛鬼を火山を挟んで街の裏側まで誘導した。鬼太郎をベースにしても牛鬼はトロいので、少し時間が掛かった分、鬱憤を晴れさせて貰おう。

 

 私は尻尾から五尾の弓琴を取り出し、座るような姿勢で宙に浮くと弦を張った。

 

「何を弾こうかしら?」

 

 いつの間にか雨が降っているが、たまにはこういう時に弾くのも悪くない。弦に指をつけ、弾いてみると雨音よりも澄んだ音色が響き渡る。

 

 その直後、牛鬼の前足の爪が私目掛けて振り下ろされ――幾重もの真空の刃による攻撃により、爪が切り落とされた。次にそれでも振るおうとした腕が半ばから落ち、更に根本から腕が離れた。

 

 尚も曲を演奏し続け、その一音、一音が刃となり牛鬼の体を削ぎ落とし、爪を飛ばし、腕を削ぎ、角を削る。

 

「曲目はAmazing(アメイジング) Grace(グレイス)。2分間の短い演奏だけど、楽しんでいってね?」

 

 この弓琴の射程に入った時点で、牛鬼はとっくに詰んでいるのだ。指の一本、楽譜の音符ひとつ、その全てが刃と化す。

 

 

 

 

 

 

 約2分の演奏後。そこには胴体と頭以外の全てのパーツを斬り落とされ、頭部も角や牙をもがれた牛鬼が転がっていた。最早、何も出来ないが、死ねない限りはその能力は発動しない。それなら幾らでも対処のしようはある。この後はゆっくりと鬼太郎を取り出し、牛鬼をどうにかすれば――。

 

 

「よい……演奏だった」

 

 

 すると明後日の方向から男性の声が聞こえ、そちらを見る。そこには天狗のようであるが、それとは比べ物にならない程の神性を帯びた存在がそこにいた。顕現にあたり、幾らかダウングレードした化身のようだが、それでも明らかに現代に居て良いような神格ではない。

 

「紹介が遅れた。私は"カルラ"だ」

 

「仏教での名は迦楼羅天(かるらてん)だが、日本で分かりやすい名前はインド神話での名の"ガルーダ"。八部衆にして、二十八部衆のひとつ。随分とまあ、大物が来たのう……」

 

 正直、かなり驚いたが、戦う等という次元の存在ではないため、逆に冷静になり溜め息を溢した。

 

 まあ、仏神相手に嘘なんて通じるわけもない。私のことは全てお見通しだろう。ここまで来ると逆にやり易いというものだ。猫娘に誰も来させるなと言ったハズなんだがな。

 

「して何用じゃ? 流石に仏神やインド神に喧嘩を売るようなことをするほど、妾は無礼者でも蛮勇でもないぞ?」

 

「ああ、人々の願いに答え、牛鬼を再封印しに来たのだが……現世では自身が、地獄では子の二人が多大な貢献をしている"羽衣狐"が解決に当たっているのなら私の出る幕は無さそうだな」

 

 ………………あれ? 私、めっちゃ仏神に高評価されてる……? 

 

 まあ、元々能力の対策も込みで解決する予定だったからカルラ様がいなくとも特に問題ない。しかし、やってくれるというならカルラ様にさっさとやって欲しいのだが、既に言い出せる空気ではない。

 

「あまり見ていて気持ちのよいものではないぞ?」

 

 遠回しにお前がやれと言ったつもりだが、言葉通りに受け取ったか、気づいてないのか、流されたのか、カルラ様は空に浮きながら演目でも観るように静観している。チクショウ、何しに来たんだコイツ……?

 

 まあ、いい……そんなに見たいなら見せてやる。これが血生臭い大妖怪のやり方だ。

 

「これぞ大妖怪同士の喰らい合い、"貴様の力"と"妾の胎"……どちらが上回るか、見物じゃのう」

 

 私は牛鬼の顔に歯を立てた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

◇◆◇◆◇◆

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 数分で牛鬼を喰らい尽くし、牛鬼と憑依された鬼太郎は私の(はら)に収まった。もっと能力で抵抗してくるかと思っていたが、どうやら地母神に近い性質の大妖怪にはあまり対応できないらしい。

 

 そして、私はまずその場で――。

 

 

 "胎から鬼太郎を産み直した"

 

 

 きぬや晴明を産んだ私は元々、子を産む才があった。それも転生を経る度に強化され、今では好きに胎に取り込んだモノを好きにデザインし、産み直す事さえも可能である。その性質は太古の地母神にさえ近い。

 

 それを使って産み直した鬼太郎は、服とちゃんちゃんこを纏ったまま無事に産まれたので、カルラ様には犬山乙女として扱うように頼みつつ、目を覚ました鬼太郎を同伴してまなと猫娘の元へと向った。

 

 ちなみに鬼太郎は何も知らないようなので、私が産んだことは伝えていない。私が弓琴で牛鬼を動けないようにして、牛鬼自体を胎に取り込んだところでカルラ様が来て、カルラ様が鬼太郎を再生させたということにしておいた。

 

 その途中で見た目だけ禍々しい私の妖気の滓を切り離してカルラ様が持ってきていた袋に詰める。そして、カルラ様はそれを牛鬼として封印し、それを人間達に見せてから帰って行った。意外と融通が効く仏神である。一部始終を見ていた鬼太郎は何とも言えない顔をしていたが、虚偽でも残った方がこの島の人間の為だろうと諭すと、それはそうだと同意してくれた。

 

 また、私の妖気の残り滓とは言っても遊び半分で開けると牛鬼っぽい形になって暴れまわるので注意だ。暫く暴れると牛鬼岩に吸い込まれるように帰る。それと同時に真実は永遠に牛鬼岩の中である。

 

 去り際に"面白い土産話ができた"等と呟きながらカルラ様は祠に帰って行ったが、知らないったら知らない。

 

 そして、現在はまなと鬼太郎と猫娘と目玉のおやじに加え、いつの間にかいたねずみ男も加え、船に乗って本土に帰っているところである。

 

「色々、済まなかったな猫娘。この罪滅ぼしはきっとするよ」

 

「ううん。こうして戻ってきてくれたんだもん。それだけで……」

 

 もう君たち結婚しなさいよ。よくそんな関係を数十年以上続けて来れたものだ……猫娘が不憫に感じる。仮に私が猫娘ならとっくに鬼太郎を襲って子供の2~3人でも拵えているところだろう。

 

 そんなことを考えていると、ねずみ男から悲鳴が上がった。猫娘を茶化したのだろう。そんな中、まなが私に声を掛けて来きた。

 

「乙女姉、それで牛鬼は消えたの?」

 

「あら、そんなことないわよ。まだ、(ここ)にいるわ」

 

 その言葉に鬼太郎を含めた妖怪全員の驚いた視線が集まる。どうやら私が完全に無力化したものだと思われていたらしい。まあ、体型も一切変わっていないので、それも仕方ないかもしれないが、生憎、そこまで万能な体ではない。

 

「ん……」

 

 産む――というよりも服越しに胎へと直接手を入れる。そして、中にあるものを抱えるように取り出すと、私の手にはうっすらと灰色の髪が生えた生後半年程の赤子が抱かれていた。我ながら便利な体である。このように私が子を産むという行為は、時間を掛けて強力な存在を産もうとしない限りはとても機械的でさえある。

 

「あら? 男の子ね」

 

「お、お……お姉ちゃんがお母さんに!?」

 

 今更過ぎるまなの叫びに遅れて鬼太郎らの驚愕の声が上がる。

 

 ちなみに牛鬼くんはほぼ妖怪のため、ゲゲゲの森で引き取られることになったのと共に、私が大手を振ってゲゲゲの森に入り浸る理由が出来たのであった。

 

 

 

 







牛鬼(ゲゲゲの鬼太郎)→牛鬼(ぬらりひょんの孫) Change!!



ハゴロモさんのお腹はfateで言うところの百獣母胎(ポトニア・テローン)のようになっております。ぬらりひょんの孫でも晴明を産み直してたからね、仕方ないね。


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