まあ、タグにつけたので隠す気は全くありませんけど。
ちなみに時系列的に朝のタイミングでまなちゃんの部屋に目玉のおやじさんいましたけどハゴロモさんは気付いていません。ちっちゃいからね仕方ないね。
庭が勝手に禍々しいガーデニングをされたその日の夕方。学校帰りに私は家にはすぐに帰らずに街をぶらついていた。
すると主に人通りの多いところで何度か同じ木を見かける。観察しているとどうやら人間にも見えているようなので、携帯でニュースを見てみるとニュースの話題は何れも人間が謎の赤い木に変えられたということで持ちきりであった。
尤も人間のコメンテイターや、何処から連れてきたんだと言いたくなる専門家の意見は、新種のウィルスや生物兵器だの果ては宇宙人の仕業だ等と私が欲しい答えは無かった。纏う妖気からして確実に妖怪の仕業だろう。
一応私は1000年以上は生きているが、基本的に人間に寄生するように生きてきたため、良くも悪くもあまり妖怪自体への知識はない。そのため、私が知りたいのはどこのどいつがやったかである。
「仕方がないのう」
まあ、ただの人間にそこまで求めるのは酷というものだろう。私は携帯電話に入っているコミュニケーションツールを起動してとある知り合いのページを開いた。そこには"おっきー"として登録されている。
「うわ……」
最後に開いて返信したのは昼食後の休憩中だったのだが、開いてみれば20件以上の未読が付いていた。読んでみると何れもこれも大した内容ではない。よほどに暇なのだろうか……いや、暇だろうなアイツは。
ハゴロモ《おいニート。知恵を貸せ》
まあ、多分すぐに返事が来るだろう。一分もすれ――。
おっきー《せめて引きこもりって言ってよぉ!?》
1分どころか30秒以内に返信が帰って来た。相変わらず暇な奴だ。
おっきー《な、何さ急に。いつも私にリプしてくれないのに……》
私が返信を返そうと字を打っていると先におっきーから更に返事が来る。内容から察するに知恵を貸せという文字を見て少し付け上がったのかニートで引きこもりな上にひねくれ始めたようだ。
私は面倒になりそうだったので今は時間が惜しいため、書いていた文を消して簡単に文を書いた。
ハゴロモ《もうコミケの手伝いせんぞ》
おっきー《アッハイ。それで要件はなんでしょうかハロハロさん?》
必殺の言葉によりおっきーが引き下がったので私は朝撮った家の木の画像を探して文章を打った。
説明しておくとコイツの名はおっきー。引きこもりの妖怪であり、日本で引きこもりの人間が出るのは全ておっきーの妖気に当てられたからである。
……真面目に説明すると名前は刑部姫。姫路城の天守閣で引きこもっている狐の妖怪である。昔、転生のために日本中を転々としていた頃に知り合ってから同じ狐の妖怪ということでずっと交友を続けている。滅多に出歩かないが、私の数少ない妖怪の友人だったりするためそれを言うと付け上がるので本人には言わない。
ハゴロモ《妾の庭にこれを生やした愚か者は誰ぞ?》
その文と共に朝に撮っておいた画像をおっきーに送った。その妖怪について自分なりに考える間も無くおっきーから返信が来る。
おっきー《ああ、"吸血木"かぁ。それは"のびあがり"の仕業だね》
ハゴロモ《"のびあがり"とな?》
漢字で書くと伸び上がり。別名はのびあがり入道。おっきーが言うには見ているうちに次第に大きくなったかと思えば、見上げるほどに大きくなる妖怪で、徳島県では見上げた者の首筋に噛み付いたり、香川県では首を絞めたりするなどの人に危害を加える伝承も残っているとのこと。
おっきー《でもでもそこまでは人間に伝わる伝承。本当ののびあがりは人間や妖怪に吸血木の種を植え付る妖怪だね》
そして吸血木とは種を植え付けられた者がなる姿のこと。生きたまま木にされてしまうとは全くもって恐ろしい話だ。
ハゴロモ《物騒な妖怪じゃな》
おっきー《ハロハロには負けるよ…》
失礼な。私は人間にはとっても優しい妖怪だ。
ちなみにさっきから言っているハロハロとは私のあだ名らしい。もう少しマシなものがよかったが、あだ名を付けられたのなんて生まれて初めてなのでちょっと嬉しい。
おっきー《ちなみにだけど封印されてたのびあがりを解いたのはこの馬鹿だよ》
私が返信するより前におっきーは動画を送ってきた。文を作るのを止めてそれを見ると、そこにはのびあがりの封じられた石碑の札を剥がし、石碑ごと打ち壊してしまう男の姿が映っていた。
なんともまあ、脳みその足りない奴だ。やったことでどうなるか信じていなくとも多少の敬ぐらいあるものだろうに。
まあ、最初は興味本意で、次は昔の気持ちよさが忘れられないでまぐわり、両方とも妊娠したアホ狐ならばここにいる。この男性も失敗を糧に変われるといいな。
ハゴロモ《それにしても相変わらずお主はなんでも知っておるな》
おっきー《そりゃ勿論だよ! ネットの海は私の世界だから妖怪絡みで知らないことなんて無いよ!》
ハゴロモ《知ってるだけじゃがな》
おっきー《ひぇっ!? 辛辣!?》
ちなみにネットがある前のおっきーは本の虫だった。なので妖怪にも非常に詳しいのだろう。
聞きたいことは聞き終えたので一旦おっきーとの話を切ろうとしていたところ。
にゅるんと音が出そうな様相で眼前のアスファルトの地面から身体の透けたひとつ目の大きな妖怪が生えてきた。
ふよふよと浮遊しているその妖怪は引き伸ばされた金太郎飴のような胴体に、心霊写真に写りそうな手が無数に生え、半透明の緑色をしている。
「…………あいぎゃうのう」
ちょっと可愛いじゃないか…。
ぷにぷにしてそうなのであの上に寝そべってみたらさぞ気持ちいいだろうな等と考えていると、おっきーから画像付きでメッセージが来ていることに気が付いて携帯電話を眺める。
おっきー《のびあがりのイラスト書いてみたよー》
そこにはボールペンで書かれた金太郎のような胴体に無数の手が足のように生えたひとつ目の妖怪の姿が写っていた。
種汁プシャー!と吹き出しがついていて何かを発射する様子であり、短時間で書いたとは思えないリアルな躍動感がある。
相変わらず、無駄に絵と折り紙だけは上手いな。
そして、携帯電話から顔を上げると、さっきよりもこちらに近付いてきている緑色の妖怪と目があった。
…………………………。
……………………。
………………。
…………。
……。
お前がのびあがりか!
唐突過ぎる出会いに思考を停止させながらも尻尾を一本出して、背中から入れるように尻尾に片手を突っ込む。
私が尻尾から"それ"を取り出すのと、のびあがりが何かを発射するのはほぼ同時であった。
"二尾の鉄扇"
尻尾から取り出された黒い鉄扇は異様な弧を描きながら伸び、私を守るために前面で押し広がり盾となる。のびあがりから発射された何かは鉄扇に防がれて霧散した。
これは私が尻尾を増やしながら集めた武具のひとつの鉄扇である。質量を無視して伸縮自在の不思議な鉄扇だ。こういった武具を一尾につき一つ収納している。
あれが吸血木の種か。あの手で植え付けるのかと思えば発射するとはなんと凶悪な武器だ。私も元から強力な能力を持つ妖怪で生まれたかったものだな。
「小癪な…」
そんなことを考えている間にも撃ち続けられる吸血木の種を鉄扇で防ぎながら、密かに出している一本の尻尾をのびあがりに伸ばす。
『―――!?』
のびあがりの胴体に私の尻尾が巻き付き、こちらに引き寄せた。のびあがりは身体をくの字に曲げられながら私の眼前まで急接近する。
「だが獲ったぞ」
即座に鉄扇を15m程まで巨大化させ、のびあがりに被さるように振り上げる。そしてのびあがりを地面に捩じ伏せながら尻尾を戻すと、鉄扇でのびあがりを叩き潰した。
黒々としたアスファルトに黒鉄色の鉄扇が打ち付けられ、のびあがりのいた場所は数m陥没し、鉄扇を中心にヒビと亀裂が入り、石混じりの埃りを巻き上げる。
「んぅ?」
だが、私はそれを奇妙に思った。手応えがあり過ぎたのだ。これではあの弾力のありそうなグミみたいなのびあがりを潰したというよりも石でも叩いたような…?
「なに…?」
鉄扇を持ち上げるとそこにのびあがりの姿は無かった。そう言えば最初はアスファルトの地面から飛び出してきたことを思い出す。
何処へいった? 何処から攻撃してくる?
私は出している一本に加えてもう一本尻尾を出すと、私のいる地面を含めて何処から来てもいいように構える。
そうして10秒20秒と時間が経っていき、1分ほど経った頃にようやく私はそのことに気が付いた。
「…………逃げおったか」
当たる直前に壁抜けをしてそのまま逃げ出したのだろう。私の行動は無駄で間抜けなモノだったということだ。
"寿命が無に等しい妖怪にとって格上の妖怪を相手にすることは自殺に等しい。故に逃ることこそが妖怪として正しい行為だ"
私はかつて一尾だった頃に肝に命じていたことを思い出した。
いつからそんな基本的なことを忘れる程強くなったと思い込んだのだろうか? 今回は私の負けだな。
「今日は終いか」
今日の夕飯当番は私である。そろそろ帰らなくては家族が心配するだろう。私は鉄扇を尻尾にしまって尻尾も戻して、服に付いた埃を払ってから家路に着いた。
尚、のびあがりはその日の夜に私以外の者によって退治されてしまったため、再び私の前に現れることは無かった。
◇◆◇◆◇◆
「はぁ……」
私は家に帰りながら誰に対してでもなく溜め息を吐いた。ここ二日で色々あった。ううん、あり過ぎた。
裕太の頼みで妖怪ポストに手紙を投函したことから始まって、鬼太郎と目玉のおやじさんに会って、鬼太郎が吸血木になって、1日経って復活して、のびあがりを鬼太郎が倒したら鬼太郎が誰かに弓で射られた。
(いやいやいや、我ながらどういうことよ)
ひとりでツッコミを入れたけど事実だから仕方ない。妖怪というものがホントにいるだなんて思いもしなかった。
「鬼太郎大丈夫かなぁ……」
吸血木になってもまた元に戻れてたからいらない心配かも知れないけれど、心配なものは心配だ。
それともうひとつ気がかりなことが浮かんだ。
「今日のこと"乙女姉"には……いやー、やっぱり言えないよね」
私には少し歳上の姉がいる。
背が高くて雪みたいに真っ白の肌にとっても長い黒髪をした私のお姉ちゃん。
容姿端麗、成績優秀、その上優しくて家事万能で料理上手な完璧超人。お母さんはちょっとぐらいお姉ちゃんの才能を私にも残してほしかったな!
とはいっても私自身お姉ちゃんのことは大好き。嫌う理由がないもの。流石に抱き着いたりはもうしなくなったけどさ。後、何と無く面と向かってお姉ちゃんとも呼ばなくなっちゃった。
だからお姉ちゃんには思ったことでも下らないことだって何でも話せるし、話したいと思う。正直、家に帰ったらまずお姉ちゃんに学校であったことの愚痴をはなしたりしてるからね。
お父さんとお母さんはまだそんなにでもないんだけど、お姉ちゃんに秘密を作るのだけはなんだか気が引けるんだよね……。
そんなことを考えているともう家の玄関の前まで来ていた。私は一度深呼吸をしてから玄関扉を開けた。
「おかえりなさい、まな」
「乙女姉ただいまー!」
そこにはお姉ちゃんがいつも家にいるときは、何故か必ず私がドアを開けるタイミングで玄関にいるお姉ちゃんがいた。今日は黒のロングスカートにセーターを着ている。学校の制服も黒いけど部屋着はもっと真っ黒。でも綺麗なんだからちょっとズルい。
こうやっていつもみたいにお姉ちゃんが出迎え……て…きて……くれ…………え?
「遅かったわね。今日の晩ご飯は、ごはんとお味噌汁に
いつものようにニコニコと柔らかい笑顔のお姉ちゃんが私に献立の説明をしてくれているけれど。それは全く頭に入って来なかった。
だって――――――。
お姉ちゃんの頭で嬉しそうにぴこぴこ動いてる"狐みたいな黒い耳"はいったい何なの? え? え? ええ!?
「どうかしたのかしら?」
「お、おお、お……お姉ちゃん!」
「あら! 久し振りに乙女姉じゃなくてお姉ちゃんって呼んでくれたわね。うふふ、嬉しい」
あ! 呼んじゃった恥ずかしい! って違う! それ所じゃ……………………あれ?
目を擦ってもう一度見てみるけど、いつの間にかお姉ちゃんの頭に生えてた狐耳は無くなっていていつものお姉ちゃんがそこにいた。
「あれ…?」
「どうしたの? へんなまなね。早くご飯にしないと冷めてしまうわよ?」
「あ、うん……」
(見間違い……だったのかな?)
そういうことにして私は考えるのを止めた。ここ最近で色んな非常識を見たけど、流石に血の繋がった私のお姉ちゃんもそう見えるなんてどうかしてるよね。
「行くわよ。まな」
「はーい、はーい」
けれど、ほんの少しだけ私は思った。
(でもお姉ちゃんなら妖怪だって言われても私信じられるなぁ)
そんなちょっと失礼なことを考えながら私はお姉ちゃんの後について家に入っていった。
はい、おっきーこと刑部姫でした。もちろん、刑部姫のままで登場です。なんか今回の鬼太郎のコンセプトだとスゴく噛み合いそうですしな。
ちなみにおっきーのポジションは目玉のおやじです(解説役)