正直SSの数的にマイナーカテゴリーかつ私の拙い腕では行ってもお気に入り300で評価10ぐらい行ったら奇跡で黄色バーぐらいかなー等と考えていたので驚きと共に感謝しながら、私の宝具Lv5のバサランテさんを孔明二匹でNPチャージして一撃でサバを折り続けております。
後、一万字越え掛けたので二話に分けることにしました。二話は今書いています。それから感想には私のポリシーとして時間がかかろうと全て返信いたしますのでお待ち下さい。
それでは本編をどうぞ。
色んな意味で面白かったライブから少し経った頃。私は夕方の街をひとりで出歩いていた。
というのも新学期という春を迎えてから、またまたまた妖怪によるものと思われる事件が頻発しているからである。
どうやら今回は男女問わず数人の小・中学生程の子供が行方不明なのだ。ショタロリコンの人間が犯人という線も濃厚だが、それならば妖怪よりも早く解決せねばならない。まなはとてつもなく可愛いから見掛けられれば拐われてしまうだろう。そんなR-18な展開うらやましけしから―――こほん、お姉ちゃん絶対許しません。
ただの妖怪でも人間のショタロリコンでもなく、ショタロリコンの妖怪とかいう奴が犯人かもしれないがな。まあ、そんな稀有な妖怪なんてそういな…………うん、嘘ついた。これまで倒した奴等を思い返したら結構いた気がする。
『腐るほど思い当たる節があるわよねー……』
話は変わるが、それにしてもひとつ思うことがある。
この身体になってからここにずっと住んでいるのだが、この街はかなり異常な頻度で妖怪による事件に見舞われている。米花町かここは。
『妖怪のヨハネスブルグかな?』
「少年探偵と違って犯人を見付けたらすぐに屠ってよいから楽といえば楽じゃがな」
実際にそんな感じなので困る。まあ、私のような大妖怪が住んでいるため、私の妖気に引かれて妖怪がやって来るとかいう原因だったら私はバーローと同列になってしまうが、幸か不幸か理由は不明である。
たまに実力を上げたいと思われる退魔師の家系の者がこの街に来たりしているのを見掛けるが、だいたいの奴らは妖怪に返り討ちにされて、死にかけている。そんな所を見掛ければ私が助けたりもしているな。無論、見てなきゃ死んでいる。私が救う人間はあくまでも目の届く範囲の者だからだ。
まあ、この街で害を成す妖怪の多くはのびあがりクラスの妖怪が平均ラインだ。そんなものがゴロゴロいるのでは最低でも
そんな妖怪について少し語ると、妖怪は私が思うに一部例外を除いて大きく分けると2タイプあると考えている。
ひとつは種族として存在する妖怪。例をあげると鬼、河童、天狗等が最たるものだろう。勿論、妖狐の私やおっきー曰く幽霊族の鬼太郎もこれに含まれ、妖怪全体の数でいえばこちらが大多数といえる。こちらはどちらかと言えば人間に悪戯したり、勝負を持ち掛ける妖怪が多く、人間の命を快楽的に取ろうとするものはあまりいない。まあ、人間を食べたいと考えている奴は結構いるが、食というもののためある程度は致し方なしと私も思う。
そして、もうひとつは強い感情や思いが妖怪という形を成したものだ。例えばかつて未知であった現象そのものの恐怖が妖怪化したものや、強い怨念や執念が妖怪化したものである。前者ならかまいたちや、やまびこ等が該当し、後者ならばがしゃどくろや、
ふふん、私だっておっきー程ではないが、そこそこ妖怪の知識はあるのだ。まあ、人間に悪さをするような妖怪は基本的に一点モノの後者の妖怪が圧倒的に多いので私の知識は全く役に立たないがな。
「おらんのう」
『どこにもいないねー』
さっきから私の肩でおっきーの声色を電話越しの声のように響かせる物体に目をやる。そこには折り紙で出来た箱が私の肩に乗っていた。おっきーの妖力を込めた折り紙を私が折った結果このようになった。これはとても優れもので姫路城に引きこもっているおっきーと視覚と聴覚を共有しているのだ。
おっきーの千代紙操法という妖術による能力らしいがそっちの妖術は私の分野ではないのでよく知らない。まあ、折り紙に目と耳があるのかというツッコミは妖術という言葉の前では意味をなさないのでしまってほしい。
この前のライブの時にまなの肩や頭に乗っていた目玉のおやじという小さい妖怪を見て、おっきーが思い付いたとのことである。
『それにしてもなんで箱なの? もっと可愛い感じのがよかったなーって私思うわ』
「何を言うか。引きこもりには似合いじゃろう?」
『……………………………………う゛ぅ゛ぅ゛ッ――!!』
おっきーがガチ泣きし始めたので今日の探索はここまでになった。
とりあえず今まで仕入れた情報を整理すると――。
・数人の子供が行方不明
・夕方の時間帯に多く消える
・建設中の建物が近い
うん、お姉ちゃん全然わかんないよ。私は事件について考えるのを止めてまなのことを考えながら家路に着いた。
◆◇◆◇◆◇
「妖怪に詳しい方を教えて欲しいの?」
学校が休みの日の朝。私はそんなことをお姉ちゃんに聞いていた。
「うん、そういう人乙女姉は知らないかなー? なんて、えへへ……」
お姉ちゃんは非常に不思議そうな顔をしながらも聞いてくれている。お姉ちゃんは突拍子もない話でも確り真に受けて聞いて答えを出してくれるから何でも話せちゃうんだよねー。流石に妖怪が本当にいることは話せなかったけど……。
こんなことを言い出したのはつい昨日ぐらいに猫姉さんから―――。
"いい? 多分、会うことはないでしょうけど、もし"羽衣狐"っていう狐の妖怪を少しでも聞いたり見たりしたら絶対に居そうな場所に近づいちゃダメよ?"
というメッセージを貰ったからだ。へへー。そんなこと言われたらとりあえずどういうものか調べたくなりますよねー!
なので今調べている事件と平行して、少しネットで調べてみたんだけどそういう名前の妖怪の情報は何処にもなかった。
だったら詳しそうな人に聞くのが一番だと思ったけど、流石に猫姉さんに聞いても詳しいことは教えてくれなそうだから、やたら交友関係の広いお姉ちゃんにダメ元で頼んでみた。お姉ちゃんはどんな突拍子のないことでも親身になって聞いてくれるから何でも話せちゃうんだよね。でも流石にお姉ちゃんは妖怪については無縁そうだから妖怪をよく知っている人はいないかと聞いてみた。
まあ、猫姉さんが直々に危ないって知らせてくれた妖怪を調べるのに後ろめたい気持ちもあるから、お姉ちゃんに聞いてダメだったらスッパリ諦めよ――。
「知っているわよ?」
「いるの!?」
聞いておいてあれだけど驚いた。まあ、お姉ちゃんは何故かハサミとかホチキスとかペーパーナイフとか先割れスプーンとか色んな物を持っていて、手品みたいにすぐに出してくれるからひょっとしたらとは思っていたけどさ。
お姉ちゃんにあるかどうか頼むと、後ろをパッと振り向いて、パッと戻ったら手に物を持っていて、それを抱えながら"お姉ちゃんの秘密道具は百八式まであるわッ!"って言うの。お姉ちゃんは手品がとっても上手いんだよね。その時の頼んだ物は遠心分離機だったなぁ。
「ただ、悪い方ではないんだけど……ちょっとその……少し……変わってるから注意してね?」
「え……?」
優しくて温厚なお姉ちゃんにここまで気を使わせる人って相当ヤバいんじゃ……?
そう思っている間にお姉ちゃんは、すぐにSNSアプリを開いて何かのやり取りをした後にIDを私に送って、相手を増やした。更にすぐにその人からメッセージが来る。
おっきー『ふっふっふー! 私をお呼びかね妹ちゃん?』
うわぁ、いきなりなんかスゴい人来た。
「ちなみにその人、引きこもりのネット弁慶だから優しく接してあげると喜ぶわよ?」
「そ、そうなんだ……」
とりあえず私は普通に挨拶をした。お姉ちゃんの知り合いってことは私よりも歳上だと思うからね。
おっきー《うわ、本当に妹なのか疑うレベルでいい子。うん、よろしくね》
あ、意外と常識的な人なのかも知れな―――。
おっきー《まあ、その前にー》
マナマナ《はい?》
おっきー《マナマナはヤメロォ!?(恐怖)》
「お、乙女姉……この人なんか叫び始めんだけど……?」
「ただの発作よ。害はな――」
おっきー《ちなみにマナマナっていうのは君が望む永遠というエロゲで緑の悪魔と呼ばれる存在の―――》
直ぐに来た長いメッセージの冒頭を読んでいるとお姉ちゃんにスマホを取り上げられた。
その時、いつもニコニコしているお姉ちゃんの顔が一瞬だけ真顔になったから吸い込まれそうなぐらい真っ黒な瞳が見えた。うーん、お姉ちゃんはいつも笑っているのもいいけど、今のみたいにキリッとしている方がカッコいいと思うんだけどなー。
「どうぞ」
そしてお姉ちゃんは少しスマホでやり取りをしてから私に返した。お姉ちゃんの顔はニコニコ笑顔の優しい表情に戻っている。
おっきー《このメッセージは削除されました》
マナマナ《このメッセージは削除されました》
あれ? あの長いメッセージが消されてて、その後でお姉ちゃんがしたと思う返信も消されてる。むう、なんだかちょっと気になる……。
「程々にしなさいね?」
お姉ちゃんはそう言うと私の部屋から出て行った。それを見送った直後にスマホが鳴り響き、おっきーさんからメッセージが来た。
おっきー《ガタガタガタガタガタガタガタガタガタガタ》
お姉ちゃん……この人ちょっと怖いよ……。いや、妖怪の知識を沢山持っている人なんだから変な人かもしれないとは思ってたけどさ……。
マナマナ《あの、質問いいですか?》
おっきー《アッハイ、あれね妹ちゃんはノーマルなのね。おk把握したわ。それで妖怪のことが知りたいって言ってたけど何を聞きたいの?》
マナマナ《はい、羽衣狐という妖怪のことを知りたいんです》
おっきー《( ゜д゜ )》
そう送るとおっきーさんは顔文字で返信を直ぐに返してきた。どういうこと?
おっきー《( ゜д゜)》
あ、まだ返してくる。
おっきー《(ひょっとしてそれはギャグで言ってるのか!?)》
無茶苦茶文字打つの速いなこの人……。私も速い方だと思ってたけど比べ物にならないや。
おっきー《えーと、ならとりあえず君が羽衣狐を知ることになった経緯を話して欲しいなー。というか姫知りたいなー》
最終的におっきーさんはそう返してきたので、私は本当のことを言うわけにもいかないから、風の噂でそういう名前の妖怪を聞いたけどネットの何処にも情報がなかったから知っているなら話を聞きたかったと説明した。うん、嘘はついてないからね。
おっきー《うーん……羽衣狐については本当に洒落にならないからなぁ……。下手なことを話したら後でただじゃ済まないだろうし……》
どうやら猫姉さんの話の通り、本当に危ない妖怪みたい。でもそれなら何が危険なのか知りたい。見上げ入道の時みたいに周りの人やお姉ちゃんが巻き込まれないとも限らないから。
マナマナ《そこをなんとかお願いします!》
おっきー《ふむー。じゃあ交換条件といこうか。マナマナは乙女ちゃんの妹ちゃんなのよね?》
マナマナ《はい、そうです》
おっきー《ならマナマナの自撮り写真が欲しいなー! 大丈夫! ばら蒔いたりしたら殺されるから誰にも拡散しないからね? ね? 乙女ちゃん頑なに妹ちゃんのこと教えてくれないんだ!》
写真かー。うーん……でもそれぐらいなら仕方ないかな。お姉ちゃんの友達らしいし、多分大丈夫と思おう。
私はカメラを起動して写真を撮ると、それをそのままおっきーさんに送った。
マナマナ《どうぞー》
送ったんだけど暫くおっきーさんは返事を返して来なかった。既読は付いているからちょっと不安になっていると返事が来た。
おっきー《マジか……ちっちゃいハロハロちゃん想像してたら、ただの可愛い娘が出てきた件について》
マナマナ《ハロハロちゃんってお姉ちゃんのことですか?》
何その呼び名。へー、お姉ちゃんネットではそんな可愛い名前も使ってるんだ。むふふ、お姉ちゃんの秘密ゲットだぜ。
おっきー《orz……今のはナイショで……》
マナマナ《わかってますって》
おっきー《じゃあ、簡単に羽衣狐がどんな妖怪なのか説明するね―――》
おっきーさんから聞いた羽衣狐という妖怪をまとめると――。
・種族は妖狐の妖怪
・妖怪の中での日本三大妖怪の一体
・1000年以上生きている
・転生という形で人間を乗っ取って生きる
・人間の社会の中で生活している
・妖怪に対して全く容赦がない
・誰にも負けたことも封印されたこともない
・個人で妖怪を殺した数が日本トップクラス
・妖術のプロフェッショナル
・尻尾に弓とか鉄扇とか刀とか槍とか色々仕込んでいる
・未亡人の育ママ
・余興好きでめんどくさがりやのドS
・超八方美人
だいたいこんな感じだった。なんか下3つは暴言混じりの愚痴みたいな文章だったから冗談だと思うけど……。
おっきー《まあ、羽衣狐っていう妖怪は妖怪にとって非常に恐れられているってことよ》
マナマナ《そうなんですか?》
おっきー《そうよ。そもそも妖怪にとって死ってなんだとマナマナは思う?》
妖怪にとっての死。考えたこともなかったけど、今考えてみると確かにわからない。だって妖怪には人間と違って寿命が無いからだ。
そんな時、浮かんだのはのびあがりが鬼太郎に退治されている姿だった。
マナマナ《誰かに退治されるからとかですか?》
おっきー《うーん、半分正解で半分不正解ね。確かにそうなんだけれど、それだけじゃ妖怪は本質的に死ぬことは決してないわ》
おっきーさんは更に文章を続けた。暫く私はメッセージを挟めそうにない。
おっきー《妖怪っていうのは想いの形みたいな存在だからね。例え見掛けの身体を散らそうとも、ゆっくりと時間を掛けてまた元の形に戻っちゃう。だから人間にとっての死っていうのは妖怪にとってはなんてことはないの。んー……双六で例えるなら一回休みになるみたいなものよ》
おっきーさんは"一回休みにしてはちょっと長めだけどね"と続けた。
おっきー《だから妖怪にとっての死っていうのは大きく分けてふたつ。ひとつは魂を封印されること。これなら封印を解かれない限りは決して世に出ることはないのだから実質死んだようなものよ》
おっきーさんは"まあ、この前バカな人間がのびあがりの封印を解いて大変なことになったみたいだけどね"と続けて更に文章を打った。
どうやらおっきーさんはのびあがりのことも知っているみたい。んー、おっきーさんってもしかして……。
おっきー《それから、もうひとつ。妖怪が妖怪に魂ごと喰われること。それなら喰らった妖怪が生きている限りは喰われた妖怪が二度と世に出ることはないからね。このふたつは双六で例えるならプレイヤーを直接消しちゃうようなものだもの》
私もなんとなく羽衣狐という妖怪の怖さが理解できてきた。要するに妖怪を好んで襲って食べる妖怪ということになるのかな。その上、さっきのおっきーさんの説明だとものすごく強い妖怪みたい。
おっきー《羽衣狐は色んな妖怪を倒しては封印したり、喰らったりしている妖怪なのよ。妖怪に嫌われるのは必然だね。加えて羽衣狐が人間社会に溶け込む能力は超一流だから人間も妖怪も誰もいることに気が付けない。人間の間で全く情報がないのはそのせいだよ》
マナマナ《そうなんですか》
おっきーさんの説明はとても分かりやすかった。それにどんなネットや本に載っていることよりも的を射ている気がする。
私は半ば確信に変わっていた疑問をおっきーさんにぶつけた。
マナマナ《ひょっとしておっきーさんって妖怪なんですか?》
そう打って送るとおっきーさんからの返事は暫くなかった。といってもおっきーさんの返信の速さと比較したからで、私的にはほんの少しの時間だけれど。
おっきー《いや、ほら。こんなの所詮妖怪を調べてる人間の世迷い言だし、100%創作のお話かも知れないし、というか普通こんなこと言う奴なんて頭が可笑しいと思うじゃないですか、実際今までそうだったし、だからこんなこと言ってたって話半分以下に聞いて勝手に呆れて帰ってくれるかなとか思ってのことだし、だから―――》
なんだかおっきーさんが長い文章を打ってきた。途中で読むのを止めて私はもう一度文章を送った。
マナマナ《おっきーさんって妖怪なんですね?》
おっきー《………………お姉ちゃんにはナイショダヨ?》
どうやらおっきーさんは猫姉さんみたいに人間の社会で暮らしている妖怪だったみたい。"刑部姫"って言うんだって。全く聞いたことないや。
それから私はおっきーさんと暫くやり取りをして今日のところはお開きにした。
◆◇◆◇◆◇
(本当に全く動かない……!)
おっきーさんとやり取りをしてからそう日が経っていない頃。私は石の柱の中に閉じ込められていた。
学校の社会科見学でここを見に来た時に見付けた石柱を鬼太郎たちに相談せずに、真っ先に自分だけで動いた結果がこれ。当然の罰だよね。
(助けて……鬼太郎……)
それでも私は鬼太郎や猫姉さんのことを思い浮かべた。
そして私は最後に出て来た大好きな人の名を思い浮かべる。
(お姉ちゃん……!)
「まな……?」
現在夕飯を作っている最中。なんだかわからないがとても嫌な予感がした。感覚的に言うと耳がピコピコ痺れて尻尾がみこーんとしたのである。いや、みこーんではなく、みこーん!としたな。
理論もへったくれもないが、そもそも私が妖怪とかいう非常識な存在なので案外こういうものが非常に有用なのである。
これはただ事ではないと考えた私は、即座に夕飯の支度を切り上げて放り出すと、玄関から外へと飛び出して空に舞い上がって辺りを見渡した。
「なんじゃあれは……?」
すると何やら禍々しくてどす黒い城が建っているのが目に入った。朝方や夕方にはあのようなものは存在しなかったため、明らかな異常であると言えよう。
「………………中々雅ではないか」
主にあの黒さがよい、禍々しさもとてもよい。城暮らしの経験もある私としてはあのような城に住みたいものだと思った。
しかし、今はそんなことよりもまなのことの方が重要。私は自身の感覚を極限まで研ぎ澄ませ、まながいるかもしれない場所を思い浮かべた。
「あっちか」
流石に何処にいるかはわからないが、気を引き締めれば方向ぐらいは何と無くわかるのである。うむ、これぞ姉妹の絆と言えよう。
前におっきーに話したらシスコンレーダーとか言いやがったので泣かしておいたが。
私は尻尾をまさぐると、その中から口が出るタイプの黒い狐のお面と、からだの線がくっきりと出る魔術師のような黒いローブと、黒のエンジニアブーツを取り出した。
使う必要がないので普段は使わなかったが、仮に知り合いで妖怪の見える人間を助ける必要があったらと一応、買い揃えておいたものである。よもや実の妹のために使うことになるとは思わなかったがな。ちなみに尻尾は武具だけではなくこのように色々な物を入れる収納スペースと化している。
黒のブーツを履き、黒いローブを纏い、黒い狐のお面を着けて、尻尾の中から取り出した姿鏡を宙に浮かせて自分を見てみた。
「………………シスの暗黒卿かのう?」
全身を覆うドス黒いまでの服装に、口元と手だけが異様に白い人間の完成である。これで赤のライトセイバーでも持っていたら完全にそのものだ。
むう……我ながら攻め過ぎたなこれは。また、まなを助けることがあればもっと落ち着いた服装にしよう。今は時間がないから仕方なくこれでいくけど。
私は姿鏡を尻尾に戻すと、空を駆けて謎の城へと向かった。
◇◆◇◆◇◆
私は空から謎の城の内部へと降り立った。これだけ広い空間が城内にあるところから連立式天守であろう。
連立式天守とは天守と2基以上の小天守や隅櫓を内側の空間を取り囲むように渡櫓で繋げた形式である。見た目の美しさとは裏腹にかなり堅牢な城であることが特徴だ。実在する城だとおっきーの姫路城がそれに当たるな。
ますますこの城を壊すに惜しいと考えていると、私の近くに三つの妖気を感じたため、そちらを目を向ける。
すると地面から三体の妖怪が生えてきた。一体は頭だけの巨大な妖怪、もう一体は両手が鎌のようになっている妖怪、最後は白髪で人間の女性に似た妖怪である。
「なんだ貴様は? 我らが"妖怪城"に何の用だ?」
その中で頭だけの妖怪が私に話し掛けてくる。まず、会話をしたところを少し評価し、答えることにした。
「"妖怪城"か……悪くないのう。そうさな私は人探しをしておる。それでここにいると思うのじゃが、お主らは知らぬか? 茶髪で少しクセのある髪をしたこれぐらいの人の子じゃ」
私はジェスチャーを交えながらまなのことを聞いた。すると頭だけの妖怪だけでなく、両隣にいる妖怪たちも何が可笑しいのか笑い出した。そして、一頻り嘲笑った後に頭だけの妖怪が口を開いた。
「よもや二度も人間なんぞに与する妖怪に会うとはな! 教えてやろう! お前の探し人はこの妖怪城の人柱となり動くことも出来ず、永遠に生かされておるわ!」
「…………なるほどのう。となるとこの頃の、童の神隠しは全て貴様らの仕業というわけか」
「ああ、そうだ! そして、この妖怪城によって人間を妖怪に変え、妖怪が支配する世を作るのだ!」
「ぷふっ……」
まなはまだ生きているようなので安心していたが、それを聞いた瞬間、思わず吹き出してしまった。
「何がおかしい…?」
「おかしい? これをおかしくなくてなんとする。まるで人間の童じゃのう、将来の夢は世界征服だとでも続くのかえ? いや……童でも今の世の子はもう少し身の丈にあった夢を見るぞよ」
「なにィ…!」
「まあ、そんなことはどうでもよい」
私は普段抑えている妖気を解放した。私の妖気の放出により大気は鉛のように重く鈍く色づき、夜空は黒々と染まる。その禍々しさ足るや、妖怪城が子供の玩具のように見えるようだ。
「な、なんだお前は……何処にこんな妖――」
「うるさい逝ね」
頭だけの妖怪は私が伸ばした一本の尻尾により脳天から両断されてふたつに別れた。
「さて、次は貴様らじゃ。安心せい、手厚く葬ってやろうぞ」
「ば、馬鹿だね! この妖怪城ある限り我らは不死身だよ!」
白髪の女性妖怪はやや引きながらもそう宣言した。その言葉の通り、頭だけの妖怪は逆再生でも見ているようにくっつき、すぐさま緑色の痰のような物体を口から私めがけて吐いてきた。
私は緑なので膿性の痰なのかと考えながらも、すぐさま鉄扇を出して弾いた。
「んげっ!?」
何と無くもう一体の手が鎌のような妖怪に当てたのだが、どうやら弾かれた痰は石に変わったようだ。そのため、鎌のような妖怪は石に固められて身動きが取れなくなっている。所詮、ただ不死身なだけらしい。
私は更に一本の尻尾を鞭と剣のように使い、頭だけの妖怪と白髪の女妖怪に、瞬時に何度も致命傷になる傷を与え続けた。癒える速度よりも若干私が傷付ける速度の方が速いため、彼らは動くことも出来ずに私の尻尾を受け続ける。
そんな時間を3分程繰り返した後、私は攻撃を止めた。彼らは度重なる死の体験により精神を削られたためか息も絶え絶えだが、やはりまた再生している。
「くははは! これは愉快じゃ! 自ら不死身になるとは殊勝じゃのう!」
だったら話は簡単だ。不死身なら気がすむまでサンドバッグにしてから魂ごと喰ってしまえばいい。
私は尻尾を一本づつ解放していき、三体の妖怪を囲むように展開した。
一本解放する度に見掛けの妖力が引き上がり、九本全てを解放した頃には蟻とゾウのような妖力の差を彼らは感じていることだろう。
「こ、これは……まさか羽衣狐か!?」
「たんたん坊! こんな大妖怪を相手にするだなんて聞いてないよ!?」
妖力を込めれば幾らでも伸縮する私の尻尾に囲まれた頭だけの妖怪と、白髪の女性妖怪は驚き戸惑っている。特に白髪の女性妖怪の方は既に戦意の欠片も残っていないらしい。よし、こっちを最後に殺そう。
「今さら遅いわ。貴様らは妾が下手に出ていた頃にまなを返し、人間を解放し、妾にひれ伏しながら奥地の野山にでも尻尾を巻いて帰るべきじゃったのう」
「何故だ!? 何故こうまで妖怪を憎む!?」
「妖怪を憎んでなどおらぬよ。ただ、目障りだっただけじゃ。今はこの街が妾の庭故にな」
絞め殺すようにゆっくりと全ての尻尾で彼らを閉じこめながら、一度お面を外して笑みを浮かべると、そのまま彼らに送る最後の言葉を紡いだ。
「十万億土すら踏めず、三千世界に屍を晒し続けるがいい」
その直後、九尾全ての尻尾が彼らを貫くように殺到した。
うちのハゴロモさんの属性は混沌・善です(ご覧の有り様だよ!)
ちなみにですが、ハゴロモさんは一対一よりも一対多の方が向いています。
後、おっきーとまなちゃんのやり取りはハゴロモさんには勿論伝わっていません。まなが何を調べたかったのかすら聞いていないので知りません。シスコンでアホの子だからね、仕方ないね。