犬山さんちのハゴロモギツネ   作:ちゅーに菌

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どうもちゅーに菌or病魔です。

ダクソ無印リメイクがPS4で出たので先に更新しました。

ダクソ無印リメイクがPS4で出たので先に更新しました(大事なry)。

それは置いておいて、オリジナル回をやるといったなあれは嘘だ。話的に前中後+後日談(イマココ)みたいになってしまいました、すいません。なので次回は本当にオリジナル回になると思います。

後、話だけは出ていたキャラが今回は二人ちょびっと出たりします。では、どうぞ。


羽衣狐(お姉ちゃん)

 

 

 

 

 お姉ちゃんのことを知った帰り道。私はお姉ちゃんの背中におんぶされて空を飛んで帰っていた。

 

 おっきーさんの折り鶴の何倍も速くて景色を見ていると目を回しそうだけど、不思議と私に風は全く当たらない。お姉ちゃんが妖術で反らしているのかな?

 

 そんな状態なんだけど今とても困ったことがある。それは今のお姉ちゃんの様子だ。どんな感じかというと―――。

 

「まなー、まなー」

 

「なに乙女姉?」

 

「……むう」

 

「………………は、羽衣姉?」

 

「―――!! うふふ……呼んでみただけじゃ」

 

 さっきからお姉ちゃんがずっとこんな調子だったりする。いつもはちょっとだけしか出てない黒い狐耳も今はずっと出っぱなしでぴこぴこ揺れていた。くっそッ! 可愛いなうちのお姉ちゃん。

 

(う、うーん……とっても嬉しそうなのはわかるんだけど、流石に私が恥ずかしくなってきたなぁ……)

 

 そう思って話題を振ってみることにした。行きよりずっと早いので、そうしていれば直ぐに家に着くよね。

 

(んーと……何か話題は……と)

 

 お姉ちゃんを見渡してみるが、見えるものといえば、真っ黒で艶々のお姉ちゃんの髪と後頭部、後はぴこぴこ動く黒い狐耳ぐらいのものだった。

 

(んじゃ、あれでいっか)

 

「お姉ちゃんの狐耳って黒くて艶々で可愛い――きゃっ!?」

 

 それを告げた瞬間、お姉ちゃんは急ブレーキを掛けて止まった。更にピシリと固まったかのようにお姉ちゃんの行動と言葉が止まる。

 

「耳……?」

 

 やがて絞り出された言葉と共に、お姉ちゃんの尻尾の一本がお姉ちゃんの頭に伸びて耳を触る。それが少しの間、続いた後に耳は引っ込んだ。

 

「まな……」

 

 お姉ちゃんはゆっくりと首だけ私の方に振り向く、そしてそこには―――。

 

「わ、妾は……子狐ではない……子狐ではないぞよまな! こ、これッ、これは偶々でな! 今見たのは偶々なんじゃ!」

 

 茹でダコのように真っ赤になりながら慌てた様子のお姉ちゃんがいた。いつもは怖いぐらい真っ黒の瞳が、漫画みたいにぐるぐるお目目になっているようにさえ思える慌てようだった。

 

「み、耳を出すってそんなに恥ずかしいの……?」

 

 私はにやけ顔と溢れそうな笑いを堪えながらお姉ちゃんに答える。なにこれうちのお姉ちゃん可愛い。綺麗で可愛いとかなにそれズルい。

 

「……別に恥ずかしがるようなものでもない。じゃが、変化の不手な童の妖狐が感情を高ぶらせたりすると出ることもある。そういう奴は変化が不得意と周りの子狐に茶化されるのじゃ……」

 

(あ、たまに出してたのはそういう……へー、お姉ちゃん他の狐さんにいじられてたのかな?)

 

「じゃが、今日ぐらいじゃからな妾の耳が拝めるのは! 妾の耳はレアじゃぞ!」

 

「え……?」

 

「妾はとっくに大人じゃからな。言われねば早々見せたりはせぬよ」

 

 何を言っているんだろううちのお姉ちゃんは……?

 

 ふと、気になった私はもう一度あの言葉を呟いてみる。

 

「…………羽衣姉?」

 

 みこーんっ!

 

 そんな効果音がでそうな勢いでお姉ちゃんの頭に耳が生えた。お姉ちゃんはとても嬉しそうに身を震わせている。

 

「な、なんじゃ? まなよ」

 

「う、ううん。呼んだだけだよ」

 

「そうか、そうか。呼んだだけなら仕方がないのう」

 

(こ、これは……まさか! お姉ちゃん嬉しいと耳が出ることに気づいてない!?)

 

 私はこの新たな発見は胸に秘めておくことにした。

 

 お姉ちゃんはまた飛び始めて家を目指した。もう住宅地まで来ているのですぐに家に着くだろう。

 

 話は変わるけど私がお姉ちゃんっ子なのはちょっとしたわけがある。

 

 私の両親は互いに出張などで家を空けることが、とっても多い。そうなると、必然的にお姉ちゃんと二人でいる時間が、とっても多くなる。

 

 お姉ちゃんは優しくて好い人で、姉の鑑みたいな人だから嫌う理由がない。それからなんとなくお姉ちゃんは、雰囲気がお母さんみたいだなーと考えることもあった。ううん、実際に家事や料理とかも二人の時はお姉ちゃんが中心でほとんどやってくれたから私にとってはそのように思っていたのかもしれない。

 

 だから、お姉ちゃんはお姉ちゃんだけど、半分はお母さんみたいな存在だった。私はそんなお姉ちゃんのことが大好き。

 

 私はなんとなくお姉ちゃんにしがみつく手を少し強めてお姉ちゃんにすり寄ってみた。えへへ、これぐらいならバレないよね。

 

 

 

 

 

 

 

◇◆◇◆◇◆

 

 

 

 

 

 

 

 途中から背中に抱き着いてきたまなの感触で尊死(とうとし)しそうになったが、なんとか耐えて家まで戻ってきた。まなの良きお姉ちゃんでありたいのは、演技でも何でもなく私自身の意思なので、私頑張った。褒めて晴明。撫でてきぬ。

 

「今日は遅いから寝て明日に――」

 

 私のことを話すのは明日にしようかという考えを口に出しながら、隣で腕にしがみついているまなを見る。

 

「――は出来そうにないわね」

 

 まなが腕を掴む力を強めてフルフルと首を振ったのを見て、その考えはしまい込んだ。

 

「じゃあ、私の部屋に行く?」

 

「うん!」

 

 まなは笑顔になり、元気な返事をした。可愛いなぁ……この1%ぐらいでもお母様は私に可愛さをくれてもよかったんじゃないだろうか?

 

 まあ、明日は休みなので良いだろう。そう思いながら自室のドアを開け―――。

 

「あ゛」

 

「ほぁ?」

 

 まるで小さな竜巻でも通り過ぎたかのような惨状の部屋の中を目にした。

 

「何事じゃ……?」

 

 もう、まなの前で取り繕う必要もないため、自然に口調も素に戻るというものである。

 

「えーと……嘘偽りなく話しますと~……おっきーさんがやった……ってことになるのかな?」

 

「あの女狐め……」

 

 私も女狐だがそれとこれとは別の話である。

 

 漫画や棚の物が落ちたり、苦労して積み上げた10段の武蔵ちゃんクッションタワーが崩れているのはまだいい。だが、曜日の教科ごとに貰ったプリント類をファイリングしているモノが、ファイルごと散らばっていたのは流石に頭に来た。

 

「刑部ェェェェェ!!!」

 

 私は刑部姫を呪った。世にも恐ろしくおぞましい狐の呪いである。

 

 

 

 

 

 

 

◆◇◆◇◆◇

 

 

 

 

 

 

 

「へっくちっ! 誰かな姫のこと噂してるのは? この前憂さ晴らしにスレでいっぱい釣った奴らかな?」

 

 自室で夜食の小倉トーストが乗った皿を持って歩いていた刑部姫は、くしゃみと共にそんなことを呟きながら余所見をする。その後、そんなことないなとヤレヤレといった様子をした。

 

「うふふ……」

 

(そんなことよりDARK SOULSしなきゃ! えーと……昔いつも新キャラ作るときにしてたPS3版のチャートは……素性は盗賊でまずは贈り物を壺にしてー、墓地でツヴァイ拾ったら、小ロンドから竜の谷行って狭間の森で草紋取って黒騎士落としてグレイブ落とさなかったらリセマラしてー、ゲットしたら不死院のデーモンを盗賊短刀で出血させて倒してソウル貰って原盤拾ってー、20000ソウルで庭開けて入り口のMOB落としまくってー、途中でハベルコスさんしばきながらレベル80ぐらいまで上げたら不死街から飛び降りて犬のデーモンしばいたら最下層で大きな種火取ってー、とりあえずイングヴァードさんコロコロしてダークレイス解放したらとても大きな種火取って塊マラソンしてー、レベル100ぐらいにして+15ツヴァイで牛頭のデーモンに落下致命入れなきゃ……使命感! 平和とは全くそれでよいのだ、残光ブンブン、飛沫ブッパ、そしてなにより巨人仮面! ああ、懐かしのロードラン……そして、黒い森の庭! ここたま!ウェヘヘ……)

 

 そんなことよりも心ここにあらずといった様子でなにやら考え事に耽っている刑部姫。その表情はどこか艶めかしく幸せそうで、思わず微笑が漏れた姿は、黙ってさえいれば羽衣狐に並ぶほどの美人の片鱗が見え隠れしている。しかし、何を考えているのかは預かり知らぬところだろう。

 

 そして、嬉しそうに一歩目を歩き出した瞬間―――。

 

 何故か大きくて古めかしい化粧箪笥が、横に30cm程ズレて、箪笥の角が刑部姫の足の小指に激突した。

 

「お゛!? オッ! おぉおぉぉ……!!?」

 

 人間でも妖怪でも悶える痛みに、女性が上げてはいけないような声を上げながらその場でピョンピョン跳ねる刑部姫。その軽めの振動は普通の状態ならば特に問題は無かった。だが、今の彼女には振動を与えてはいけない物を手にしていた。

 

「あ……」

 

 するりと、刑部姫が手に持つ皿から小倉トーストが床に落ちる。これが羽衣狐なら驚異の瞬発力と大英雄顔負けの"敏捷"ステータスにより、簡単に落ちる前にキャッチしたであろう。しかし、悲しいかな彼女の敏捷はたったのEである。

 

 当然、取れる訳もなく、小倉トーストは床に落ちた。

 

  べちゃり……

 

 無論、小倉トーストの餡子が塗られた面を下にして。

 

「………………な、な、なんなのよもぉぉぉ!?」

 

 結果、刑部姫はちょっと泣いた。

 

 

 

 

 

 

 

◇◆◇◆◇◆

 

 

 

 

 

 

 

「よし……スッキリしたからもうよい」

 

「そ、そうなの?」

 

 私の呪いは、箪笥の角に足をぶつけたり、トーストがジャムを塗った面から床に落ちる程度のイタズラレベルから、妖怪を血筋ごと人間との子しか作れなくする呪いまで何でも完備している。おっきーは恐らくちょっと酷い目に遭ったことだろう。

 

 私は当然、妖術のプロフェッショナルだが、呪いもとい調伏や呪術のプロフェッショナルでもあるのである。

 

「あー……まず片付けなきゃねー」

 

「なにすぐに終わろう」

 

 私は細めに九本の尻尾を全て出して片付けを始めた。尻尾以外は特に何もする必要はないので、部屋にあるミニ冷蔵庫からお茶を取り出して、私の分とまなの分を常備しているコップに注ぐ。

 

「ほれ、近こう寄れまな……ん?」

 

 お茶の入ったコップを部屋の中央に戻した卓袱台に置いて、すぐ横にあるベッドに座って私の隣をポンポン叩くと、まなが何故か部屋の前で固まっていることに気づいた。その間も私の尻尾は部屋を整頓中である。また、床や棚は尻尾から取り出したダスキンモップやクイックルワイパーを使って清掃中でもある。

 

「なにそれズルい! ズルすぎる!」

 

 突然、動き出したまなは第一声にそんなことを言い出した。

 

 尻尾を見ると既に部屋の整頓と掃除は終え、10段の武蔵ちゃんクッションタワーの再建に苦労している様子が見えた。確かに便利だが、そこまで欲しいものだろうか……?

 

「もつものはみんなそういうの! きー!」

 

 まなはぷりぷりと怒って見せた。その様子に微笑ましさ以外の何を覚えればいいというのだろうか。

 

 晴明、きぬ。お母さんは妹が可愛くて昇天しそうです。なんかもう色々ごめんなさい。お母さんは元からこんなんなの。

 

「さて、何から話すか」

 

 冗談半分だったまなはすぐに落ち着き、武蔵ちゃん10段タワーも積み終わったので、ベッドにまなと二人で座っていた。

 

 羽衣()から話すか、乙女()から話すか。まあ、自然な流れとしては前者であろう。となると、とりあえずまなには聞きたいことがあるな。

 

「先に聞いておくが、まなは羽衣狐がどんな妖怪だと聞かされておる?」

 

「あ、うん。おっきーさんに聞いた話だと―――」

 

 おっきーの名が出た辺りで既に嫌な予感がしたが、案の定的中した。

 

「ほうほう、妾が余興好きでめんどくさがりやのドSで、超八方美人じゃとな。うふふ……」

 

 まなになんてことを教えやがるあのネット弁慶、次に会ったとき覚えていろよ……。

 

「あ、羽衣狐についてと、育ママなところは否定しないんだ」

 

 それはほぼ事実だと思う。羽衣狐がしたことは大体はあっているし、晴明ときぬはよき人間であって欲しかったから、私なりの愛という形で教育していたと。

 

「くっ……育ママ……学校の宿題をやり方を教えてはくれるけど、やってはくれないのはそのせいか!」

 

 宿題は自分でやりなさい。何よりもまなのためにならない。

 

 あ、でも小学生の頃にまなの夏休みの図工とか自由研究はいつも私がしていた。だって楽しいし。

 

「初めてお姉ちゃんに頼んだ小3の夏に一升瓶でタイタニック号のボトルシップを作られた時の衝撃は忘れない……」

 

「楽しみ過ぎたわ」

 

 人間誰しもやり過ぎることもある。ちなみにそれはまだまなの部屋に飾られていてとても嬉しい。

 

「じゃあ、妾の生い立ちから語るとするかのう」

 

 私は産まれたのは約1100年程前の陸奥国に当たる場所だ。もっと具体的に現代でいえば磐城国辺りだろうか。

 

「陸奥国……? 磐城国……?」

 

 磐城国は微妙に現代ではなかったな。長生きしていると感覚が麻痺して困る。今でいうところの福島県辺りのことである。

 

 兎に角、私はそこで一尾の妖狐として産まれ、あまり思い出したくない幼少期を過ごした後は、陰ながら人助けをしたり、妖怪をこらしめたりしながら中規模の街を10年程の感覚で転々とする日々を過ごしていた。もっぱら人間として街で働くときは幼名の"葛の葉"という名を使ったりもしていたな。

 

 そんな私の転機はやはり連れ込んだ陰陽師の男とまぐわり、晴明ときぬを産んだことだろう。それまでの私はただの羽衣という妖狐であったからな。

 

「へー、お姉ちゃんは羽衣っていう名前の妖狐だから羽衣狐なんだ」

 

 妖怪の名前なんてそんな安直なものだ。例えばなんとか入道の入道なんかは、坊主とか、禿げ頭とかの意味である。

 

「それにしてもお姉ちゃんの子供は、晴明さんと、きぬさんって言ったんだ」

 

 ちなみに名字は、旦那のものをそのまま貰って安倍である。私も安倍羽衣と名乗っていることもあった。

 

「安倍羽衣に、安倍晴明に、安倍きぬさんかー!え? 安倍晴明……? 安倍晴明!? それってあの有名な陰陽師の!?」

 

 その安倍晴明で間違いない。なんでも京できぬと一緒にそれはそれは色々とやらかしていたらしいが、私は相変わらずの生活を送っていたので、帰って来た二人から土産話を聞かされる程度だったのでよくは知らない。

 

 そういえばきぬも京では何か他の名前で呼ばれていたという話も聞いたような。えーと……"たえ"? いや、"にえ"? うーん、なんか違うな……なんだったかな。 漢字で書くと一文字で、平仮名だと二文字で二文字目は"え"の名前だったような。まあ、いいか。忘れるようなことだから大したことではあるまい。兎に角、あの二人は結託して京でブイブイ言わせていたそうな。

 

「どうしよう……私のお姉ちゃんが安倍晴明のお母さんだったんだけど……」

 

 まなは二人より可愛いからいいよ。晴明は格好いい系の美形で、きぬは美しい系の美形だったから棲み分けは出来ているし。

 

 そういう問題じゃないとでも言いたげなまなに首を傾げながら私は更に続けた。

 

 そして、私が羽衣狐と呼ばれるようになったのは晴明が、反魂の術だかなんだかを応用して作ったという私を九尾にするための術を施されたからだ。

 

 それによって人間や妖怪を乗っ取る形で転生することにより、妖力を激増させながら尻尾の数を増やしていって、九度目の身体が現在のこの姿となっている。

 

 私は少し話を止めるとお茶をすすった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

◆◇◆◇◆◇

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 お姉ちゃんからお姉ちゃんの今までの生い立ちを聞いた。色々な衝撃や発見があったけど、転生して今があるという経緯からやっぱりお姉ちゃんは、犬山乙女というより羽衣狐さんなのかなと思って少しだけ寂しく思った。

 

 悲しんだり、元の犬山乙女を返して欲しいとかそういうのじゃない。ただ、ちょっとだけお姉ちゃんが遠い存在に思えて寂しい。

 

「ここからは今の私ね」

 

 お姉ちゃんの口調が、それまでの羽衣狐としての話し方から、犬山乙女としての話し方に変わった。だったら今は犬山乙女の言葉として聞くのが正しいかな。

 

 でも、私が知るような笑みを浮かべ続けているお姉ちゃんではなくて、どちらかといえば無表情に近い顔で、目を大きく開いている。こっちがお姉ちゃんの自然体なのかな。うん、なんとなくそっちのほうが私は好き。

 

「まな、その前にひとつだけ知って欲しいの。お父様もお母様もいつか言おうと思ってたみたいだけれど、今話すわ」

 

「なにお姉ちゃん?」

 

 お姉ちゃんは少し迷うような表情をしてから言葉を続けた。

 

「私は……まなとは種違いの姉妹なのよ」

 

「え……?」

 

 つまり私とお姉ちゃんはお父様が違うっていうこと?

 

「うん、それでまなのお父さんは紛れもなくお父様よ。それで私の父はね。妖怪だったの。つまり犬山乙女は半妖よ」

 

 それからお姉ちゃんは犬山乙女の産まれを話した。

 

 羽衣狐が最後の転生先を400年間も探していたこと。現代の病院で偶々お母さんを見つけたこと。お母さんは妖怪に孕まされていて、その赤ちゃんが犬山乙女だったこと。羽衣狐さんが善意でしたことで犬山乙女が死にかけてしまったこと。

 

 そして、羽衣狐は犬山乙女を助けるためだけに転生することに加えて、自身と犬山乙女の魂を融合させたということだった。

 

「そうして今の私がいるのよ」

 

 私はその話を聞いて暫く開いた口が塞がらなかった。

 

 なんだ。お姉ちゃんは結局―――。

 

 ―――ずっと私のお姉ちゃんだったんだ。

 

「えへへ、嬉しいな」

 

「ま、まな……?」

 

 私は嬉しさから隣のお姉ちゃんに抱き着いた。お姉ちゃんはそれを少し驚いた様子で受け止めてくれる。

 

 やっぱり思った通り、お姉ちゃんはお姉ちゃんだった。私のお姉ちゃんだったんだ。

 

「私は乙女姉でも、羽衣姉でもどっちでもいい。だって、お姉ちゃんは最初から私のお姉ちゃんだったんだから。今も昔も私の知ってるお姉ちゃんなんだもん」

 

「まな……」

 

 お姉ちゃんはそう呟くと、抱き着く私を包むように抱き着き返してきた。あ、また耳生えてる。

 

「こんなに……こんなに幸せでいいのかしら? なんでも言ってね……私、まなのためならなんでもするわ……なんだってするわ……」

 

 私に抱き着いたまま、お姉ちゃんはそんなことを言った。お姉ちゃんのそのなんでもはちょっと怖いかな。本当になんでもやりそう……。でも無下にするのはどうかと思うからたまに―――。

 

 はっ!? やって欲しいことあった!

 

「お姉ちゃん、あのね……?」

 

 私はお姉ちゃんに早速頼みごとをした。 

 

 

 

 

 

 

「こ、こんなのでいいの……?」

 

 うひょー、もっふもふもっふもふ! これは買ったら高いだろうなー!

 

 私はお姉ちゃんの尻尾まくら、尻尾シーツに、尻尾ふとんに包まれて、お姉ちゃんと一緒にベッドで寝ていた。うーん、お日様の良い匂い。けど、やや暑い。

 

「ねえ、まな?」

 

「なにお姉ちゃん?」

 

 私と一緒にベッドに寝ながら私の方に体を向けているお姉ちゃんは口を開いた。

 

「実は私はもう転生は出来ないの。九尾になったらもう転生は出来なくなるよう晴明に頼んでおいたから」

 

「そうなんだ」 

 

「ええ、それ以上は望まないわ。だって私は神でも仏でもなくてただのちっぽけな妖怪なんですもの。それで十分」

 

 やっぱりお姉ちゃんは良い人だ。人間よりもよっぽど良い妖怪だ。こんな人がお姉ちゃんだった私は幸せ者だね。

 

「だから、これは転生狐の最後の身体。羽衣狐の完成した姿。犬山乙女も本物の私。そう、まなに思って貰えたら……嬉しいわ」

 

「うん……もちろ……ん」

 

 当然。お姉ちゃんはお姉ちゃんだもん。

 

 もう、眠くなってきた……ああ、これダメ気持ち良過ぎる……。

 

「ありがとう……まな」

 

 お姉ちゃんの言葉を聞きながら私の意識は薄れていった。今日は良い夢が見れそう。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

◆◇◆◇◆◇

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『おい、小娘』

 

 気が付いたら目の前に真っ黒い霧のようにも泥のようにも見えて、影みたいにも見える巨大な生き物が目の前にいた。

 

『これだけは言っておく……』

 

 それは輪郭がはっきりとせず、人とも獣ともつかず、なんの生き物なのかはわからなかった。

 

『余の母上を悲しみで泣かせるようなことがあろうものならば……地獄の淵より余は蘇り、必ずや貴様を喰らうだろう』

 

 なにがなんだかわからないけどとても怖いのと同時に、何故かお姉ちゃんと一緒にいるような安心感も同時に感じていた。

 

『そのことを、努々忘れぬようにな』

 

 その言葉を告げられた直後、私の意識が急激に遠退いていくのを感じた。

 

『おい、"きぬ"何をやっている!』

 

『黙れ"愚兄"。余に指図するな。言われんでも帰したところじゃ』

 

『そういうことでない! "地獄(ここ)"にまなちゃんの魂を直接呼びつけたことを咎め―――』

 

 変な夢見ちゃったなぁ……と思いながら私の意識はそこで更に落ちていった。

 

 

 

 







ちなみに晴明さんの容姿はぬらりひょんの孫で1000年前の晴明さんそのままです。

そして、妹のきぬさんの容姿は、ぬらりひょんの孫で復活した時の安倍晴明を女性にしたような姿です。ちょっとウェーブの掛かった金髪長髪の美人さんです。
いったい京で何と呼ばれていた妖怪なんだ……(驚きの白々しさ)


おっきーがDARK SOULS(PS4版)で引きこもるので暫く小説全体の更新が無くなるか、かなり遅れると思います(作者は人間のクズだからね、仕方ないね)。

…………おっきーなのに作者……? 私は何を言っているのでしょう…… ? ハッ! つまり作者はおっきーだった?(錯乱)


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