ダンジョン飯IF 連載版   作:蜜柑ブタ

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とりあえず、現在(2018年4月18日)書けているのは、ここまでです。


センシ登場。
初の魔物食、第一食目。


第一話  大サソリと歩きキノコの水炊き

 

 迷宮一階は、商人と冒険者で人の往来がある。

 特に初心者の広場と呼ばれている水が湧いている開けた場所には、商人達が何人もおり、冒険者達が休息を取っている。

 そこに場違いな者達がいた。

 チルチャックが鍋に水を汲み、マルシルとファリンが火をおこした。

「もう少し人目のないところでやった方がいいのでは?」

 チルチャックが周りの冒険者や商人達の目を気にした。

「水を使うのに、往復するのは大変だよ?」

 ファリンがそう答えた。

「ねえ、本当にコレ、食べるの?」

 マルシルが床に置かれた歩きキノコと大サソリを見て聞いてきた。

「他に案もないし。まずは、オーソドックスに煮てみるね。」

「オーソドックスって…。」

「あっ!」

「どうしたの!?」

「縦には切りやすいけど、横には切りにくい。…キノコ系の敵を相手にする時は、袈裟斬りや胴斬りは効果が薄いのかも。すごい、勉強になるわ。兄さんに会ったら教えなきゃ。」

 歩きキノコを包丁で切っていたファリンが嬉しそうに言っていた。

 マルシルは、やれやれとため息を吐いた。

 そして、歩きキノコが、普通のエリンギのように縦にスライスされた。

「スライスしたら、食べ物に見える。」

「どこが?」

 チルチャックの言葉に、マルシルが嫌そうに言った。

 そして鍋のお湯が沸いた。

 そこにファリンがボチャボチャと歩きキノコと、さらに大サソリを丸ごと入れていく。

「ちょ、ちょっと、サソリそのまま食べるの? 毒が回るじゃないの。」

「このサソリの毒は食べても害が無いよ。」

「本当に?」

「じゃあ、試しに食べてみよう。」

「えっ!」

 マルシルが驚いている間に、ファリンが大サソリの尾をちぎって、尾の中間のところを噛んだ。

「……おぇー。」

 そして吐いた。

「ああ、もういわんこっちゃない! 解毒解毒!」

 

「ちょっと待った!」

 

 そこに男の声が聞こえた。

 すると、ボロボロの斧を持ったドワーフの男がやってきた。

「サソリ鍋か。しかし、そのやり方は感心せんのう。」

「何者?」

「大サソリを食べるときは、ハサミ、頭、足、尾は必ず落とす。尾は、腹を下す。」

 ドワーフの男は持っていた包丁で、大サソリの尾とハサミと頭を切り落としていった。

「腹を下すのね…。本には平気って書いてあったのに。…というか、単純に不味かった。」

 それから、ドワーフの男は、実に慣れた手さばきで、大サソリを捌いていった。

 身に切り込みを入れることで食べやすくなり、さらに出汁がでやすくなる。そして内臓も簡単に取れる。内臓は発酵させれば良いツマミになるそうだが、素人には難しいらしい。

 そして歩きキノコは、足が美味しいとのことなので一緒に入れると良いと言った。

「この鍋では小さいな。」

 ファリン達が持っている鍋を見て、ドワーフの男は、自分が背負っている大鍋を出して代わりに火にかけてお湯を沸かした。

「サソリとキノコだけでは、ちと寂しいのう。」

 するとドワーフの男は、ふと周りを見て立ち上がり、商人達が軒を連ねている壁側に行って、包丁で壁から出ている根っこを切り、さらに花のように生っている藻を剥ぎ取って戻ってきた。

「ちょっと、待って! それはダメ!」

「マルシル?」

 手でバッテンを作って拒絶するマルシル。

「ダメダメ、無理無理! あのさ、ここ墓場よ! 百歩譲って魔物はいいわ! でも根を張る植物はNG! 宗教的にNG! いいじゃない、サソリと歩きキノコだけで、十分美味しそうじゃん! これにしようよ、これに! だいたいあんた誰なのよ! 一体全体どういう…。」

「マルシル!」

「上だ!」

「上?」

 マルシルがファリンとチルチャックの叫びで二人の方を見たとき、上から何かがたれてきた。

「!」

 それに気づいたときには、ソレは、マルシルの顔に落ちてきてマルシルの顔を覆った。

「スライム!」

「動かないで、マルシル!」

 マルシルは、顔をスライムで覆われ溺れた。

 ファリンとチルチャックがスライムの弱点である火を使おうとした時、ドワーフの男がナイフで、スライムを刺した。

 するとスライムは、剥がれ落ち、マルシルは必死になって息をした。

「マルシル、大丈夫か?」

「大丈夫、ちょっと鼻に入ったけど…。」

「スライムをナイフで撃退するなんて、すごい!」

「構造を知っていれば簡単なもの。」

 ドワーフの男曰く、スライムは、人間で言う胃袋がひっくり返って消化液で内臓と頭を包んでいるのだそうだ。

 そのため、獲物が吐く息を察知し、飛びかかってくる。だから大声を出してわめくとスライムに襲われやすくなるのだそうだ。

 このままではとても食べられた物じゃ無いので、倒したスライムを、柑橘類の果汁を加えた熱湯で洗い、水分をよく取るか、塩で揉み混み、じっくりと天日干しすれば、高級食材となるのだそうだ。

 できれば、二週間ほど絶食もさせた方が良く、乾燥にも時間がかかるので本来は迷宮では気軽につまめる食材では無いとのことらしい。

 そこでと、ドワーフの男は、自分が作ったスライム干し網を取り出し、スライムを挟んで他の荷物の上になるようにして背負えるようにした。

「完成には時間がかかるが、ここに完成品がある。今日はコレを加えよう。」

「でも高級食材なんですよね?」

「かまわん。わしは、この迷宮で十年以上魔物食の研究をしている。魔物食に興味を持ってもらえることが何よりも嬉しいのだ。」

「十年!」

「そんな昔からあったっけ?」

「まあ、少し待っとれ、すぐできるわい。」

 それからは、ドワーフの男が手際よく調理していった。

 採ってきた根っこの皮を剥き、いちょう切りにして、一緒に取ってきた藻と一緒に鍋に投入した。

 それから味見をして、調味料を少々加え、鍋に蓋をし、しばし煮えるまで待った。

 そして。

「できたぞ。」

 蓋を開けると、そこには、煮えて赤くなった大サソリの入った、大サソリと歩きキノコの水炊きが完成していた。

「大サソリは、茹でると赤くなるんだ。蟹みたい。」

「本当にサソリなのか?」

 箸で鍋の具を持ち上げ、取り皿に取っていく。

「なんだか、旨そうな匂いが。」

「本で読むのと見るのは大違いだね。」

「熱を通すと身が少し縮むから、簡単に殻から身がほぐれるぞ。」

「あ、本当だ。」

 ファリンがほぐれたサソリの身を食べた。

「…美味しい!」

「そうだろうそうだろう。」

「調理次第でこんなに味が変わるんですね。」

「そうだろうそうだろう。」

「マルシル。美味しいよ。」

 マルシルは、遠巻きに腕組みをして立っていた。

 どうしても食べたくないのだ。

 だが……。

 腹の虫が彼女を苦しめる。

 そして…、ついに。

「私にも、一杯ちょうだい!」

 取り皿に分けた鍋の具材。

 その中には、春雨の太い奴か、クラゲを切った奴みたいなものが入っていた。

「何コレ?」

「スライムの内臓の干物。」

「………。」

 マルシルは、かなり抵抗している顔をしていたが、やがて、取り皿の中の鍋の具をかっ込んだ。

「うわ! 美味しい!」

「スライムってこういう風に食べるんですか?」

「どうやってもいける。果汁に浸して食べても旨いぞ。」

「この木の根もホクホクしてうまいですね。」

「正確には、根ではない。上下逆さまに迷宮に咲く植物の幹だ。」

「この藻も柔らかくて美味しい。これも迷宮に咲く植物なの?」

「それは、よく湿ったところにわく、普通の藻だ。」

 マルシルは、それを聞いてげんなりした顔をした。

「普段何気なくかよっている迷宮にこんなものがあるなんて。」

「ほんと、すごいよね。」

 マルシルとは反対に、チルチャックとファリンは、のほほんとそんな会話をしていた。

 そして、ファリン達は、存分に大サソリと歩きキノコの水炊きを堪能したのだった。

 

「そういえば、自己紹介がまだでした。私は、ファリン。こっちは、魔法使いのマルシルと、鍵師のチルチャック。」

「わしの名は、センシ。ドワーフ語で探求者という意味だ。」

 食事の後片付けをしながら、お互いの名前を伝えた。

「なにかわけありの旅のようだが?」

「はい…、実は……。兄が…仲間が一人、迷宮の下層で魔物に食べられてしまって、消化される前に助けたいんです。」

「なんと、魔物に。一体どんな?」

「竜です。真っ赤な鱗の。」

「真っ赤な鱗…、下層……。炎竜(レッドドラゴン)か!」

 センシは、心当たりがあるようだった。

「竜はその巨体を維持するために、ほとんど眠って過ごすという。消化も他の魔物より遅いはずだ。」

「だと…、いいのですが…。」

 ファリンは、俯いた。

 するとセンシが言った。

「頼む。わしも同行させてもらえんか?」

「えっ? い、いいんですか? もちろん、いいです! とても助かります!」

「本当か! いや、ありがたい。」

 ファリンとセンシは握手した。

「レッドドラゴンを調理するのは、長年の夢だったのだ!」

 センシは、語り出した。

「レッドドラゴンか……、やはり王道にステーキか、それともハンバーグか。しゃぶしゃぶも捨てがたいが、いや卵があれば、親子丼という手も……。」

 一人、まだ見ぬレッドドラゴンの調理を思い浮かべているセンシの背中を見て、ファリン達は、思った。

 これから狩りに行くレッドドラゴンは、ライオスを食べているのだ。センシを連れて行くということは、そのレッドドラゴンを自分達が食べるということである。

 

 それは…、食べていいものなのか?

 

 っと、三人は思ったのだった。

 

 




他のご飯も考えたけど、水炊き以外に思いつかなかった…。
この時点で、ファリン達の手持ちの調味料も調理道具もほとんどないので、センシが来るまでまともに調理すらできなかったと思うので。


次回は、食人植物。
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