ダンジョン飯IF 連載版   作:蜜柑ブタ

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※迷宮に、狂乱の魔術師の狂気が蔓延していて、精神力が弱っていると浸食を受けるという設定。
※死にすぎて疲れが溜まってたカブルーが浸食を受ける話。
※カブルー→ライオス(ドラゴンキメラ)?

※カブルーのキャラ大崩壊。注意

※狂気なんだか、ギャグなんだか?


IFのIF  ぐるぐるまわる

 

 

 これで何度目だ?

 カブルーは、もう数えるのもおっくうになった。

 迷宮に挑み続けてはや数年。

 何度も油断して死んできた。

 甘く見てたのかもしれが、これは酷いと思う。

 しかし、それでも挑まなければ……、魔物があふれて死んだ母や町の人間達のような犠牲者を出さないためにも。

 

 目の端に、金色がちらついた。

 

「?」

 目にゴミが入ったのかと目をこすった。

 目をこすると金色は消えたのでホッとした。

 そういえば…っとふと思った。

 

 金色と言えば、あの兄妹を思い出した。

 

 ライオス・トーデンと、ファリン・トーデン。

 最後に会ったのは…、ライオス・トーデンがドラゴンと鳥を合せたようなキメラとなった姿と、そんな兄を救うのだと啖呵をきっていた妹のファリン・トーデンだ。

 あの勢いと意志力……、もしかしたら本当に狂乱の魔術師を倒し、王座を手にしてしまうかもしれない。

 あのブラコンだ。迷宮を封印するとは思えなかった。それにライオス・トーデンもあの身体では地上では生きられないだろう。

 やはり、自分がやらなければと思った。

 迷宮を封印できるのは……、っと思うのに、上手くいかない。

 実力がないのは認めたくない。だが、間違いなく自分達は弱い。認めたくない。

 あの回復役でしかないはずのファリンですら、レッドドラゴンの首を魔法で切り裂いたというのだ。それほどの意志力を自分だって持ち合わせているはずだ。

 なのに……なのに……。

 

「カブルー!」

 

 ホルムの悲鳴じみた声でカブルーは我に返った。

 いつの間にか魔物とエンカウントしていた。

 慌てて剣を抜いて立ち向かう。

 なにをボーッとしていた? なぜ気づかなかった?

 カブルーは戦いながら自分のうかつさを悔いた。

 あの金色が……、脳裏に焼き付いて離れない。

 それは、今考えることじゃない!

 戦わなければ、生き残らなければ、戦って、戦って…!

 

 

 

 

 

***

 

 

 

 

 

 気がつけば、カブルーは、一人だった。

 周りには、誰もいない。

 ふと思い出す。そういえば、戦った後、休息を取ったのだが、カブルーは、一人にしてくれと言って少し離れたのだ。

 いったい自分はどうしたのだ?

 頭が…グルグルするような奇妙な感覚だ。

 まさか亡霊に取り憑かれかけているのかと思ったが、あの冷たさはない。たぶん違う。

 疲れているのだろうか?

 そういえば、疲れてる顔をしていると他の冒険者から言われたような……。

 そうだ、休息が終わったらいったん地上に戻ろう。そしてしっかり休もう。

 そう思ったとき。

 目の前に赤い、鱗の大きな足があった。

「!」

 見上げると、ライオス・トーデン……いや、ライオス・ドラゴンキメラがこちらを見おろしていた。

 いつの間に!?

 まったく気がつかなかった。

 ライオス・ドラゴンキメラは、無表情でこちらを見ている。

 汗が流れる。金色の目から目が離せない。

 またこんなところで死ぬのかと思ったが、いつまで経っても攻撃は来ない。

「殺すなら殺せばいいだろ?」

 金色の目と目を合せたまま、安い挑発していた。

 だが、ライオス・ドラゴンキメラは、表情一つ変えない。

 イラッときた。

 殺されるならせめて一矢報いてやる!っと、剣を抜こうとしたら、ライオス・ドラゴンキメラは、一歩下がった。

「? なんだ?」

 その動きに驚いている間に、ライオス・ドラゴンキメラは、そのまま背中を向けて去って行った。

 残されたカブルーは、その後ろ姿を目で追いながらポカンッとした。

「なんだよ……。なんだよ、なんだよなんだよなんだよなんだよ!?」

 獲物を目の前にして何もされなかった。そしてこちらも何も出来なかった。

 なんて屈辱!

 自分はそれほどまでに脅威にすらならないか!? 喰う価値もないか!?

 許せない!

「カブルー? どうしたんだ?」

「追いかける!」

「えっ?」

 心配してやってきた仲間の声など届かない。ただただ怒りのままにカブルーは叫んでいた。

 そのまま行こうとするカブルーを仲間達が止めた。

「離せ!」

「何があったのよ!?」

「離せって言ってるだろ! アイツを……。」

「あいつ?」

「ライオス・トーデンを……殺してやる!」

「何言ってんのよ!? ライオスってたしか、あのキメラでしょ? あんた、まさかそいつに遭遇したの?」

「殺してやる! 殺してやる! そして、そして……、あ…、あはははは! そうだ、生かさず殺さずにして犯してやろうか! そしたらあの面もさすがに変わるはずだ! そうだ、そうしよう!」

「か、カブルー?」

「殺して、犯して……、く…ぁ、ハハハハ! あひゃはははははは!」

 涎をダラダラと垂らしながら笑い声を上げるカブルーに、カブルーの仲間達は全員引いた。

 これはマズいと判断し、後ろから後頭部を殴り、気絶させた。

 そして休憩地点に運んで、カブルーの身に起こったことについて話し合った。

 少しだけ目を離した。その間にカブルーはいなくなっていた。

 慌てて探したが、見つからず、物資も少ないためいったん地上へ戻った。

 そして補給をしてから再度カブルーを探したものの、見つけることはできなかった。

 

 

 

 

 

***

 

 

 

 

 

 カブルーが行方不明になって、何日も過ぎた頃、こんな噂が冒険者間で流れていた。

 

 最近、人の形が入ったキメラが、褐色の肌と黒髪の男に追いかけられて逃げていると。

 

 どうも特徴がカブルーに似ているので、まさかと思ったが、その後、センシというドワーフから。

 

「お前達のところのリーダーの男に、ライオスが追いかけ回され迷惑しているようだぞ。」

 

 っと言われて、カブルーがセンシ同様に迷宮の住人化して、ライオス・ドラゴンキメラを追いかける日々を送っていたことが分かった。

 

「ライオスに食われたいから追っているらしいが……、いったいどうしたのだ?」

 

 こっちが聞きたいーーー!!っと、カブルーのかつての仲間達は頭を抱えたのだった。

 




カブルーがライオス・ドラゴンキメラを追いかけ回すようなったのは、殺してもらえなかった→食われなかった→悔しい!→絶対見返してやる!という気持ちが、狂気によっておかしい方向にねじり曲がって、食われたい願望が生まれたということにしています。
本人がそれを自覚しているかどうかは不明です。

なぜ最後の方にセンシがいたのか……、それはすでにファリンが次の迷宮の主の座についたからです。

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