ダンジョン飯IF 連載版   作:蜜柑ブタ

48 / 58
やっと単行本が出たので連載再開。


でも、巻が終わったらまた休載かも。


ファリンは、キメラ好きのライオスとどっこいどっこいということにしています。
注意。


第三十五話  アイスゴーレムの茶碗蒸し

 

 

 狭い道を、ファリン達は進んでいた。

 先頭はチルチャック。

 なにせ狭い。ハーフフットで身長が低いチルチャックはともかく、他のメンツは大人だ。中々進めないことに苛立ったイヅツミが押したことで、広いドーム状の広場にファリン達が押し出された。

「ここは…、炎竜と戦ったところだわ。」

「ほう。こんな深部まで来ていたのか。」

 階層の温度が低くなっており、雪と氷によって景色は変わってしまっているが、地面に空いた割れ目やあちこちに空いた通路の出入り口や、水が流れていたことをうかがわせる凍った小さな滝などがあり、ファリンは、ここが炎竜と戦ったところだと確信した。

「長らく、ここが迷宮の最深部って言われてたの。」

「そう。最近になって魔術で動くと思われる扉が見つかったの。それで島主の依頼で、その扉の文様を記しに来たんだけど…。」

「そこで、炎竜と遭遇した?」

「うん…。」

「さて、運試しだ。」

 チルチャックが言った。

「あん時落とした荷物を確認しようぜ。」

 そう、ここでほとんどの荷物を置いて撤退したのだ。炎竜に喰われたライオス自身と、食料以外の装備品や生活用品など。冒険に必要なモノをここに置いてきてしまったのだ。

 積もった雪をかき分け、探っていくと…。

「あった!」

「あー…、食料品はあらかたかっ攫われてるな。」

「やったー、寝袋!」

「喜ぶとこそこかよ。」

「……兄さん。」

 寝袋を見つけて喜ぶマルシルとは反対に、ファリンは、ライオスの荷物を見つけて暗くなった。

「ま…まあいいじゃない! 元に戻しても服がないと困るでしょ?」

「…うん。」

 マルシルが慌ててファリンを励ました。

 すると、マルシルは、何度もくしゃみをした。寒さのせいだ。

「いかんな。ひとまず休もう。このままでは、風邪を引く。」

「荷物も整理しないとね。」

「…おい。」

 チルチャックがイツヅミが懐に入れたモノを出せと言った。

 イツヅミは、悪戯っぽく笑い、金貨を取り出した。

「迷宮に金貨なんか持ってくんじゃねぇよ。」

 っと、チルチャックは、取り返した金貨をマルシルに放り投げた。

「しつけのなってない獣人だ。あんな首輪を着けられるのもむべなるかな。」

「……ハーフフットって言うんだろ?」

「なんだよ?」

「東方には、お前みたいなのはいなかったから。こっちきて初めて知った。その変な種族名…、窃盗罪で片足落とされることが多かったのが由来なんだってな。」

「あぁ?」

「ちょ、ちょっとぉ、二人ともやめてよ。」

 険悪なムードになる二人に、マルシルが慌てた。

「マルシル。来てくれ。」

 するとセンシがマルシルを呼んだ。

 雪と氷の小山のような場所に誘い、そこを指さす。

「魚だ!」

 一緒に行ったファリンが、氷の中にある魚を見つけた。

「急激な温度変化で氷漬けになったようだな。この部分だけ切り取れないだろうか?」

「うーん。魔法陣を使ってなんとか…。」

「私が切り取ろうか?」

「ダメよ。あなたの切り裂く魔法じゃ凍った魚ごと粉砕しちゃうわ。」

「えー。」

 マルシルのダメ出しに、ファリンは残念そうに声を漏らした。

 結局、マルシルが魔法陣を描き、起動させることになった。

 センシは、氷の小山のような場所で魚を捕るために待ちつつ、周りを見回していると、魔方陣を書き終えたマルシルが、魔方陣を起動させた。

 バチンッと大きな放電のような光が氷の山に走る。

 その直後。

「えっ?」

 小山が起き上がった。

 乗っていたセンシは、忽ち転げ落ち雪に埋まった。

「アイスゴーレム!?」

「嘘でしょ!?」

 

 なお、雪の中で身動き取れないセンシは、それを聞いて思い出していた。

 過去、自分が畑代わりにしていたゴーレムの核のひとつを、水路に落とした記憶を……。

 

 アイスゴーレムが、大きな咆吼をあげた。

 ドーム状の広場に、ビリビリと響き渡る。

「ん!? おい、やばいぞ!」

 耳を塞いでいたチルチャックが天井の変化に気づいた。

 天井にぶらさがっていた大きなつららが咆吼の響きで割れ、落ちてきた。

 ファリンは、慌ててマルシルを突き飛ばし、切り裂く魔法を放って防ぐも、一本が腕に刺さった。

「ファリン!」

「っ…、だ、だいじょうぶ…。」

 

 その時、黒い影が飛んだ。

 

 イヅツミだった。

 

 イヅツミは、アイスゴーレムの顔に飛びかかると、短刀を額に刺した。

 しかし、アイスゴーレムは、倒れず、イヅツミをなぎ払おうと手を振るった。

「? おい、コイツ死なないぞ?」

「ゴーレムは、核を破壊しなきゃ死なないんだよ!」

 チルチャックは、そう叫びつつ、ハーフフット特有の優れた五感で核を探そうとする。

 だがアイスゴレームの体内は、魚などの不純物が多く、目視ではどれが核なのか分からない。

「おい! なるべく、時間稼げ! 核の位置を割り出す!」

「はあ?」

 イヅツミが眉間にしわを寄せた。

 チルチャックのことが気にくわないイヅツミは、足を引っ張る気じゃないだろうなっと不信感を募らせる。

 その間にもアイスゴーレムの攻撃が来るので、まるで猫のごとく、避けていく。

 だがやがて、雪に足を取られ、その隙を突かれて攻撃されそうになった時……。

 弓矢を構えたチルチャックが、矢を放った。

 矢は、アイスゴーレムの右肩付近に当たった。

「てめぇ、ふざけてんのか!」

「よく見ろ! さっき矢を当てたところを!」

 言われてイヅツミが、アイスゴーレムの頭に乗って、矢が当たり、僅かにヒビが入った箇所を見ると、そこにはゴーレムの核があった。

「俺は飛び道具は使えるけども、たいした傷を与えられるほどじゃないから、俺を戦力として数えるなよ! 後は任せた!」

「おい!」

 サッと身を隠したチルチャックに文句を言おうとしたが、アイスゴーレムの手が伸びてきたので、それを避け、イヅツミは、一旦地上に降り、先ほどチルチャックが放った矢を拾い上げ、再びアイスゴーレムの上へと登り、矢の先をゴーレムの核がある右肩付近に突き刺して核を破壊した。

 途端、アイスゴーレムは、バラバラにひび割れ、砕けて崩れた。

「ふんっ。どうやら、この中でまともに動けるのは私だけのようだな。どいつもこいつも揃って……。はっ…、はっ、はっくしょん!」

 イヅツミは、くしゃみをした。

 

 

 

 

 

***

 

 

 

 

 

 アイスゴーレムとの戦闘で、全員が派手に雪を被ったため、ガチガチ、ガタガタと震えていた。

 マルシルが震えながらも火の魔法陣を描き、一旦それで暖を取る。

「みんな、濡れた服を脱いで乾かして。ほら、あなたも隠してあげるから。」

「…必要ない。」

 イヅツミは、そう言って忍者のような服を脱ぎ捨てた。

 イヅツミの体は、顔以外はほぼ毛むくじゃらであった。

「獣が裸になって喜ぶ奴がどこにいる?」

 

 すると、めっちゃファリンが近距離でイヅツミの体をジーッと見始めた。

 

「あ? なんだよ?」

「あ、ほらほら! このままじゃ風邪引いちゃうから!」

「あぁ! せめて乳首の数…、あと尻尾の付け根…。」

 マルシルが慌ててイヅツミの体を毛布でくるみ、チルチャックとセンシがファリンを引き離した。

 やがて、暖を取るために選んだ空間が少し暖まってきた。

 センシは、温かいものを作ると言って調理を始めた。

「解凍する必要があるな。」

 そう言ってセンシは、氷の包まれた魚を炎の魔法陣に置いて見た。途端、凄まじい勢いで氷が蒸発し、熱い水蒸気が空間に広がった。

「あ、サウナみたいになった。」

「いいわね。しばらくお風呂にも入ってないし、一汗流そうよ。」

 っというわけで、サウナタイム(混浴)。

 サウナを楽しみながら、調理開始。

 

 まず、解凍した魚を捌く。(外で)

 

 頭と骨を煮て、出汁を取る。

 

 続いてキノコと、夢魔を細かく切り、シェイプシフターの肉を軽く茹でて灰汁を取る。

 

 ハーピーの卵を溶き、先ほど取った出汁と具材を合せる。

 

 それをコップに注ぎ、アイスゴーレムの破片(氷)と一緒に鍋に並べて火にかける。

 

 

 そうしてできあがったのは、アイスゴーレム茶碗蒸しと、アイスゴーレムに入ってた魚に熱を通したやつ。

「完…。」

 完成と言いかけたその時。イヅツミが、抜け駆けして魚を食べようとした。

「これっ。勝手に食べ始めてはいかん。みんなが食卓につくのを待ちなさい。」

「なんでだよ。私が一人で敵を仕留めたんだ! 私が一番に食べる権利がある!」

「食事は全員が揃って始めるもの。」

 ギャアギャアと騒ぐイヅツミに、センシは、しっかりと言い聞かせる。

 そして、やや置いて、全員が揃った。

「それではみなさん揃ったところで…。」

「いただきます!」

 そうして食事が始まったが、イヅツミは、イライラしていた。

「おい、イヅツミ。」

「なんだよ?」

「これやるよ。」

「あ?」

 それは、荷物を入れて担ぐためのカバンだった。

「破れたカバンを縫い合わせたんだ。お前が使え。」

「その…獣なんて言って悪かったよ。俺は口が悪くてね。知らない人間との団体行動なんて、しばらくは窮屈でイラつくと思うけど、慣れればいい面もあると思うぜ。自分じゃできないことを任せられる。」

 チルチャックは、そう語った。

 イヅツミは、渡されたカバンを見つめ、そして何か考えるように難しそうに顔を歪めた。

 

「ごちそうさまでした!」

 

 やがて食事は終わった。

 

 




イヅツミの名前…、イツヅミと勘違いしやすい。


次回は、バロメッツ。
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。