ダンジョン飯IF 連載版   作:蜜柑ブタ

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チェンジリング騒動編。



原作通りの変化にしました。


第四十一話  チェンジリング騒動

 

 

 高熱。あと悪寒。

 

 ファリン達は、現在全員で、寝袋の中で苦しんでいた。

 

「み…、みんなぁ…だいじょうぶ…?」

 ファリンが弱々しい声で聞くが、返事として返ってきたのはうめき声だった。

 この症状…、思い当たるのはひとつ。

 

 食中毒。

 

「ああ…とうとう…。」

 このままこんな形で死ぬのかとファリンは、涙ぐむ。

 最愛の兄を救うためとはいえ、魔物を食べ続けたのがこんなところで身体に来たのか…っと。

 こんな最深部で倒れて死んだ冒険者を、誰も拾わないだろう。

「兄さん、ごめんね…、ごめんね…。助けに行きたかったのにこんなところで…、うぅぅ…。」

「そんなこと……言うな…ぁ…。」

 やがて、高熱にうなされながら、全員が意識を失った。

 

 そして……、どれくらい寝ただろうか。

 

「ハッ! 熱…下がったかな?」

 起き上がったファリンは、身体が軽いことに気づいて起き上がった。

 だがその瞬間、ビリッと音がした。

「えっ?」

 下を見ると、服が横に破れていた。というか、身体ではち切れたという感じだ。

「えっ? あ、手が…なんか…。」

「どうしたの? ファリン…?」

「た、大変だよ、マルシ…、えっ?」

 手がたくましく妙に発達し、けれど、身体が縦に縮んでいたことに驚きつつ、マルシルの方を見ると…、そこにいたのは、マルシルの面影を持つハーフフットだった。

「マルシル…だよね?」

「えっ? えっ? わーーー!?」

「センシー、大変だよ! 起きて!」

 センシを起こす。

 そしてセンシは…、ウェーブのかかった黒髪の美しいエルフになっていた。

「……うるせぇな…、なんだよ?」

「…チルチャック…さん?」

 チルチャックの髪型をした、青髯のおっさんがそこにいた。

「わーーー!」

「うおーーーー!?」

 

 もうてんやわんや。

 

 そして、落ち着いたところで状況確認。

 

「つまり…、俺達はチェンジリングを踏んじまったってことか…。」

「ヒポグリフをグリフィンに変えるほどだから、人間が踏めばこれだけの変化があっても不思議じゃないよ。」

「チェンジリングって、その生物の近縁種に変えると言われるあの…。」

「えーと…、まず私は、ドワーフ。で、チルチャックは、トールマン。マルシルは、ハーフフット? で、センシは、エルフ…。イヅツミは……、コボルト? 猫耳の。」

 それぞれ違う種族になっていた。

 しかし、特に酷いのはセンシかもしれない。まさに、美!…なのだ。エルフは、男女問わず容姿が美しいが、筋骨隆々のドワーフがエルフになると……こうも変わるか。ファリン以外が頭を抱えるほどだ。

「ってことは…、もう一度チェンジリングを踏めば治るってこったろ? グリフィンをヒポグリフに戻したようにな。」

「そうしたいけど…。外、見て。」

 ファリンが部屋の外を指差す。

 そしてマルシル達が外を覗くと、そこは野営する前とは違う通路になっていた。

「チェンジリングを探す以前に…、元の場所へ帰れるかも分からないの…。」

「なんか震えるとは思ってたけど、迷宮自体が揺れてたってこと?」

「そうみたいだね。」

「ひとまず服を着替えようぜ。服を交換だ。」

「そうだね。」

 っというわけで、服を交換。

 冒険者用の服なので性別云々は関係なく着れた。

 だが、チルチャックなどは、背が伸びたことと、五感が鈍くなっため、その感覚になれない様子だった。またマルシルも、ハーフフットになったため、力が弱くなり荷物を持てず、逆にドワーフになって力が増したファリンが荷物を持った。

「とりあえず、貯水庫を目指してみよう。」

 ということで出発。

「ねえ、チルチャック。民間療法とかってあった? 地元で取り替え子の話があるんだよね?」

「ああ。火で炙れば元に戻るとか、桶いっぱいの水を飲んだら戻れるだとか…、そういう口伝なら山ほどある。実際は、本物の子供を拷問してたってわけだ。胸くそ悪い話だぜ。」

「うーん、じゃあ、やっぱりチェンジリングを探すしかないか…。でも、もしまた別の種族になっちゃったら……。いいかも。」

「おい。」

「兄さん、トロールに憧れてたから、実際になってみて姿を教えてあげたいなぁ。」

「……もう知らん。」

 目をキラキラさせているファリンに、チルチャックは諦めた。

 そうして、そんなこんなあるが、進んでいく。

 だが道中、罠もあり、迷宮の惑わしもある。

 だが、ハーフフットになったマルシルが鋭くなった五感で罠を感知し、落ちてきた鉄格子をドワーフになったファリンが曲げて道を開け、出入り口がたくさんある通路は、コボルトになったイヅツミが鼻を使って通路を見つけ、通路に空いている穴を飛び越える際には、マルシルをトールマンになったチルチャックが投げて渡した。

「…う~ん、なんだかんだで順調だね。」

「むしろ、以前より順調くらい?」

「意外と慣れるね。」

「慣れ……。」

 チルチャックに視線が集まる。

「まあ…。」

「そうだな…。」

「おい…。」

 妙な空気になる中、やがて見覚えがある獅子像を見つけた。

「ここを曲がれば…、あっ!」

「ええ!?」

 そこにあったのは、迷宮の最深部と言われている扉だった。

「あ…、戻るはずが、進んじゃってたんだ…。」

「引き返そうぜ。」

「ねえ…。」

「ファリン? まさか…。」

「このまま、行かない?」

「おいーーー!?」

 ファリンの提案に、全員が過剰反応。

「今までのことを考えると、迷宮は私達を逃がすつもりはないみたいだし、あがいても時間の浪費。先に進み方が適切かなって? あっ、もちろん元に戻ることも考えてるよ。一生この姿でいるなんてことは…。」

「お前な! 長命種の身体引けたからって…!」

「確かに…。」

 意外にもマルシルが助け船。

「意外とここまで不便はなかったし。」

「耳の大きさの違いがなんだというのか…。」

 センシまで同意。どうやらエルフの感覚がそうさせているらしい。

 チルチャックとイヅツミは、絶句した。そして、ため息を吐いたのだった。

「…先に進むとして…、どうやってあの扉を開けるんだ? あれの開け方が分からないから、みんな騒いでんだろ?」

「チルチャック。開けられそう?」

「解錠しようにも、錠前がない。魔術的な何かかもな。」

「魔力が通っている感じはするけど、解読には時間と設備とお金が……。」

 先に進む案……、塞がる。

「ヤアドさーーーん! これ、どうすればいいんですか~~!」

「助けて有翼の獅子~~!!」

 ファリンと、マルシルがガンガンと扉を叩いた。

「お、おい! おいおいおい! ファリン! その剣!」

「えっ!? わっ!」

 ファリンが背負っていた剣から、触手が伸びていた。

 慌てて背中から降ろして手に持つと、触手は、扉にある丸い部分の下の方の中へと入っていった。

「なんか成長してない!?」

「この酷寒で死んだかと思ってたけど…、もしかして…、有翼の獅子が?」

「もしくは、ヤアドさんのおかげ?」

 ゴゴゴゴ…っと扉から音がなり出す。

 すると…。

 ガサッと上の方にある茂みが動いた。

「そこ! 何かいるわ!」

 そして茂みから現れたのは、動く石像・ガーゴイルだった。

「来るよ!」

 そして、いつも通りの戦術を取ろうとした一行。

 しかし…。

「な、なんで俺を追って来る!?」

「一番目立つからだよ!」

「お前、タッパがあるんだから、お前も戦え!」

「無茶言うな!」

 直後、背後に迫ったガーゴイルが爆発した。

 マルシルだった。

 チルチャックは、爆風で吹っ飛ばされ、転がった。

「チルチャック!」

「だいじょうぶ! 直撃はしてない…は…。」

 杖を手にしていたマルシルだったが、突然鼻血を垂らし、倒れた。

「ま、周りが…虹色~…。」

「魔力酔い!? ハーフフットだから!? イヅツミ!」

 イヅツミを見ると、犬のように興奮して正気の目じゃなかった。

「待て! イヅツミ! 私が合図するまで動かないで!」

 大きな音と血の匂いで興奮しまくっている状態のイヅツミに、犬のように待てをさせて止める。今戦いを始めたら死ぬまでやめないだろう。

「センシ! ……武器は?」

「…重いから。」

 エルフは、ひ弱。

 ファリンは、もう自分しかいないと考え、センシの鍋を盾にして剣を振るう。

 戦いに向いている筋骨隆々のドワーフだから、本来魔法使い側であるファリンでも、激しい戦いが出来た。

 だが…。

 猛烈に疲れた。

「暑い…。」

 そういえば、ドワーフのナマリやセンシは、軽装だったが、これが理由かと思い至った。

 このままでは、普通に負ける。

 そう判断したファリンは、開いた扉の向こうへ逃げることを提案した。

 チルチャックに鍋を渡し、ガーゴイルの攻撃を防ぎながら全員で扉へ飛び込む。

 そして、重い扉を内側から押して閉じた。

「ふぅ~~~、…どうしよう。この身体…、すごく不便だわ。」

「結局こうなるか…。」

「それにお腹すいた…。ドワーフってお腹減りやすいんだね。」

 そういえば、すぐにセンシが食事の支度をしていたが、これが理由だったようだ。

 

 調理開始。

 

 まず小麦粉・水・塩・卵を、よく練り、寝かせておく。

 

 その間に、挽いたヒポグリフの肉に刻んだタマネギ、野菜を加え、よく練る。

 

 寝かしておいた生地を棒状にして、等分に切り、薄くのばす。

 

 伸ばして作ったその皮に、先ほど作った肉と野菜の具を入れて、くるむ。

 

 

「ちょっと作りすぎじゃないか?」

「不思議…。モクモクと作業してたら気持ちが落ち着いてきた。」

「何度かに分けて食べれば、あっという間だ。調理を続けよう。」

 

 

 湯を沸かし、出来た物を茹でる。

 

 2、3分茹で、引き上げ、黒胡椒をかけたら…。

 

 

「完成じゃ。」

 

 

 ヒポグリフの水餃子のできあがり。

 

 

「あづ!」

「熱い汁が出るから気をつけろ。」

「早く言え!」

「うん。美味しい。」

「なんかいつもより美味しく感じない?」

「ううん、これは誰が食べても美味しいと思うよ?」

 ファリンは、水餃子を食べながら、周りを見回した。

「それにしても…、ここって…異質。なんだろう? 見たこともない設備って言うか…。」

「余所ではたまに見かけるけどな。」

「ドワーフたちが築いた防衛地点の一種でしょ。」

「防衛?」

「エルフとドワーフが戦争をしていた頃…のね。学校で習わなかった? 双方が競って技術を先鋭化させていった結果…、大災害を招いてしまったの。その名残で迷宮には多くの“遺産”が眠っているけど、同じ過ちが起こるのを危ぶんで、エルフやドワーフたちは迷宮内の技術にピリピリしているわけ。この迷宮は特に色んな文化の衝突点だから、介入の暁には相当揉めるでしょうね。」

「そ、その話だけどさ!」

 チルチャックが言った。

「もし、エルフに因縁つけられたら、お前がなんとかできるんだよな?」

「えっ!? なんで私!?」

「お前の母親、宮廷勤めだとか、言ってたろ! コネとかないのか!」

「そ、それは…。」

「どのみち、今のマルシルは、ハーフフットだよ? 交渉するならセンシかな?」

「……善処する。」

 美!な、センシがそこにいる。

「…………極力、元の姿に戻る方法の模索…、で、行こう。」

「異議無し。」

 

 

 こうして、チェンジリングを探しつつ、他の方法で元に戻る方法を探すということになった。

 

 

 




ダンジョン飯・8巻開幕。


チルチャックと、センシの変化が過激だなぁって回ですよね。
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