お医者さんごっこ、って言うとHな感じがするよね。
無知な幼い女の子に、医療行為と言い訳しながら性的な悪戯をするとか。
恥ずかしながら私もそういう本を買ったりとか、そういう妄想をしたことはあるのだ。
「なんだ。私とお医者さんごっこがしたかったのだろう?」
「ぶひいいいい! 俺が悪かった! だから止めてくれ!」
「どれ、その頭を治してやろう。この米連製機械式コンピュータを埋め込めば、脳内物質の回転速度が三倍になる」
まあ、今の私が男とヤリたいのはHはHでもHELLの方なのだが。
現在、私の家にノコノコと現れた野良オークに鉄拳制裁中だ。
「やめてくれえええ!」
「『クレイジー・ダイヤモンド』!」
スイカ大の機械をオークにぶん投げ。
そのまま、近距離パワー型スタンド『クレイジー・ダイヤモンド』で纏めて殴りまくる。
このスタンドは非常にパワフルでありながら、“治す”という都合の良い能力を持っている。
これを医療行為というのは、何か間違っているような気もするが。
対魔忍世界だし、まあ誤差だよ誤差。
「ア、 あガ?」
「ん? 間違ったかな?」
“治す”ことによって、オークに機械を合成するつもりであったのだが。
大柄なオークの身体が、どんどんコンパクトになっていく。
見た感じ、機械にオークが吸収されているようにも見える。
「が。ガガ。タ、タスけテ。ピー。たスケテ」
「あー、なんか。その、すまんな。そんなつもりじゃなかったんだ」
どうも怒りで制御が甘くなっていたらしい。
なんと、オーク柄のコンピュータが出来上がってしまった。
仗助も悪役にやってたこととはいえ、これは酷い。
「本当にすまん。だけどこれで、『ザ・ハンド』ってね」
DISCを切り替え、何でも削り取る右手を持つスタンド『ザ・ハンド』で始末した。
機械自体はその辺のエロい公園で拾ったジャンクだし、惜しくも何ともない。
ただ、ちょっとオークが可哀そうとは思ったのだ。
私も元オークみたいなものだったので、そこら辺に思う事はある。
しかしとっさとは言え、『ザ・ハンド』で削り取って良かったのだろうか。
削った部分がどうなるかは、誰も知らないのに。
まあ、いいや。
「疲れるわ。こんなん」
とはいえ、あまりこの状況は好ましくない。
私がヒーラーとして活動し始めて暫くが経つが、拠点に何度も襲撃を受けている。
理由は恐らく、初心者狩りだ。
バックも何もない低位魔族なんて、カモにしか見えんのだろうよ。
特に理由もなく、オークは襲ってくる。
客が来たと思ったら、同業者からのスパイだったりする。
まともに治療しても、難癖付けて支払いを渋る。
今の所は全て撃退できているが、これは流石にどうなのだ。
まあ、この辺りは少しずつ実績を積むしかないな。
「はあ。買い物に行きたいなあ」
外出すれば当たり前のように不法侵入されているので、碌に買い物にも行けていないのが非常に辛い。
今の所、備蓄と通販で賄えているので現状維持はできているが。
備蓄は有限だし、通販は通販で問題も多い。
それに家の設備も不十分だ。
家には最低限のインフラしかないので、通信関係は『バーニング・ダウン・ザ・ハウス』の屋敷幽霊頼みなのだ。
“パソコンの幽霊”によりネットは繋がるのだが、如何せん推定1990年代物のパソコンは古すぎる。
対魔忍世界はサイバー化が異常に進んでいるので、時代遅れの“パソコンの幽霊”では太刀打ちできない。
最低限のハッキング対策がなされてないので、一刻も早く最新鋭のパソコンかスマホ環境が欲しい。
めんどくさがらず、ちゃんと買っておけば良かった。
結局、外部から人や物資を入れなければならない。
その第一段階として、住所さえあれば使える通販は非常に助かる存在なのだが。
「エロい宅配業者とか、実在してほしくはなかったなあ」
通販を頼むと、なよっとした優しい魔族のお兄さんが毎回届けてくるのだが。
エロ世界故か、既に三回もラッキースケベを食らっている。
三回だよ、三回。
媚薬トラップが仕掛けれた荷物を目の前で開けてきたときは、思わず半殺しにしまったぞ。
ちゃんと治療もして記憶を改ざんしたので、問題はなかったはずだが。
暴力ヒロインの気持ちなんて知りとうなかったわ。
「いい加減、胸がキツイんだよな」
親譲りの畜生ボディは、最近すくすくと成長していっている。
特に、胸の成長がヤバい。
獣人は成長が早いという、公式にあるかは知らないけど安い和製ファンタジーにありがちな設定を反映して欲しくはなかった。
親はエロゲよろしくボンキュッボンだったが、今の形で十分なんだよなあ。
下着ぐらい通販でいいじゃんとも思うが、前回のラキスケで胸を揉まれたのが痛い。
あれから性的に意識してしまい、時々股に手が伸びそうになる。
正直、かなりヤバい。
何かで発散したいし、直接見ての買い物もしたい衝動に駆られている。
通販生活だけは、自分にとってストレスが溜まる。
「せめて、仲間がいれば楽なんだが」
自分と同じ境遇の、所謂“転生者”みたいなのがいれば良いのだろうか?
どうもこの世界の物は信頼性に欠けるものが多い(気がしてならない)。
洗脳を使えば一時的には仲間に出来るだろうが。
それでも、いざという時に寝首を掻かれそうで怖い。
この世界は油断慢心から”対魔忍”コースが有り触れすぎている。
「スタンドの中に、仲間として独立したスタンドがあれば。-あ」
そういや、丁度良いスタンドがあったな。
確実に仲間になり、仮にDISCが敵に渡ってもあまり問題はない。
信用も信頼もできるスタンドがあるではないか。
やってみる価値はあるだろう。
**
用意したのは、風呂に一杯のぬるま湯。
その中へ『ホワイトスネイク』で作った“私の記憶のコピーDISC“を素としてた生物を。
『ゴールド・エクスペリエンス』の生命エネルギーを叩きこんで生まれ変わらせた“プランクトン”を投入する。
そこへさらに、とあるスタンドDISCを投入する。
スタンドDISCは水に溶けるようにして、消えてなくなった。
暫くすると、風呂の中に小さな黒い点が現れた。
その点は瞬く間に増殖し、大きな塊を作っていく。
塊はやがて機械的な半魚人を作り出し、風呂の中から這い出てきた。
「おはよう、『フー・ファイターズ』。調子はどうだ?」
「悪くない」
これこそが、スタンドであり本体でもあるミュータント。
プランクトンの集合意識体がそのままスタンド能力という、何とも珍しいスタンドだ。
人である私でも使いこなせはするが、大して使い道がなかったスタンドであったが。
恐らくは、こういう使い方が本来の使い方なのだろう。
「君の役目は分かっているね?」
「ああ。私はフォックスハウンドの写し身。この家を守るために作り出されたのであろう」
「上出来だ」
思わず笑みが漏れるのを感じるな。
『フー・ファイターズ』は特殊な遠距離パワー型であり、非常にタフなスタンドだ。
致命傷を食らっても消滅は稀であり、拠点の防衛を安心して任せられそうだ。
何より、彼女は対魔忍成分が殆ど含まれていないのだ。
そうした点で、非常に安心感がある。
「とはいえ、フォックスハウンドよ。このままでは何かが足りないと思わないか?」
「うん? 何がだ?」
「私の姿を、よく見てくれ」
F・Fの姿を見る。
何と言うか、画風が違うな。
機械的なのに、ギリシャ・ローマ彫刻のように美しさがあるというか?
まるで荒木作品から出てきたみたい、としか言えないな。
「何か不備があるのか?」
「人の身体が足りないと思わないのか?」
「はあ? 必要ないだろ?」
言われて見れば、そうだけど。
確かにジョジョでのF・Fは人間の死体を乗っ取っていたが。
とはいえ、それは陸上で長時間の生活をするためだろう。
「フ。分かっていないようだな。人には人の身体が必要なのだ」
「いや、お前。人間ちゃうし。プランクトンだし、スタンドだし」
「自分を人間だと思うものが人間なのだ。そうであろう?」
思わず頭痛がする。
コイツに私の記憶を与えたのは失敗だったか?
「そもそもだ。契約には報酬が必要だと思わないのか?」
「何でだよ」
「私の元ネタは主を裏切っていただろう?」
確かに、F・Fは事実上プッチ神父を裏切っていたけども。
私をも裏切るとは流石に考えたくない。
何で裏切らない仲間を作るつもりだったのに。
早速この場で裏切りをほのめかしてくるのだろうか。
「『ホワイトスネイク』の命令には逆らえんだろ」
「ほう。新たな主はこの世に絶対が存在すると御思いでか」
「あー、もう。わかった。わかったってば」
買い物がしたかったので、丁度良いは丁度良いのだが。
久しぶりの外出なのに、死体を買いに行くこっちの気持ちにもなって欲しい。
何と言うか、なんか嫌だろ。
「人間の死体を用意すればいいんだろ。すぐに買って来るから、せめてそれまでは家を守っておけよ」
「一番いいのを頼む」
「うっせーよ! バーカ!」
前世のネタを引っ張ってくんなし。
嬉しいけど、素直に喜べんだろーが。
**
「くっそ。せっかくの外出なんだし、GE〇とかに行きたいよな」
東京キングダムに、レンタル業があるかは知らんが。
エロ関係でなら間違いなくあるだろうなあ。
日本国内に行かないと、健全な企業は残ってないかもしれん。
「久しぶりの東京キングダム。相変わらず狂ってやがるな」
男は比較的まともな恰好をしているのだが、女がな。
ここにいる女は娼婦か対魔忍のような戦闘屋しかいない。
つまり、上から下まで恰好が痴女い痴女い。
かく言う私も、若干エロ目のリクルートスーツを着ているが。
こうでもしないと“私は素人ですよー“扱いだから、仕方あるまい。
「死体かー。あてはあるけどよー」
オークとかの死体なら、そこら辺に転がっているが。
それだと、F・Fが満足しないだろ。
やはり、死体は正式に買う必要があるな。
死体は何かと有用なのだ。
魔術の媒体であり、ゾンビやクローンの素材であったり。
物によっては非常に高額で取引されるとのこと。
魔族のは地位による所が非常に大きいが、人間は供給が多いらしく比較的安価だと思う。
それらの一番確実な販売元は、闇医者や魔界医だよな。
彼らは人類と魔族、科学と魔術両方に与する、非合法医療と実験のスペシャリストだ。
とはいえ私は商売敵だし、コネも無いのにまともに取り合ってはくれないだろ。
かつて私に仕事を斡旋してくれた男は、連絡が繋がらないでいる。
あれから大分時間も経ったのだ。
恐らく生きてはいないのだろう。
となると、やはりノマド辺りを頼るか。
一応、ちょっとした関係はある。
それは偵察を兼ねて、小さな治療を依頼してきた女騎士だった。
『パール・ジャム』による料理を御馳走してやったが、多少マシな魔人には見えた。
さて、どうなるかな。
「人間の死体、か。確かに、すぐにでも用意できなくはないが」
東京キングダムは非合法都市だけあり、ほぼ娼館とか奴隷市とかそんなんばっかなのだが。
ここは、割と静かに会話が出来る飲食店であったりする。
成金ゴブリンであったり、気取りたがりが主な客層だ。
当然裏メニュー的で、いかがわしいサービスもやってるけど。
時に何処からか漏れ出る喘ぎ声からして、どうもそっちの方がメインらしい。
この世界では少数派だが、隠れてやりたい人もいるのだろう。
「何か問題でも?」
「いや、な。下位とはいえお前のような魔族が、死体を弄ぶような真似をするとは思わなかったのでな」
女騎士がこちらを蔑むように睨んでくる。
真面目で清廉を良しとする、言わば魔族版対魔忍だ。
どうでもいいが、未だに対魔忍=姫騎士という構図が成り立つのは不思議でならん。
忍者≒騎士って、どう考えてもおかしいよな?
おかしくないかな?
「私にも色々あるのさ。誇り高き騎士といえど、後ろめたいことがないとは言えないようにな」
「フン」
この世界の人の例に漏れず、これはこれで問題の多い魔人である。
とはいえ、話をする分にはまだマシな部類だから仕方ない。
「出来れば手短に、色んな種類を見せて欲しいね」
「何故、私がそのような真似をせねばならんのだ」
当然のように断られるが、それも織り込み済みだ。
『エニグマ』の紙を懐から取り出す。
「そういや、せっかく特製のお菓子を持ってきたのだが」
「何だと」
「ほら、特製のプリンだ」
紙を広げると、計量カップに入った冷たいプリンが。
勿論、トニオさんも作った『パール・ジャム』入りの特製料理だ。
食べると水虫が治るという、現代科学からしたらトンデモない効力を持っている。
私は本来料理が得意ではないが、元ネタを再現するというDISCの性質によって私でも作ることが出来た。
「ハッ! そのような子供向けの料理に、私が屈するとでも?」
「あ、そう。じゃあ、いらないのか」
皿をわざとらしく取り下げ、備え付けのスプーンで食べようとする。
すると、面白いように慌てだした。
「ま、待て!」
「何だよ。いらないんだろ?」
すっげえ、やっぱこいつ面白いわ。
ちょっと思っていたのは違うが、こういうプレイが出来るのって異世界の醍醐味だよな。
「違う。これは、その、没収だ。そのような陳腐な物は、私が責任をもって処分せねばならん」
「ああ、そう。没収ならしょうがないな」
何故か決死の表情を浮かべた女騎士は。
スプーンを掲げて、高らかに宣言する。
「このような物は速やかに処分させてもらう! 騎士の名誉にかけて、決して誘惑なんかに屈したりしない!」
「らめええええ! プリンが口の中でとろけりゅのおおおおお!」
知ってた。
**
あの後ちょっとした業者を紹介してもらい、無事に死体を買うことが出来た。
その翌日にオークの業者が家まで届けてきた。
随分と早いな。
「お届け物でーす」
「ああ。そこに置いておいてくれ」
コールドスリープで保存してあるらしいし、結構丁寧だな。
業者は下衆っぽかったけど、サービス自体は日本のコンビニとそう変わらんぐらいだった。
何か、拍子抜けだ。
「ほら。届いたようだぞ」
「ん。どれどれ?」
F・Fが包装(?)を開けると、そこにはカリメロの美少女死体が入っていた。
どういう基準で選べばいいかは聞かなかったが。
丁度ジョジョで言うエートロ似の死体があったので、それを選んだのだ。
流石に対魔忍世界風だが。
「おお、これは。しかも綺麗である。ありがとう、主よ」
「そうか。それは良かった」
どうも死体は対魔忍のものであるらしい。
業者は何故か処女であることを強調していたが。
何の意味があるか、私にはよく分からん。
げんなりするから、分からんということにしてくれ。
「やれやれ」
これで好きに外出が出来る。
ヒーラー業は、完全予約制にすればいいだろう。
今後の予定を建てようと、『ハーミット・パープル』を取り出す。
精度は悪いが、現状に対してある程度の予告ができるので重宝している。
うん?
「どうした?」
「対魔忍が来る」
「対魔忍?」
「ああ。それも結構、メジャーなのがな」
F・Fが不審に思い、こちらに近づく。
黙って、念写したスケジュール帳を見せる。
近い日付に、“井河さくらの襲撃 予告日”と書かれている。
「井河さくら? 大メジャーじゃないのか?」
「分からん」
未だ、時系列とか世界観を詳しく把握できている訳ではない。
エドウェイン・ブラックが存命とかその程度なのだ。
「何か知らないか? その身体から、何か読み取れないか?」
「いや、わからない。まだ、あまり慣れていなくてな」
えー。
どうするんだ、これ。
意味わからん。