対魔忍世界なんかに屈しない!   作:倉木学人

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最近、広告でアサギを良く見るっすね...

作者の都合で執筆を続けられなくなったため、
本作は一旦ここまでにします。

終わりまでの構想は完成していましたが、無念です。


戦いはまだ始まったばかり

 井河さくら。

 アサギの妹であり、影遁という中々に格好良い忍術を扱っている。

 その実力は裏社会でも広く知れ渡っており、世界でも屈指の実力者であることは疑いようがない。

 ない、のだが。

 

 そんな彼女も、物語中での活躍は芳しくない。

 軽率な性格が災いして、彼女が下手をするのはあまりに有名だ。

 強すぎる姉への人質として利用されたり、姉との背徳的なプレイに利用されたりと、毎度毎度ひどい目に会っている。

 某掲示板では無能の烙印を押されていたが、正直妥当な所であろう(対魔忍が全員無能という風潮は認めないぞ)。

 そういった意味で、対魔忍を語る上、非常に重要な人物であるのは間違いない。

 

 そんな彼女の襲撃をスタンドで予知した訳だが、さて。

 

「油断慢心しない人物を探す方が、この世界では難しいとはいえな。流石に面倒だ」

「余裕そうだな、我が主よ」

「そりゃな」

 

 F・F(フー・ファイターズ)が皮肉を言ってくるが、軽く流すことにする。

 油断慢心は対魔忍フラグとはいえ、ある程度の余裕というのは必要なのだ。

 余裕が無いと、見える物も見えなくなる。

 それに、私は対魔忍ほどタフでも無いし、腕力もない。

 

「撃退や捕獲するだけなら、ぶっちゃけヌルゲーも良い所だ。問題があるとすれば。そりゃあ」

「撃退した後か?」

 

 私は嫌そうにうなずいてしまった。

 モブの対魔忍が動くならともかく、作中の重要人物が動いているのだ。

 何かしらの一大面倒事に巻き込まれたのは確実だろう。

 

 ちなみに、私でも全世界で上の下ぐらいの強さなんだよな。

 多分、アへ顔アサギやブラックの旦那と同じぐらいかな?

 ソースは魔界で出会った見知らぬ魔族。

 

 あれは古今東西全ての財宝を持つとかいうチート猫又だったな。

 同時にショタコン眼鏡フェチの合法ロリだったが。

 どうにも力が強すぎると達観しているのか、現世への興味を無くすらしいな。

 アレの類がいるとは知らんかったが、表舞台(げんさく)に出てこないのも納得だわ。

 ま、この世界が純粋な対魔忍系列世界って確証もないのだけど。

 

「しかし、まあ。アレだな」

「アレ。とは」

「わかんなないか? もどかしいんだよ」

「予知できなかったことがか? 気にしてもしょうがないと思うはずだが」

「違えよ。察しが悪いな」

 

 面倒事を事前に把握できなかったのがスゲー不味いのは確かなんだが。

 予知系のスタンドを普段からもっと鍛えなきゃかね?

 これでも鍛えているつもりなんだが、何もかも分かるって訳でもねーし。

 

 …ババアがくれた予言は、不吉そのものだったな。

 ”この世界で”私はそのうち死ぬらしい。

 とはいえ、その過程まではまだ未確定だとか。

 冗談じゃねーな。

 

「おい。私が誰だか言ってみろ」

「何って、スタンド使いの一匹狼だろう。ああ。そういうことか?」

 

 さすがFF。

 ボケボケとはいえ、頭は良いな。

 理解が早くて助かる。

 

「狼は、狩りをする動物であったな」

「そうだよ。ったく。“待つ“のは性に合わないんだよなー。」

 

 身体的な特性として、狼は待つより追う方が得意なんだ。

 魔族であっても、一応は普通の動物と変わらんらしい。

 だからこそ狼女って獣人の中でも有名な割には、かなり低位魔族だったりする。

 

「家猫でも飼うか? ちょうど家にネズミが沸いてんだ」

「ふーむ。名前はステーキとかハンバーガーか?」

「やめんかコラ」

 

 と、倉庫に設置したインターホンが鳴る。

 外を画面に映すと、この世界で良くある美貌の女が映っていた。

 彼女はちょっと前に宅配を依頼したピザ屋の服装を着ていて、傍には配達用のバイクもある。

 予定より少し早いが、間違いなくこれが襲撃だな。

 

「うし、F・F。この部屋まで丁寧にお連れしろ」

「了解した」

 

 了解した、か。

 了解って、たしか対等な関係で使う言葉だろ?

 アイツは私をそういう目で見てるってことだろうが。

 まあ、そういう関係も悪くはないかね。

 

「しかし。我が主よ。最近肉ばかりではないか?」

「何か文句あんのかよ」

「野菜や穀物も食べないと、健康に悪いぞ」

「アメリカチェーンのピザ屋に頼んだんだから、フライドチキンは野菜だろ」

「全く、カロリーゼロ理論ではあるまいに」

 

 私の母さんのつもりか?

 お前の食事、水ばっかじゃねーか。

 てか待たせてるんだから、早く行けっての。

 

 そうしてF・Fが連れてきた女は、一見ただの配達員にしか見えない。

 後で知ったことだが、この世界の変装レベルは結構高いようだ。

 少なくとも、クヌム神が役立たずになるぐらいにはな。

 

「お待たせ! 代金は鉛玉だけどいいかな?」

「ッ!」

 

 すぐさま一瞬で呼び出したトンプソン機関銃をぶっ放した。

 全弾回避されたが、そこいらの魔人には出来ん動きだ。

 襲撃者に間違いないようで安心した。

 攻撃は“弾丸の幽霊“だから、当たっても全くの無害なのだけど。

 

「おっす。井河さくらだな?」

「ふーん。どうして変装が分かったの?」

 

 うわ。

 話す気ゼロだな、おい。

 

「質問を質問で返すなってーの。それとも、“学園“ではそう教えているのか?」

「うるさい。邪悪な魔族なんかに何がわかるの?」

 

 邪悪な魔族、ねえ。

 そりゃ、私も結構あくどい事はやってるけどさ。

 対外的には中立中庸の商人スタイルで通ってるはずなんだけどなー。

 対魔忍は魔族と対立しているとはいえ、後ろめたい奴は結構いるのに。

 

「よし。聞きたいことがあるんなら、まずは殴り倒してからだよな。といっても、お前さんの相手はコイツがするんだけど」

「初戦の相手として不足ではないが。やや巨大すぎる気もするな」

 

 そう言って、F・Fが私の前に立つ。

 あまり期待はしてないが、さてどうなることやら。

 

**

 

 F・Fは肉体(プランクトン)を拳銃に見立て、中距離戦闘を行うキャラだったと思う。

 どちらかというと正面切っての戦闘は得意ではなく、暗殺向けの能力だろう。

 所謂、ミスタ役だな。

 群体の集まり故に非常にタフであり、防衛戦には向いている。

 

 対する井河さくらは、二刀の忍者刀を用いる近接キャラだ。

 影遁の術から繰り出される一撃は、まず防ぐことは出来ないだろう。

 対魔忍特有の戦闘力から、正面突破も得意だと思われる。

 

「ふむ。中々どうして、この身体は悪くない」

「クッ! なんて卑劣な!」

 

 何か、思ったより拮抗しているな。

 本来F・Fが圧倒的に不利なはずなんだが。

 私はそれ前提に作戦立ててるし、別に悪い結果ではないんだけど。

 

「ん~?」

 

 私は戦闘の素人だから、あんまり色々言えないが。

 どうも、さくらが結構手加減しているっぽい。

 私だけが目的だと思ったが、この場合だとF・Fも目的なのかね?

 

 F・Fの存在が知られている訳がないから、乗り移ってる死体の方に用があるのだろうけど。

 情に厚い対魔忍とはいえ、ただのモブの。

 それも死体に用があるってなんだろうな?

 F・Fがまだ記憶に慣れていなかったのがな。

 

 さくらは戦闘の途中に、こちらをチラチラ見てくるが。

 何もしていないようには見える、私を警戒してのことだろう。

 その考えは間違いじゃないけどな。

 

 ちなみに部屋には、わざとらしく白熱灯による影が用意されているが。

 勿論、これらは罠だ。

 私の目の前にはピアノ線が設置してあり、近づくとスパッと斬られることになるだろう。

 対魔忍の頑丈さなら突破できるかもだけど。

 

「ま、そんなもんだろ。F・F、もうやめていいぞ」

「む。助かった」

 

 そろそろF・Fがやばそうだったんで、適当に下がらせる。

 こっからは私が相手だ。

 

「なんのつもり?」

「んー。悪いが、もうチェックメイトでな」

「何を」

 

 その瞬間、さくらの身体がグラリと揺れて倒れる。

 息遣いは荒く、体全体が真っ赤っかだ。

 

「な」

 

 何とか、バランスを取ろうとしているが。

 媚薬入りの酒を注入させてもらった。

 酔っぱらい+発情の状態異常じゃ何もできんさねー。

 

「はい。“ヘブンズ・ドアー”」

 

 身動きを制限したところで、さらに封印を重ねてかけていく。

 これで完全に無力化したかね。

 ここからは面白くない情報収集の時間だ。

 

「ふむふむ。お、コイツ。オカルト用のコンタクトレンズとか用意してやがる。生意気な」

 

 ちゃんとスタンド対策はしていたみたいだが。

 ま、無駄だったな。

 ミニサイズの群体型スタンド、“ハーヴェスト“の奇襲に気づける奴は殆ど居ないからなあ。

 三部承太郎が、戦いの中で気づけるぐらいかね?

 

「お楽しみだな。主よ」

「あんだよ」

 

 なんかお前、楽しそうだな。

 今回の事件に面白い要素なんてあったか?

 

「で、ヤるのか?」

「あ“?」

 

 その言葉を理解した瞬間、私の中からドス黒い感情が湧き出た。

 F・Fは危険を察したのか、思いっきり引き下がった。

 

「ちょ、ちょっと待った主よ! 私が悪かった! だから、何が悪かったのか教えてくれ!」

「てめえ、お前だけは信じていたのに。私を裏切りやがったな」

「ち、違う。私は裏切ってはいない! 私は主のことを思って」

 

 私の気持ちを裏切ってんだよ。

 だから、できるだけ対魔忍要素を入れないようにしてたのに。

 自分から、対魔忍につっこみやがって。

 

「ヤることがどう繋がるってんだよ。あ?」

「主は、主はてっきり対魔忍的なことをするのかと」

 

 私が対魔忍好きでもな。

 私が対魔忍的なことはするのは違うんだよ。

 てか、私が“ヘブンズ・ドアー”で身体の成長を止めているのを知ってるだろうが。

 

「いや、お前な。ウチ、女の子やぞ」

「できないことはない、はずだと思うのだが」

 

 そりゃ、できないことはないけどさあ。

 できないことはないけどさあ。

 

「あのさー。お前、私が誰だか言ってみろってんだよ」

「す、スタンド使いの一匹狼だろう? そうであるよな?」

「そうだよ。スタンド使いで。しかも狼女だぞ」

 

 お前、本当に私の記憶を持ってんのか?

 マジでボケもいい加減にしろよホンマ。

 

「まずな。精神力がモノを言うスタンド使いが、そんな負け犬みたいなことするかってんだよ」

 

 私に黄金の精神があるとは思わんが。

 獣並みの行動は、人間賛歌を支持するヒロヒコ的にアウトだろうよ。

 軽蔑した目つきでアホ女を見つめ、適当に足でゲシゲシ蹴飛ばす。

 

「誰がこんな、乳臭いガキなんかに欲情するか。ボケ」

「が、ガキじゃないもん」

(確か、ガキは主の方であったと記憶しているのだが)

 

 さくらの言葉を無視する。

 あとF・F、聴こえてっぞ。

 

「それに、ウチ等はな。本来、“つがい“で狩りをするんだよ。オークみたいなチンパン共と一緒にすんなっての」

「ああ」

 

 ウチの部族は、外部から持ち込まれた牧畜を最近になって採用し始めたらしいんだが。

 そのせいでうちの部族でもハーレム制ができ始めたとか、それのせいでレイプ事件が増えたとか。

 いろいろ思い出すとムシャクシャするんだよ。

 

「誰がこんな、乳臭いガキなんかに欲情するか。ボケ」

 

 気持ちをぺっぺと吐き出す。

 当たり散らすのは、流石にこんぐらいにしておくか。

 

「すまない。主よ」

「あまり。私を失望させるなっての」

 

 F・Fに近づき、適当にキリマンジャロの美味しい水でもかける。

 冷静になれ、冷静になれ。

 仲間、大事。

 信頼できる仲間はマジで貴重だから、ちゃんと労わってやらねーと。

 

「次やったら、肉体か記憶没収だからな。出来れば、お前に着いてきて欲しいというのによ」

 

 くそ、さらに一番上の兄貴が馬鹿共に殺されたのを思い出した。

 ネガティブにならないように、最近は良いループを作ってたのに。

 おのれ対魔忍。

 

「私は、この世界の固定観念に引きずられていたようだ」

 

 F・Fは流石に察したのか、青ざめた顔でこちらを撫でてくる。

 ヒヤリとした手が気持ち良い。

 

「主は、対魔忍のようなことを言えるのだな」

 

 何気なく言った言葉なのだろうが。

 その言葉が、さらに私へ突き刺さった。

 

「そう、だな」

 

 失言であるが、不意打ちがクリティカル過ぎて怒れなかった。

 

 …もしかして、私って対魔忍と同類か?

 

 そう思わずにはいられなかった。

 

「主?」

「うるさい。コレをアサギのところに送るんで、さっさと手伝え」




次回、「一転攻勢! そして妄想は現実へ」

多分続きません。

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