それでも我輩はネコである。   作:far

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小此木氏の 歌が力に!?俺の歌を聴けー!! を推薦してみる。
シンフォギアにバサラっぽい人を突っ込んだら、ハッピーエンドになった話。どんなに強引でも、バサラなら仕方が無い。読む間のBGMにFireBomberを聞きたくなる。
全14話完結済、勢いで読むが吉。


第2話

 

 我輩は幽霊初心者である。移動ひとつとっても、なかなかに、うまくはいかぬ。

 空中を踏んで前へは進めるのであるが。こう、なんと言ったら伝わるのであろうな。

 どこに、どの時点で足が付くのかが、わからないと言ったら良いのか。

 それとも。にごった水面の河かなにかを、歩いているようなものと言ったら良いのか。

 しかも我輩は日本人の幽霊であるせいか、足が無い。不思議と空中を踏む感触はあるのだが、意識して歩こうとすると、これが本当に難しい。

 

 道理で、幽霊というのは飛ぶのであるな。

 

 まさか、そんな理由とは思わなかったが。

 なお、我輩は飛び方がわからぬ。まったく持ってわからぬ。今、浮いていられる理由すらもわからぬ。

 

What happened? Come early(どうした? はよ来い)

 

 ハグリッドが呼んでいる。行けたら、行っているのである。

 こうなれば仕方が無い。

 考えてしまえば難しいのであれば、考えなければいい。

 息を吸って、吐く。頭をカラにする。集中しながら、意識のレベルを落とす。

 そして歩き出す。無意識にであれば、足を踏み出せていたのだ。出来ていたなら、そうすればいい。

 

 これも瞑想のちょっとした応用である。

 使用しすぎたせいで、個性として使えているのか、それとも素で覚えて使っているのか、もはや区別が付かぬが。

 

 そして歩いてホグワーツの門をくぐる。

 門の先。目に飛び込んできたのは、古い西洋の街並みにも似た石造りの家たちだ。右手には、蒸気機関車が止まっている。あれも魔法関係の何かで動いているに違いない。

 きょろきょろと、周りを見回しながら進む。石畳の上、30㎝くらいを歩きながら、巨人のあとをついて歩いていく。

 

 まだ魔法らしい魔法は見ておらぬが、すでにファンタジーの空気を呼吸しておるような気分である。

 正直、楽しい。

 

 おや。家が途切れた。そして道が分かれている。

 

Don't go to the left. That's a lake(左に行っちゃなんねえ。そっちは湖だ)

 

 水中人とかが住んでいたアレであろうか。小さな子供も通う学校の敷地内に、必ずしも人間に友好的ではない種族を住まわせて良いのであろうか。

 まあ、良い。我輩としては楽しそうだから、かまわないことにするのである。

 

 そしていよいよ城が近くに見えてきた。またあらためて門があり、その上には翼の生えたイノシシの石像が、狛犬のように飾ってある。あれは何か意味があっただろうか。

 

 うん? 待てよ。

 

 そういえば別に明かりで照らされてもいないのに、像がくっきりと見える。

 道中も、ハグリッドのランタンひとつだというのに、全く不便は感じなかった。

 我輩は猫であるがゆえに、夜目がきく。しかし、さすがにここまでハッキリとは見えなかったはずだ。

 これも幽霊になって変わったことの、一つであろうか。

 現実に戻った時、どうなるか少し楽しみ――――――いや、僕に目は無かったね。あまりに楽しくて、ついうっかりしてしまったよ。

 

 楽しかった気分に、水が指されて、少し冷静になった。

 だがそれも良かろう。今から、我輩の採用面接のようなものなのだから。

 せっかくこのハリーポッターの世界に来たのだ。楽しむのに、ここホグワーツ以上の場所なぞ、ありはしない。

 人生は楽しむものである。そのためにこそ生きておる。

 

「あの忘れえぬ日々 そのために今 生きている」

 

 ああ。楽しかったとも。そして、これからもきっと楽しいのだ。

 まったく。人生というやつは、最高であるな。

 

 巨大な木製の、おそらくは樫の木の扉を開いて、ようやっと城の中へ。

 おお。玄関ホールだ! すごいぞ映画で見たままだ! 思ったより暗くて地味だ!

 壁に肖像画が多くかかっておるが、あれらは皆しゃべるのであろうか?

 正面の階段は、やはり昇ろうとすると波打って、遊んでくれるのであろうか?

 それよりも今は夜である。幽霊は。我輩と同じ幽霊たちはどこだ。

 

Calm down. Cait Sith(落ち着け。ケット・シー)

 

 急にはしゃいで、周りを見回す我輩の頭に。ちょうど触れるくらいに、その大きな手を置いて。ハグリッドが、苦笑しながらそう言った。

 ケット・シーとな?

 確か長靴を履いた猫とか、あのような感じの妖精であったな。その姿は、ひとことで言えば二足歩行の猫。なるほど。ピッタリだ。

 ハリーポッターシリーズには出ておったかな? ヒゲが魔法の杖の素材の一部になっておったのは、なぜか覚えている。

 

 きょとんとして、動きを止めた我輩を置いて、スタスタと。いや、ドスドスと歩いていったハグリッドが、柱の前で止まって杖を取り出す。

 

Chocolate Frog(カエルチョコ)

 

 今日の合言葉は、カエルチョコであるらしい。

 ぐるりと柱が回転して、階段が現れる。校長室のある塔への、階段である。

 魔導エレベーターとか、そういうのは無いのであろうか。動く階段、魔法のエスカレーターならあるわけであるし。

 

 そんな下らないことを考えていたら、すぐに部屋についてしまった。

 ハグリッドの大きなこぶしが、三度ドアを叩く。

 

 さて、面接である。

 さあ。お祈りされぬように、がんばってみるとしようか。

 

 

 




●「あの忘れえぬ日々 そのために今 生きている」
機動戦艦ナデシコより。不要と判断されたデータ、記憶を削られてしまったメインコンピュータ、オモイカネの言葉。後にナデシコを取り戻そうとするクルーらへ呼びかけるルリの想いでもある。
人類初の星間戦争、木星と地球の間でのそれに、民間会社が運営する戦艦に乗って、腕は一流だが問題ありなクルーらが火星へ旅立つ。一時は二次創作がゴロゴロしていたのだが、さすがにここ数年はほぼ見かけない。
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