それでも我輩はネコである。   作:far

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朝方に投下したせいか、夕方あたりに「あれ、次の話まだなの?」と言われた気がしたので本日2回目。


第5話

 

 我輩は幽霊生活を満喫中である。いやあ、バジリスクは強敵だったのである。

 マスターの服従呪文で一発よ、などと考えていたら、不意打ちを食らってしまって、危なかったのである。

 我輩が幽霊でなかったら、死んでおったな。

 さすがは長年、何も食べるものも無さそうな場所で生き抜いた、魔法の蛇。普通ではない。

 

 だがマスター、ダンブルドアはもっと普通ではなかった。

 

 マスターはバジリスクの体当たりを呪文で防御し、そのまま体を呪文で拘束し、呪文で服従させた。

 よし。ティンと来た。バジリスクくん。今日から君の名はマンダだ。

 同じように洗脳されて、使いつぶされた大蛇の名前がそうだったはずだ。君はそうならないように、気をつけろ。

 

 さあ、マスター。マンダの牙をもらって行こう。あの牙と毒があれば、呪文無しでも分霊箱を壊せる。

 リーマスに持たせてあげよう。きっと頑張ってくれるさ。

 

 ああ、そうそう。リーマスで思い出したが、ピーターは生きているぞ。

 うむ。事実である。そもそも、指一本残して爆死。しかし肉片や血は、さほどありません。でも死んだと思いますって、マジであるか?

 江戸時代の岡っ引きですら、もう少し疑いを持つと思う。

 つまり、え~。名前が出てこない。犬、としか出てこぬが、その、アイツだ。アイツは冤罪で、濡れ衣で、無罪である。

 そうそう。それだ! シリウス・ブラック! ああ、思い出せた。スッキリした。

 ピーターはイタズラ仕掛け人の、赤毛の双子の家で延々ペット生活を送っているから、捕まえたかったら不意さえ打てれば簡単だ。

 

 これを知ってどうするかは、マスターに任せるのである。

 我輩はこれから、久々の食事であるので。

 

 うむ。食事である。正確には食べられはせぬのだが、味はわかる。

 食べようとすれば、すり抜けてしまって食べられない。しかし、口の中。舌に触れれば味はわかる。

 

 つまり。こうすれば良いのだ。

 ホグワーツの食堂の長机に、ずらりと置かれた料理。水泳部員がプールのコースを泳ぐように、そこを往復していく。

 テーブルに置いてある料理に、こちらから突っ込み、すり抜けていけば。次々と変わる味が楽しめる。と、いうわけだ。

 

 歯ざわりや触感がわからぬのは、イマイチである。しかし、贅沢は言うまい。

 オールフォーワンとして牢獄にいる現実では、もともと先生の体が食事が出来ずに、栄養を点滴などで補給するのみ。

 アインクラッドでは、ほぼ動かない体で、食事が出来ずじまい。

 久々だ。味を感じるというのが、本当に、久々であるのだ。

 これを邪魔するものは、誰であっても敵である。

 

 んん? なんだね、しもべ妖精たち。そろそろ生徒たちが来る?

 手段は問わぬ。足止めしたまえ。

 さあ。もう三往復だ。

 ふははははー! この入学式のご馳走を最初に食べたのは、生徒たちの誰でもないっ! このDI、もとい、ネコだーっ!!

 

 しもべ妖精たちは、なぜかこちらの言いたいことが伝わった。

 しもべ妖精として、当然の心得でございます。

 そう誇らしげに答えた彼らは、ボロボロの布しか身に着けておらぬのに、立派な執事に見えた。

 

 だからこそ、こうしてワガママが通じるのであるがな!

 欲を言えば、伝統のイギリス式なので、味が大雑把なのが難ではある。

 しかしそれはそれとして、今は楽しめる。ジャンクな味わいというのも、悪くは無い。

 

 この後は、事前に話し合って、仕込みをしておいた組み分け帽子。彼をドラコ・マルフォイがかぶろうとした時に「アズカバーン!(Azkaban!)」と叫び、次いで「冗談!(It's a joke!) 帽子ジョーク!(A joke of a hat!) さあ、怖がらずかぶりなさい!(Without being afraid, lET'S put it on!)」と話しかけるのを見守って。

 こっそり入学式に混ざってホグワーツの歌を歌って。

 必要の部屋で、レイブンクローの髪飾りを手に入れて。バジリスクの毒に漬け込んだら、中の魂だけ壊れないか実験する予定だ。

 妖精式の杖なし魔法やら、ハリポタ式の杖魔法を使えないか、試してみるのはまた明日である。

 

 そのうちマスターには、日本へ連れて行ってもらわねば。

 味噌県の豊橋というところに、クィディッチのプロチームがあるらしいので、たぶん魔法関係の何かもあるであろう。

 たとえ一人でも行くぞ。どうしても、お米が食べたいのだ。

 普通に生活しているぶんには、特に気にはならなかったのであるが。こうして長い間食べられないと、無性に食べたくなってくる。

 禁断症状というのは、こういうものなのであろうか。

 さすがは先祖代々、縄文時代あたりから数千年食べ続けてきただけはある。

 細長い種類の米ならばあったが、違うのだ。これではないのだ。

 ササニシキを品種改良したらしい、カリフォルニアライスでもあれば良かったのだが、英国のホグワーツには存在しなかった。

 

 こうして考えておったら、予定なぞ全部放り出して、日本へ行きたくなってきた。しかし、そうもいかぬ。

 自分の足で歩いていったら、とんでもなく時間がかかって仕方が無い。ここは急がば回れである。

 存在感を消す個性が使えておれば、電車や飛行機にこっそり同乗したり出来たであろうに。

 

 まったく。人生とは、時にままならぬものであるなあ。

 

 




●マンダ
NARUTOより。歌舞伎の演目や講談が元ネタの、忍者が呼び出す巨大なカエル、ヘビ、ナメクジの三すくみのうち、ヘビの、NARUTOの作中の名前。
他の二者と違って傲慢な性格で、働くのに人間の生贄をよこせと言ったり、弱っていると見れば召喚主でも食おうとする。最後は、うちはサスケに写輪眼で洗脳され、使い捨てられる。諸行無常。

●このDI
ジョジョの奇妙な冒険第一部より。「初めての相手はジョジョではないッ!このディオだッ!」というセリフが元ネタ。
登場から最後まで、徹頭徹尾、首尾一貫して悪役であったディオも、最初の頃は若かった。貴族の家に養子として引き取られたと言うのに、その家の息子(ジョジョ)の前で、ずっと一緒に育ったんだと紹介された犬を全力でヒザ蹴りする。時計を借りパクする。ジョジョの婚約者相手に、強引にキスをしてこのセリフで勝ち誇るなど、悪役ではあるが、やっていること自体はショボい上に、意味が無かった。何の利益にもなっていない。
こんなディオと、後に友情を築いて親友になっていたジョジョは、すごいと思う。
なお、このセリフを言った後、婚約者さんは即座に口をゆすいだ。その場にあった水溜りのドロ水で。
お前のキスより、この泥水の方がマシであるという、恐ろしい反応である。それでもヘコまないディオも、すごいと思うが、この凄みはマネしちゃいけない凄みだ。

ちなみに犬を蹴られたジョジョの反応「な、なにをするだァーッ!」という編集さんによる誤植がいい味を出していたので、作者の荒木先生がそのままコミックスにも乗せ、15年ほど修正させなかったが、気持ちはわかる。
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