本日2本目。
第1話
我輩は一心に祈っているのである。予想通りに、あの日魔法世界から帰ると、もう二度とあの場所へは行けなかった。
楽しい場所であった。ユカイに「なった」場所であった。
友人になれたかも知れぬ人々。ともに遊んだ者たち。名残惜しい場所であった。
曲がりなりにも、我輩の介入で、平和にした場所であった。
せっかくだからと、最後にラ○ュタ建造計画をはじめ、火星開発計画に、ダンジョン運営計画やバタービール輸出計画。などの、様々な計画書を最後に残してきた。
他には、イケメンとハニトラによる純血撲滅計画に、ガ○プラバトルのチーム戦やリーグ戦、他校への布教による対抗戦などのメジャー化計画。
他人に化けるポリジュース薬を簡易化して、年齢詐称薬を作ったのだが。その利権をバイト戦士リーマスに送る計画。
他にも、名前をいってはいけないあの人の本名のトムを大々的に広めたり、思いつく限りを残して来た。
いちいち、カリカリと羊皮紙に羽ペンで書いておったら、あそこまでは計画書は残せなかったであろう。旧式の機械式タイプライター。それも日本語版を出してくれた、必要の部屋に感謝である。
あの場所に、もう一度行けぬものか。日々そう祈って、瞑想して。
途中で少し飽きて、刑務官に新聞を持ってこさせて、読みふける。
さすがに全員は無理であったが、何人かは肉体交換する前にあらかじめ洗脳しておいたのだ。
ふむ。ヤクザ組織の死穢八斎會が壊滅ね。うん、原作どおりであるな。
だが壊滅させたのが、ヒーローではなくヴィラン連合なのは、原作どおりではないですよね。
いったい、何があったのか。とりあえず、原作補正さんもうちょっとガンバって。
気にはなるが、さすがにボスたちも取材を受けたりはせぬだろうから、詳しいことは記事ではわかるまい。
……取材、受けないよね? 受けないと誰か言ってくれ。
話題を、変えよう。
それはそれとして置いておいて、だ。お気付きであろうか。
今の我輩は、新聞が読めるのだ。
つまり。目が無いが、見える。これが、霊視というやつであろうか。
こうなったのは、ハリーポッターの世界へと行けなくなってからだ。
幽霊としての視覚でも、手に入れたのであろうか。
あの世界の我輩が消滅して、こちらへと持ってこれたのか。それとも、いるかどうかもわからぬ何者かからの、世界を改変したご褒美か何かか。
理屈はわからぬが、不思議なものである。
しかしながら、だ。
つい先日行って来た、別の世界で得たものが何も無いのは、改変を手抜きしたからか。それとも日帰りにしたので、関わりが薄いのか。はたまた経験値が足らぬのか。
あるいは。普通の肉体では、使えぬのか。原因は、さっぱりとわからない。
うむ。日帰りであるな。だいたい二十四時間で行って来たのである。
行き先は、ヘルシングだ。
主人公が一番のチートで、そんなバケモノとそれを殺すニンゲンのいる、あの物騒な世界である。
そりゃあ、速攻で日帰りもキメるというものだ。
実際。二十四時間しか居なかったというのに、一度ならず我輩は殺されている。
あの世界での我輩のガワがアレでなかったのなら、そのまま消滅というか、死亡していたかもしれない。
「僕はどこにでもいて どこにもいない」
そんなことを言っておった、あの猫耳を生やしたショタ。アレが我輩のガワであった。
原理はわからぬが、気合を入れたら実体化する幽霊のようなものであり、実体化するには他人と命を共有していてはならない。そういう生き物である。
とうとう転生ではなく、憑依したのか。
そう思ったが、少し違った。よくよく見れば、髪の色が黒い。着ている制服も色が違う。何色だったかは覚えておらぬが、少なくとも真っ白ではなかったはずだ。
ああ。2Pカラーだこれ。
これ、絶対に誰か設定してるであろう? 誰だよ、遊んでるのは。
世界について早々。色々と確認していた我輩が、そう思った次の瞬間だ。
撃たれた。
我輩。頭の中を、なにかが通り抜ける音というものを、初めて聞いたのである。
そして気付けば、イスに座ったいつもの現実の部屋である。
これはどういうことかと考える前に、最速で瞑想に入る。
「三、二、一、
あそこまで早くは埋没も没頭もできぬが、十秒はかからなかったと思う。
そうして場面は、撃たれたと思しき場所へと戻る。
もう一度、撃たれた。
むろん、もう一度行ったとも。
三度目は、撃たれなかった。向こうに付いたと思ったら、すぐに両手を上に挙げたおかげだと思う。
そうでなければ、もう何回かは、確実に撃たれていた。
そしてその後に、捕獲という流れになっていたのではなかろうか。
まあ。捕まっているのは、結果としては同じなのだが。無駄を省いた分、イベントをスキップできたような気分で、悪くは無い。
ただ我輩を捕まえたのが、ナチスの側だったのは予想外であった。
普通は、こういう場合。ヘルシング機関に出現するものではないのだろうか。
我輩という存在は、どこまで悪役に縁があるのか。
それとも、ヴィランになったものは、どこに行ってもヴィランだとでも言うのか。
いや。待てよ。前回は違ったではないか。前回はちゃんと、正義の側のホグワーツに―――
―――いや。あの時、ラスボスさん居ったな。防衛術の教授に取り憑いて、ホグワーツに居ったわ。
えっ。マジで? マジでそうなの? これからも、そうなの?
その辺、どう思うかね。シュレディンガー。
いや。ドイツ語で言われても、我輩は何もわからないのである。
実は英語もかなりいっぱいいっぱいだったぞ。
誰かー。この中に日本語のわかる方はいらっしゃいませんかー。
●「三、二、一、
三昧とは、瞑想などで忘我の状態などを指す。仏教用語。完全に自分の内側に閉じこもって、音も聞こえない状態である。
ブライトライツ・ホーリーランドというラノベの言葉。世界に地獄があふれ、街の外は魔物が闊歩するRPGライクな世界で、街の外で戦う
作中では三昧に至った坊主らが結縁した仏とのラインを通じて大仏を起動させ、巨大な魔物と戦うというトンデモシーンがあった。なお大仏が敗北した模様。