それでも我輩はネコである。   作:far

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第2話

 我輩は夢の中である。どうも瞑想の個性が、なにやらおかしな、誤作動とも言うべき何かを起こしておる様子なのだ。

 と、いうのもだ。我輩は、元異世界人である。もっと言うと、二次創作のオリ主的な立ち場の存在である。

 それが瞑想の成果で、仮初にだが精神が肉体から解き放れた結果。妙な場所にと、迷い込んでいるのではないだろうか?

 単なる夢にしては、妙に理屈が通るというか、とりとめもないことが無いのである。

 夢というのは、わりとデタラメなものだ。

 例えば、恋人と愛を語るさなか。それまでの流れを無視して、唐突にキリンが登場。首を三本に増やして「どうも。千手観音です」と、しゃべるような展開も、夢の中なら違和感無く進んでいく。

 

 なお、そんな夢をフロイト先生が診断すると。その結果は、たいがい欲求不満の一言で終わる。

 

 キリンの長い首は、アレを暗に示しています。それが増える。それも三本に。あきらかに欲求不満です。

 おそらく、そんな結果になるであろう。間違いない。

 

 まあ。こうして迷い出た先の住人には、そんなこんなの与太話などは言えぬので、適当にごまかすしかないのであるが。

 

 開始地点にて、我輩を猫の被り物をしたプレイヤーかもしれない。そう思って話しかけてきた少女。

 彼女には、我輩は機械に何か不具合があったらしくて、うまくログインできていない。そういうことにしてある。

 ゆえにロクに動けず、しかし空腹などのパラメータもなく。このアインクラッドに存在していたり、していなかったりする。そういうことに、なっておる。

 一度、ヒースクリフと名乗る黒幕が調べに来たこともあったのだが、彼にもわからないらしい。

 

 うっかり「あ、犯人だ」と言ってしまって、我輩を全力で消しに来たが、無駄であったのでこれは確かだ。

 

 いやあ。あの時は周りに人がいなくて、本当に良かったのである。

 聞いてはいけないことを聞いてしまい、巻き添えになるのは、さすがに哀れであるからなあ。

 

 その後。彼とは話し合いを経て、協定を結ぶに至った。

 我輩は、彼の正体をバラさない。彼は、この世界に何か致命的な影響を起こさない限り、我輩を調べない。

 この電脳世界に曲がりなりにも存在できているということは、今の我輩は0と1のデータでできている、ということである。

 つまりは、いじったり、コピーして増やしたりは理屈の上では可能なのだ。

 

 なぜか、できなかったらしいが。

 

 しかし、調べられるというか、覗かれるのも愉快ではない。

 財布の中身や冷蔵庫の中、あるいは自分の内臓を隅々まで見られるようなものであるのだ。それが愉快なはずは無いのだ。

 

 まあ。それもデータとプログラムであると思うので、あくまで気分的なものであるが。

 

 

 

 ところで。つまるところ、これは瞑想している間だけ見られる、夢のようなものである。

 この先どうなるかは分からぬが。今のところは、すべてアインクラッドにつながっている。

 

 しかし、どこに出るかは、完全にデタラメ。運任せのランダムである。

 つまり。安全地帯に出るとは限らないのだ。

 我輩はそれを、二度目の夢で痛感した。痛くは無かったが、痛いほどに感じて、学び取った。

 

 知っておるか? ソードアート・オンラインは、かなり上空にも行けるのだ。

 

 のちに発売される、アルブヘイム・オンライン。飛行することが出来る、というのが売りのこのゲームだが。

 確かこれ、ほぼソードアート・オンラインからの、データの丸パクリであったはずだ。

 つまり。このアインクラッドに、すでに空はデータとして存在するのだ。

 

 すでに、お察しだとは思う。うむ。まあ。そういうことである。

 

 上空百メートル以上はあったであろう場所に、我輩出現。そしてそのまま落下。身動きなど取れぬので、そのまま全身を強打。

 

 そして、無傷であった。

 

 うん。無傷。痛くもかゆくも無かった。ひどく驚きはしたが、それだけだ。

 どうやら、我輩には耐久値が設定されておらず。破壊不能オブジェクトと同じ扱いであるらしい。

 

 そして二回目の出現であったので、まだゲームは序盤であった。

 プレイヤーたちが、まださほど広くバラけていなかったのだ。

 目撃者が、多数出た。そして我輩の情報が、プレイヤーの間に出回ってしまった。

 

 その後。戦闘地帯で見つかると、モンスターの攻撃からの盾として、持ち歩かれる我輩の姿が!

 

 破壊不能の無敵の盾である。しかも置いておくことも出来るし、何よりタダなのだ。

 ずっとは使えぬが、見つけたらラッキー程度のアイテム扱いである。これはヒドい。

 しかしこちらは身動きがロクに取れないわけで。逃げることもままならぬし、抵抗も無理だ。

 ならば、開き直って、運んでもらって色々見ることが出来るだけ、じっとしているよりもマシだと割り切った。妙なことをされたり、PKに使われそうになったりした時は、瞑想をやめればよいのだし。

 

 なお一度だけボス戦に持ち込まれたことがあったが、自称ヒースクリフに追加で禁止されてしまった。

 我輩としても、死人が出るボス戦は見たくは無い。問題無いといえば、問題は無い。

 我輩がいないことで、死者が増えるかも知れぬが、それは元々そうだったというだけであるし。思うところはあるが、どうしようもないのだ。

 

 ヒロアカ世界では、自由気ままに遊んでも、世界は壊れなかった。

 しかしここはそうではない。例えば、黒の剣士一人いなくなるだけで。あるいは、彼が原作と違う女を選ぶだけで。世界は壊れてしまうのだ。

 

 とはいえ。相変わらず、自分ではほぼ身動きがとれぬので。そのあたりは気ままにやっても良いだろう。

 何とかなるなる。きっとなる。

 

 そうであろう? そうだと言っておくれ、開始地点の少女よ。

 最近メンバーに入った、キリトという人が気になるとか、相談されても困るのだ。

 そういえば名前は聞いていなかったが、何であったっけ? サチ? そっかあ。サチかあ。いい名前であるな。

 

 はっはっは。また運命の分岐路であるよ。チクショウ。

 

 ⇒  助ける

    助けない

 

 しかしこの選択肢のカーソル、動かないんですけど。不良品なんですけど。

 えっ、これ助けろって一択であるか?

 

 えっ。ど、どうやって?

 

 

 

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