それでも我輩はネコである。   作:far

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第6話

 

 我輩は困っているのである。

 誰かに起こされて、もう時間かと目覚めてみれば。目の前にいたのは、見知らぬ、知っている少女であったのだ。

 

「あっ。起きましたか。でもまだここは夢の中ですからね! 早く起きて、向こう側へ急いで下さい。ゴイスーなオッパイがピンチです!」

 

 そう言って我輩を急かすのは、上半身にセーラー服。下半身にスク水(それも実際には見たことが無かった旧型だ!)を。そして頭にはケモ耳を装備した少女であった。

 というか、どこぞの「パンツじゃないから恥ずかしくないもん」で有名な、直撃な魔女の宮藤さんであった。

 

 あの。何をしていらっしゃるんでしょうか。我輩に、なんの御用で?

 ああ、はい。ゴイスーなオッパイとやらがピンチなのはわかったのですが。その、なんで、というか、どこから出てこられたのでしょう?

 

「私は扶桑撫子の、宮藤芳佳さんではありません。あなたの杖の精霊です」

 

 えっ。

 

 ……えっ。

 

 なんで?

 

「知っているでしょう? 理由も分からずに押しつけられたものをおとなしく受け取って、理由も分からずに生きていくのが―――」

 

 我々生き物のさだめ、であったな。でも、これはさすがにどうかと思うのだ。

 まさかとは思うが、次に我輩が行く場所とは、君らの世界ではあるまいね?

 

「さあ? 私は扶桑撫子の、宮藤芳佳さんではありませんので、わかりませんよ」

 

 まあいい。とにかく起きれば良いのであるな?

 え? その前にお約束がある?

 

 あっ。オールマイトにサインもらってるボスが。

 あっ。名無しさんと仲良くダベってるマスターが。

 あっ。風俗店に入ろうか悩んでいる切島くんが。

 あっ。うっかり主演映画がブルーリボン賞にノミネートされたステインさんが。

 あっ。我輩の体で、ピラミッドに隠された部屋を探し当てようとしている先生が。先生、もっと右です。

 

 他にも、色々と良くわからないものを目にした覚えはあるが、しょせんは夢である。気にしないでよかろう。

 結局は、命令しておいた刑務官に起こされてではあるが、目覚めたことであるし。

 行くとしようか。

 

 

 

 そうして出た先では、いいオッパイと悪い乳が戦っていた。

 右半身にびっしりと呪文が書かれた、タンクトップの赤毛の短髪。その短髪が、みるみるうちに削られていく。

 ノートをこすれば、消しゴムが削れていくように。黒板に線を引き続ければ、チョークが短くなっていくように。

 壁に押し付けられた、彼女の頭が物理的に無くなっていく。

 

 宮藤さん! ピンチどころか、そこを通り過ぎて大逆転を決めていますよ、宮藤さん!

 どうすればいいのでありますか、宮藤さん!

 

 杖に向かって聞いてみたが、答えはなかった。

 

 しかたがない。逃げよう。

 一応、見るべきは見た。躍動するオッパイは見た。戦闘がエグ過ぎて、まったくエロスは無かったが。

 

 ナチスのハーケンクロイツを付けた飛行船の上へと、転移する。

 ロンドンの現状を、上から見下ろそうと思ったのだ。高いところならば、どこでも良かったが、そこが目に付いた。それだけだ。

 

 すると。そこには指揮棒を持って、遊んでいる少佐の姿が。

 

 我々は皆、吼えて這いずる一個の楽器だ。などと詩的なことを言っている研究者の人もいるが、なんで前線にいるんだろう。

 研究者の人は研究してればいいと思うのだが。

 

 おっと。揺れた。

 十字軍の戦闘機が音速を超えて飛び交い、その衝撃だけでも飛行船にはよろしくない影響を与えている。

 そんな戦闘機たちも、よくわからない生き物である大尉に落とされて行く。

 

 だがさすがの大尉も、一人では手が足りなかったらしい。

 西の方角から、点がいくつか見えた。そう思ってから、あっと言う間もなかった。飛行船がいくつも同時に爆発した。

 

 米軍が、やってきたのだ。

 

 まずは大西洋艦隊の空母からでも発進したのだろう、戦闘機隊たち。到着と同時にバラまかれたミサイルたちは、大尉の防御をかいくぐって、見事に仕事を果たしたのだ。

 それを防ごうとした、とある執事もいた。しかし彼は、とある事情で邪魔ができなかったのだ。

 

 ちょっとばかり戦闘力が欲しかった我輩が、少佐からブンどったのだ。

 どんな達人であれ、油断すればアッサリと死ぬ。

 こちらの容姿と、戦う者の空気を持っておらぬことで彼は油断した。

 そして攻撃がすべてすり抜けたことで、少し驚いた。あとは、服従呪文が当たって、おしまい。

 意外と簡単であった。

 

「ウィッチに不可能はありません」

 

 魔法は使ったが、我輩はウィッチではないのであるが。まあ、そんなものであった。

 

 さて、少佐。ご覧のとおりです。裏切りもまた、戦場の華でありましょう?

 かつての史実通りに、米軍を呼び込んだ。

 このフネも落ちる。手ゴマは、こうして掠め取った。

 あの吸血鬼も、間もなくやってくる。

 だが、その前に。あなたを倒してしまえばどうなるか?

 

 さて、この勝負。受けていただけますでしょうか、少佐?

 

 

 




●パンツじゃないから恥ずかしくないもん
ストライク ウィッチーズより。両足に、先端にプロペラのついた筒状の飛行ユニットを装備し、空を飛んでネウロイという謎の敵と戦うアニメ。
飛行ユニットを動かすのに魔力が必要で、魔力は未成年の女子のみ持つ、という設定。
そんな若い女子らの下半身は、なぜか下着か水着であり、むき出しだ。しかしこの世界ではそういうものなのだ。そういう設定なのである。その設定を背負っての、番組そのもののキャッチコピー。
ストライクウィッチーズなのに、略称がストパンなのはダテではない。

●「ウィッチに不可能はありません」
同じく、ストパンより。宮藤さんのセリフだが、元は宮藤さんのセリフではなく、先輩のもっさんこと坂本さんのお言葉。1期ではカッコ良かった坂本さんが、まさか2期でBBA無理すんなと言われ、BBAが無理するからとまで言われるようになるとは……
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