それでも我輩はネコである。   作:far

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これが、書きたかった…!


第8話

 我輩は悪いことをしたのである。米軍の方々には、本当に申し訳ない気持ちだ。

 原作の、ヴァチカンにおける対バケモノ専門部隊である、イスカリオテ。

 彼らですらも、さくりさくりと死んでいく。そう評されていた、死の道行を同行してもらっておるのだ。

 そのおかげで、神父らの犠牲は原作よりも確実に少ない。これならアーカードまでたどり着くのが、アンデルセンだけということはなかろう。

 

 だが、それでも犠牲は出る。出ている。前へと進むために、死んでゆく。

 

 どこからともなく銃剣を取りだし、腕の一振りで十本以上を投げる神父がいた。

 とうとう銃剣が尽きたのか、最後の二本を両手に持って戦っていた。

 そして傷だらけになったあと、持っていた爆薬で自爆した。最後まで、道を切り開くように戦っていた。

 

 長剣を振るい、騎士のように戦う神父がいた。

 真っ先に切り込み、仲間の盾となり、戦っていた。

 そしてもはや剣が振るえなくなるや、爆薬で自爆して果てた。最後まで味方のために戦った。

 

 中世の騎士や、兵士に民衆。神父に娼婦に、少年少女。ノラ吸血鬼。元最後の大隊。

 有象無象から名のある戦士まで。さまざまな死者が群れをなす。海と例えるべきだろう、どこまでも途切れないそれを、文字通り切り開いていく。

 

 それを大統領命令で、必死で援護する、米軍の兵士たち。銃を撃ち、手榴弾を投げ。後ろと横を固めて、神父たちが走りぬける邪魔をさせない。

 そんな彼らにも、当然のように犠牲は出る。

 横合いから亡者の群れに引きずり込まれ。倒れた死者に足を掴まれて。屋上から降ってきた動く死体に潰されて。

 

 すまぬ。我輩のせいだ。

 君たちに死ね、殺せと命令したのは、実は我輩なのだ。すまぬ。

 

 

 

 しかし、どうでもよいことであるが。米軍まで含めて、なぜ、みんなメガネをかけているのであろうか。

 気になって、いまいち感情移入しづらいのだが。

 

 

 答えは出ないであろうから、置いておいて。

 

 

 

 少佐曰く。今、彼らの心にあるものは歓喜なのだそうだ。

 涙一粒 舌打ち一ツ 誰一人こぼさないのはその証拠だと。

 

「一つの歓喜を共通意思として 無数の命が一つの命のように うごめきのたうち 血を流しながら血を求め 増殖と総滅をくりかえしながら無限に戦い続ける。

 その歓喜が「神」に対する信仰であれ 「国家社会主義(ナチズム)」による戦争であれ 「アーカード」という存在への一体であれ――――――」

 

 戦争という手段のためなら、目的などどうでもいいと言い切った少佐も、そう言って歓喜している。

 同じ目的を共有し続け、前進し続ける限り、その集団はひとつである。

 そして今。我輩たちは「相手を打倒する」という共通の目標を持ち、闘争という手段もまた、共有する。

 

 one for all , all for one で、あるか。

 

 我輩の独り言に、少佐がニヤリと笑って続けた。

 

「その通り。我々はもはや、ようやく同じものだ。夢のようじゃないか黒い兄弟たち」

 

 では、その兄弟が全滅せぬうちに、そろそろ行こうか?

 声をかけ、立ち上がる。実は今まで、墜落した飛行船の中から動いていなかったのだ。

 通信やらは生きていたので、情報を収集。それをもとに参謀の方々ができるだけ楽にアーカードにたどり着けるルートを選定するのを待っていたのだ。

 

 

 

 そしてその間に乗り込んできて。我輩の服従呪文を受けて、ぴょんぴょんと小さくジャンプを繰り返している婦警が、そこにおるじゃろ。

 

 ばるんばるんと暴れるソレは、まさに暴力であった。

 

What are you making me do?(私に何をしてるんですか)  Free me!(解放しなさい)

 

 おかしなことに、婦警は反抗的な態度である。服従呪文は、破らない限りは自発的に従っているようにしかみえない、洗脳としては完成度が高いもののはずなのだが。

 婦警の行動は縛れるものの、意識までは洗脳できていないという中途半端な状態なのだ。覚醒したてとはいえ、吸血鬼だからであろうか?

 

 ふむ。しかし、縦揺れもそろそろ飽きてきたな。少佐、上半身を左右にヒネれって、何て言えばいい?

 

「Twist your upper part of body in left and right だね」

OK.Let's it!(よし、やれ!)

wait a moment!(ちょっ 待っ)」 GINYAAAAA(ギニャ~~)

 

 うむ。体の動きに一拍遅れて、変形するソレが追従する。

 上下から左右に動きが変わっただけだというのに、受ける衝撃の種類が変わった気がするのである。

 

 少佐。

 

 我輩がそう言っただけで、彼は全てを理解してくれた。

 一つうなづき、ジーク・ハイルの言葉を残して、先にこの部屋から出ていったのだ。

 

 一応言っておくが。別に十八禁な行為をするわけではない。

 我輩が付いて行っても何も出来ぬので、あとで転移して追いつく。その間のヒマをこうしてステッキーなものの鑑賞でツブす。ただそれだけなのだ。

 

Rather, kill me(いっそ、殺せ)

 

 おお。くっころみたいなことを言っているぞ。

 今、くっころが時間と国を超えたのだ。すごいけど、どうでもいい。どうでもいいが、すごい。

 

 ところで。

 

 どうでもいいと言えば、そこの眼帯の傭兵さん。

 さきほどから、我輩と一緒に揺れて暴れるアレを鑑賞しているようだが、君はそれでいいのかね?

 

「It's OK that You don't make take it off」

 

 え~っと。脱がさないならセーフ? でいいのであるか?

 うむ。いいのなら、いいや。

 婦警がものすごく抗議してるみたいであるが、早口すぎて理解が追いつかぬし。

 しばらく一緒に鑑賞しとこうか。

 最終決戦の場所には、まあ。我輩が行ったあと、自力でたどり着いてくれたまえ。

 

 




●くっころ
確か初出はタクティクスオウガ。捕虜になった女騎士の言うべきセリフ。「くっ、殺せ」の略である。
くっ、の部分で屈辱を感じているのを表現。殺せと言わせることで、女騎士の潔さや純粋さを表現しつつ、それを踏みにじる前フリとなっている、実にムダがない構成。
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