それでも我輩はネコである。   作:far

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第3話

 我輩は前向きである。目的ができた。ならば、そこを目指して走るのみなのだ。

 このヒマで退屈な生活にも、張りが出るというものだ。

 ただ座っているだけの生活に飽き飽きしていたところに、このアインクラッド世界の夢は、実にありがたかった。干天の慈雨とは、まさにこのことであろう。

 だがしかし。人間というものは、何事であれども、慣れてしまうもの。

 初めは物が見え、自然と呼吸できるだけでも楽しかったというのに、それに飽きてきていたのだ。

 

「はぁ~。なんて刺激的なんだ」

 

 そういうものが、足りないのだ。

 プレイヤーたちに、無敵バリヤーとして活用されているが、所詮は傷ひとつつかぬ、お遊び。痛みもないので、刺激としては弱いのだ。

 

 やはり、人である。

 人と関わってこそ、ドラマが生まれるのだ。

 

 さて。少し整理しよう。

 

 現在の目的は、原作で死亡したキャラであると思われる、サチの生存である。

 ただ生かすだけならば、まあ口八丁で行けなくもない気はする。

 

「宝箱を開ける時。ここでモンスターハウスが来たら死ぬなってところでは、開けてはならぬぞ」

 

 すでに、そう伝えてある。

 これだけでも、彼女の運や心がけが良ければ、生き残れるであろう。

 ただ、記憶が定かではないのだが。彼女が死んだ時の状況がだ。

 サチやキリトが止めるにも関わらず。他のメンツがいいじゃん開けようぜという、軽いノリで開けた結果。モンスターが大量に出現して襲ってくる、しかも逃げ場無しというものではなかっただろうか。

 

「1% 死ぬんだぞ」

 

 悪魔の指揮官と呼ばれた男の、この言葉を聞かせてやりたいものだ。

 

 これはゲームではあるが、遊びではない。この言葉の意味を自覚し続けるのは、ストレスになる。

 そのストレスから逃れるために状況を軽く見ており。ストレスから逃れ続けるために、慎重に振舞えという忠告には耳をふさぐ。

 しかも無意識にそれをやっておるから、悔い改めることも反省もなく、忠告には苛立つだけで、感謝すらない。

 

 このデスゲームの中で、ワナとかあるだろうけど、開けてみようぜ。そんな恐ろしい行動は、そうであったとでも考えねば納得がいかぬのだ。

 

 閑話休題。

 

 サチの生存。そのためには、あとは黒の剣士ことキリトに何ぞ適当に、ワナのことでもささやいておけば良いだろう。

 問題は、その後である。

 サチが死亡し、そののちに復活アイテムのウワサが流れたことで、それを入手するためにキリトが無茶なレベル上げを行った、ということだ。

 

 サチたちのギルドは中堅どころ。そこにトッププレイヤーのキリトは、本来いてはならない。もっと上の階層、最前線で戦っているべき人材だ。

 それがそこまで下の階層に下りてきているのは、ひとことで言うならば、人生に疲れたから、であろうか。

 そして人生に疲れていたキリトが、美少女のサチにコロッと引っかかって、転がり込んだ。確かそういう流れであったはずだ。うむ、だいたい合っている自信がある。

 そしてコロッといった美少女を、キリトが確実に攻略していっている間にも、アインクラッドの攻略は進められているわけで。

 前線のレベルと、キリトのレベルには、徐々に差が出来ていってしまっているのだ。

 無茶なレベル上げは、それを埋めていた。それが無くなってしまったとして。

 

 はたして、将来の様々な局面で、キリトのレベルは足りるのか?

 

 やってみなければ、わからないが。やってみてダメだった場合は、キリトが死ぬ。かも知れぬ。

 そうなった場合。不当に三百人ほど使って、人体実験しているアレは……

 あれ? 結局のところ最終的には、なにをどうやっても実験が発覚して、捕まる未来しかないな。うん。アレはどうでもいいや。

 そのあとのデスガンだったかも、まあ世界レベルでは小事だ。今は、気にしないでもいい。

 だがその更にあと。なんか魂がどうのこうので、なんやかんやで、世界がヤバい。という展開があったような気がするのだ。

 

 ゲームがメインのアニメのハナシで、世界がヤバい、というのはどうかと思うが。

 ほら、ミニ四○やビーダ○ンや、ガン○ラバトルや、遊○王なんかでもしょっちゅうヤバくなっておったし。普通、普通。むしろお約束である。

 

 そんなわけで。将来世界を救ってもらうために、キリトには生き残ってもらわねばならぬのであるが。

 どうしたものであるかなあ。

 

 我輩自身でも、何か出来ぬかと思い。せめてソードスキルでも発動したら、素早く動けないかと思い立ち。ひとつ、実験してみようとして。

 

 そもそも剣を持っていないことが発覚した。

 

 にゃん太なら、そこは持ってなきゃダメであろう。

 そう思うのだが、持っていないものは仕方がない。通りすがりの、我輩を盾にするプレイヤーに話して、借りてみた。

 

 発動した。

 

 うむ。発動した! したのだ!

 

 しかし。ダメージはゼロだった。ゼロ、だったのだ……

 

 我輩に、動作に対するアシストはあった。当たり判定もあった。しかし、ダメージ判定までは存在しなかったのだ。

 なんであろうかなあ。このガッカリ感は。

 もう、今日のところは、帰って寝るのである。瞑想を使わずに寝れば、ここへは来れないはず。

 せめて、スキルの成長ができれば、スキルが増えて楽しいのに。それもなかったからなあ。

 ああ。人生はいつも、ままならぬ。

 

「だが それがいい」

 

 うむ。きっとそれが人生の味である。

 

 

 




●「はぁ~。なんて刺激的なんだ」
グラップラー刃牙より。作中最高度の筋肉を持つ、アンチェインさんの言葉。愛した彼女の(かつて住んでいた町で売っていた)ハンカチのニオイをかいでのセリフ。
もちろん、その彼女さんのニオイは欠片ほども入っていないと思われる。いかん、高度なヘンタイにしか聞こえない。

●「1% 死ぬんだぞ」
アイシールド21より。チームのメンバーがそろい、特訓も乗り越えて試合を待つだけ。しかも相手は強くない。負ける確率なんて1%くらいしかない。そうはしゃぐメンバーに、ヒル魔が冷徹に放った一言。
私はこのセリフで、背筋が伸びて、冷たくなった。

●「だが それがいい」
花の慶次より。信長の甲冑で遊んでたら壊して、切腹となった男をかばって慶次が言ったセリフの一部。
「殿、若水殿の顔をみなされ!戦場で傷だらけになったきたねえツラだ。」
「だが、それがいい!その傷がいい!これこそ生涯をかけ殿を守り通した忠義の甲冑ではござらんか!」
こいつが壊した信長の甲冑より、こいつのがいい甲冑だぞ。と示して、彼の切腹を取りやめにさせた。
ただ、この言葉に先んじて、角が取れていただけの信長の甲冑を真っ二つにしていたが。そこまでする意味はあったのだろうか。
けなした後に持ち上げる形になるので、ネット上でしばしば使われた。
使い方としては「よくある話だ、つまらん」という書き込みの後などに「←だがそれがいい」というように使用する。
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