それでも我輩はネコである。   作:far

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第6話

 我輩は承太郎としばしの待機中である。香港の空港で飲むコーヒーはマズイ。

 スタンドだというのに、なぜかこの体は飲み食いが出来るのだ。さすがはニャース先輩であるな。

 皆が試しておらぬだけで、実は他のスタンドも飲み食いできるのかも知れぬ。ディープパープルなどは、ヨダレをたらしておったし。

 だが出来たとしても、まあ、意味はなかろう。戯言である。

 

 我輩たちは杜王町を出たあと。いったん空条家に戻るや、その足で空港まで移動して、香港へと飛んだ。

 ジョセフの娘であり、承太郎の母親である、あの人が倒れたのだ。

 彼女がどういう症状なのかは、我輩が説明するまでもなかった。ジョースターの血の影響でスタンドが目覚めたはいいものの、制御できずに暴走。肉体が蝕まれているのだ。

 

 我輩たちは計画を立て、即座に行動に出た。

 パスポートを持っておるメンツばかりで、そこは助かったのである。すぐにでも旅立てる。

 そして唐突な行動のせいか、それとも万作さんの監視が無くなったせいか。

 塔のスタンドはやって来ずに、飛行機は(途中で軽いエンジントラブルに見舞われたが)無事に香港へと着陸した。

 

 スゴイ! ジョセフが乗っているのに、無事に着いたぞ!

 

 この感動を理解して、分かち合ってくれる誰かがいないのが、実に悔やまれる。

 本当に、快挙といっても良いスゴイ出来事なのだがなあ。

 

 そして空港には、どこかで見たような格好の面々が、我輩たちを待っていた。

 スピードワゴン財団の雇った、バイトの方々である。

 それっぽい改造学生服の若者や、マッチョな老人、黒人占い師。髪を逆立てた白人も居る。

 それも、いずれも複数。総勢二十人以上は居るぞ。

 

「ジェバンニが一晩でやってくれました」

 

 あれほどではないが、短時間によくぞここまでそろえたものである。

 

 集まった彼らは、いつもの格好の我輩たちと合流。そしてシャッフル。

 そうして徐々にバラけて、解散していく。行き先もバラバラだ。

 ある者たちは、用意された車に乗り込んで消えた。またある者たちは徒歩で駅へと向かった。

 タクシーに乗った者たちもいたし、飛行機で北へ、西へ。あるいは日本へと、とんぼ返りした者たちも居る。

 

 避けられる戦闘は避け、エジプトへ。その方針の下に立てられた、偽装工作の一環である。

 

 このどれが当たりかわからぬ、複数のチームであるが。むろん、この中に当たりなどは、入れていない。

 彼らは全部がニセモノで、見せ札でしかないのだ。

 

 昔の、縁日のくじ引きようなものであるな。

 

 いや、あれは最近でもやっておったか。どこぞのユー○ューバーがクジを全部買い占めて開けさせ、入っていないのを証明した動画をあげて少し話題になっておった。

 

 当たりであるところの我輩たちは、ファーストクラスの無駄に広い空間を使って、着替えと変装を終えて、目立たぬように飛行機の乗り継ぎ待ちだ。このまま次はインドへと飛ぶのである。

 つまり。

 先ほど、いつもの格好の我輩たちがバイト衆らと合流した、と言ったな。

 

 あれはウソだ。

 

 それもまた、急きょ雇ったバイトであったりする。そのまま日本へととんぼ返りするのが、彼らの仕事だ。

 というのもだ。急きょ過ぎて、長期契約できる人材ではなかったのであるな。さすがのスピードワゴン財団も、限界があったようだ。

 

 なおバイトの方々には、それぞれ国境を越えたら、変装を解くように言ってある。

 ヘタに引き付けすぎて、スタンド使いに襲撃されてしまっては犠牲者が出てしまう。そのぐらいが、限度であろう。

 

 ああ。前回のあの能力があったならば。一人でエジプトまで瞬間移動を繰り返し、ガオンッの人かDIO本人を洗脳すればハナシはおしまいであったろうに。

 戦わねばならぬのが、本当に面倒くさい。

 ゆえにこうやって、出来うる限り面倒は回避しようと思う。

 さいわい、今は1988年。携帯電話もなければ、ネットもほぼ無いようなもの。

 情報化社会とはとても言えず、物を調べるにも、人を探すにも不自由する時代だ。

 こうして一度、世界の中で見失ってしまった我輩たちを見つけるのは、難しいだろう。原作のように、特徴的な一行ではなくなっていることであるし。

 

 アブドゥルは角刈りにサングラス、黒スーツのボディーガード風に。ジョセフがその雇い主のマフィアの親分に。花京院はその子分に。承太郎がスーツにトランクのビジネスマンに。ポルナレフがストIIのガイルに。

 それぞれ変装している。

 

 うん。ひとつ、オカしいのがあったね。

 

 仕方がないのである。あの髪型をポリシーだと言い張るので、似たような髪形で、違う印象のキャラ付けをするくらいしか、打てる手が無かったのだ。

 スキップする関係上、カタキのJガイルと戦えるとも限らないので、こちらが妥協した。

 変装するキャラをガイルにした理由は、髪型だけだ。別に会えたら良いね、という願掛けなどは入っていない。いないのだ。

 

 さて。飛行機の時間であるな。

 コーヒーを飲み干して、承太郎について行く。

 次はインド。そこから先は、しばらく列車の旅だ。

 香港グルメが楽しめなかったので、本場のカリーとチャイを楽しむとしよう。

 

 飛行機は今度はビジネスクラスであるが、大丈夫であろうか?

 我輩は常人には見えぬが、他のスタンドと違って、消え方がわからぬ。ゆえに足元で丸くなっておったのだが、ファーストクラスより狭いビジネスクラスで、その広さがあるだろうか?

 空いている座席でもあれば、勝手にそこでくつろげるのだが。

 まあ。行ってみればわかるのである。ならば、行くとしようか。

 

 

 




●ジョセフが乗っているのに、無事に着いたぞ!
彼の乗る乗り物は、落ちるか沈むのが定説である。

●「ジェバンニが一晩でやってくれました」
DEATH NOTEより。ノートの内容をすべて書き写す。それも他人の筆跡を完全にマネて。しかも破った跡や紙の消耗具合までも完璧にコピーしたデスノートのニセモノを作れと命じられ、一晩で成し遂げた男への賞賛の言葉。
転じて、とんでもない作業量を短期間で成し遂げた場合に送られる賛辞。
たまにジョバンニに間違えられる。

●ガイル
ストリートファイターIIの操作キャラの一人。アメリカの軍人で、ソニックブームとサマーソルトキックの使い手。カウンターでサマソを叩き込むために、構えたまま待機する「待ちガイル」は、有効だがしょっぱい試合になるので嫌われた。
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