我輩は承太郎としばしの待機中である。香港の空港で飲むコーヒーはマズイ。
スタンドだというのに、なぜかこの体は飲み食いが出来るのだ。さすがはニャース先輩であるな。
皆が試しておらぬだけで、実は他のスタンドも飲み食いできるのかも知れぬ。ディープパープルなどは、ヨダレをたらしておったし。
だが出来たとしても、まあ、意味はなかろう。戯言である。
我輩たちは杜王町を出たあと。いったん空条家に戻るや、その足で空港まで移動して、香港へと飛んだ。
ジョセフの娘であり、承太郎の母親である、あの人が倒れたのだ。
彼女がどういう症状なのかは、我輩が説明するまでもなかった。ジョースターの血の影響でスタンドが目覚めたはいいものの、制御できずに暴走。肉体が蝕まれているのだ。
我輩たちは計画を立て、即座に行動に出た。
パスポートを持っておるメンツばかりで、そこは助かったのである。すぐにでも旅立てる。
そして唐突な行動のせいか、それとも万作さんの監視が無くなったせいか。
塔のスタンドはやって来ずに、飛行機は(途中で軽いエンジントラブルに見舞われたが)無事に香港へと着陸した。
スゴイ! ジョセフが乗っているのに、無事に着いたぞ!
この感動を理解して、分かち合ってくれる誰かがいないのが、実に悔やまれる。
本当に、快挙といっても良いスゴイ出来事なのだがなあ。
そして空港には、どこかで見たような格好の面々が、我輩たちを待っていた。
スピードワゴン財団の雇った、バイトの方々である。
それっぽい改造学生服の若者や、マッチョな老人、黒人占い師。髪を逆立てた白人も居る。
それも、いずれも複数。総勢二十人以上は居るぞ。
「ジェバンニが一晩でやってくれました」
あれほどではないが、短時間によくぞここまでそろえたものである。
集まった彼らは、いつもの格好の我輩たちと合流。そしてシャッフル。
そうして徐々にバラけて、解散していく。行き先もバラバラだ。
ある者たちは、用意された車に乗り込んで消えた。またある者たちは徒歩で駅へと向かった。
タクシーに乗った者たちもいたし、飛行機で北へ、西へ。あるいは日本へと、とんぼ返りした者たちも居る。
避けられる戦闘は避け、エジプトへ。その方針の下に立てられた、偽装工作の一環である。
このどれが当たりかわからぬ、複数のチームであるが。むろん、この中に当たりなどは、入れていない。
彼らは全部がニセモノで、見せ札でしかないのだ。
昔の、縁日のくじ引きようなものであるな。
いや、あれは最近でもやっておったか。どこぞのユー○ューバーがクジを全部買い占めて開けさせ、入っていないのを証明した動画をあげて少し話題になっておった。
当たりであるところの我輩たちは、ファーストクラスの無駄に広い空間を使って、着替えと変装を終えて、目立たぬように飛行機の乗り継ぎ待ちだ。このまま次はインドへと飛ぶのである。
つまり。
先ほど、いつもの格好の我輩たちがバイト衆らと合流した、と言ったな。
あれはウソだ。
それもまた、急きょ雇ったバイトであったりする。そのまま日本へととんぼ返りするのが、彼らの仕事だ。
というのもだ。急きょ過ぎて、長期契約できる人材ではなかったのであるな。さすがのスピードワゴン財団も、限界があったようだ。
なおバイトの方々には、それぞれ国境を越えたら、変装を解くように言ってある。
ヘタに引き付けすぎて、スタンド使いに襲撃されてしまっては犠牲者が出てしまう。そのぐらいが、限度であろう。
ああ。前回のあの能力があったならば。一人でエジプトまで瞬間移動を繰り返し、ガオンッの人かDIO本人を洗脳すればハナシはおしまいであったろうに。
戦わねばならぬのが、本当に面倒くさい。
ゆえにこうやって、出来うる限り面倒は回避しようと思う。
さいわい、今は1988年。携帯電話もなければ、ネットもほぼ無いようなもの。
情報化社会とはとても言えず、物を調べるにも、人を探すにも不自由する時代だ。
こうして一度、世界の中で見失ってしまった我輩たちを見つけるのは、難しいだろう。原作のように、特徴的な一行ではなくなっていることであるし。
アブドゥルは角刈りにサングラス、黒スーツのボディーガード風に。ジョセフがその雇い主のマフィアの親分に。花京院はその子分に。承太郎がスーツにトランクのビジネスマンに。ポルナレフがストIIのガイルに。
それぞれ変装している。
うん。ひとつ、オカしいのがあったね。
仕方がないのである。あの髪型をポリシーだと言い張るので、似たような髪形で、違う印象のキャラ付けをするくらいしか、打てる手が無かったのだ。
スキップする関係上、カタキのJガイルと戦えるとも限らないので、こちらが妥協した。
変装するキャラをガイルにした理由は、髪型だけだ。別に会えたら良いね、という願掛けなどは入っていない。いないのだ。
さて。飛行機の時間であるな。
コーヒーを飲み干して、承太郎について行く。
次はインド。そこから先は、しばらく列車の旅だ。
香港グルメが楽しめなかったので、本場のカリーとチャイを楽しむとしよう。
飛行機は今度はビジネスクラスであるが、大丈夫であろうか?
我輩は常人には見えぬが、他のスタンドと違って、消え方がわからぬ。ゆえに足元で丸くなっておったのだが、ファーストクラスより狭いビジネスクラスで、その広さがあるだろうか?
空いている座席でもあれば、勝手にそこでくつろげるのだが。
まあ。行ってみればわかるのである。ならば、行くとしようか。
●ジョセフが乗っているのに、無事に着いたぞ!
彼の乗る乗り物は、落ちるか沈むのが定説である。
●「ジェバンニが一晩でやってくれました」
DEATH NOTEより。ノートの内容をすべて書き写す。それも他人の筆跡を完全にマネて。しかも破った跡や紙の消耗具合までも完璧にコピーしたデスノートのニセモノを作れと命じられ、一晩で成し遂げた男への賞賛の言葉。
転じて、とんでもない作業量を短期間で成し遂げた場合に送られる賛辞。
たまにジョバンニに間違えられる。
●ガイル
ストリートファイターIIの操作キャラの一人。アメリカの軍人で、ソニックブームとサマーソルトキックの使い手。カウンターでサマソを叩き込むために、構えたまま待機する「待ちガイル」は、有効だがしょっぱい試合になるので嫌われた。