それでも我輩はネコである。   作:far

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第8話

 我輩は実験してみたのである。我輩が直接実行したわけではないが、試してみるだけの価値はあった。

 ただ、なんだ。その結果ね。なんというかね。その、ね。

 

 DIOさんがね。お亡くなりになったらしいのだな。

 

 ほんの、軽い気持ちだったのだ。

 第二部で、名前は思い出せぬが、サイボーグドイツ軍人の人。あの人がジョジョ立ちをしながら、紫外線照射装置かなにかを、柱の男に当てていたのを思い出したのがキッカケだった。

 

 柱の男に効くのなら、その劣化版である吸血鬼にも効くだろう。

 DIOのいる町には、どうせ配下の吸血鬼が何人もいるに違いない。

 街灯にちょっと仕掛けをして、吸血鬼がコロッと逝くような明かりに変えてもらえば、何体かは引っかかるかもしれないなあ。

 

 そんな軽い気持ちであったのだが。

 

 どういうわけか、最初にラスボスが引っかかった上に亡くなった。

 

 いや、まあ。確かに頭上から、光りの速さで襲い掛かってくる即死トラップとか、初見殺しではあるけれども。

 最初に頭に当たるから、罠にかかったら、即アウトであるけれども。

 それでも最初にかかるのが、一番の大物とか。

 

 どういうことなの。

 

「そんなのボクの手柄じゃないもの 計算じゃないもの」

 

 イタイぽえ()使いが、頭の中でそう叫んでいるが、同意せざるを得ない。

 

 しかも、我輩。いまだにこの世界から、離れられぬのだが。

 

 場所は今、まだ海の上。紅海をエジプト目指して北上中である。

 つまり。まだエジプトに、到着してすらおらぬのだが。

 そこに船の無線機でだが、入ってきた緊急連絡の内容が、これである。

 

 我輩たちは混乱した。もちろん、全員が情報の真偽を疑ったし、完全に信じている者などいない。

 しかし、どうにも確かな情報らしく。DIOの組織も、混乱しているのは間違いないのだそうな。

 

 それでだな。ここに至るまでに、色々とオカしいほどに情報をブチまけ続けた我輩が、ここにおるじゃろ?

 

 聞かれた。問い詰められた。お前の仕業だろう、吐け。と尋問された。

 

 しかし、我輩にあるのは、うろ覚えの原作知識くらいのもの。変えてしまった現在の状況について聞かれても、困るのだ。

 とにかく。百聞は一見にしかず。当初の予定通りに、このままエジプトまで行って、直接―――

 

 ―――見なくても、ハーミット・パープルで調べれば良いのでは?

 

 一同そろって、そういえばと顔をした。

 おい、ジョセフのジジイ。それ、お前さんのスタンド。

 

「ジョセフ・ジョースターッ! きさま! 見ているなッ!」

 

 どういう原理でか、DIOはハーミット・パープルでの念写や探索を感知できるらしい。それゆえ、一度試したあとはやっていなかったので、すっかり忘れていた。

 本体のジョセフも思い出せなかったのは、それだけ混乱していたということであろうか。

 

 壊してよいカメラやテレビなどが手元に無かったので、近くの港へと船を向けた。エチオピア最大の港、アッサブを目指す。

 もう五年ほどしたら、このあたりの海岸線すべてがエリトリアとして独立。

 エチオピアとしては海を失った形になり、領土問題としてくすぶり続ける。そして通貨を別にされ、港湾の使用権を制限されて、経済的に追い詰められて。

 当然のように紛争になったわけだな。しかも、それが終わらないという。

 その結果、貿易港としての価値が激減して、かなりさびれるのだが。今はまだ、そんな様子は見えない。にぎやかな、港町である。

 いずれ失われる光景だと思うと、妙に切ない。

 

 北緯十三度。平均『最低』気温が、一年を通して二十度をほぼ下回ることがない、高い気温が我輩たちを焼く。最高気温? 約三十六度が平均気温だ。察しておくれ。

 承太郎たちも、ガウンのような現地の民族衣装に着替えている。変装作戦の副産物で、原作では学ランで通していた承太郎も、着替えることに抵抗は無いようだ。

 

 まあ。あれは週刊連載をこなすために、描きやすくしていたのと、読者がキャラの見分けが付きやすいようにという大人の事情もあったのであろう。

 

 何も着ておらぬ我輩であるが、不思議とそれほど暑いとは思わない。体がスタンドなせいであろうか。

 

 ところで。今、気が付いたのだが。

 変装作戦が失敗した理由とは。もしや、我輩が常に つれあるき 状態で、外に出ておるからなのでは……?

 ……うむ。今更のハナシであるので、気が付かなかったことにしよう。気付いたところでどうしようもないし、誰も幸せにならないであるからな。

 

 観光地でもあるので、ポラロイドカメラは売っていた。高いのか安いのか、我輩には良くわからぬが。ジョセフが値引き交渉して、かなり値段を下げさせておった。

 ニューヨークの不動産王と呼ばれるほどの金持ちのはずなのだが。いや。あれは、こういう駆け引きが好きなだけか。

 使い捨てにするカメラであるから、安いに越したことは無いのも確かであるしな。

 

 ともあれ、そうして手に入ったカメラは、さっそくジョセフの手刀によって壊された。

 例えではなく、文字通りに叩き込まれた情報を、カメラが読み取って写真に写す。

 

 そこに写っていたのは、わずかな灰のみであった。

 

 

<to be continued>




●「そんなのボクの手柄じゃないもの 計算じゃないもの」
王様の仕立て屋より。イタリア、ナポリに住む凄腕の仕立て屋で、マフィアに大借金している日本人が主人公。特急料金を取る代わりに、わずか数日でフルオーダーを仕上げる彼の元には、様々な事情を持った客が訪れる。
借金を返し終えて一旦終了した後の、自分の店を構えての新シリーズが連載中。
客ではないが、その発注の原因になった音楽家のセリフ。
ポエムならぬ、ぽえ夢と呼ばれる自作の詩をネットで生で朗読中、後方に現場監督の後姿が。
「アルプスの調べに友よ酔い給え忘れられぬ夜に…「おーい右右!危ねえってよそ見すんなっだらあ!」」 (両者とも振り向き、目が合う)
ネットで反響を呼び、むしろ興味が引けてチケットは売れたのだが、音楽家は嘆いた。

●ジョジョ立ち
ジョジョの奇妙な冒険シリーズに、時折見られるスタイリッシュなポーズの立ち姿のこと。ファッション雑誌やモデルの写真が元になっている場合もあり、元ネタが発見されることも。

●「ジョセフ・ジョースターッ! きさま! 見ているなッ!」
ハーミット・パープルでテレビから音声を拾って、DIOの考えている内容を言葉にした時、最終的に画面に映ったDIOのセリフ。この時の片手で顔を覆い、片手で指差すカッコいいポーズは、ジョジョ立ちの代表のひとつでいいと思う。
なお考えていた内容は、一行の中に裏切り者がいる。それは花京院(の顔を真似ているイエロー・テンパランスの本体の人)だ。
もちろん、カッコの中は放送されません。
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