我輩は夢の中であった。本当の、タダの普通の夢だ。
目が覚めて、なぜかほっとした。そうだ、夢とはこういうものであった、と安堵した。
その内容を、忘れぬうちにもう一度思い返してみようと思う。
まず、我輩は公園にいた。飯田くんと緑谷少年と、お茶子さんもいた。
最初から、おかしい。我輩は今、アインクラッドでなければ物が見られぬし、出歩けぬ。
そして我輩が落ちている竹を見つけて、棒術のように振り回していると。緑谷少年が、坂の下で燃えている倒木を発見する。
火はゆっくりと、下草や芝生に燃え広がっていく。我輩はスマホを取り出し、この公園で野焼きの予定があったのかを、消防署に聞こうとするのだが。なぜか電話は駅につながってしまって、聞けない。
すると飯田くんが、なぜか図書館に聞けば良いのだ、と言い出した。
我輩もなぜか納得し、お茶子さんに電話を任せて、公衆トイレへと走る。バケツを確保するためだ。消火といえば、バケツリレーである。
うむ。色々とおかしいが、この時の我輩は、そこにバケツがたくさんあると知っていた。
今思えば、トイレまでの道は白い不思議空間をはさんで、すぐであったな。
そうやってたどり着いたトイレは、これまたなぜか個室に便器が無い。かわりにバケツが六個置いてあった。
しかも、その中にはなぜか潮干狩りをした後の、海岸の細かい黒い砂が入っているものもある。どうしてだか、それが理解できた。
ああ、自分よりも前にこれを使った人は、海へ行ってきたのだな。そう思いながらバケツを持ち出すと、外にはS少年とダメオヤジがいた。
すかさずバケツを押し付け、消火を任せた。
なぜか文句を言われたが、ヒーローが火事を見過ごすのか、と強気に言ってやらせておったな。
あの二人がここで出てきた意味は、わからない。しかもこれ以降の出番もない。そのあたり、本当に謎だ。
バケツと消火を任せた我輩は、どうしてだかまた消防署に電話をかけようとした。
検索しても番号が出ないのなら、地図アプリから番号を割り出せば良いのだと、悪戦苦闘して。今度こそ電話をかけるのに成功する。
「はい、スタッフサービスです」
聞こえてきたのはそんな言葉であったが、我輩は普通に会話を進めた。
「この公園で、放火後の予定はあるか?」
失敬。普通ではなかった。
だがしかし。それでも通じた。この公園で、場所分かるんだ。
なお、放火の予定はないらしい。
よし。ならば消火してもかまわないのだな。そう思ったら、場所が急に変化して、先ほどの火災現場にいた。
なぜか登場人物が我輩だけになり、しかし誰かから渡される水の入ったバケツで、火を消そうと水をかけていく。
明らかに入っていた水よりも、バケツから出る水のほうが量が多いのだが、我輩は気にしなかった。
そしてあらかた火が消えて、我輩が一息ついたとき。
「わたしが 来た! 君が消防署を駅前再開発計画したな! 逮捕だ!」
オールマイトがやって来た。セリフの中身は、よくわからない。
「わかった! こうなったら釣りで勝負だ!」
どこからともなく竿を取り出し、我輩もよくわからぬセリフで返した。
なにがこうなったらだったのかは、本人である我輩にもわからぬ。
そしてまた場面が変わる――――――ところで目が覚めた。
そして落ち着いて、ああ夢だったのだなと気付いたというわけだ。
うむうむ。夢とは、やはりこう、荒唐無稽なものでなければならぬ。
見ている間は、それでも理屈が通っておると感じるのが、おかしくも面白いところだ。
まあ。こんな夢であっても、フロイト先生にかかれば「欲求不満ですね」のひとことで終わってしまうのであろうが。
きっと、火事というのは燃え上がるリビドーの象徴で、それを消そうとあれこれやっているのは、自制しようとしているのではないでしょうか。もっと自分を解き放ってください。とか適当なことを言うのだろう。
たまにはこんな、普通の夢でいい。そう思うのだ。
●逮捕だ!
ヒーローは警察ではないので、そういえばこれも言わないな。ルパン三世より、銭形警部のセリフと思われる。
初代のルパンの中の人が亡くなった時、初代の銭形の中の人が「ルパン。これから俺は誰を追い続ければいいんだ」と泣きながら問いかけたらしい。私の中の銭形は、いまだにあの人の声である。