それでも我輩はネコである。   作:far

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登場キャラが増えまくりそうで、手に負えないかも。
安易に手を出すと、FGOはヤバいなと今更実感。


第3話

 

 我輩はグッタリしているのである。酔ったのだ。

 言っておくが、酒にではない。獣と、馬車に酔ったのだ。乗り物酔いであるな。

 

 あれから走って逃げたのであるが、すぐに気が付いた。

 この体。2.5頭身くらいなので、手足が短い上に、そもそも若干足が遅めであると。

 

 そこで適当な獣を体から出して、乗っていこうと思ったのであるが。

 これが、どいつもこいつも、すごい揺れるのである。

 

 最初に出たのはシカらしき、跳ね回る四つ足の黒いヤツであった。

 コイツ、奇妙なことに、角が枝分かれしながら伸びるのであるが。ムーンフィッシュを思い出させるようなアレっぽさである。

 イヤな予感はしたが、なにぶん急いでおったので、チェンジせずにそのまま乗り込み。そして五分後に吐いた。

 シカというよりも、カンガルーのような移動方法で、常に跳ねて移動するのだ。上下の揺さぶりが大きくて、大ダメージであった。

 

 シカをあきらめてしまいこみ、次に出たのが、ブタであった。

 どこぞの味噌カツ屋のシンボルキャラクターのように、化粧マワシを身に着けておるが、二足歩行ではないようなので、まあよしとしよう。

 せめてイノシシにならないかとも思ったが。その場合、次に出るのが蝶々である気がするので、これもよしとする。

 しかも、吐き気が治まるまで少し休憩したので、時間が無い。

 そのまま乗り込み、走らせる。

 

 今度は、四十分ほどは持った。

 

 シカによるダメージが残っていなかったら、もう少し行けたであろう。

 もしくは、もう少し道がまともであったのならば。

 街道といえども、石畳ですらない、踏み固めた土である場所がほとんどなのであるが。

 レンガとは言わぬが、もう少し、こう、なんとかならなかったものなのだろうか。

 

 いや。そういえば百年戦争中であったな。そんな予算や人手は、どこにもないか。

 フランスという国の枠組み自体が、消滅の危機であったのだ。そういった、大規模な公共工事などは望むべくもなかったのであろう。

 

 そんな田舎道を、今度はヒョウに乗って走る。

 揺れはするが、ネコ科のしなやかで柔らかい身体が、サスペンションのように衝撃を和らげてくれる。

 しかも、ブタよりも速い。これは、アタリであるな。

 

 とりあえずは、東、と思われる方向へと走ってきた。

 途中で見かけたワイバーンや、人狼や、兵士たちはすべて隠れてやり過ごす。この身体が小さいので、隠れやすい。

 ニャース先輩に引き続き、背が低いというのは正直いい気がしなかったのであるが、なにごとも良し悪しであるなあ。

 

 ところで、村人などにはいまだに出会っておらぬのだが。

 全滅したのか、それとも逃げたのか。まだ二日しか移動しておらぬのであるが、ここに至るまで、空っぽの村しか見ておらぬ。

 居たとしても、どうしようもないのであるが。それでも、このフランスはまだ大丈夫なのか、心配にはなる。

 しょせんは他人ごとであるが、それでも目の前でのことであれば、思うことはあるのだ。

 

 ところでこの移動中に、少し聖杯くんと仲良くなった。

 移動中にヒマであったので、シリトリの相手になってもらった。今思えば、あれは日本語であったなあ。

 口が寂しかったが、この身体の持ち主のように常時タバコを吸っておるのも逆に落ち着かぬ。そうグチったら果物を出してくれた。

 ラ・フランスであった。なにげにこの時代には存在しないオーパーツである。

 聖杯くんが出した食べ物ということで、口にするのに少し勇気が必要だったのは、彼(?)には秘密である。

 

 そしてラ・フランスをかじっていたところ、一台の馬車がやって来た。妙に輝いていて、速くてなめらかに動く馬車だった。

 

「ヴィヴ・ラ・フランス!」

 

 そんな言葉とともに、この時代では先を行き過ぎている衣装の女性が、馬車から飛び出してきた。

 そしてマリー・アントワネットを名乗った彼女は、ラ・フランスを欲しいと、ていねいに頼んできた。妙に惹かれるものがあるらしい。

 

 ダジャレか。そして召喚素材か。

 

 カジったものを渡すわけにもいかぬので、聖杯くんに新しいのを頼んでみる。

 美人さんだし、いいよ。と素直に渡してくれたのが、ありがたいが解せぬ。たいてい出刃包丁を出して、これで解決しなよという持ちネタを、しつこいまでに繰り返すくせに。

 

 そして桃太郎のキビ団子よろしく、ラ・フランスを食べた彼女は、我輩とともに行くこととなった。

 もっともこの場合、お供になったのは我輩のほうである。

 別に、おいしかったからとされたキスに、ほだされたわけではない。ないのだ。

 

 聖杯くんは思い切りほだされて、我輩の手を離れて彼女に付いてしまったが。

 

 えっ。なにこれ。いきなり切り札が消失したのであるが。

 どういうことなの、と馬車の中に居た、金髪ちょいロールの男に目でたずねた。

 

 あきらめなさい。

 

 彼の目は、そう語っていた。

 

 うん。いや、まあ、うん。

 彼女、マリー・アントワネットはカルデアと合流する。そのはずだ。

 だから、聖杯くんを持っていてもらっても、まあ、いいと言えばいいのであるが。

 こう。いろいろと。

 今回は、想定外であるなあ。

 

 

 




●味噌カツ屋
名古屋の矢場ト○である。味噌カツというが、味噌そのものではなく味噌ダレをつけるのである。小鉢と出てくる白ゴマを自分ですって入れると、すりたてのゴマの香りが味噌ダレに負けずに香ばしい。
どっぷりとタレをつけたカツは、シャキシャキの千切りキャベツと食べるも良し。ご飯とともにいただくも良し。

●ラ・フランス
いわゆる洋ナシ。ラ・フランスは日本での呼び名で、フランスでは発見者のクロード・ブランシェさんの名前でそのまま呼ばれているらしい。
フランス原産であるが、1864年まで発見報告が無いあたり、謎である。
またフランス原産なのに、フランスの気候風土と合っておらずに、現地での栽培はほぼ行われていない。本当にフランス生まれかキミ。
収穫直後は硬くて甘くない。常温で10~14日置いたころが食べごろという、食べるタイミングが難しい果物。しかし聖杯くんが出したものなら、すぐさま食べても大丈夫だ。良かったね。
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