我輩は、口がスベったのである。
なぜ召喚されたのかも、誰に召喚されたのかも、わからない。
マリー・アントワネットがそんなことを言うので、つい普通に解説してしまったのだ。
人理崩壊のこと。黒幕は、倒すと希少な素材を落とす、魔術師としてはオイシイ敵であること。
このフランスでは、ジル・ド・レエが犯人であったこと。それは我輩が倒したので、あとは邪ンヌを倒せば良いこと。
アントワネットらを呼び出した存在。人類すべての、死にたくないという意思。滅びに対して働く抑止力、アラヤのこと。
あとは、うろ覚えの知識だ。
すまないさんのところに、誰だったか聖人を連れて行かないといけなかったことと、佐々木小次郎はドラゴンスレイヤー。
うむ。しゃべりすぎた気がする。
それでそれで? とキラキラした目で続きをせがまれるので、ついつい話してしまったのだ。
そしてハナシを聞き終わった彼女は、宣言した。
「さあ。英雄になるわよ!」
どういうことなのか、ちょいロールの人こと、ウォルフガング・アマデウス・モーツァルトが聞いたところによるとだ。
人類を救うために、アラヤが私たちを召喚したのならば。やりとげれば、英雄でしょう? とのこと。
まあ。その通りではある。
しかしながら、向こうの方が戦力が上なのだ。それはもう、圧倒的に上なのだ。サーヴァントも多数いたはずであるし。
そう指摘すると、じゃあ戦力を集めましょう! と元気いっぱいに笑顔で答えてくれた。
モーツァルトの方を見たが、顔にはすでに「あきらめろ」と書いてあった。キミ、その顔をするのに慣れを感じるのであるが、大丈夫かね?
心配すると、すごいな君は。と感心された。
人かどうか怪しいのに、並みの人間よりも汚くて、それなのに人を心配できるのか。そう感心された。
シバくぞ。
「もうシバいたらいいわ」
特徴的な鼻をした、長い黒髪の女性も、真顔でそう言ってくれた気がする。
アントワネットが、ごめんなさいね、アマデウスはクズなだけで悪気はないの。と謎のフォローを入れなければ、笑顔でシバいておったであろう。
直接殴りたいと思ったのは、久しぶりである。
邪ンヌにすら、そう思わなかったぞ。いや、あれには殴りたいのを通り越して、殺意を覚えただけであるか。
さて。
戦力が欲しいと言うのなら、このまま東へ。そして南へ行くのである。
リヨンかマルセイユ。どちらであったかは忘れたが、竜殺し(真)がいたはずだ。呪いだったかで弱っていて、聖人が必要という設定だったように思う。
しかしここに、聖杯くんがいるじゃろ?
呪いを吸収なり、上書きなりしてくれるはずだ。上書きのほうは、きっとユカイなことになる予感がある。
なにかしでかしてくれるであろう。
そう期待して、本人に確認してみたところ。とんでもない情報が出てきた。
「あっ。今、カルデアが撤退しちゃった」
………………えっ。
いやいやいやいや。なんで?
ここは序盤の、チュートリアルもいいところの、軽い感じの場所ではなかったのであるか?
動揺して、そんなメタ丸出しの我輩の疑問にも、聖杯くんは、きちんと付いて来て答えてくれた。さすがのギャグ枠のナマモノである。
ただ、答え方もメタまみれであったが。
「ほら。マリーさんたちの登場シーンって、プレイヤーのピンチに駆けつけるって感じでしょう? その二人が今、こんなところにいるから」
うわあ。これはやってしまったか。
早く進めてあげようと、こちらで前もってすまないさんを助けておこうと思っただけなのだが、まさかこんな副作用が起きようとは。
「見抜けなかった! この海のリハクの目を持ってしても!」
うわあ。我輩、アレと同類であるか。
いかんな。これは汚名を返上せねば。とはいえ、なにをどうしたものか。
移動中に、少し考えてみるとしよう。
●「もうシバいたらいいわ」
ワンピースより。ゲッコー・モリアの船、スリラーバーク編あたり。ブルックが加入したてで、スカルジョークを連発。最初は「やめなさいもう死んでるわ」と、過激なツッコミを入れようとするフランキーを冷静に止めていたロビンも、三回目には「いい加減シバくぞ、てめェ!!」というフランキーに、即座に賛同してこう言った。真顔で。
●「見抜けなかった! この海のリハクの目を持ってしても!」
北斗の拳より。南斗五車星のうち海の星担当の拳士。名軍師という設定であるが、ラオウとケンシロウの強さを見誤り、仕掛けたワナが裏目に出て、ケンシロウは目を負傷。ラオウは一足先にユリアの元に到着するという大ピンチを招いた男である。
その事件の最中に、この私の眼を持ってしても、と上から目線で口にしたセリフである。
イチゴ味では「なんかアンタは結局大事なシーンで策に溺れ余計な事をした上に潔く散りもしない… そんな男じゃないですか!!?」と他の五車星の人に言われた。
実際、唯一五車星で最後まで生き残っている。