我輩は預言者ではない。予言者でもないのだ。だから、付きまとわれても何も出ないのである。
なにせ、亀の歩みよりも遅くしか動けぬのだ。だからお茶すら出せぬ。
だからあきらめてくれないかね、アルゴくん。
え? 何か隠してそう? カンでわかる? それと黒猫団の実績?
黒猫団ってなに?
ああ。サチのいたギルドの名前が、月夜の黒猫団であるか。はあ。その全滅を防いだ?
いや。ほぼ全滅したのであるが。
ワナを警戒しつつも、宝箱をあきらめられなかったヤツが、結局開けてしまったのであるな。
ただ、帰ろうとするところを、そいつが独断で開けた。その分だけ、逃げるだけの時間があった。それだけである。
キリトが先陣を切って、他の者が後に続く。
そして生還したのは、五人中、サチとキリトの二人のみ。
結局、ギルドは解散。原作では身投げした少年が、闇落ちしたらしいが。顔を合わせたことがないので、そこはわからぬ。
サチが未だにキリトに付いておるので、それが闇落ちした原因ではなかろうか。そういう推測ができる程度だ。
付いておるとは言っても、一緒に戦っているわけではないらしい。
家を買って、一緒に住んでいるらしいのだ。
そしてキリトはそこから前線の少し手前まで、通勤。サチはその近場で戦って、無理なく稼ぎ。先に帰って、キリトの帰りを待つ。
そんな生活をしておるらしい。
新婚か。
つい先日、偶然出会ったサチからノロけられた事実を、キリトの近況ということでアルゴに話したのだが。
酢でも飲んだような顔をして、そうツッコミを入れておった。いや、まったく同感である。
逃げることができぬので、延々と語られた我輩の身に、ぜひなっていただきたい。
それとついでに、この情報をアスナさんにも、流していただきたい。
きっと、私がこんなに苦労してるのに、お前は何やってるんだと、何か行動を起こしてくれると思うので。
ん? これも予言かと?
いいや。これは単なる――――――趣味である。
楽しそうであろう?
アンタも悪い人ダナって? 当然である。ここだけの話。我輩はヴィランであるのだよ。これは内緒だぞ?
あとは、そうであるなあ。予言というか、予測というか。
PKを繰り返した、レッドプレイヤー。捕まえて、牢獄に入れてあるヤツらのことであるが。
ああ。そう構えなくて良い。今すぐ、いや、このゲームが終わるまでは、何も起きぬよ。
ヤツらが脱獄することも、反乱を起こすこともありはせぬ。
ゲームが終わるまでは、であるが。
ああ。そうである。このゲームは、終わる。いずれ、必ず。
うまく行けば、百層に届く前に。というのは、まだヨタであるが。とにかく終わるのだ。
それで、現実に戻るわけである。
戻ったとして。捕まっておるヤツらが、引き続き牢獄につながれると思うかね?
うむ。察しがいいな。無罪放免であるよ。
異様な状況での、特殊な形での、間接的な殺人。それも本人が確実に死ぬと確信できていたかどうか。殺意の有無が証明できない。
捕まえておけるのは、この世界が終わるまでである。
おや。待ちたまえ。連絡を取るのか、掲示板か何かに書き込もうとしておるのかは分からぬが、ハナシは終わっておらぬよ。
ああ。まだ続きがある。ヤツらが無罪になったあとも、まだ続くのだ。
無事に放免となったヤツらが、まっとうに人生を生きると思うかね?
ましてゲーム内で、自分を捕まえたり敵対したり、取り逃がしたりした。そういう因縁を持つ相手を、現実で放っておいてくれると思うかね?
やるよ。ヤツらは、やる。やらかす。リハビリを終えて、体が動くようになったら、間違いなくやってくる。
さあ。それでも、ヤツらをこのまま、生かしておこうと思うかね?
アンタ、悪い人ダナって?
うむ。その通りだとも。
我輩は、ヴィランである。
ハハッ。他の者には、内緒だぞ?
――――――――――――よし、行ったな?
うむ。行ったか。よし! 久々にヴィランらしいことができて、満足である。
べつだん、悪ぶったことに意味などないが。
先生の生徒としては、たまにはこういうこともやっておかねばならぬ。そう、思うのだ。
この世界も悪くはないが、我輩がいるべきなのは、もはや会えぬとしてもあの世界であるので。
「この世界は俺たちにとっちゃあ現実だが、お前にゃただのファンタジーだ。帰んな。お前の現実に」
いや、ヒロアカ世界も現実じゃねーだろって?
いやいや。生きた以上は、あれがもう我輩の現実である。
●「この世界は俺たちにとっちゃあ現実だが、お前にゃただのファンタジーだ。帰んな。お前の現実に」
サイボーグクロちゃんより。男前なネコがガトリングなどをぶん回して大暴れする、ギャグと人情と心意気のつまったマンガだった。アニメ化したが、製作が追いつかなかったかなにかで、突如打ち切りになっていた。「箸より簡単だった」が記憶に深く残っている。
砂だらけの異世界へ行き、そこで冒険を終えてなお残ろうとしたコタローというキャラに、その異世界の住人がかけた言葉。
いっぱしのゲーマーなら「クソゲー」って決め付ける前にもっとやりこんでみるんだな。という死柄木に刺さりそうなセリフもあった。なおやりこめと言っているゲームのタイトルは人生である。