それでも我輩はネコである。   作:far

5 / 76
第4話

 我輩は預言者ではない。予言者でもないのだ。だから、付きまとわれても何も出ないのである。

 なにせ、亀の歩みよりも遅くしか動けぬのだ。だからお茶すら出せぬ。

 だからあきらめてくれないかね、アルゴくん。

 え? 何か隠してそう? カンでわかる? それと黒猫団の実績?

 

 黒猫団ってなに?

 

 ああ。サチのいたギルドの名前が、月夜の黒猫団であるか。はあ。その全滅を防いだ?

 

 いや。ほぼ全滅したのであるが。

 

 ワナを警戒しつつも、宝箱をあきらめられなかったヤツが、結局開けてしまったのであるな。

 ただ、帰ろうとするところを、そいつが独断で開けた。その分だけ、逃げるだけの時間があった。それだけである。

 キリトが先陣を切って、他の者が後に続く。

 そして生還したのは、五人中、サチとキリトの二人のみ。

 結局、ギルドは解散。原作では身投げした少年が、闇落ちしたらしいが。顔を合わせたことがないので、そこはわからぬ。

 

 サチが未だにキリトに付いておるので、それが闇落ちした原因ではなかろうか。そういう推測ができる程度だ。

 

 付いておるとは言っても、一緒に戦っているわけではないらしい。

 家を買って、一緒に住んでいるらしいのだ。

 そしてキリトはそこから前線の少し手前まで、通勤。サチはその近場で戦って、無理なく稼ぎ。先に帰って、キリトの帰りを待つ。

 そんな生活をしておるらしい。

 

 新婚か。

 

 つい先日、偶然出会ったサチからノロけられた事実を、キリトの近況ということでアルゴに話したのだが。

 酢でも飲んだような顔をして、そうツッコミを入れておった。いや、まったく同感である。

 逃げることができぬので、延々と語られた我輩の身に、ぜひなっていただきたい。

 それとついでに、この情報をアスナさんにも、流していただきたい。

 きっと、私がこんなに苦労してるのに、お前は何やってるんだと、何か行動を起こしてくれると思うので。

 ん? これも予言かと?

 いいや。これは単なる――――――趣味である。

 

 楽しそうであろう?

 

 アンタも悪い人ダナって? 当然である。ここだけの話。我輩はヴィランであるのだよ。これは内緒だぞ?

 

 あとは、そうであるなあ。予言というか、予測というか。

 PKを繰り返した、レッドプレイヤー。捕まえて、牢獄に入れてあるヤツらのことであるが。

 ああ。そう構えなくて良い。今すぐ、いや、このゲームが終わるまでは、何も起きぬよ。

 ヤツらが脱獄することも、反乱を起こすこともありはせぬ。

 

 ゲームが終わるまでは、であるが。

 

 ああ。そうである。このゲームは、終わる。いずれ、必ず。

 うまく行けば、百層に届く前に。というのは、まだヨタであるが。とにかく終わるのだ。

 それで、現実に戻るわけである。

 戻ったとして。捕まっておるヤツらが、引き続き牢獄につながれると思うかね?

 うむ。察しがいいな。無罪放免であるよ。

 異様な状況での、特殊な形での、間接的な殺人。それも本人が確実に死ぬと確信できていたかどうか。殺意の有無が証明できない。

 捕まえておけるのは、この世界が終わるまでである。

 

 おや。待ちたまえ。連絡を取るのか、掲示板か何かに書き込もうとしておるのかは分からぬが、ハナシは終わっておらぬよ。

 

 ああ。まだ続きがある。ヤツらが無罪になったあとも、まだ続くのだ。

 無事に放免となったヤツらが、まっとうに人生を生きると思うかね?

 ましてゲーム内で、自分を捕まえたり敵対したり、取り逃がしたりした。そういう因縁を持つ相手を、現実で放っておいてくれると思うかね?

 やるよ。ヤツらは、やる。やらかす。リハビリを終えて、体が動くようになったら、間違いなくやってくる。

 

 さあ。それでも、ヤツらをこのまま、生かしておこうと思うかね?

 

 アンタ、悪い人ダナって?

 

 うむ。その通りだとも。

 我輩は、ヴィランである。

 ハハッ。他の者には、内緒だぞ?

 

 

 

 

 

 ――――――――――――よし、行ったな?

 

 うむ。行ったか。よし! 久々にヴィランらしいことができて、満足である。

 べつだん、悪ぶったことに意味などないが。

 先生の生徒としては、たまにはこういうこともやっておかねばならぬ。そう、思うのだ。

 この世界も悪くはないが、我輩がいるべきなのは、もはや会えぬとしてもあの世界であるので。

 

「この世界は俺たちにとっちゃあ現実だが、お前にゃただのファンタジーだ。帰んな。お前の現実に」

 

 いや、ヒロアカ世界も現実じゃねーだろって?

 いやいや。生きた以上は、あれがもう我輩の現実である。

 

 

 




●「この世界は俺たちにとっちゃあ現実だが、お前にゃただのファンタジーだ。帰んな。お前の現実に」
サイボーグクロちゃんより。男前なネコがガトリングなどをぶん回して大暴れする、ギャグと人情と心意気のつまったマンガだった。アニメ化したが、製作が追いつかなかったかなにかで、突如打ち切りになっていた。「箸より簡単だった」が記憶に深く残っている。
砂だらけの異世界へ行き、そこで冒険を終えてなお残ろうとしたコタローというキャラに、その異世界の住人がかけた言葉。
いっぱしのゲーマーなら「クソゲー」って決め付ける前にもっとやりこんでみるんだな。という死柄木に刺さりそうなセリフもあった。なおやりこめと言っているゲームのタイトルは人生である。
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。