前話に伏線を一応埋めてみたり。
我輩は巡っているのである。因果と世界と、その両方をであるな。
あのあと。意図せずに来てしまったわけであるし、いったん現実へと戻りたい。ゆえに、できるだけ早く終わらせよう。
そう思っての、暴露であったのであるが。これが上手く行き過ぎてしまったのだ。
リーダーのワグナスと、ノエルとロックブーケの兄妹が、三日でやってくれました。
うむ。たったの三日間。それだけで、すべての問題に片が付いてしまったのだ。
まずはワグナスが、我輩のいい加減な知識を元に、空から古代人の町を見つけ出した。
あとは七英雄の有志で、蹂躙するだけであったらしい。
参加者は、本来は水中専用のはずの、恵比寿のワグナスのいとこスービエ。なぜか逆切れにしか思えない、新宿の嫌われ者クジンシー。そしてその運び屋 兼 品川のリーダーワグナスである。
そして、かつてこの世界から立ち去った、古代人らの行き先の情報を手に入れた。
どうも帰ってきた七英雄を始末してから、立ち去った仲間を追いかけ、合流するつもりであったらしい。
気の長い話であり、ひどい話でもある。
「力ある者の驕り─――やがてそれは 何千年も生きる三只眼にとって無関心 無感動に変わってゆくのだ……
感情も意識の進歩もなく 美への興味もなくなる そのくせ醜いものを嫌い 自分の手を汚さずにいたぶって楽しむ─―─始末におえんよ」
額に目のある、ほぼ寿命が無い一族の人も、そう言っていた。
長く生きるということも、良いことばかりではないようだ。
帯に短し、タスキに長し。過ぎたるは、なお及ばざるが如し。なにごとも、やはり程々が肝心なようであるな。
そしてサラマットの地の二つの塔を攻略して、次元移動装置の制御室を見つけた七英雄らもいた。
人間の姿を残した兄妹のコンビ、上野のワグナスの同志ノエルと、池袋のその妹ロックブーケ。オマケの新大久保のズル賢いボクオーンの三人である。
ロックブーケが、男たちをテンプテーションで魅了して味方に付け、女たちはノエルが説得するか、ボクオーンがこっそりマリオネットで操った。
あとは力押しである。
ロックブーケがついでにと、魅了して手下にしていたモンスターらを塔へと攻め込ませる。
それでも残った手強いモンスターや、最奥にいた守護者は三人で倒したそうな。
なお守護者は、ボクオーンが吸収素材として適合したようであり。倒したあとに、おいしくいただいたらしい。
残った七英雄、五反田の乱暴者ダンターグは、どちらにも参加しなかった。新しくできた舎弟の面倒を見ておったのだ。
まあ、我輩のことなのだが。
それに、面倒を見るといってもだ。その指導のやり方は、ロクに理屈も教えずに、とりあえずやってみろという実践主義であり。実に適当なものであった。
やってみろ、というのは吸収の法。
そもそもだ。もともと古代人というのは、寿命が長かった。長すぎて、身体の方に先に限界が来るので、彼らはそれをどうにかするべく、同化の法というものを開発した。
これが、他人の身体を自分の身体へと書き換え、乗っ取ってしまおうという。どう考えても外道の業であった。
しかも、乗っ取るのは、同じ古代人ではない。
古代人よりも寿命が短く、代わりに身体が丈夫な、普通の人間。今、この世界にいる人間の祖先らがその対象であった。
もともと。寿命などの種族の違いと、文明レベルの違いなどで。人間は、古代人の召し使いのような存在ではあったらしい。
彼らにとっては、サルの遺伝子をいじって、自分の若い頃の身体を作って、脳移植するようなものであったのかもしれない。
それでも。これは良くないことだと思うのであるが。
そして、この外道の業をさらに進化させたのが、ワグナスである。
自分と同じにして同化するのではなく、異なったままの相手を吸収する、吸収の法。
七英雄は、これをモンスターを相手に使い、その力と能力を取り込んで強くなったのだ。
長く生きることはできるが、寿命よりも先にモンスターに殺されることが多かった、同胞を守るために。
この世界から引っ越すことで、モンスターに対処する必要が無くなると。その同胞らに、用済みとして別世界へと捨てられたが。
そりゃあ、復讐のひとつやふたつは、するというものであるな。
とは言え。クロサワの映画の七人の侍でも、盗賊の群れから村を守りきった侍たちは、盗賊がいなくなったとたんに、村から追い出されておったし。
ウサギを狩りつくしたら、次は猟犬が煮られる。今も昔も、場所も問わず、そういうものであるのやも知れぬ。
世知辛いものであるなあ。
なお、これまでに色々と経験をつんだ我輩ではあるが。さすがに、どう吸収したら良いものやら、とんと見当がつかなかった。
なので、使い魔に対象を取り込ませてから、使い魔ごと身体に戻すことで、一応は吸収の法を覚えることができた。
ただ能力は上がった気がせぬし。術や技なども、それを使えるのは呼び出した使い魔の方という、すごく微妙なものなのだが。
まあ。半日での成果なので、これでも上出来であると思って欲しい。
そして残りの日々は、ずうっとダンターグアニキの気まぐれ特訓に振り回されておった。
パンチやキックのキレが増した気はするが。これが吸収の結果か、ダンターグアニキのシゴキの成果なのかは、我輩にも分からぬ。
こちらに良かれと思っているのはわかる。わかってしまう。だが、こいつ育成とかやったことがないな、というのもすごく良く分かってしまう。
そんな指導であった。
そしてそんな指導にも、唐突に終わりが来てしまった。
どうも七英雄同士には、なんらかの通信手段があるらしい。
異世界への移動手段と、その行き先が判明した。リーダーワグナスからダンターグアニキに、その知らせが来たのだ。
当然、すぐさま我輩たちもサラマットの塔へと移動し、そのまま装置を起動。異世界へと飛び―――
―――案の定。我輩だけが、別の場所へとたどり着いていた。
「ん? 間違ったかな? また失敗作か」
それで今、目の前にだな。
どこぞのニセ医者のようなセリフを口にする、白髪でメガネで、肌が若干ヒビ割れた人物がおるのだが。
その人物は、こちらを気にする様子をチラ、とも見せず。両手を異様な速さで組み替えると、我輩の隣の地面に向けて片手を叩き付けた。
「これならどうだ? 忍法 穢土転生の術」
マテ。待ってくれ。
我輩の動揺を他所に、地面からはカンオケが生えてきた。
どうやら目当ての人物であったらしく、今度は成功だ、とヒビ割れの人が喜んでいる。
うむ。まずは落ち着こうか。身動き一つできぬので、落ち着く以外のことができそうにも無いが。それでも、とりあえずは落ち着こう。
息を吸って―――どうでも良いが、呼吸はできるのだな―――吐いて。吸って、吐いて。
うむ。落ち着いたところで、感想を一つ。
こう来たか。
さて。これからどうしようか。我輩が、記憶からこの世界の情報を拾い出そうと、目を閉じて思考に集中しておったところでだ。
「じゃあ、こっちの失敗作はいらないや。解っと」
我輩は、いまだかつて無い早さで、実にアッサリと。世界から追い出されてしまった。
新記録であるな。
そして、おそらくではあるが、抜かれることも無いだろう。
うん、無いといいな。
少なくとも次は、もう少しゆっくりしたいと、そう思うのだ。
なあ、キミもそう思うであろう? 聖杯くん。
●七英雄
名前は山手線の駅名が元ネタらしいので、紹介につけてみたら、少しユカイなことに。
だがボクは謝らない。
●「力ある者の驕り─――(中略)─―─始末におえんよ」
3×3EYESより。額にも目がある高位妖怪、三只眼。不老不死であり、他者を一人従者として同じく不老不死、かつ不死身にする術を使う、戦いの果てにほぼ絶滅した彼ら彼女らの生き残りパイと、その従者になった一般人の少年ヤクモの物語。
不老不死の長い人生のなかで、三只眼らはそうなっていったらしい。過去の回想っぽいやつの中で、それを嘆いた、三只眼の(比較的)若者のシヴァさんのセリフ。
だがこの後の儀式の事故で、シヴァさんは―――
●ニセ医者
北斗の拳より。主人公ケンシロウの兄トキのニセモノとして登場して、あっという間に倒されたアミバのこと。「ん?間違ったかな?」「俺様は天才だ~」が代表的セリフ。
今は亡きファンロードという、なんだろう。なんと言えばよいか難しい、投稿と編集でできた5ch? とにかくそのサブカル系の雑誌で、彼は妙な人気を誇っていた。
ゲゲボという単語を、知っている人はいるだろうか。
●ヒビ割れの人
NARUTOより。終盤の忍界大戦前の、穢土転生を習得、改造中のカブトである。皮膚のヒビ割れは、大蛇丸細胞を取り込んだ結果の副作用。
一度呼び出された以上、また呼ばれることもある、かもしれない。