それでも我輩はネコである。   作:far

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YUIちゃんがいるかどうかなど、気になったことの答えは、あなたの心の中に。
英霊の座に登録されたネコとは別の、本体のほうのお話です。


なしち氏の I begin to walk. を推してみる。
FGO世界生まれのジョニィ・ジョースターが、ぐだーずのポジで人理修復する。
レース中盤あたりの精神状態のジョニィの、殺意高めの物語。普通にハメ殺したりもするあたりがらしい気がする。


アルブヘイム・オンライン編 キャットトーク

 我輩は乾杯したのである。他人の不幸が愉悦で酒が美味い。

 うむ。これぞヴィランの飲む美酒というヤツであるな。

 ほら、アレだ。高いところで、夜景を眺めながら飲むアレやら、薄暗い部屋で豪華なイスに座り、猫をヒザに乗せながらクルクル回すソレである。

 

 ん? それ、片方は飲んでいないと? ああいうのは、雰囲気が美味しいのであるよ。

 いい空気を吸っている、というやつであるな。

 見たまえ。妖精郷は今日もよい天気だ。渦を巻く竜巻のような、現実ではありえぬ造形の優美な塔。雲をまとって漂う、空に浮かんだ山や大地。その下には、人工物が見当たらず、緑と水が見渡す限りに広がり。現実よりも優しい太陽の光が、それらを照らす。

 それらを見下ろしながら、こうしてゆったりと過ごす。これは、実に良い心持ちであるな。

 ああ。できればこの空を、もう少し飛びたかったものである。この光景がもうすぐ、失われてしまうかもしれないとは、悲しい話だ。そうは思わないかね? キリト。

 

 そうそう。ところで、美女三人に囲まれておるようだが、誰が本命かな?

 

 余計なことを言うな? いやいや。彼女らの自由があってこその、その修羅場だよ。それとも本命は今、この場におらぬのかな? アルゴくんあたりもオススメだぞ?

 ハハハ。これもまた、キミが勝ち取ったものだ。いっそ楽しんでしまえば―――いや、うん。スマヌ。その場合、誰かに刺される予感がした。やめておきたまえ。いや、マジで。

 

 さて。酒の美味い理由であるが。彼らの修羅場だけではない。

 

 

 ALOのラスボス、須郷伸之な。普通に逮捕されたわ。

 

 

 うむ。普通に捜査されて、普通に情報収集されて、普通に部下が任意同行からの尋問で自白しての、逮捕だ。

 なんのドラマも、盛り上がりも無かったな。

 キリトの、というよりもSAO帰還者らのコネと、勝手にどこかから生えてきた、その支援者団体などの外部団体。

 それらを使って、日本の警察という優秀な組織を動かした結果である。

 

 まあ。三百人を勝手に人体実験に使っていたのだ。その間、三百人は目覚めることなく、機械につながれたまま。

 その家族や知人に「アイツが悪いんです」という情報が流れたら、どうなるか。

 言葉というのは、なにを言うのかという内容も大事だが、誰が言うのかという説得力も大事である。

 つい先日まで同じく寝たきりであった、帰還者の言葉ならば。多少のでっち上げでも、効果はあった。

 

 うむ。でっち上げである。

 

 さすがに、明確な証拠なんぞはありはせぬのである。ならば、でっち上げるしかあるまい。

 とりあえず、ソードアート・オンラインと、アルブヘイム・オンライン。この二つのヴァーチャルゲームが、ほぼ同一のデータを流用しておること。

 実際に、アルブヘイム・オンラインを運営するレクト社が、ソードアート・オンラインのサーバの運営を引き継いでいること。

 未帰還者の意識が、今、どこで何をしておるのかと言えば、やはりそのサーバの中としか考えられず、未帰還者らの機械から、実際にそちらへとデータが流れていること。

 SAO事件の犯人の後輩の須郷という男が、サーバの管理者であり。会社にも秘密の研究をしているらしいこと。

 未帰還者の人数が、三百人ちょうどというキリの良い数字であること。

 未帰還者の一人のアバターが、アルブヘイム・オンラインの未公開エリアで目撃、記録されたこと。

 その未公開エリアを見る方法は、須郷によってすぐさま禁止されたこと。

 

 などなど。事実から、未確認情報に、ウソまで含めて。すべてを、SAO事件の関係者へと流した。

 集団訴訟やら、各種の相談やら、不安をごまかすためやらで、もともとある程度のつながりはできていた。そこへ流すだけだった。

 

 と、いうのが。キリトからの報告である。

 

 うむ。そろそろ、我輩の状態を語るとしよう。

 我輩は、ゲームキャラである。外見は、久々のにゃん太だ。

 アルブヘイム・オンラインの中で活動しておるが、ほぼバグのような存在である。

 ほぼ、動けない。しかし攻撃されても、効かない。アインクラッドと違うのは、飛ぶという機能が付いたくらいか。

 飛ぶことならば、ホグワーツで慣れている。浮遊するのも、ゆっくり移動するのも、お手の物だ。これで移動手段が手に入った。

 

 しかし幽霊時代の経験は、いろいろと役立つことが多いな。スタンド時代でも、ヘルシングの時も、壁抜けやらで世話になったし。

 そういえば魔法を覚えたのも、あの時か。いやあ。人生、なんでもやっておくものであるな。

 まあ。普通の人は、幽霊をやるような経験は無いであろう。あったとしても、そのあとその経験を生かすための、人生自体が存在せぬと思うが。

 

 閑話休題。

 

 そうしてこのゲームとはいえ、美しい世界をフラフラとさまよっておったところ。懐かしい顔と出会った。

 お察しの通り、キリトである。

 そして彼から近況報告と、相談を受けた。

 あのあとに茅場を倒して、ゲームはクリアした。だが一部のプレイヤーが目覚めない。アスナとサチが、まだ目覚めないのだと。

 

「俺はどうしたらいい。なにができる?」

 

 事情を知っていて、それでいて弱音を吐ける人間がいなかったのであろうか。

 何度か会って、ハナシをしただけの我輩なんぞに、彼は心の中に溜め込んだものをこぼしてしまっていた。

 

 そんな今にも泣き出しそうな彼に、我輩が提示した計画がアレになります。

 

 いそのー。社会的に攻撃(やきゅう)しようぜー。手段(場所)は、大人を動かして丸投げ(裏の空き地)なー。

 

 社会を派手に動かしたぶん、レクト社がヒドいことになったが。経営者に人を見る目が無かったせいで、精神や、ひょっとしたら魂までをいじる人体実験を許してしまっていたのだ。

 残念でもなく、当然と言わざるを得ない。

 

 そんな見る目が無い経営者、彼らはアスナの両親であった。そして彼らは、須郷を娘の婚約者にしてしまっていたほどの節穴なのであるが。

 なぜかこの状況で、自分たちが選んだ次の婚約者を、アスナさんに押し付けようとした。

 自分たちに見る目が無いという自覚が、いまだに無いらしい。暴挙と言わざるを得ない。

 原作では、アスナさんががんばって、この状況からでもなんやかんやで、両親と和解しておったと思うのだが。さて、どうなることやら。

 

 そんなレクト社はともかく、ヴァーチャルゲーム自体への世間の評判は、悪いものではないようだ。

 無論、大規模な犯罪に使われたツールであるとして、嫌う人もいる。それはそれと割り切れる人もいる。

 身内に被害が無かったので、他人ごとに思う人もいる。というか、それが大部分である。

 ヴァーチャルゲームはSAOが初の物であり、まだそれからさほど時は流れていないのだ。

 原作とは若干ズレはしたが、世界の種子(ザ・シード)もバラまかれた。ヴァーチャルゲームの評価は、これからであろう。

 

 ちなみに受け取ったのは我輩で、バラまいたのがキリトである。

 

 現実で決着をつけたので、ヒースクリフこと茅場の出番が消滅した結果、困った彼が我輩に押し付けたのだ。

 そして我輩は、さらにキリトに押し付けた。ゲームキャラである我輩に押し付けられても、なにもできぬのだ。こうするしかあるまいて。

 

 握りつぶして、このあとの展開全てを無かったことに。そんな衝動に反抗するのは、たいへんにしんどかった。

 

 さて。やることはやった。

 あとは、この世界が一度閉ざされるのを待つだけである。おそらくは、そこで我輩は消える。

 この世界は、一番最初に来た世界だ。ここが、一番ヒロアカ世界に近い。はずである。

 

 ならば、今度こそ帰れるやも知れぬ。

 

「待て、しかして希望せよ」

 

 ああ。希望するとも。我輩は、帰るのだ。

 あの牢獄には、なにも無くとも。あの世界には、いろいろとあったのである。

 そのために、待つこともしよう。

 そうとも。いくらだって、待ってやるとも。

 

 




●「待て、しかして希望せよ」
モンテ・クリスト伯より。全てを失い、そこから金と身分を手に入れ復讐を遂げ、最後の一人を残すのみ、となったところで復讐から自分を解き放つことに成功、新たな恋人と旅に出たリア充の物語。(偏見)
大きな不幸を知る者のみ、大きな幸福を感じることが出来る。ゆえに人の英知は全てこの言葉にある。と、そのリア充は語った。

なお和名のタイトル岩窟王は、編案小説としてのタイトルであったらしい。
明治から昭和初期あたりまで、海外の小説を元ネタに、翻訳ではなく、自分の小説として作者に無断で売ってしまう編案小説なるものがあったのだ。
お隣の国では、いまだに現役である。
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