ある日、ある時、突然に。日本に、核ミサイルを含む大陸間弾道弾が雨あられと降り注いできた。
ある者はパニックになり、ある者は全てをあきらめ、ある者は何か取れる手段は無いかとあがいた。
そして大多数の者は、未だに何が起きているのかすらわからず日常を過ごしていた。
そんな中に、降り注ごうとしたミサイルの雨は――――――光によって、迎撃された。
これが俗に言う、RDB事件である。
どこからともなく、迎撃映像は世界へと向けて配信されており、その映像はこの上ない衝撃を持って世界に受け止められた。
「ありえない」反射的に否定する者。
「なにこれ」ただ圧倒される者。
「スゴイ……スゴイぞ!」そして、感激する者。彼らは叫んだ――――――
「カメハメ波は、本当に撃てたんだ!!!!!!」
そう。その映像には、生身の女性。しかも学校指定と思しき、赤いジャージと体操服姿の若い女性が手からオレンジ色のビームを放ち、ミサイル群を次々と打ち落とす姿が映されていたのだ。
それだけならばカメハメ波という単語は出てこなかったかもしれない。しかし、途中でミサイルが過密になって処理が追いつかなくなりそうになった、その時だ。
彼女が両手を合わせて、あの動作をやってしまって。あのポーズで特大の光線を放ちながらゆっくりと回転して、周囲全てをなぎ払ってしまったシーンがあったのだ。
もう、なんというかモロにアレだった。言い訳など、とうてい出来ない状態であった。
ゆえに、この事件はこう呼ばれる。
「あれれー。おっかしいなあー。束さんのISの華々しいデビューになるはずだったんだけどなー? あっれー? ちーちゃんが話を聞かずに飛び出して行っちゃって、そのまま解決しちゃったよ? なんで? てゆうかナニさアレ!?」
どこかで、そんな具合に首をかしげるウサギさんも居れば。
「素質があると思った。ゆえに鍛えた。今はちょっぴり反省しているのである」
「人間って、スゴイね」
どこかには、周りの騒ぎも気にせずに祝勝会と称した酒盛りをする、一匹と一個のヤツらもいた。
どうやら一歩間違えれば地球が壊れてしまうという、とてつもない危機であったので、抑止力が働いてヤツらが呼ばれてしまったらしい。
直接働くのではなく現地の人を鍛えて仕事したので、この結果には抑止力も大満足である。
こんな事件があった後だ。どう考えても体を鍛える人間が続出すると思うのだが、それも問題は無いだろう。
サイヤ人めいたトレーニングに耐えられるような、そんなオカしな人間はほとんどいないのだ。
「ずーるーいー! ちーちゃんだけ生身で空を飛べるとか、ビームとかずーるーいー!」
ダダをこねだしたウサギさんとか、例外も居るが。
彼女がこの現象が、科学ではなく腕力の力技であると気付いて、なおかつそれを科学で再現するのでなく、腕力で実現しようと思わなければ良いことであるので大丈夫であろう。
「なあ、箒。俺も千冬姉みたいにカメハメ波撃てるかなあ」
「ああ、きっと撃てるさ。だが先に撃つのは私だ」
どこぞの小さな男女に先を越されない限りは、きっと大丈夫だ。
ともあれ、きっと世界は本来の流れよりも活性化するだろう。
鍛えた筋肉はムダにはならない。カメハメ波には届かなくとも、きっと何かの役には立ってくれる。
生命力が活発になれば、行動力が上がるし活発にもなる。きっと人生を豊かにしてくれるだろう。
たった一発のカメハメ波から全てが始まり、そして世を救った。
これはそんな物語である。