我輩はネコである。名前は無くなった。
そういえば、無くしたのは二度目だな。
まあ、あの時は代わりにオール・フォー・ワンという名が手に入ったし。結局は名前も身体も戻ってきてはいたのであるが。
今度は、戻って来そうにないな。
ふうむ。少し訂正しよう。
我輩はネコっぽい妖怪である。そうなった。
前回の最後に登場しておった、あの獣の槍のせいである。
白面の者と呼ばれる大妖怪に、国ごと家族を殺されて。最後に残った妹が、良い剣を造ってください、と自分から生贄として溶けた鉄の渦巻く中へと飛び込み。
その鉄を剣へと鍛えていたら、身体がその剣につながる柄になってしまい、一本の槍へと変化した男が居た。
その槍こそが、獣の槍である。
効果としては。使用者を一時的に妖怪へと変えて、妖怪退治に絶大な力を発揮させる。
ただし使いすぎると、字伏と呼ばれる妖怪になって、戻れなくなってしまう。
そういう、どう考えても呪いの武器であるな。
ただしこれ。人間を傷つける事はできない。
どういうわけか。するりと、すり抜けてしまうのだ。
なぜか我輩には刺さったけどな。
原作知識からの余裕で、避けようとすらしなかったから、スパッといかれて焦ったのだ。
あの一撃で、ちょうどアイツの寿命というか、槍を使う限界が来ておらなんだら。
うむ。結構な割合で、おっ死んでおったのではなかろうか。
しかもアイツが、すぐに獣になって。戦闘を続行しようとしおってなあ。
お互いに、うぐぐ…… などと、うなって、座り込んだというのに。
向こうは即座に、肌が黒く染まってゆき。体は大きく。伸びた毛は体を覆うほどで。みるみるうちに、元気になっていくのだ。
こちとら、普通に怪我人だというのにである。
呪文で治せるものなら、治したいのであるが。
残念ながら、ハリポタ世界の治癒は基本、お薬である。治癒呪文もあった気はするが。
なんだったっけ。
ヴァルネ… えーっと… なんだ。えーっと。
エスキモーじゃなくて。
エピゴーネン! ゑびす! エピスキー!
よし、これだ。発動した。
この最初は熱くなって、それから冷たくなってくるこの感じ。間違いない。
でも足りないから、もう一度かけておこう。増幅呪文込みでな。
若干心は痛むが、やむを得ぬ。必要な痛みである。
四海の闇を統べたる魔王 汝の欠片の縁に従い 汝ら全ての力持て 我に更なる力を与えよ
「ぐわぁぁぁぁああ」
久方ぶりに唱えたが。久方ぶりであるというのに、完全に覚えていた自分が痛い。
久方ぶりということで、慣れというものが消えていて、新鮮な痛みが我輩を襲う。
やめろ。やめるのだ。今、それどころではないから。だから自分を責めるな我輩。落ち着け。落ち着くのだ。静まれ、我輩の心臓。
なんと言おうか。こう。
ある意味、斬られた傷よりも重症であるな。これ。
そんな代償を払って唱えた、二度目の治癒呪文は、確かに効いたのであるが。
それでもまだ、くらくらとするのは。
血を流したせいか。それとも精神的な傷を負ったせいなのか。
まあいい。
さいわい、八つ当たりする先は目の前にいる。
実際、コヤツのせいではあるので。八つ当たりだが八つ当たりではないし。
だが、まずは洗脳してからであるな。
下手に戦って、逃げられたり。負けたり。うっかり人質を取られて困ったり。
そういう隙を見せるのは、我輩、嫌いである。
インペリオ! 服従しろ。
そういうわけで。いまだ変身中で避けられない、黒くなった彼に打ち込んだ呪文は。普通にそのまま命中した。
で。気付いたのであるが。
紅蓮だ、これ。
ラスボス、白面の者が部下に引き込んだ、字伏の中の変り種。
他の字伏が黄色い中で、黒く染まった色違い。
他の槍の使い手が、守るためや倒すために最後まで槍を手放さずに使っていたのに。
力を振るうのが気持ち良く、妖怪退治が金になるからと。欲で槍を最後まで振るった、愚か者。
レアモノかつ、どうとでも転ぶ奴であるな。
そりゃあ、白面も勧誘に行くというものである。
今、我輩の手持ちポケ… もとい。手駒のひとつになったがな。
ううむ。こいつ、どうしよう。
原作補正さんの為を考えるのならば。好きにしろ。とでも言って解き放てばよいのであるが。
ただなあ。コイツなあ。
アレなんだよなあ。
「ハイフォン… レイシャ… 帰ったよ…… 開けとくれ」
ヒョウさんがなあ……
他にもいっぱい殺っちゃってるだろうしなあ。
解き放つのは、ないな。うん。
なら、どう生かすかだな。
どう利用したもんか。というか、何に使えるんだ、こいつ。
戦い以外に使い道は――――
ふむ。
ふうむ。
そういえば。今はまだ、唐の始まったばかり。七世紀の初頭あたりであったな。
白面は、いずれやって来る遣唐使に取り入って、日本へと行くのだよな。
そして。それで。そこで正体を見破られて、戦いになり……
一度、追い込まれる。
「最高のタイミングで 横合いから思いきり殴りつける」
――できるか?
槍は、ある。
インドへの旅で、気付けば出来上がっていた百鬼夜行も、ある。
そして紅蓮は、こちら側だ。
原作と違い、死者たちの協力は無いが。白面も敗北を経験していないので、搦め手はあまり使わぬはず。
「行け! 人間の限界を知る 世界一悲しい男よ 待っているのは 新世界だ!!」
いや。そんなものは知らないのであるが。
何で今出てきた、その言葉。
いや。やるけどもね。面白そうであるし。
ラスボスに挑むとか、久々であるし。いや、いつぶりであろうな。ヘルシングの世界で、アーカードに挑んで以来であるかな?
では久々ついでだ。ちと気取ってみようか。
運命は
どのような結末に至るかは、神すら知りえぬ事だろう。
故に我輩はこう口にするのだ。
「
……うむ。少しばかり汚染力が高すぎるであるな。厨二詠唱は。
紅蓮くん。聞かなかった事にしとくように。いいね?
○四海の闇を~
スレイヤーズ!より
なんか最近再開したらしいですね。賢者の石こと、魔王の血を触媒に魔力増幅する呪文。なおここのハリポタ式だと、なぜか魔王の血がなくても発動する。
さあ、みんなも唱えようドラグスレイブ!
黄昏よりも暗きもの~
ってあんまり暗くないよね。
○最高のタイミングで 横合いから思いきり殴りつける
ヘルシングより
作中で人間では最強だったアンデルセン神父のセリフ。ナチス残党と、英国国教騎士団がバチカン無視して戦おうとしてるけど、どうするよという問いに対する答え。
○行け! 人間の限界を知る 世界一悲しい男よ 待っているのは 新世界だ!!
かわぐちかいじ先生の、沈黙の艦隊より。
核兵器をどうするのか?という問題に、ひとりの原子力潜水艦の艦長が世界をブン回して道を示したお話。
その作中で、世界的ピアニストが、主人公カイエダより作曲のインスピレーションを得ながら贈ったエール。
核兵器をどうやっても手放せないという人間の限界と、その問題への新たなる解答と、対応するため変わる世界を示す言葉。
○運命は~
Fate/Parallel Linesシリーズより。
ヘルシングの少佐が聖杯戦争イイネ!ぼくもやる!と聖櫃入手して始まる聖杯戦争やる夫スレ。
登場人物固定で、複数の作者が同一のオープニングから、別々の道を最期まで書ききっている企画。読み比べると楽しい(ダイマ)
まとめスレもアルヨ!