それでも我輩はネコである。   作:far

69 / 76
細かい事ぁいいんだよ!
と描写を削りまくっておりますが。やりすぎるとあらすじになる危険。




ザ・ラスト・オブ・オマケ の休章

 我輩はヒマである。

 インドへの旅の途中。服従呪文で従えておいた妖怪たちは、すでに連絡網を作るなど、組織化が済んだ。

 

 牛魔王社長を筆頭に、特別顧問の紅蓮に、専務の紅孩児と、常務の獨角凹(どっかくじ)大王。

 社長の弟で執行役員の如意真仙、部長の金角銀角兄弟。秘書課の羅刹女と玉面公主。

 なぜかたくさんいた大王とか、大仙らはひとまとめにヒラ社員である。課長や係長にすらしてやらぬ。

 出世したければ、手柄を立てるが良い。

 

 ただ牛魔王社長の嫁の羅刹女と、妾の玉面公主を同じ職場にしたのは間違いであった。すまぬな社長。

 だが我輩は会長であるので、謝るけれども、撤回はせぬ。家庭問題は、自分で何とかしておくれ。

 

 なお。会社形式にしたのは、何となくである。

 べつだん、商売もしておらぬ。

 

 

 うっかり、唐に喧嘩は売りかけてしまったがな。

 

 

 いやあ。

 一度くらいは。そう思い、全員集合しようとしたのであるが。

 妖怪があちらこちらから、一箇所にわらわらと。それも見るからに強そうなのが、続々と集まってくるというのは。

 民衆を通り越して、国家に危機感を覚えさせてしまうものであったらしい。

 

 経典を渡した我輩と、護衛をしておった牛魔王社長らが、玄奘三蔵へのコネと恩を使い倒して何とかしたが。

 玄奘三蔵が、皇帝の義兄弟になっておらなんだら。はたしてどうなったであろうか。

 中華の歴史に、妖怪の軍団との大戦があった。などと記されてしまっては、人理崩壊案件の恐れが出てくるのであるが。

 

 その場合。我輩は、強制撤収であるのかなあ。

 それとも、追加で処刑人が誰か召喚されてくるのであろうかなあ。

 

 まあ。大戦になった裏で、我輩か紅蓮が皇帝とその周囲を『なんとか』して、無かった事にするので。

 まあ。そうなっても大丈夫であろうさ。きっと。

 

 

 

 それはそれとして。我輩自身も、妖怪になった。

 前からだった気もするが。そこは自分でもよくわからぬ。見当が付かぬ。

 で、あるが。此度は人間として生まれた、はずであるので。白面が日本へ行くまで、寿命が持たぬのは明白。

 そういうわけで。獣の槍を使って、妖怪化する事としたのだ。

 

 親には泣いて止められたがな。

 

 うむ。親である。

 繰り返すが。此度、我輩は人として生まれたのであって。したがって、普通におるのだよなあ。

 すごいぞ。我輩の親だというのに、普通なのだ。

 

 我輩のしでかす事全てに。普通に驚き、普通に引いて。そして普通に叱ってくれた。

 

 そりゃあ、そんな親がだ。息子が

 

 

「俺は人間をやめるぞJoJoー!」

 

 

 などと言い出せば。止めるというものであろう。うん。

 でも止めてもらっても、困るのであるよなあ。

 せめて結婚して子供を作って、育ててから。そう言われても、すっげー困るのであるよなあ。

 

 正直な話。自分の子供とか、どう接していいのかわからない。

 どんな子が生まれてくるのかも。少し、自信が無い。

 それが普通の子であったとして。我輩は、はたして普通の親が出来るであろうか?

 また普通でない子だったとして。それは、もしや聖杯くんとか我輩オルタとかだったりせぬであろうか。

 

 よし。やめておこう!

 覚悟もなく、子供を作ってはいかんよな!

 

 そんなわけで。

 欲を捨てねば、仙人は先へと修行を進められないから。

 我輩は、両親にそんな優しい嘘をついた。

 

 人の身を捨てて。この地の守護神となる。

 そんなテキトーな嘘もついた。

 

 そして槍に付いた赤い封印の布を、少しだけ残してぺりっと取って。

 寿命の削れる勢いを増してみた。はずなのであるが。

 

 これがなかなか、字伏になる気配が来ない。

 

 毛は腰を通り越すほどに、長く伸びて。力も増しているので、発動していないわけではない。

 おかげで畑仕事がはかどるのである。

 

 あまりにも負担が無いので、一日中、寝る時でさえも発動しっぱなしなのであるが。

 やはり変化する気配もなく。

 

 配下の妖怪たちの組織化を進めながら、どうしたものかと日々を過ごすうちに、一年がたち。二年がたち。

 そこでようやっと、我輩は字伏になる事ができた。

 

 黒かったけどな。

 

 

 Why Japanese people!

 

 

 紅蓮だけが唯一じゃなかったのか。

 というか。我輩、べつだん虐殺やら略奪やら、暴力沙汰とかはしておらぬのだが。

 確かに、ヴィランという自覚はあるけれども。

 それでも、こう、なんだ。我輩、そんなに悪いヴィランじゃないよね…?

 

 ああん? なんだ紅蓮。やっぱりそうなったな、とはなんだ。

 俺を従える大悪党が、普通なわけがない?

 

 えっ。じゃあ、黒くなったのって、お前のせい? お前のせいでいいの?

 そう思いたいなら、それでいいだろって、お前、軽いな。

 だが、まあ、よしとするのである。特に影響はなさそうだし。だから、今は気にしないでおく。

 

 将来、白面の者の引き抜きが来そうで怖いけれどもな。

 

 さて。気を取り直して、さっそく性能試験といこうか。

 雷と炎と、毛が刃になるのと、首が伸びるのと。あとは何であったか。

 空を飛んで、テキトーに海の上にでも行って、試してみるのである。

 

 

 

 そうして変化も済み。組織化も終わって。

 ヒマになったので、日本へ下見と、準備が出来たら良いなと出かけることにして。

 唐に話を通して、妖怪たちで大きな船を仕立てて。長江を下って、日本は九州へと上陸。

 

 しようとしたところで。なんかすごい攻撃された。

 

 矢が雨のように、凄い数で降ってきて。

 それとは別に。衝撃で空気と波を掻き分けて。まるで破壊光線かなにかのような、矢ではあると思うが、今でもなお自信が持てぬナニカが飛んできた。

 あれはなんであったのだろうなあ。

 よもやあれが伝説に残る、一本の矢で船を数隻沈めたという、為朝の弓。いや、時代が合わぬはずなので、その同類かご先祖か。

 

 おのれ、さすがは大宰府の兵。武士の原型だけはある。思考と行動が蛮族だ。

 怪しい奴は、とりあえずぶっ殺してから調べればいい、とか思っておるな。

 

 時代が少し下って、鎌倉時代になってやや文化的になった時代の武士でさえ。通りすがりの坊主や商人の首をはねて、庭に飾っておくのがたしなみだったらしいからなあ。

 うむ。文化的になって、それである。なお、腐ってしまわぬうちに、新しいのと取り替えるのがマナーであったらしいぞ。

 江戸時代になっても、薩摩あたりでは弓の訓練で通りすがりの坊主を撃つ、という形で受け継がれていたそうな。

 

 元寇の時でもな。神風のおかげとか、あれある意味、嘘であるからね。

 これだけ苦戦したので、ご褒美をはずんでくださいという、そういう主張。盛った話であるからね。

 やーやー我こそはーって、一騎打ちや名乗りのシキタリを無視されて。よーし禁じ手無しのガチだなってなって。

 当時最強のモンゴル騎馬民族が、ドン引きするくらいの戦いを展開してたらしいからね?

 研究が進めば進むほど、出てくる感想が「これはひどい」だという。

 

 で、当然のことながら。

 そんな奴らの相手をするのは、ごめんである。将来、対白面の者で共闘するべき、日本の勢力と敵対したくもない。

 そういうわけで。我輩たちは、これ以上破壊光線を打ち込まれる前に。芭蕉扇や術を使ってまで、一目散に逃げ出した。

 大陸まで止まらずに逃げるほどの勢いで、逃げ出した。それでも数発は、打ち込まれたのであるが。

 

 そして一時解散。帰宅。

 もう当分は、日本へなど近付きもしたくないのである。

 

 と、なるとだ。

 

 あとはもう。白面の者の日本行きを待っての行動となるわけで。

 つまりは。ひたすらに待ち。という事になるのであるな。

 

 そういうわけで、我輩はヒマである。

 

 そうして、そのヒマをもてあまして。こう、つらつらと思い返してみるとだ。

 

 

 小人 閑居して 不善を成す

 

 

 この言葉を、久々に思い出した。

 自重って大事なのかも知れぬなあ。しかし、動かぬと死ぬのであるよなあ。

 

 

「今更考えても仕方ありません。我々は己が正しいと思ったことを全うするしかないのです」

 

 

 その通りではあるが。

 その結果、良かれと思ってぇ! という事態になってしまう場合が多々あるのだよなあ。

 そうでない場合? そうでない場合は、どうしてこうなった…… という結果であるな。

 しかしながら。我輩が何もしなかった時よりは、ずっとマシな結末を迎えられてきたと、そう思うのだ。

 

 だから、まあ。

 今度もきっと、何とかなるのである。

 

 




○「俺は人間をやめるぞJoJoー!」
ジョジョの奇妙な冒険第一部より。
石仮面をカブり、吸血鬼になろうとするDIOの調子に乗っているのがよくわかる台詞。
人間でなくなってしまうのを恐れる主人公やオリ主に見習って欲しいスタイルである。

○Why Japanese people!
一時プチブレイクした、厚切りジェイソンという外人お笑いタレントの持ちネタ。
腐っても鯛!? 食中毒オコスヨ! Why Japanese people!

なお本人超エリート。中学スキップして高校からのミシガン州立大学、イリノイ大学院卒。
日本で仕事した時にお笑いにハマるが、お笑いやるって理由だとビザが下りず、困っていたらITベンチャーが日本進出するというので、就職して来日。
ザブングルの加藤に会社辞めないでも、土日コースでお笑いに行けると教えてもらい、ワタナベコメディスクールへ入学、卒業。もしかしてこれが最終学歴になるのかw
他のITベンチャーの大株主にして部長という地位も手に入れ、アメリカでマンション経営もしているらしい。既婚で子供も居る。オノレカチグミ。

○「今更考えても仕方ありません。我々は己が正しいと思ったことを全うするしかないのです」
スプリガンより。
事件の結末に、これで良かったのかと悩む主人公御神苗優に、師匠の朧が答えたセリフ。
得になる方や、楽な方ではなく、せめて正しいと思える方へ。
それぞれ何を正しいとするかは異なって、だから人はぶつかり合うのだけれども、仕方が無いのだ。

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。