我輩は危機に陥っているのである。
うむ。間違いなく、今までの様々な、やたらめったらと種類が多く。まこと、変化に富んだ我が人生で、最大のものである。
少なくとも。今、経験したことがあまりない程には、苦しんでおる。
仏蘭西百年戦争に、サーヴァントとして呼び出された、あの時の。
知識を一方的に、ひと息に、配慮や加減というものなど無しに流し込まれた、あの時のような。
絶え間なく、いついつまでも痛みが続き、終わりが見えぬ。そんな苦しみだ。
だが、しかし。
あの時は、瞑想の個性が使えた。
痛みから逃げては捕まり、逃げては捕まり。そうやって終わりまでを、なんとかかんとかやりすごせておった。
今は、使えぬ。使っては、まずい。はなはだまずい。
目の前に、こちらを虫ケラほどにも思っておらなそうな、無惨さまがおるじゃろ?
この人の前で、何か想定外の事をやってしまった場合。
「のび太のくせに生意気だ」
こうなってしまう可能性がある。わりと高い可能性であると思う。
それが良い事であるのか、悪い事であるのかは。まあ、関係なかろう。彼の気分の問題だからだ。
彼の、数少ないお気に入りがやった事であるならば。まあ、機嫌が良くなる可能性が出てくるのであるが。
それも、可能性が出るというだけであり。その場の気分とノリと勢いで、反応と処置が変わるのであろう。
というわけで。
この世界にやって来て早々に、無惨さまに見つかり。
「ふむ。変わった猫… 猫? だな。よもや妖怪……か? 初めて見たな」
そんな具合に、興味を持たれてしまって。
物は試し、とばかりに血を注がれて。
なぜだか、ものすさまじい拒絶反応を示しておるのが、今である。
ところで。
なんか、視界の端っこにちっちゃい娘さんが見えるのであるが。
二頭身半くらいの。水兵帽にセーラー服の娘さんなのであるが。
軍艦な娘さんらを収集するアレで、見かけたっぽいのであるが。
うむ。だいたいはわかっておったが。
どうやら今回の我輩は、エラー猫であるらしい。
ところで。
アレは我輩の本体なのであろうか。それとも、単に痛みから見える幻覚か。
どちらにせよ、助けて欲しいのであるが。
あっ。逃げた。
逃げる前に、すまんなと動作で示していたが。
すまんと思うなら、逃げるなと思う。せめて助けを呼んでくれれば良いなあ、とは思うが。
思うのだが。
あんな生き物に、助けを求められて。よし、わかったと駆けつけてくれる人など、おらんだろう。
そうも、思うのだ。
そもそも、常人に見えるのか怪しいものであるし。
というか、無惨さまにも見えていなかった気配もあるし。
まあ。望みは薄いな。
さて。
いよいよもって、危うくなってきた。
体が、意思によらずして、ぴくりぴくりとけいれんする。
呼吸がうまくいかぬ。息を吸うのも、吐くのも、思うようにいかぬ。
目の前がちかちかとする。白い光りが邪魔で、ものが良く見えぬ。
今までの経験から、理性だけを切り離し。痛みやら何やらから、叶う限りは目をそらしてきたのであるが。
その理性も、もはや霞がかかってきておる。
無惨さまも、これはダメかと見切りをつけて、トドメを刺しに来そうであるし。
どうすればいいのであるかなあ、これ。
というか。何ができるというのであろうか。
だって、エラー猫であるぞ。我輩、エラー猫であるぞ?
単に。ゲームの進行中に、エラーが出た時に表示される。ただそれだけのものであるぞ?
いったいぜんたい。そんなキャラクターで何をしろと……
…………
エラー猫。
つまり。
エラーが起こせる?
「いや、今のその拒絶反応がエラーじゃないの」
こっちへは来ていないはずの、聖杯くんの声が聞こえた気がした。
そして確かに、我輩もそんな気もしたが。
今は、そっちへとかまけておる余裕などはない。
全力で、祈り、願い、念じる。
エラーを起こせ、無惨さまの血よー!!
……あっ。少し楽になった。
よし、もっとだ。もっとエラーを起こすのだ。
ふむ。そういえば。
無惨さまの血は、相手を鬼に変えるが。鬼には血鬼術という特殊能力が生えてくるのであったな。
それも念能力のように、個々に異なったやつが。
「そうか。そういう能力にすればいいんだ」
未だなった事はない、もしかすれば、この先なるやもしれぬ。
とある世界にいた、アリなのに猫という謎生物。彼だか彼女は、そう言った。
ならば我輩も、そうしよう。
日光浴可能で、無惨さまの呪いとかも無効になーれ。
そして。この願いは、叶った。
のであるが。
その、なんだ。
それを察した、無惨さまに。即座に取り込まれてしまってね…?
うむ。無事、死亡。というやつであるな。
ただ、無惨さまもその後、無事死亡したらしいがな。
日光を克服して、人間に戻ったぞ! と喜んでおったら、うっかり寿命も人間並みになっていったそうで。
それに気付いて。もう一度鬼になるのだ! と研究はしたらしいのであるが。
青い彼岸花ひとつ、千年かけて品種改良する事も、栽培条件を探る事も、出来なかったあの人が出来るかというと、ね?
むしろ、それらを思いつきすらしなかった可能性すらあるのだぞ。
しかしさすがは無惨さま。毎度毎度思い付きで行動して、痛い目に遭って、まったく反省も成長もしていない。本当にさすがである。
さて。
座に帰って来て、死後の顛末も確認した事であるし。
鉄砲玉どころか、相手に食わせる毒として放り込んでくれた
やり方がわからぬので、退職は出来ぬが。
労働条件や、労働環境の改善くらいは求めても良いと思うのだ。
そうだ。
いや、他にもあのクソ上司に文句がある英霊は、たんとおるはずだ。
いっそ組合でも作ってやるのである。団結権の行使である。
あとは団体交渉権を行使するのだ。場合によっては、団体行動権も行使するぞ。
よーし。これは、面白… もとい、忙しくなるぞ。
ゆくぞ聖杯くん。革命である。
●「のび太のくせに生意気だ」
ドラえもんより。ジャイアンの代表的な台詞のひとつだが、こういうの良くないよな、と子供心に思いつつも、口にしたり思ってしまったりする自分がいるよね。反省。
●アリなのに猫という謎生物
ハンターハンター、キメラアント編より、ネフェルピトー。女っぽいけど性別不肖。
シュレディンガープレイ、と言ってネタが通じる人はいるんだろうか。どっちでもいい。
●エラー猫
艦コレより。通信エラーの時に、君は彼女らと出会う。
鯖=サーバを食い荒らすネコを捕まえて、ドヤったり恥ずかしがる娘さんと、捕まえられたネコのセット。