推すまでもなく人気作。IS二次でオリ主ものだけど、作者さんがオリ主に「ここでボケて!」と無茶振りなカンペを出すADの如く、ヤバめな選択肢を選ばせ、実行させ続けているのが見ていて本当に楽しい。
我輩は北海の海の幸を、満喫しているのである。
実は生前は、イクラが大の好物であったのだ。
それが、我が身が猫となってしまっておったので。
こういう、塩気の強いものや味の濃いもの。そういったものはなかなか、思うように食べられなかったのだ。
それが今は妖怪であるから、食べ放題である。
しかも大妖怪の一部であるので、量だってたくさん、たくさん、食べられるのだ。
鮭の骨であっても、せんべいの如くばりばりと食べてしまえる。
これが本当の、骨せんべいであるな。
丸ごと焼いた一本の鮭に。イクラをまぶして、豪快にかぶりつく。
そこに大陸から持ち込んだ米で作った、焼きおにぎりを追加で口に放り込み。
同じく、大陸から持ち込んだ茶で、胃へと流し込む。
この世界では、我輩は猫ではない。ゆえに猫舌ではないからこそできる、熱々の食べ方であるな。
うむ。この際である。心行くまで、楽しもう。そうしよう。それが良い。
白面さんも、ここでは神様扱いされておって、満更でもない様子であるしな。
なお、我輩もその眷属として、神様の仲間扱いである。
不動明王の
チャペカムイ、だの。メコカムイ*1、だのと呼ばれておる。
うむ。カムイである。
つまりは。我輩らをそう呼んでおるのは、アイヌ民族である。
したがって。ここは北海道なのである。
ああ、ウニとホタテとホッキ貝とホッケとソイもおいしい。
もうこれは、ウニだけでご飯が見えなくなったウニ丼を作って、他のものをおかずにやっつけるしかあるまい。
なにガニであるかはわからぬが、カニの味噌汁もある事であるし。
もう、後の歴史の事などは。すっぱりと忘れてしまって、良いのではなかろうか。
「お主がそれで良いのならば、我はかまわぬがな。まあ、好きにせよ」
ポロレタスマリカムイ*2。そう呼ばれておる、現在アイヌらの守護神として崇められておる白面さんは、そう言って笑った。
下から心の中までを覗き込むように、いやらしく睨みつけるようにして嗤うのではなく。
あまり興味が無い様子ではあったが、陰の無い表情で、ほんの少しだけだが笑っていた。
うむ。これは死んだな。原作補正さん、死亡確認である。
うしおととらの、あのまま。邪悪で狡猾で残忍であっても、まあ、困ったであろうが。
今のこの状態もまた、始末に困る。
奇妙な同居人として、何とかかんとかやっていけておるので。
何をもってしても、葬ってやる。とか。絶対に滅ぼさねば、とか。
そういう、敵として扱うのが、どうにも難しいのだよな。
我輩の知らぬところで、ぽっくりと亡くなってくれたなら、それが一番良いのであるが。
ほら。我輩、今はこの白面さんの尾の一つであるからして。離れることができないのである。
うむ。分離不能である。
原作では、黒いとら、紅蓮の複製らしき分身がわらわらと出てきた、あの尾。
あの場所に、おそらく我輩は入ってしまっている。
そこから出てゆけぬのは。魂的なところで融合しておるせいなのか。それとも、白面さんを変えてしまいたかったと思しき上司の仕業か。
こうなってしまって。白面さんが変わってしまって。
それで我輩の仕事は終わったはずであるが、まだ帰れぬ。
と、いうことは。この変わってしまった白面さんと、我輩に。あの上司はまだ何か、やらせたい事があるという事だ。
むしろそのために、白面さんを変えたのではなかろうか。
白面さんの力が無くては出来ず。
されど、元のままの白面さんでは、絶対にやらなかったであろう事。
ついでに言えば。我輩が憑いていたならば、やりそうである事。
ふうむ。
なんであろうかなあ。
我が事ながら。主に、その場のノリと勢いで生きておるので。
何をするのかとか、何を考えておるのかとか。そこらあたりは、自分でもわからないのだよなあ。
今もこうして、北海道までやって来ておるし。
しかも特に深い考えとか理由なぞ、無かったのである。
ただ単に。以前、九州から上陸しようとしたら、迎撃されてひどい目に遭ったので。逆に北から日本へ上陸しようと思っただけなのだ。
そうしたら、なにやら地元住人らにやたらと歓迎されて。
白面さんが、なんかその気になって。
祭り上げられてしまって、貢ぎ物とかささげられてしまって。
その代わりにと、そこらのヒグマとか狼とかから、民を守ったりしてて。
我輩も、つい文明育成のノリで、網などの漁具やら造船やら、粟の農耕やらを教えてしまって。
しまいには。我輩と白面さんとで、東北へと攻めてきた大和朝廷の軍を、叩き返したりしておった。
何をしておるんだ、我輩たちは。
そりゃあ、守護神扱いもされるというものである。
いや。確かに征夷大将軍坂上田村麻呂が生まれるまで、あと百年程あることであるし。
今、アイヌが征服されぬように動いても、問題は無いと言えば無いし。
そもそも、日本へとやって来たのは、上司への嫌がらせであるので。問題が起きても良いと言えば良いのだが。
こう。意図せずに、流れのままに。なんやかんやで出来てしまうのは。
なにやらこう、違う気がするのだ。
引き連れてきた大陸の妖怪らも、いつの間にやら土着しておるし。
おのおの、気に入った場所を縄張りとして、根付いてしまっておる。
その場所にちなんだり、アイヌの言葉であったり。名前まで変えておる。
者によっては、姿かたちまで変わって。何と我輩の魔法が解けて、洗脳から目覚めてしまった。
我輩もこれには慌てふためき。再び洗脳を、杖はどこにしまったか、と。急ぎ、
白面さんが無言で、ギラリ… と、ひと睨み。
そうするだけで、彼はただちに降伏した。さすがである。
一件落着。それは良いのだが。
彼の新しい名前が、サンピタラカムイというのだ。
原作で、うしおととらの側に付いて、白面さんと戦った一柱で。土地神らのまとめ役をやっておった気がするのだが。
はたして彼は、原作の時期が来たとして。白面さんに立ち向かってくれるのだろうか。
……まあ、いいか。
後の事は、後で考えよう。
ずっと後の事ならば、ずっと後までに考えておけば良いのだ。
東北から北海道、一部大陸にまでつながってしまった、アイヌ民族らのゆるい連帯意識とか。
それが国へとなりかかっておる事とか。
そういう事も、後で考えよう。
今はただ、目の前のサンマにかける醤油がまだ世に無いけれども、どうしようか。
それだけを、考えていようと思う。
きっと、たぶん。人生は、そんなもので良いのだ。
人生、色々な場所で、色々な事があるけれども。
きっと、何とかなるのである。