Re:ゼロから帰ってきた異世界人〜Parallel・The・Walking・Dead~   作:伊吹恋

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今回はあまり書く時間もなく、やっと書き終わりました。

それでは本編をお楽しみください。


6話「憎悪」

死ぬこと自体が怖いと思わなくなったのはいつからか?

奴らに恐れなくなったのはいつかからか?

殺すことに抵抗が無くなったのはいつからか?

 

人を殺すことに抵抗が無くなったのはいつからか?

 

 

 

 

「そうか…情報はこれで全部か…」

 

「ぁ…あ゙ぁ…」

 

煙草をふかしながらミツルは椅子に縛り上げた男に問いかける。見ると男の両手首は無くなっており、足の指は全部引きちぎられている。

足と手からドバドバと血を流した事により、男の精神は痛みと共に崩壊した。

足元には尿水と血が混じり合い、異臭が鼻をさす。

 

「望みは?」

 

ミツルはホルスターに入れている銃を引き出し、弾がある事を確認する。

 

「こ…ろし…てぇ…」

 

それは必死に絞り出した一言だった。痛みは時に人を絶望のどん底に落とす。絶望はやがて救済を求め、望みに変わる。

 

「そうか…ここまで話してくれたんだ。礼儀を果たそう」

 

銃を男の額に当て、引き金が引かれた。

 

 

 

 

「…終わったみたいだ…」

 

外で待つように言われたスバルとレム。二人は蝋燭の火を頼りにしミツルの帰ってくる方向を見続ける。

レムがスバルを見ると、スバルの手は小刻みに震えていた。

 

「スバル君?」

 

ハッと我に帰ったかの様にスバルはレムを見る。レムもスバルを見つめて心配そうにしている。

 

「あ、ああ…悪い…」

 

スバルは視線を蝋燭に向けて灯火を見つめる。その表情は不安や寂しさを兼ね備えた悲しい表情だった。

 

「スバル君、何か怖いことでも?」

 

「…」

 

無言のままスバルは再びレムに視線を向ける。

 

「兄貴が…怖いんだ」

 

「えっ?」

 

「昔の兄貴は凄く優しかった。頼んでもないのに買い物に行くと決まって俺の分を買ってきてくれたり、困った事があれば教えてくれたり助けてくれたり…でも今の兄貴は、平気で人を拷問して、殺してる」

 

「スバル君…」

 

「兄貴は凄く強い。こんな世界で兄貴は一人で戦ってきた。母さんや父さんの死を乗り越えて必死に生にしがみついた。あの時の優しい兄貴は、この世界と同時に死んだんだって、そう思えると悲しくなってきて…」

 

「悲しいですか…」

 

「…こんな世の中だから仕方ないのか…」

 

「そんなことないと思います」

 

レムは不安に震えているスバルの手を重ねる。

 

「もしミツルさんがスバル君の知っているミツルさんじゃなければ、スバル君の前で笑ったり、陽気に話しかけたりしないハズです。お父様とお母様の死を乗り越えて、ミツルさんは強くなり、そしてスバル君に再び会えた事により、ミツルさんは希望を得ることが出来た…ミツルさんにとってスバル君は希望なのです」

 

「レム…」

 

手を取り合い、スバルは涙を溜め、小粒の涙は頬を伝い落ちる。

その日の夜、ミツルは戻って来なかった。

 

 

 

 

 

 

 

-----ゲートが破られたぞ!みんな避難しろ!

-----なんで今になって!罠はどうしたんだよ!!

 

あの時、俺達は感染者の群れに襲われた。仕掛けていたはずの罠は何故か解除されていて、最短で俺達の村まで来ていた。戦力は少なく、とても感染者の群れに対処出来る状態じゃなかった。

 

ゲートは呆気なく突破され俺達は孤立状態に陥った。俺はその時見た。

フードを被った男を…そいつの腕には、毛が逆立ったオオカミの刺青があった。

 

-----あいつが…俺達の居場所を…!殺してやる…必ず殺してやる!

 

 

 

 

 

「ぬあああああ!!!」

 

眠っていてもナイフを手に取ったのは日頃の危険な生活のおかげなのか。危機察知能力によるものなのか、とにかくミツルは朝日を浴び、手にはナイフを取り、誰もいない小さな部屋の中で目を覚ます。

部屋には異臭が漂い、隅っこには椅子に座らせロープで縛り上げた男の遺体があった。

 

「ふぅ…」

 

頭を抱えミツルは汗を裾で拭う。

 

「朝か…」

 

手についている血は乾き切り手から鉄のような匂いがする…。

 

「水浴びてえな」

 

 

 

 

 

 

ミツルは2人の元に戻り何も言わずに朝食を用意していた。スバルやレムは何も答えず黙って食事を取り、そしてミツルは情報交換と作戦会議が始まる。

 

「まずはラムちゃんの居場所を言おう。ここから西に2キロ程。奴らはある建物に閉じこもっている。トワイライトビル。以前は悪徳の金融会社だったが潰れて廃ビルになってる。しかも建物は7階建ての大型ビル、地図を見る限り、中の防備は厳重だ」

 

「どうやって姉様を救出しますか?」

 

ミツルはナイフを逆手で持ち替え、ナイフを地図に突き刺す。

 

「レムちゃん。戦争に必要な物は何か知ってるか?」

 

その言葉を聞き、レムとスバルは顔を見合い、顔を顰める。

 

「わかりません」

 

「右に同じく」

 

2人の言葉が終わるとミツルはタバコを咥えて火をつける。

 

「戦力、物資、情報、そしてどんな戦況でも立ち回れる頭だ」

 

「…どれも俺達に足りない要素ばっかだな…戦力?いや…まてよ…」

 

スバルは4つのワードから一つのワードに引っかかり顎に手を置き、考え込む。

 

「…別に俺達が真正面で戦う必要は無い…」

 

パン!

 

両手を合わせ小気味良い音が鳴り響く。

 

「その通りだ。戦力としては状況最悪敵の数は圧倒的に此方が不利なのは変わりない。だがアイツらの敵は俺たちだけじゃないんだ。なら呼ぼうじゃねえか。敵の敵を」

 

スバルは意を決した表情を見せると窓から外を見る。

 

「ん?」

 

草むらから何かがガサガサと何かが動く。動物だろうと誰もが思うだろう。だが違った。

 

「ッ!」

 

スバルの目に移るもの、草むらから出てきたのは黒く光る銃身。しかもスコープが太陽の光を反射して動かない。それは狙いを定めているという合図。

 

「レムに兄貴、伏せろ!」

 

スバルは咄嗟に2人に飛びつき伏せる。

 

パァァン!!!

 

銃弾が窓のガラスを貫通し、壁に弾丸が当たり穴を開ける。

 

「敵襲だ!」

 

スバルの声により戦闘意識を覚醒させ、銃に手を伸ばし、弾の状態を確認する。

 

「何人だ!?」

 

「わからない!でも2人以上だ!」

 

マガジンの弾を確認し、埃がついていたのかフッと一息マガジンに息をかけ銃に弾を装填させた。

 

「ちくしょう!どうやって位置を特定した…付けられたような気配は無かったし、車は隠したんだぞ!?‪……隠した?」

 

ミツルは直ぐに部屋から出ていき3つほど並んでいる扉の中で一番奥の部屋にいる死体の身体を見る。上着を剥ぎ取り、手をポケットの中に入れてまさぐる。

 

「こういうことか…!」

 

ミツルの手に握られてたのは小さな機械。

 

「GPS…!」

 

即席で作ったであろうその機械をミツルは握りつぶすと、あるものに気がついた。

それは、ミツルが始末した男の腕にある刺青だった。何の取り柄もない毛が逆だったオオカミの刺青。それを見た瞬間ミツルの目付きが変わった。

 

「どいつもこいつも…俺の居場所を奪いその上家族をさらって更には仲間を救助せず俺の弟達を殺そうってか……ふざけんじゃねえぞ!!!!」

 

ミツルの大声と共に、遺体の座っていた椅子に向かって蹴りを放つ。遺体は椅子から転がり落ちていった。

 

「兄貴…!」

 

「スバル…今俺達には死の危機が訪れてる。このまま黙ったまま待てば殺される事は間違いなしだ。だからこそ、俺は奴らを殺す!」

 

怒り狂ったようなその憎悪を孕んだ眼は、既にスバルの知ってる兄ではなくなっていた。

殺す事に満ちた殺意。銃を手に取り、コッキングレバーを引っ張った。

 

「スバル…レム…離れてろ…」

 

「「ッ!!」」

 

感情は心を移し出す。感情は身体を動かす。行動は時に非常識を起こし、以前とは別人のようになる。

 

「身に掛かる火の粉は振り払わなければならん…アイツらを皆殺しにしてやる…!」

 

その表情は、スバルが今まで見た事無い兄の顔だった。いや、その顔は兄の顔では無かった。

 

「(誰だ…コイツは、なにを考えてんだ俺は!)あに…き…」

 

必死に言葉を振り絞りスバルは震える手を兄に伸ばすが、恐怖によりスバルは手を引っ込めてしまう。腰に付けているホルスターから銃に手を伸ばそうとするが

 

「良いからじっとしてろ…すぐ済む…」

 

ミツルの言葉によりその行動が静止する。

言葉は時に言霊という物になる。言葉が時に人に感情を与える。喜びや悲しみ、熱意、意志、敬意、恐怖、憎悪

スバルは恐怖で動かなくなった。今になってわかる。魔女教徒であるペテルギウス討伐でスバルは躍起になり援軍を求めた。しかしそれはスバルの殺意による自己満足、誰も動かず、誰も手をさし伸ばさなかった。兄の顔は、あの時の自分のようだった。レムも同じく動けなかった。今までどんな相手にも臆することなく戦い抜いた。だが今回は違う。眼前の、何の力も持っていないただの人間に、恐怖した。

 

レムはスバルに近づき、耳打ちする。

 

「スバル君…」

 

「レム…ここは兄貴に任せよう。きっと…」

 

「違います…ミツルさんからスバル君と同じ匂いが…」

 

「ッ!それって…」

 

「はい、魔女の残り香です…」

 

2人は廊下を歩くミツルをただ見つめ続ける。静かな建物の中にミツルの足音だけが響く。

 

今、殺戮の鐘がなった。

 

「皆殺しにしてやる…!」

 

 

 


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