Re:ゼロから帰ってきた異世界人〜Parallel・The・Walking・Dead~ 作:伊吹恋
感染者の大軍に立ち向かうミツルとレム。感染者の頭を切り落とし、潰し、辺りが血みどろの戦場の中でスバルは怪我をした青年の元で足にかかっているトラバサミのようなトラップを何とか外そうとする。
「このっ…!」
布を使い素手で歯を抜こうとするも、トラバサミについているギザギザの返しのような刃が青年の足を離さない。布は赤い鮮血に染まりきり、地面にも血がドバドバと出ていく。このままでは青年は大量出血により命を失われる。
「ダメだ、力いっぱい込めれば動くけど刃が抜けねえ!」
「何とか出来ねえのかよ!」
怪我をした青年は既に顔色が悪くなり、痛みのあまり痛覚が無くなってきたのか、虚ろな目をして小さな声だけが発せられる。
足を切り落とすという手もあるがそれをすれば出血は酷くなり出血死は免れない。このトラップを付けたまま動かそうにもトラバサミは重く、ビクともしない。
「クソっ!」
血塗れの手を地面に叩きつけ嘆く。すると虚ろな目で青年は口を開いた。
「もう…いい…」
「「「えっ…?」」」
「自分の…ことは…自分がよく…わかってる…」
か細い声がスバルの耳に入る。
「お願いだ…殺してくれ…」
この場で1番聞きたくない言葉が発せられる。
「ちっ、キリがねえ!」
マチェットの付いた血を振り落としながらミツルは周りを見る。感染者の数は減っているというよりむしろ増えている。怪我した男の血の匂いにつられているのかはわからないが確実に増えていた。
ふと目の前を見ると腹に鉄パイプが刺さった感染者がこちらに向かってくる。
「うおっ!」
咄嗟にその腹に突き刺さった鉄パイプを抜き取り、感染者の頭に突き刺した。パイプの穴から黒ずんだ血が流れ出ていき足元を血に染める。
ズボッと鉄パイプを抜き、レムの居る方向を向く。後ろから近づく感染者がゆっくりとレムに近づく。
「おうらぁ!!」
鉄パイプをまるで槍投げのように投げ放つと鉄パイプは一直線に感染者の頭を捉える。
「ありがとうございます!」
「ああ、だが俺たちの体力がまず持たねえ。このままじゃあジリ貧だ」
ホルスターから拳銃を取り出して安全装置を解除する。弾ももう持たない。マガジンを数えるともう4本分しかなかった。
「レムちゃん、感染者の数が尋常じゃない!後退するぞ!」
「ですが、怪我したお人はどうするのですか!?」
「…然るべき処置をする」
ミツルは拳銃を構えて、感染者に照準を付け、引き金を引いた。
「そんな…」
怪我をした男は首筋の服に手を取り、捲ると、そこには大きな噛み傷があった。首筋から血が滴り、黒い服に落ちる。
「俺は…もうすぐ奴らと同じになる…だから、せめて人間のうちに…殺してくれ…」
か細く、聞きたくない言葉がスバルの耳に入る。聞きたくない。そう思ってるのにも関わらず不思議と手に耳を当てない。この男の最後の遺言として想っているのか、それとも…。
スバルは腰に差した拳銃を手に取ると、今日ミツルに言われた言葉を思い出す。
『お前は人を殺すことが出来るか?』
その言葉の意味を深く考える余裕はなかった。だが、銃を手にした時からそれは考えることだったいや、深く考えようとしなかったのだ。
所詮銃は人を殺す道具。このような場面に出会すことは予想出来たはずだ。それなのに考えなかった。それはスバルの手がまだ綺麗なのか、それともまだそのような考えを持てなかったのかだ。
「畜生!まだか!?」
近くまで聞こえるミツルの声と銃声。既に奴らがそこまで来ていた。何とかレムも戦っているがそれも時間の問題だ。決断の時は来た。ここで躊躇えば犠牲者が増えるかもしれない。
スバルは手に持っている拳銃を怪我した男の頭に照準を合わせる。
「おいお前何やってんだ!」
「勝也!」
金髪の青年が坊主頭の青年を抑える。この金髪の青年も分かっているのだ。噛まれた人間は助けることが出来ない。ただ奴らになるしか無い。だからこの青年は人間である今のうちに殺して欲しいと願った。死ぬならせめて人間として。
「スバル!決断するんだ!生き残る為に決断するんだァ!」
引き金に指をかざすが、カタカタと銃身が揺れてしまい照準がぶれる。
「ハァ!ハァ!ハァ!」
目から自然と流れる涙に乱れる呼吸。これまでとは違う。死にゆく人を見送るのでは無く、自分の手で殺す。死に戻りで何度もあった。自分の想い人の死を見送り、大切な人を見送り、友人を見送り、戦士達を見送ってきた。だが今回は違う、今回は自分の手で殺すのだ。
「レムちゃん!時間稼ぎを頼むぞ!!」
「ハイ!ミツルさん!」
ミツルはマチェットを鞘に収め片手をスバルの手に添える。ブレを押さえ、震える手を支える。
「・・・あ、兄貴・・・!」
「しっかりしろスバル…力を抜いて狙いを付けろ。俺が照準を付ける。そのまま引き金を引くんだ。良く狙え、お前は1人の男を殺すんだ」
その言葉を聞きスバルの指に自然に力が入り引き金を引き銃口から弾丸が発射された。
弾丸は真っ直ぐ飛んでいき、名前も知らない青年の頭を貫き、バタリと倒れた。
「走れええぇぇぇ!!離脱するぞぉぉぉ!!!」
肩に背負った散弾銃を手にし2発分の発砲音を合図に全員がその場から走り出した。
「「「はぁ・・・はぁ・・・」」」
必死に走り抜けて人気も無い所まで逃げてきた5人は生き残った。安堵の出来る時間を手に入れ、ミツルは煙草を口に咥えて火を付けた。
「なんとか・・・生き残ったな・・・全員」
「ぜん・・・・いん・・・?」
坊主頭の青年はズカズカと歩きミツルの胸ぐらを掴みだす。それに反応してレムは身構えるが、ミツルがレムに手を向け待てと合図を送る。
「・・・貴様!」
「・・・言いたいことがあるならはっきり言え・・・」
「兄貴、違う!俺がやったんだ!兄貴は関係無い!!」
「スバル、何がどう転ぼうが俺も荷担したんだ。俺も同罪だ」
「お前が・・・!お前が・・・!!」
「俺達があの青年を殺したってか?違うな。俺達が殺したんじゃねえ。世界が殺したんだ。彼は首筋を噛まれてたんだろ。俺達にはこの状態を打破出来ることはない。喰うか喰われるかのどちらかしかねえ。その中で彼は願った。『人間らしく死にたい』と」
「だけど・・・!少しぐらい慈悲の心があっても・・・!」
「いい加減にしろ・・・」
口から白い煙を坊主頭の青年に吹きかける。
「げほっ!ごほっ!」
煙によりむせ返し青年は手を離す。その隙を狙い。ミツルは坊主頭の青年の胸ぐらを掴み、壁に叩きつけ拳銃を手にし、青年の頭に銃口を突き付ける。無表情の冷静な瞳の中に明確な殺意を孕んだ目が彼を睨みつける。
「兄貴!?」
「ミツルさん!?」
スバルとレムが反応して動こうとしたが、その行動はすぐに静止されてしまう。ミツルの瞳が2人を見ていた。睨んだものを凍らせるようなその殺気に満ちたその瞳で2人は動けなくなった。こんな目をする人間がいたのか、それはこの世界で5年間も生きてきたからなのか、考え出すといくらでも思い浮かぶものは出てくる。だが決定的なものがそこにあった。2人はミツルに少なからず恐怖している。
ミツルは睨んだつもりはないのだろうが、2人が動かないのを確認すると視線を掴んでいる青年に戻す。
「現実を見ろ。この世界の何処に慈悲何て言葉が出てくる?むしろ俺達は彼に慈悲の心を与えたよ。考えても見ろ、彼は噛まれていた。あのまま逃げ出すことも出来たが、それだと奴らに喰われていたし、喰われなかったとしても奴らに転生して君らに襲いかかるかもしれなかった…寧ろ尊敬の気持ちの中で彼を殺せてよかったと思ってる。」
「…き、さま!」
「ここまで話してもまだ分からねえか、救いようのねえ馬鹿野郎だ。じゃあ言い方を変えよう。君は彼を殺すことが出来たか?感染者となった彼を、化け物に成り果てた彼を殺せたか?」
「…!」
青年はようやくその言葉の意味を理解した。彼が何故殺してくれと言ったのか、それは自分が感染者になり仲間を襲いたくないから出た言葉だからだ。
「俺は君の様に強い正義感なぞ持っていない。敢えて言えば俺は大量殺人鬼だ。生きていく為に殺し尽くした。だがそれは今までの仲間の意思を持っているからだ。
掴んだ手を荒々しく離し、後ろを向き手に持っている銃をホルスターにしまった。青年は涙を流しズルズルゆっくりと壁に背中を擦り付けながら地面に腰を下ろし流れ続ける涙が地面に落ちた。
「ちっ、生きるっていうのは死ぬより辛えんだよ・・・馬鹿野郎」
口にくわえているタバコを指で挟み、口から離して白い煙を吐いた。紫煙はゆっくりと空に登っていった。
安全を確保した5人は取り敢えずと言う様に休憩をしていた。レムも先程の戦いで体力を消耗していた。隣ではスバルが心配そうにレムの看病をしている。
「大丈夫か、二人とも」
「は、はい・・・大丈夫です」
「俺も大丈夫だよ…」
ミツルはリュックから水の入ったペットボトルを二人に渡し、ミツルも自分の分の水を取り出す。
「スバル・・・殺しは初めて、だよな?」
「・・・・・・」
スバルは黙ったまま俯いている。ただじっと手に持っているペットボトルを見つめていた。
「別に咎めてるわけじゃない。あの状況じゃあああするしかなかったんだ。むしろ良くやったと褒めるところさ」
「兄貴・・・」
「俺も数えきれない程殺してきた。感染者も、人間も、敵対してきた奴らを全員殺して生きてきた。だが俺は後悔をすることはしなかった。それをする時間があるなら俺は生きる意味を探したかった。じゃなきゃ罪悪感で押しつぶされそうだった・・・」
「・・・」
「まあ、猶予をやったのにすぐに迫った俺も殺しに荷担したも同然だ。お前が気に病むことじゃない。どうしようもなかったんだ・・・噛まれた人間は、どうしようもない。どんな名医にも治せない。治療法は・・・殺す事しかない。だからスバル、一度銃を手にしたら地獄行きだ。だからこそ、地獄に落ちるなら、守るもんの為に一緒に地獄に落ちようじゃねえか」
「・・・わかったよ兄貴、俺は守るもののために銃を握る。今度は覚悟を決めた」
水を飲み終えたスバルはペットボトルをミツルに投げるとミツルはそれをキャッチしリュックにペットボトルを入れ、散弾銃の撃ち終わった薬莢を取り出し新しい弾を入れた。
「あ、あの・・・」
後ろから声を掛けられる。その声を掛けた人物の方を見ると先ほど助けた二人組の青年のウチの坊主頭の青年だった。
「さっきは、すまなかった・・・俺、自分の感情ばかりに怒鳴っちまって・・・そこの君も、ありがとうな・・・アイツを・・・弟を人間のまま死なせてくれて」
「ッ・・・!弟・・・!?」
ミツルは黙ったままリュックからある物を手に取り立ち上がると手に持っている物を青年に差出す。それはエネルギーバー二本だった。
「・・・食べておけ。弟さんの分もしっかり生きていくために・・・向こうの彼にもやってくれ」
「は、はい・・・!!」
5人はその日の激闘の疲れを癒やすために近くの民家を使い一夜を明かした。
「そうか、勝也も正博も別々の行動をするのか」
「ああ、満には悪いけど、俺達にはやることがあるから」
「そうか・・・じゃあ、お互い生き残ろうじゃねえか」
「そちらも気を付けてくれ。特にこれから向かう所は荒くれもの達が多い所だから」
「大丈夫さ、こっちには自慢の弟とその弟の嫁候補がいるんだから」
「あ、兄貴!?」
「お、お義兄様・・・人前でそんなことを大声で・・・」
「レムも乗らなくて良いから!」
とレムは口で言っているが顔を赤らめながらにやけた顔をしている。
「冗談はさておき・・・行くしかねえよ。レムちゃんのお姉さんやスバルが世話になってた人がいるかもしれねえからな。世話になったのをあだで返すような事はしたくねえし、なによりレムちゃんの家族はスバルの家族も同じ、スバルの家族は俺の家族だ。家族が家族を見捨てるわけにはいかねえだろ」
煙草の紫煙を口から出しながらミツルはニカッと笑う。
「ふふ、なんだか君ならどんな困難でも乗り越えられそうだな。まあ、達者でな」
「お前らもな」
途中で調達した車にそれぞれ乗り出す5人は車のハンドルをてに取り、それぞれの道に進むためにペダルを踏み、走り出す。
「さあ、出発だ!」
「はい!」
「エミリアやラムを探しに行くぞ!!」
三人は進み出した。新たな目標に向かって。
「スバル君、この乗り物はなんでしょうか、独りでに進んでいて凄いですね」
「これは車っていって、人力車と違ってべダルを踏むと走るんだ」
「ほとんどスクラップ状態だったが、何とかバッテリーも大丈夫だったから動かしたんだ。ホント便利だよな車って」
「そう言えば兄貴って運転免許持ってたんだ。いつ取ったんだ?」
「あ?取る暇があったと思うか?俺とお前の年齢は?」
「えっ?同い年だったよ・・・先に生まれたのは兄貴だけど・・・」
「そう、でこの世界でお前が居なくなったのは?」
「・・・5年前?」
「で、この世界が地獄になったのは?」
「確か、スバル君が居なくなってすぐですね」
「・・・まさか兄貴?」
「奴らをひき殺すのに免許なんていらねえだろ?」
ミツルはシフトレバーを手に取り、ギアを変えてさらにスピードを出す。
「いやそうだけどスピードを緩めてくれぇぇーー!!」
「心配すんな!ちゃんと安全運転するから!」
再びシフトレバーを握りギアを変えスピードを出す。
「す、スバル君!」
スピードを上げ、ミツルはハンドルを大きく左右に曲げて障害物を避けていく。後ろにいる2人は何とか体をお互い支え合う形を取る。
「だがちゃんとシートベルトは付けろよ?揺れるぜぇぇ!!」
「ならスピードを緩めろぉぉぉ!!!」
ラムの生存確認を確認したミツル達は次の目標に向かって走り出した。
「死にたくなければどきやがれー!」
「ここが、渋谷…」
「ラムを見つけるぞ!」
「OK、LETSROCK!」
4話「シビレさせたのは誰?」