Re:ゼロから帰ってきた異世界人〜Parallel・The・Walking・Dead~ 作:伊吹恋
誠に申し訳ありません。
高速道路は乗り捨てられた車やスクラップ状態になった車が所狭しと置いていた。
ミツル達3人は元はパーキングエリアだった場所に車を止めて窓にサンシェードやカーテンをつけて奴らの視界に入らないようにして休んでいた。
目的地は『渋谷』
前日
『姉様が!?』
蝋燭の火を頼りに5人は夜を明かすために民家で休んでいた時、お互いの情報交換をしていた。その中でミツル達は有益な情報に食いついた。レムの姉であるラムらしき人物の目撃情報だった。勝也達がここに来る途中、渋谷にレムと同じ服装で桃色の髪の毛の女の子を見たと。
『その情報はマジなのか?』
『俺達も驚いたさ。君を見た瞬間渋谷で見たことある女の子がいるって」
『でも髪の色とかも違うからすぐ気づけたんだ』
『…もしかして、レムちゃんとレムちゃんのお姉さんは双子?』
『はい、レムとラム姉様は双子です』
『(双子だけど見たらすぐわかる…髪の色が違うけどそれだけで判別するにもなぁ…双子ということはレムちゃんと同じでメイド服…その他にも違う部分がある…身長?髪型?ん?)』
ふとミツルはレムの姿を改めて見る。そしてその中でミツルはレムのふくよかな胸を凝視してしまうがすぐに視線を焚き火に戻した。
『(…古今東西姉とは妹より勝っているという諸説がいくつもある…まさかだが…いかんいかん!)』
ガンガンガン!!
頭をメンテナンスをしている拳銃のグリップで殴る。他の4人はミツルの行動に理解出来ず狼狽える。
『兄貴何やってんだ!?』
『いや別になんでもねえよ』
顔を上げて見るとミツルの頭から血が流れていた。ついでに鼻からも。
『とにかく目的地は決まった。渋谷だ』
『姉様…!』
『ラムを探すぞ!』
『だったら気をつけた方がいいよ。あそこは荒くれ者の巣窟みたいなところだから』
『武器が心元ねえな。渋谷は当初感染騒ぎが起こったところだ。騒ぎで警察や自衛隊が総動員したとこだし、武器だって俺たちのよりゴツイ物を持ってたはずだ』
『それならこれを』
正博は荷物をゴソゴソと漁るとカバンからあるものを出した。それは銃だった。大きさは拳銃より大きく、ミツルの持っている銃より小さい。
『…マシンピストルか』
ミツルはその銃を手に取り弾倉と銃身に入ってる弾を抜き銃の状態を確認する。アームサイト、引き金、スライドを確認し、引き金を引いてみる。カチッという音を立て、状態を確認し終わると弾倉を再装填させる。
『今回助けてくれたお礼だと思ってくれ。流石に今の武器じゃ心許ないだろうし、俺は連射より単発の方がしょうに合ってるし』
『すまんな、お前らも物資不足なのに』
『いいさ。困った時はお互い様さ』
そして今に至る。朝になるとミツルは寝ている他の2人を起こさないように外に出てパーキングエリアの建物の中に入り食料がないか探してみる。乱暴にドアを足で開け、銃身を短くした散弾銃を片手にし気だるそうに銃身を肩に置いている。
食堂のキッチンに赴き缶詰をかき集める。中に入りスパゲティに使うトマトソースなどもあるがそんなの関係なくカバンの中に入り詰めていく。
「おっ、グリーンピースの缶詰か、ビタミン剤もあるじゃねえか。こんなもんここでどう調理に使う気だったんだか…」
誰に対してではない独り言を言いながらミツルはカバンを背負いキッチンを後にした。
他に日用品がないか調べてみるとミツルはタバコのカートンを山のようにあるダンボールの中に手をツッコミできるだけ多くのタバコを入れていきCDが売られている売り場が目に映った。1枚のCDケースを手に取るとそれはドライブに最適テンションアップの洋曲集と言うタイトルで書いている。それを片手に、ミツルは店から出ていき、スバルたちの元に戻っていった。
「Hey、お二人さん起きろ。朝飯調達してきたぞ」
車のドアを開けて中に入ると2人に声かける。助手席で寝ているスバルと後部座席で寝ていたレムはその声ですぐに目を開ける。やはり旅の疲れが出てきているのか、2人は起きるや否や同じように欠伸をして無理やり頭を覚醒させる。
「また大きなあくびなこって…ほらよスバル、レムちゃん」
カバンから取り出した水と缶詰を二人分渡し、自分の分の缶詰と水を出す。
「ありがとう兄貴」
「ありがとうございます。ミツルさん」
カパッと缶詰の蓋を開けて中身を先割れスプーンに乗せて食べる。中に入っていたのはトマトソースで煮込んだマカロニパスタが入っていた。
「あ、そうだ…」
缶詰をダッシュボードの上に置き先程のCDを出した。封を開けてパッケージから1枚のCDを取り出し、車のキーをACCをONにさせてオーディオプレイヤーに入れ込み小さな音で再生させた。
『♩I'd like to thank the guy
Who wrote the song
That made my baby
Fall in love with me♩』
懐かしいジャズ調でゆったりとした音楽がスピーカーから小さな音で流れ出す。ちゃんと音が出ていることに満足してミツルは再び缶詰を手に取り食事を開始する。
「兄貴この歌古いぞ」
「いいじゃねえか古い歌好きなんだよ。コーヒー飲みたいな」
こんな世界になって気楽に出来る娯楽といえば酒やタバコくらいなものだ。ここ数年間1人だったミツルからしたらサウンドを聴く自体が久しぶりなのだ。
「不思議な曲ですね。これもスバル君たちの世界の音楽なのですか?」
異世界から来たレムからしたらこれも不思議なものなのだろう。楽器も何も無いのに音が聞こえるという現状にレムは関心を持っているらしく、ミツルやスバルに問いかける。
「まあ、俺たちの国の歌では無いんだがな」
「まあそれでもいい歌には違いない」
トマトソースを口に入れて飲み込む。
「やっぱコーヒー飲みてえわ」
食事を終わらせると3人は再び車で移動を再開した。周りは変わらない光景ばかりが広がっていた。動かない鉄の大きな塊と動く死体が何人かいるがそれを無視して先に進む。
運転しているミツルに対してスバルは双眼鏡で辺りの警戒をするが、ふとミツルの持っている散弾銃を見る。銃身が切り詰められており、取り回しがしやすくされているのに気がついた。
「その銃そんなに短かったか?」
「さっき休んだパーキングエリアのガススタに色々工具があってな。銃身を切り詰めてソードオフショットガンにしたんだ。狭い室内戦なら取り回しも効くし至近距離なら殺傷威力も上がる。特にこれから行く所はそうなりそうだしな」
今からミツル達が行く所は渋谷。そこはまさにならず者の巣窟と言っても過言ではない程の場所だった。ミツルも何度か立ち寄ることがあったが、そこはとても人が住めるような場所ではないという話だ。その理由はかつて人が多くいたこともあり感染の拡大も早く大きかった。だがある一部の人間はこの広大なコンクリートジャングルを生き残り、組織と言ってもいいような勢力をつけていった。
「どっちにしろ戦闘は避けられないという事ですね」
「ああ…っと!」
アクセルから足を離し、ブレーキを思いっきり踏みつけスピードを落とす。
「おわっ」
「きゃっ」
揺れによりレムは咄嗟に隣のスバルの腕を掴むとスバルもレムの肩を持つ。
「ここもか…」
車のキーを回しエンジンを切るとミツルはドアを開け外に出る。
スバルもレムを気遣いながら前を見るとあるものが目に入る。ミツルは「おいおい・・・」と口にしながらタバコを咥える。
そこにあったのは人の首だった。鉄パイプのような物を地面に突き刺し、それに何人かの人の首だけがロープで固定されくくりつけていた。そのまま首をもぎ取ってくくりつけているからだろう、その首は獲物を求め動いていた。
「悪趣味だ・・・ということは、ここが渋谷…」
実を言うとミツルたちが出発した所は車で高速であれば30分もあれば行ける場所だった。だが渋谷に行く道中には車が渋滞して捨てられていたりしていたため、大回りやなんやかんやしながらここまで来た。車を捨てて行くのも手だが、ある程度物資を集めたミツルたちは荷物や移動効率を考えてあえて大回りしながらやっとこの道を見つけ出した。
まるで警告をするようにあるその首をミツルはマチェットで切り離し、とどめを刺した。首の始末を済ませるとミツルはすぐに車に戻るとすぐに銃の弾倉を確認する。
拳銃、ソードオフショットガン、AK、さらに正博から貰ったUZIマシンピストルの弾倉も確認をする。
「レムちゃん俺が合図したらかがめ。スバル、お前運転してくれねえか?ゲームセンターとかでレースゲームやってたからミッションの運転の仕方分かるだろ?」
「いいけど、何でだ?」
「何が起こるか分からねえからだよ。それと、ここからは下道を使おう。もうここからは敵地のど真ん中だ」
カシュッとソードオフショットガンの銃身に弾が入っている事を確認し元に戻し、助手席に座るミツルに対し運転席にはスバルが座る。
運転席に座ったスバルが車の鍵を回そうとした瞬間、パリィ!!という音と共にミツル側のドアミラーが砕け散った。
「な、なんだ!?」
「スバル君、後ろからなにか来てます!」
「早速おいでなすった!レムちゃん隠れてろ!スバル全速力だ!何としても撒くぞ!」
「わかった!兄貴、後ろ頼んだ!」
「OK、LETS ROCK!!」
割れたドアミラーを肘で破れず残った部分を砕き、そこから身を乗り出し後に銃を構える。
後ろには3台くらいの車と2台のバイクがこちらに向かって走ってきている。
「死にたくなければどきやがれー!」
今、開戦の火蓋切って落とされた。
カセットテープ『チェ・ゲバラ』
【再生ボタン】カチッ
『なあ、兄貴』
『なんだ?』
『あの言葉の意味はなんなんだ?』
『よく狙え、お前は一人の男を殺すんだ』
『レムも気になってました。とても強く、印象に残る言葉でした』
『まあ、少し話が長くなるがいいか…これはチェ・ゲバラの言葉だ』
『チェ・ゲバラ?』
『俺らが生まれるもっと前にいた偉大な英雄だ。当時1955年のキューバ革命に参加した革命家だ。彼はキューバ革命参加を心に決めると娘も妻も置いて単身でキューバに渡った。彼はキューバ革命で多くの功績を残し、瞬く間に反政府軍トップ2に上り詰め、反政府軍を支援する地元民間人の加勢もあったため彼は激戦の末に1959年1月1日に敵大将が他国に亡命、キューバ革命を成した。彼は後のボリビア革命にも参戦し、そこで命を落とした。ボリビアで捕らわれたゲバラが殺される直前に言ったその時の言葉が「よく狙え、お前は一人の男を殺すんだ」って言葉だった。彼の死体は殺した証拠として両手首を切られた状態で埋められてたらしい。彼を知る人間を後にこう語った。『20世紀最も優れた男』と」
『最も優れた男…』
『それだけ彼が優秀だったという事でしょうか?』
『彼は民衆の為に戦い、民衆のために死んだ。キューバの大臣になっても彼は休日返上で土木工事や農作業に出かけた。だがその潔癖さが彼を追い込んだ。ボリビア革命に参戦して彼はキューバ革命の思想が通じると思っていた。だが人材も民衆の支持も得られず、彼は死んでしまった。だが彼は少なくとも道徳的な人間だった。民衆から略奪をしない事により、彼はキューバの民衆の信頼を得た。彼のような偉大な男こそが英雄と呼ばれるのだろう。ゲバラのような男は何処にもいないだろう。だが勘違いしてはいけない。俺たちは英雄じゃない。これからする事で英雄になる事は決してないだろう。俺たちは、一人の人間だ。この世界は英雄を欲してないんだから』
『でもレムは思いました。まるでミツルさんの様だなと』
『なに?』
『ミツルさんは見ず知らずの人を助けました。何の見返りも求めず、自分にリスクが伴っても危険を顧みずミツルさんはあの御二方を助けました。話でしか聞いてないですがミツルさんとゲバラさんは似ている気がします』
『俺がチェに?』
『そしてそれはスバル君もです。前にも言った気がしますが、やはりお2人は兄弟なのですね』
『何だかレムに言われると恥ずかしいな…だけど、俺もレムと同感だ。俺はゲバラのように誇れるか自信は無いけど兄貴は自分を誇ってもいい気がするぜ。確かに俺や兄貴はゲバラのような大きな思想も執念も無い。でも思ってることは同じだと考えてるよ。全員を救い出すのは確かに無理だ。でも目の前の救える命を見捨てることは出来ない』
『…ふっ…さて、歴史の授業は終わりだ。明日に備えて寝るぞ』
『はい』
『おう』
『俺がチェにね…いつか俺も同じ運命を辿る事になるのかね…よく狙え、お前は一人の男を殺すのだ…』
【停止ボタン】カチッ
最後の話は第3話であった言葉の意味です。メタルギアピースウォーカーで同じようなセリフがあったらしいんですが私はピースウォーカー未プレイなのでよくわかっていませんでした。
次回予告
「おっとごめんよ」
「そんな場合じゃないだろ兄貴!!」
「話せ、そうすれば離してやる」
「スバル君!!」
「ふせろォォォ!!!」
5話「開戦」