こういうこと、あるよね?

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『ちなみに〇〇である。』

ぷろろーぐ

 

『モモンガを愛している。』

 目前に広がる中空に浮かんだコンソール画面。その設定欄に長々と書かれた文章の終わりには、そう書かれていた。

 ナザリック地下大墳墓のNPCであるアルベドの、そのキャラ設定を、ビッチであるというのはあんまりだろうと思って書き換えるために、頭を悩ませ考えた結果がこれだった。

「……恥ずかしぃ……」

 消した文字数の空白は、アルベドの創造者たるタブラ・スマラグティナならそのままにはしておかないだろう。現にアルベドのキャラ設定は、限界ギリギリまで埋められていた。

 その几帳面なタブラさんの人格を尊重し、せめて代わりに何かを書いておこうと考えた結果だった。

 自分の妄想のために、理想の恋人を描いた恋愛話を読むにも似た気恥ずかしさを覚え、全身が痒くなるような錯覚を覚えて悶絶する。

 絢爛豪華な装飾が施された玉座の間で、骸骨が照れながら奇妙な踊りを踊っているように見えるその光景は、控えめに言ってシュールのであったが、幸か不幸かそれを目撃する者はいない。

 このナザリック地下大墳墓に残るのは、その奇妙な踊り手のみであり、それを眺めるのは意思を持たないNPCだけだった。

「いや、うんないな。これはないな」

 誰に言い訳をしているのだろうか。無表情なはずのスキン越しにも、照れているのがわかる声色で、モモンガはそう一人ごちた。

 この世界、つまりユグドラシルの世界は、今日の午前零時をもって終了する。

 そしてあと数分足らずでそれは訪れ、サービス終了とともに、目の前のアルベドも、ユグドラシルの世界も、崩壊して電子の藻屑へと成り果てる。

 よって、そのままにしておいても、モモンガの感じる僅かな羞恥心はすぐに消え去るはずだ。

 しかしモモンガにとって、アインズ・ウール・ゴウンというギルドは掛け替えのないものだ。そしてそれを盛り立てた一人である、タブラさんもまた、モモンガにとって大切な友人であり、彼の創った設定を勝手に弄るという後ろめたさが、モモンガに再度の書き換えを決心させた。まあそれよりも自分のした行動があまりにも恥ずかしかったのだろうが。

 

 なんとも言えない気恥ずかしさを覚えながら、モモンガはコンソールを操作して、自分の書いた文章を削除しようとした。しかし、 

「やっべ消しすぎた」 

 焦るような声が玉座に響く。

 文字消去のコマンドを長押しすぎて、必要以上に文字を消してしまった。

「えっとなんだっけ……こうだっけ?」

 折角元に戻そうとしているのに、さらに文章を改変してしまっては元も子もない。

 慌てて元に戻そうとするも、『ちなみにビッチである。』というインパクトが強すぎて、その前文のことをあやふやにしか覚えていない。

 ――不味い。

 別に誰かに叱られるでもないのだが、モモンガはそう思った。

 後ろめたさと恥ずかしさ、そしてそれを誤魔化そうとしてさらにドジを踏んだという事実が、モモンガの精神をパニックに叩き込んだ。

 人間は慌てれば慌てるほどミスを重ねるものだから、本来なら一度落ち着くのがクレバーな方法である。

 しかしそれは間近に迫ったサービス終了という刻限が許さなかった。

「あーっと、えーっと」

 ああでもない、こうでもないと、現実世界に存在する脳をフル回転させて、記憶を思い出そうとする。しかし焦れば焦るほどに思い出せない元の文章。

 思わず頭を掻きむしりたくなる衝動に襲われる。

「あっ! そうだ、これだこれ!」

 やっとのことで思い出した文章をタイプしていく。

 ちらり、と横目で時間を確認してみれば、既に23:59分を回っている。

 やべえ。

 焦燥感で、どっと汗が噴き出す。震える手を抑えながら、タイプする。

「よし! 終わった!」

 勝った! 

 時間内に復元することに成功し、謎の感動を覚えるモモンガ。

「ふうー。どうなることかと思った……あ」

 残り十秒。それが復元を終えたタイミングだった。

 そして最後の瞬間に何をやってるんだ俺は……、と自嘲を覚えつつも、なんとなく復元した文章に目を通し、そして気が付いてしまった。

「タイプミスしてるー?!」

 慌てすぎると結果として失敗を招く。よくあることではあるが、このタイミングでは致命的だった。

 残り五秒、四秒、三秒。時計を見ても無情にも時間は流れていく。

 モモンガは第十階位魔法であるタイムストップ≪時間停止≫を習得しているが、現実の時は止めれれない。

「ああー…………」

 修正は不可能だ。三度目の修正を試み、コンソールへと伸ばしたモモンガの手は、間に合わないと諦めた後、力なく中空をさまようだけだった。

 二秒、一秒、そして……。

 目の前に広がるアルベドの設定が書かれたコンソール画面、それが閉じる。

 

 そこには……

 

『ちなみにボッチである。』

 

 そう書かれていた。

 




 多分つづかない。
 続きはボッチ化したアルベドを書かないといけないからなー。
 むしろ誰か書いて。

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